大分が隙を見せずに快勝〜藤枝MYFCvs大分トリニータ(3/10)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ROROダービー

大分県の観光地といえば別府ですね。そんな観光王国別府を作ったのが油屋熊八さんで、駅前になかなか個性的な銅像が建てられています。で、別府の観光を支えたのが関西からのフェリー。これまた熊八さんが招致しただか、整備しただか、みたいなことらしいです。現在でもフェリーは圧倒的に九州―関西ですし、なかでも大分や別府発着のさんふらわあは、都市中心部へのアクセスがとても良い。

ワタクシ、まあまあフェリーに詳しい。なぜならフェリーに乗るのが好きだから。そんなフェリー好きのワタクシとしては、乗りたくても乗れない船がありまして、それがRORO船。簡単に言うと一般旅客を取り扱わないフェリー。長距離ドライバー専用フェリーといいましょうか。で、日本に数あるRORO船なのなかでも天下の商船三井が運行している路線に「追浜ー御前崎ー北九州ー大分」なんてものがあったりします。御前崎御前崎市であって藤枝市ではないのですが、だいたいで言えば、この試合はRORO船ダービーとすることができるでしょう。

 

□どちらもスウィーティー

さて、船か電車か飛行機かで瀬戸内を超えて乗り込んできた大分。開幕して2試合の戦績は2分。今朝の時点での順位はウォウウォウ夢見てるスイートシックスティーンの16位です。ここからの巻き返し、虹を撒き散らすことができるのでしょうか。なんていう、この胸のサムデイはともあれ、片野坂さん、噂によると第一次政権時代の擬似カウンタースタイルから一転して、ストーミングへと舵を切ったとか、切っていないとか。

迎え撃つホームの藤枝はルヴァンの敗戦も含めて含めて1分2敗。今朝の時点での順位はスイートスイートナインティーンブルースな19位。ちょっとやそっとのことで須藤監督が慌てふためきブレブレになることはないと思いますが、策士ですからね、チームとして誰も見たことのない顔を見せてくるかもしれないですし、いまはあくまで我慢の時で、ハードワーク&ポゼッションの、まるで毎日のようなスタイルからステップアップして、もうすぐ攻撃的ぶらずに守備的な武器も使える1番旬なときになるかもしれません。

 

□ゴボウしばき合い対決

というわけでピッチに目を移します。大分は、まあ、ストーミングっちゃストーミング、そういう要素がなくもないのですが、さほどそこに特化している感じではない。チームとして戦術的にストーミングしているというよりも、ひたすら中川が走りまくっているという感じだったでしょうか。むしろ、総じてオーソドックスなスタイル。日本のサッカーで古来展開してきた、〝中盤しばきあいスタイル〟ですよね。奪ってから縦に速いのは現代的ですけど。

一方の藤枝は大ケガから復帰した杉田が先発していましたね。横山とか久保が抜けた今や、藤枝らしさを感じさせる選手の一人。他には左WBの榎本なんかが藤枝のアイコンでしょうか。レジェンド枠の久富も先発。しかもWBなどの中盤ではなく3バックの一角。須藤さんらしいというか、ミシャが好みそうな用兵。ニューカマーとして注目されるのは浅倉廉。大分守備陣の2〜3列目にできるギャップで何度かフリーになってボールを受けてましたね。

試合は、なんだか似た者同士でした、藤枝と大分。多数派が日本人により構成されるチームらしく、ひたすらハイインテンシティ。結局は中盤勝負。で、大分同様に藤枝も縦に速いというモダニズム。前半トータルでは五分だったかと思いますが、狙いをより実現できていたのは、WB裏を繰り返し突っつき続けた大分だったでしょうか。とはいえ両チームとも決定機らしい決定機は作れないままハーフタイムを迎えます。

 

□謎の怪人も及ばず

後半早々にスコアが動きます。なんか、ヌルッと大分がボールを前に運んで、そしてヌルッと保田が抜け出して決めきりましたね。藤枝からすれば一瞬のエアポケット的な。となれば藤枝もやり返します。左サイドをほぼ完璧に攻略した榎本がお洒落感を漂わせながらクロスを中央に送ると、反応した矢村のシュートが相手ゴールネットを揺らします。揺らしたのですが、、、オフサイドでした。

試合のテンションが落ち着くと、大分の良さが尻上がりに際立っていきます。なんといっても保田―弓場―中川による正三角形のインテンシティですよね。保田と弓場の危機察知能力や2度追い3度追いする勤勉さもさることながら、中川のフォアチェックには感動すら覚える。そして、その正三角形の脇を野村・野嶽・香川といったサッカーIQの高い面々が締めていく。再現性を持ってこのパターンを発揮できれば、かなり強くなりそうですよ、トリニータ

劣勢を挽回したい藤枝の須藤監督は中島大嘉と、さらに謎の怪人ことウエンデルを投入してスクランブルアタックを仕掛けます。それに対して大分の片野坂監督はペレイラを投入して5バックにするとともに、ボランチを弓場からサイズのある小酒井にスイッチして、相手パワープレーに備える。万全の逃げ切りモードとなった大分を向こうに、なんとか同点を目指したい藤枝でしたが、陣地回復の勢いでそのまま突っ込む以上の形は作れず、シュートもミドルシュートなど単発に終わる。榎本に代わって投入された永田が見所を作ったりというのはありましたが、大分が盤石のウノゼロで勝ちきる、そういう試合となりました。

エンリケ・トレヴィサンの対応を語るより宮代への賛辞を交わそう〜FC東京vsヴィセル神戸(3/9)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□聖地味スタ

味スタでやったんですよね、この試合。いや、FC東京のホームゲームだから当たり前なんですけど、なんとなく、いかにも国立でやりそうな雰囲気が漂ってません?新国立競技場に対して当初サッカー界は、かなり冷ややかに反応していたと記憶してますが、なんだかんだで芝のコンディションがとんでもないことになる程度には新国立競技場のヘビーユーザーになりましたね。

なんならJリーグ本体が補助金だったかチケット買い取りだったかの支援することもあるんでしたっけ?こういう状況に対してゲスの勘ぐりをすると、あるいは、国立競技場の側(=つまり日本の国のお偉いさん&その威を借りる既得権益層)から泣きつかれたのではないかと想像してしまう。まあ、それなりそれで良いんですけどね、〝国立〟を冠する施設が札幌ドームみたいになっても格好悪いですし。

 

□二重の勘違い

さて、味スタに乗り込んできた神戸ですが、J1クラブ相手の公式戦を振り返ると、スーパーカップで川崎に負け、リーグ開幕戦では磐田に勝ったものの、前節では柏の軍門にくだりました。まあ、ロケットスタートとはいきませんでしたね。ただ長いリーグ戦を考えると、神戸的には前の試合で汰木と佐々木が負傷交代したことの方が痛いかもしれませんね。

……ところで汰木と佐々木って、「え?一文字違い?」って勘違いしてしまいそうじゃありません?ちなみに、この勘違いって、二重の勘違いなんですよね。まず「汰木」って「ゆるき」だよっていう勘違い。そして「汰」は「沙汰」の「沙」ではなく「汰」だから、読むとしたら「たき」であって、「さき」ではないよ、という二重の勘違い。

なんてことはどうでも良くって、迎え撃つホームのFC東京セレッソサンフレッチェに続けて引き分け。無敗街道まっしぐらの14位です。新戦力のうち、小柏と高はここまでベンチに入っていませんが、ケガしたのかな?小柏はこの試合でベンチ入りしましたけど。ついでに言えば、なんだかんだで最終的には東慶悟がポジションを奪い返してからチームが本調子を取り戻す、みたいなことになりそうな雰囲気を感じなくもない。

 

□神戸がFC東京を圧倒

というわけで、ピッチに目を移すと神戸は、いつもの4123ではなかったかもしれません。山口蛍と扇原が並んだダブルボランチ風。宮代と大迫は縦関係でしたが、実質的に442だったと把握しておけばイメージしやすい。武藤と広瀬の関係については、広瀬が右かと思いきや武藤が右で広瀬が左。汰木の位置にそのまま広瀬が入ったということで良さそう。で、いつもと少しずつ事情が異なるとはいえ、さすがの完成度、キックオフから相手を押し込み、奪われても即回収するというポジショナルの真髄を見せつけ、FC東京を蟻地獄に引きずり込みました。

一方、FC東京はなかなか厳しかった。全体が押し上げられないから、3トップもそうそう相手最終ラインにチェイスをかけられない。山川とトゥーヘルへの制限が利かないもんだから、あっという間に陣地を戻されてしまう。ってなことを繰り返していました。前半途中からは荒木とか仲川とかが、タメを作ったり、相手を剥がしたりってことが少しずつできるようになったので、どうにかこうにかそれっぽくはなりかけましたけど。

そんなわけなので、前半は神戸が圧倒的に攻めたてる。せっかく獲得したPKで大迫が思いっきりけっつまずいても、神戸が圧倒的に攻めたてる。もしFC東京が「ある程度は持たせる」という作戦だったなら良いのですが、そういう作戦でなければ、両チームの明確な差を認めざるをえないような前半45分になりました。

 

 

□宮代爆発

後半になって風向きが変わりましたね、試合の風向きではなく、実際の天候としての風向き。で、急激に〝さぶっ!〟ってなった、気温が。体感で5℃くらい。そんな冷え切ったスタンドのボルテージを一気に上げたのがFC東京の先制点。コーナーキックのこぼれ球を小泉が丁寧にシュート。相手DFに当たってコースが変わったことも幸いしてネットを揺らしました。この時間帯はFC東京の選手一人一人が攻守において粘り強くプレーできていた印象です。

しかし、そんな束の間の安息は神戸の勝負強さによって、一瞬で吹き飛ばされます。武藤のスルーパスに反応した広瀬が正確なクロスを上げると、宮代がものの見事なヘディングシュートを叩き込みました。後半途中からの神戸の中央突破は凄かったです。大迫と宮代に武藤まで加勢していく感じで、バイタル中央をガンガン縦抜けしていっていた。中でも出色だったのが同点ゴールの宮代。ポストワーク、ターゲットとしての競り合い、オン及びオフでの突破力、使う側使われる側両方での活動量、全てが秀逸でした。やっぱり前線セントラルの選手なんですねえ。

そんな宮代のハイライトが後半25分。エンリケトレヴィサンをやっつけます。鋭い突破に思わずファール。決定的な得点機を潰したということで、一発レッドでトレヴィサンは退場。しかもそのフリーキックを大迫が決めきる。無慈悲です。その上、パトリッキとか井手口とか投入してくるのも無慈悲です。さすがに勝負あり。7分のロスタイムも含めて、神戸が悠々と勝ちきりました。

 

「ナンノこれしきっ!」と再び立ち上がるしかない〜栃木SCvsモンテディオ山形(3/3)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□近くで遠いのかも

栃木と山形というのは、地理的に見れば福島県を間に置いた北と南ですよね。「一つの県を挟んでの両サイドで、かつ、新幹線が通っているのだから、山形的にも実質はホームみたいなもんじゃん⁈」とか思って調べてみたんですけど、……山形―宇都宮間、山形新幹線を使っても2時間とかかかるんですね。

うーん、、、実はあんまり共通点ない?栃木といえば日光、ならば山形といえば山寺とか出羽三山……弱い、共通点として弱すぎる。栃木といえばカンピョウ、ならば山形といえば紅花……やっぱり弱い。栃木といえばU字工事、ならば山形といえばダニエルカール。うん、そうか、方言がきつい、けれども首都圏の人間にも聞いてギリギリ理解できるキャッチーさがあるという意味では、まあまあ共通しているかな。

 

□クレバー系DF出身監督対決

山形は去年の途中から業界きってのイケメンこと渡邊晋さんが引き続き監督。そういう意味では継続路線ですが、もう少し巨視的に見れば、ここ数年間、モンテディオのエンジンとして君臨してきた南&藤田コンビが昨シーズン途中に解体されたので、転換期といえば転換期。ちなみに正式に離れ離れになった南&藤田に対して、熊本でラブラブだった坂本&杉山がここで再結成されたことにも注目。このまま小屋松&仙頭みたいになっていくのでしょうか。

ホームで迎え撃つ栃木は田中誠新監督。それを監督の師匠にあたる柳下正明ヘッドコーチが支える、なかなか珍しい体制。ところで田中誠さんは、現役時代から〝クレバー〟という評価の高かった監督さん。宮本恒靖とか戸田和幸とか、古くは井原正巳の系譜。ということは「結果は出してるのになぜか評価されない」というパターンにならないかしら。ちなみにワタクシに同姓同名の知り合いがおりますけど、そいつは、むしろちゃかり周囲から評価されちゃってるパターンです。なんにせよ成功を祈りましょう。

 

□中央突破の栃木とサイドを縦突破の山形

田中誠率いる栃木のシステムはアンカーを置く352。ですが、守るときは大森が1列前に残る4312っぽくなることも多いですね。攻撃は前線にいる矢野と1列下にいる小堀の推進力&キープ力を生かしつつ、繋がったときには奥田がエスプリを利かしていくようなイメージ。序盤はそれでチャンスを作れていた。ただ、逆に言えば小堀と矢野がロングボールの競り合いで頑張ってくれることを前提にしているので、個人任せといえば個人任せ。

一方の山形は去年から引き続きの4213。確かに攻撃時は4213ですが、守備時は両WGが引くのに対し、トップ下は相手のアンカー(この試合では佐藤祥)をマークするので442にも4411にも見える、ことがある。スタイルはいわゆるポジショナルで低い位置で回しながら両WGのフリーを作っていく。左WGの気田はいかにも〝サイドの10番〟というアジリティ&テクニック。吉田とのコンビで小刻みに崩す。逆にイサカの右はダイナミック。ワイドで起点となった後は、ガンガンとゴール前に入っていく感じですね。

試合は前半から激しく動く。均衡を破ったのは栃木。CKからのこぼれ球に奥田が反応して先制ゴールを奪い取ります。鮮やかな先制攻撃でしたねえ。しかし、山形も落ち着きを失うことなく、平常心のままイサカが右を崩す。そして、そこから栃木DFをチンチンにして最後はオウンゴール。振り出しに戻りました。

 

□栃木の苦杯

前半のうちにまだまだ試合は動きまくる。例によってロングキックに抜け出した矢野がPKを獲得。しかし、それが止められてしまう。まあ、そもそもオフサイドくさかったので、ある意味では帳尻があったわけですけど。逆に山形は前半から〝個〟を見せつけていた右から栃木守備陣を完全に崩して、インナーラップしていたイサカが決めて勝ち越し。イサカ劇場はまだまだ終わらない。PA内の空中戦を完全に制したイサカがヘッドで折り返すと、CFの高橋が抜け目なく決めてリードを2点に広げます。

この時間帯の栃木の守備は宜しくなかったですね。相手にボールを持たれると不用意に食いついてしまう。そして交わされる。交わされた後はリトリートするのですが、金魚の糞状態で、人数は揃っていても、秩序がない。ボールウォッチャーになったり、動きが重なってしまったり。そういうところの整理整頓が監督のお仕事だと思いますよ、田中さん。

山形にも後藤が前半で退かざるをえなくなるというアクシデントはあったのですが、禍を転じて福となす。途中出場の加藤がフリーマン的な動きで次から次へとインテンシティ強く攻守をコネクトしてました。逆に栃木は選手交代で流れを変えられなかった。宮崎と南野が同時投入されましたが、サイズを生かしたプレーができていた宮崎はともかく、南野は見せ場が少なかった。一度、決定的なシュートを強引に放ちましたが決められず。もっとも南野については、これくらいのことは〝ナンノこれしきっ!〟と払拭して、次に切り替えてほしいですね、南野だけに。

そんなこんなで山形が3―1で勝利を収めました。

沼津の成熟度は素晴らしいのかもしれない。〜アスルクラロ沼津vsガイナーレ鳥取(3/2)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□日本代表がワールドカップ常連になった黎明期ダービー

もはや現在の20代とか30代とかは知らないフレーズかもしれませんが、「ドーハの悲劇」って言葉があるのですよ。ワタクシ的には悲劇のイラク戦ではなく、絶望の縁に追い込まれたイラン戦の方が忘れがたい。2点リードして多くの選手やマスコミや、何より我々視聴者が諦めモードになった状況で中山雅史が決めた追撃のゴールを僕らは忘れない。いや、僕は忘れない。イッツ・ユースフルデイズ。

その4年後、「ジョホールバルの歓喜」という言葉が日本中に駆け巡りました。当時の自分は「若さって凄い、生きてるだけで自信満々」ってモードじゃなくなっていて、そこまで青春の炎が日本代表とともにあったわけではないのですが、それでも鮮明に記憶が残っているのは岡野のアイコン力。若かりし自分は、それを「軽薄さ」とシニカルに受け止めた。いまは、そういう自分に反省いっぱい、でも愛おしい。

 

□Jリーグバブルの頃の選手が監督として再戦

イッツ・ユースフルデイズな中山雅史監督が率いて2年目となる沼津。初年度の中山監督、一時期は昇格を争えるところにいたりもしましたし、吉田謙監督が退任して以降、トップハーフよりもボトムハーフにいることが多かった沼津を、残留争いに巻き込ませなかった手腕は評価されてしかるべき。個人的に応援している森夢真が年間通じて活躍したのもポイントが高い。

逆にアウェイチームの鳥取は新人監督たる林健太郎体制が始まったばかり。お手並み拝見以外の言葉は出てこないわけですが、個人的には、このブログで何度も繰り返しているように、〝あの頃の桐蔭〟には基本的には懐疑的。……なのですが、小林慶行なんかは結果を出しましたし、内容的には米山篤志も悪くない。戸田和幸の評価はいまだ難しいですけど、なんだかんだで帳尻を合わせた。ってことは、それなりにはやってくれるのかな??

 

□4123対決だと起きる現象

さて、キックオフ。沼津も鳥取も4123ということだったのですが、あまり綺麗な4123って雰囲気ではなかったかもしれません。沼津の場合、中盤は確かに逆三角形なのですが、アンカーを頂点とする二等辺三角形ではない。明らかに徳永より持井の位置が高い。ほとんど2トップ。その分、両WGが慎重に構えるので4141(左高め)っぽい感じになる。特に攻撃に特化したいはずの森のポジショニングが慎重。中山さんの薫陶を受けた成果かもしれません。

他方の鳥取は4213っぽくなる。世瀬と普光院がボランチで並んで3MFの中で唯一DF登録の曽我がトップ下近くに出て行く。4123対決だと、相手のアンカーをISHの片方が捕まえにいくので、ISHの高さが前後しがちなのでしょう。ともあれ鳥取はアンカーがWボランチ風に2列目に吸収されるものだから2列目と3列目にスペースができる。ハイラインにもかかわらずスペースを作ってしまって少しバタバタしていました。

そんな構図の試合は前半から動きます。基本的にはジャブの打ち合いって感じでどちらも極端なリスクをかけるってことはなかったと思いますが、そのジャブの打ち合いの中で的確に抜け目なくクリーンヒットを打ち込んだ和田のゴールで沼津が先制します。となると、しばらくは反撃に出たい鳥取がボールを握るわけですが、むしろ沼津が擬似カウンターに持ち込んでいるようにも見えた。同時に、その擬似カウンタースタイルは運動量を求めるので、夏場に厳しいというのも伝わってきました。

 

□沼津爆勝

後半はスコア的にワンサイドゲームとなります。まずは左サイドからの鋭い低空クロスがゴール前をすり抜ける。それを拾ったのが森夢真。角度のないところから少ないタッチで鮮やかにシュートをゴールに突き刺した。さらには持井。今度は相手GKが弾いたシュートのこぼれ球を拾ってからテレビゲームのような綺麗なファインショットでリードを3点に広げます。

沼津、強いですよ。やってることが合理的。いわゆるポジショナルで5レーン系の幅を作る。そこからのボール回しは原則として外回し。だから相手に奪われたとしても、その場所は外。危険は少ない。そこから中に展開されると、一瞬、厳しいような状況になるのですが、そのフェーズになると外を捨てる。外からクロスを上げさせても、中の人数が足りていれば弾き返せるという考え方。とても合理的です。

そんな沼津に一矢報いたい鳥取は途中から明確な4231にします。最初の選手交代の時だったと思いますので2点差の段階ですかね。とはいえ、そういう小手先の対応では、なかなか完成度の違いを克服できません。サイドからのクロスとか3列目からの飛び出しとかもなくはなかったですが、チャンスらしいチャンスといえば何本かのロングシュートくらい。逆に沼津はCFの和田がこの日2点目のゴールでダメ押し。試合終盤には同じタイミングで鳥取長谷川アーリアジャスール、沼津が川又堅碁を投入するというイベントもありつつ、体勢に大きな変化は起きず。沼津が4―0で圧勝しました。

 

快勝発進〜大宮アルディージャvsヴァンラーレ八戸(2/24)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記捕食

東北新幹線の北と南

今年もJリーグの季節がやってきました。今シーズン最初の観戦はナクスタの八戸戦。青森のクラブですね。青森といえば今をときめく王林さんが奏でる津軽弁なわけですが、津軽地方(日本海側)に対し、八戸のある南部地方(太平洋側)は、さほど方言がキツくないことでお馴染み。東北新幹線が延伸して東京と直結した影響だったりするんですかね?

新幹線の前の青森といえば青函連絡船の発着地。上野発の夜行列車を降りるのが青森県。北へ向かう人の群は誰も無口だったはずが、いまや北海道新幹線が開通してからは、みんなおしゃべりなのでしょう。ちなみに東北新幹線は、かつて大宮発着だったんですよね。北は盛岡発着でしたが、少し伸びて八戸発着の時代もあった。それが函館と東京が直結したことで、どちらもただの通過駅となりました。そういう意味では、このマッチアップは「かつては東北新幹線の発着駅だったけど、いまではただの通過駅」ダービーと言えるのです。

 

□祝、開幕!

何はともあれホームの大宮ですよ。史上初のJ3降格ときたもんだ。さしあたり長澤徹監督を招聘して出直しを図ります。場合によっては、ピッチ上だけでなく、クラブ全体が、より大がかりな出直しとなるかもしれませんけど。実際に大宮のゴール裏には早くもオレンジ地に「BULES」の横断幕が掲げられていましたし。翼が授けられて、RB大宮アルディージャみたいなチーム名になったりするのかしら?

一方の八戸は引き続き歴戦の石崎ノブリンがチームを預かります。昨シーズンの八戸が既に例に漏れなかったように、ノブリンが率いる以上、間違いなくハイプレス、流行の言葉に直すとストーミングでやってくるはずです。一にも二にもハードワークなチームなのでしょう。姫野がいなくなって、伝道師的存在がいなくなるところに一抹の不安を覚えなくもないですけど、こういうベテラン監督が意気軒昂ってのはJリーグの発展においても重要ですね。

 

杉本健勇の天職?

さて、新生大宮ですが、ビッグトピックは杉本健勇のトップ下起用ですかね。もちろん2トップの一角という見方もできるのですが、そうであったとしても縦関係の下の位置。よく言われるように杉本健勇は1トップタイプではない。サイズがあるので1トップで使われてしまうだけで。敢えて近い選手を探すならフォルラン。往年のスアレスフォルランの関係でいえば確実にフォルラン。決してスアレスではない。ましてやスアレスフォルランではありやしない。アジリティは足りないですが、点取り屋の下で構えるのが最適のポジション。そういう意味では長澤監督の英断と言えるかもしれません。

対する八戸はノブリン続投ですから引き続きの5122(一般的には352あるいは3322と表記されることが多い)。ただ、この試合のメンツだと5122というより5131に近かったかもしれません。オリオラサンデーの下に右から⑧⑦⑨が並ぶイメージというか。頂点に君臨するオリオラサンデーは、一見、おもしろビックリフィジカル枠かと思われたりしますが、実は堅実派。特にポストワークはめちゃくちゃ堅実です。

試合は大宮が泉柊椰のゴールで先制しました。しかも中盤の強度に命を賭けているノブリン率いるチーム相手に、中盤で奪い合いを制して、そこからのショートカウンター。今シーズンの大宮を予祝するようなゴールだったと、シーズン終了時には振り返るかもしれない、そういうゴールになる可能性があります。

 

□大宮の快勝!

後半に入っても大宮のソリッドさは陰りを見せません。丁寧にラインを設定しながらのカウンター。リードしていたということもあるでしょうけど、そもそもそういう狙いのチームのような気もします。なぜなら、いったんカウンターを発動させると、一気に人数をかける。だから絶好のカウンターチャンスで猛然と多くの選手が前掛かりに走り出したタイミングでドリブルする杉本健勇が足をもつれさせると、俄然、大ピンチになる。だからといってカウンターに人数をかけることに腰が引けることはない。象徴的だったのが追加点。なんせ左SB下口の折り返しを、インナーラップしていた右SB茂木が押し込んだのだから。覚悟が伝わってきます。

もちろんリスクもあるんですけどね。この試合、唯一の失点はカウンターのチャンスで引っ掛けられてカウンター返しを許したところから始まる。オリオラサンデーの独走を許してしまいました。となると、多少なりとも嫌な空気が流れるわけですが、それを払拭したのは泉柊椰の個人技、素晴らしいミドルショットでした。失点直後のファインゴールで悪い空気を一掃します。それにしても泉柊椰、飛び道具ですね。さらに途中出場したルーキー藤井がアシストした中野誠也のゴールも加わり、勝負の大勢は決します。その後は、石川俊輝が退いてからの試合運びに若干の不安もありましたが、まあまあ、大宮としては上々の開幕戦となったのではないでしょうか。

 

残酷な明暗〜SC相模原vsギラヴァンツ北九州(9/30)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□地味な方の政令指定都市ダービー

実はこの試合が年初予定では早くもワタクシ的今シーズンラストマッチなのですが、何の因果か、それが裏天王山となってしまいました。相模原はともかく、ニューウェー……ギラヴァンツがねぇ。まさか、まさか。ともあれ、この両チームには明確な共通点があります。それはズバリ“地味な方の政令指定都市”である、ということ。例えばサッカーに興味のない北九州市民は、横浜と川崎は知っていれども相模原とか知らないだろうし、相模原市民にとって福岡県の政令指定都市といえば福岡市だと思うのですよ。

それぞれ、市の名前がかなりムリヤリなのも似てますね。“相模原”はそもそも広域地名だし、“北九州”に至っては、“北”の下に“九州”を付けるとか、広すぎやろ、と。北九州の場合、小倉市で良かったんじゃないかとも思われますが、八幡とか若松とか折尾とか門司が怒るんでしょうね。中心が複数あるのです。逆に相模原には中心がない。相模原駅相模原市役所近辺が相模原の中で最も栄えているかといえば、決してそうじゃないですし、橋本に政令指定都市の看板を背負わせるのはどう考えても荷が重い。……とにもかくにも、“地味な方の政令指定都市”ダービーです。

 

□裏天王山も好対照

この試合、裏天王山ではあるのですが、目下の調子は好対照。まず相模原は調子が良いのですよ。ここ5試合を見ても2勝2分1敗。どこの昇格を争うチームですか?ってくらいのものです。最初から戸田さんと心中しようとせずにベテランを補強しておけば良かったのに。順位もブービーに上がりました。我々世代的に“ブービー”といえば「パーマン」ですが、相模原もようやくパーマンの域に到達しようとしている。

反対に北九州は調子が悪い。監督にラスボスが登場しても低空飛行が劇的に改善するということはない。ここ5試合を振り返ると、1勝1分3敗で、相模原に替わってビリになってしまう。東海地方出身のワタクシとしては、最下位のことを“ビリ”とは言わず、ついつい“ドベ”と言いたくなる癖がいまだに抜けないところです。……そういえば18歳で上京した頃、埼玉県民である友人に「東京では“ドベ”ではなく“ビリ”だよ」とドヤられたなぁ。

 

□北九州が攻める

さて、例によって相模原は疑似カウンター的なサッカー。問題は、それが意図的に相手を引きつけているのか、あるいは結果的に押し込まれているだけなのかがわからないところ。ともかく、低い位置からレーザービームで齊藤聖七を走らせる。システム的には中盤逆三角形の352だと思いますが、牧山がフレキシブルな位置取り。相手エンドでは齊藤と並んで3421っぽくなって、自陣では増田と並んだISHになるイメージ。

対する北九州は、ボランチの永野が永野ですね。永野の何が永野かというと、髪の長さが永野、芸人の。ただ、ややこしいのは右SHとしてアジリティを効かしていた野瀬が永野以上に永野だった点。もちろん髪型の話ですけど。サッカーの内容はラスボス・コバさんなんで442。CBがボランチに刺して、そこからサイドに展開するか、1列飛ばして平山のポストワークを生かしていくかって感じ。352なんでWB裏とアンカー脇が空くので、そこを上手く突けていました。

で、そんな北九州が序盤から圧倒していて、オフサイドで取り消された幻のゴールとかもありましたが、相模原も少しずつ押し返していく。そんな中でラスボス・コバさんが「焦るな!」って声をかけたタイミングで、同時にゴール裏からいかにも炭鉱の町の男たちって声色の「行くぞ〜!!」って発破がかかった感じが面白かったです。さすがは鉄と油にまみれながら近代日本の勃興と戦後の高度成長を支えただけのことはあります。

 

□北九州が力尽き

ハーフタイムが明けた後半2分、野瀬が先制ゴールを決めます。よく知りません。トイレに行ってました。ハーフタイム終わりかけにトイレに行くのが最も合理的だという経験則が裏目に出ました。ともあれ相模原的には追いかける展開になりましたので、戸田監督は魂の3枚替えを敢行します。2トップを安藤&デュークに入れ替え、さらにベテラン岩上のところに元気な西山を入れる。まあ、いつものパターンですね。

その、いつものパターンが大的中。まずファンタジスタ西山が、いつも通りの存在感を示します。重厚な岩上に対して、軽業師のような西山。相手の脇をすり抜けつつ縦パスをビシビシ突き刺していく様は見ていて爽快です。そんな西山以上に大的中だったのが2トップで、特に安藤。投入された安藤は、さっそく絶好機を迎えると、思いっきり当たり損なう。でも、自分も相手もボールともつれながら、なんやかんやでこれが同点ゴールに。

その後も安藤&カルロスの2トップのコンビネーションで北九州守備陣をキリキリ舞いにし続けると、キレっキレの安藤がミドルレンジのファインショットを突き刺して勝ち越し。相模原が逆転に成功します。逆に北九州は、後半の途中から中盤から前線にかけての運動量がガクッと落ちると、最終ラインの耐久力もわかりやすく低下。小林監督も、その最終ラインをテコ入れしますが、焦りがミスを呼ぶ悪循環にはまりこむ。目下の調子をそのまま反映するような展開で、相模原が残留を引き寄せる大きな勝ち点3を掴み取りました。

雑用係軍団の中盤とスーパー雑用係の渡邊凌磨〜FC東京vsサガン鳥栖(9/23)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□一方通行的関係

FC東京と鳥栖の因縁を探してみると、特に竹原バブル路線の頃にFC東京関係者が鳥栖に移籍するって事例が見られましたね。代表的なのは権田でしょうか。彼の場合は海外移籍絡みでいろいろややこしいので、FC東京とサガン鳥栖という2クラブ間の因縁という印象でもないですけど。権田以外だとフィッカデンティでしょうか。こちらも、FC東京を謎の退任となったあとに鳥栖の監督となったわけですので、因縁もクソもない。

最近は鳥栖の選手がFC東京に引っ張られるって事例が思い浮かびます。例えば小泉とかですかね。あと、ワンクッション置いているとはいえ、直近になって元鳥栖の原川がFC東京に加入なんてこともありました。尤も、FC東京から鳥栖へ請われて移籍という逆パターンはイメージがあまり湧かないので(ケイマンとかはいるけど)、双方向性のある関係というより、一方通行的な関係なような気もします。

 

□どちらも不調

リーグ戦ここ5試合におけるFC東京の成績を振り返ると、1勝1分3敗の11位。ジリジリと順位を下げている。アルベルさんを解任したのは、まあ、理解の範囲内。とはいえ、後任がクラモフスキーさんというのは、いかにもその場しのぎというか、「現監督より良い監督に目星がついたから解任」という計画性を感じさせない。厳しい言い方になりますが、清水や山形の成績を踏まえると、これくらいの数字がクラモフスキーさんの通常値というよな気がします。

鳥栖については、実はここ5試合の成績だけ拾い上げれば、FC東京よりも苦戦している。0勝3分2敗で順位も12位まで下げてしまっております。尤も、だからといって川井さんにノーを突きつけるサポーターは少数派ではないでしょうか。経営破綻寸前からの復興過程にあることを思えば健闘の範囲内でしょうし、他の監督を連れてきて、川井さんより良くなるか悪くなるかを確率論的に判断すれば、川井さんより良い監督って、なかなか見つからなさそうですよね。

 

鳥栖が先手

さて、FC東京はどんなサッカーをやってるか。少なくとも前半の戦い方に関して言えば、「3トップよろしく!走れ〜〜!!」っていうハセケンよろしくなサッカーだったかと思われます。クラモフスキーってポジショナルじゃないんですかね。だからといってポゼッションでもないし、疑似カウンターでもない。ストーミングの気配も前半はなかったし、442とか堅守速攻の日本的なスタイルでもない。後半に再確認が必要です。

一方の鳥栖ですけど、サイドから少ない手数でリズミカルに攻めるってパターンです。左はWGの岩崎を爆走させる。相手のクリアミスとかから左を一気にってのが多かった。逆の右サイドはSBの原田がゲームメイクしながら攻略していく感じ。それにしても岩崎と原田がすっごいフリーになっていた。この両者をフリーにするのが上手かったともいえますし、FC東京の守り方的にサイドに蓋をすることが最優先にされていないようにも見えました。

スコアは前半から動きます。まずは左サイドからのアーリークロスに忍者のごとく飛び込んだ長沼がアクロバティックボレーを決めて鳥栖が先制。VARが入りましたが、いや、長すぎるやろ。さらに鳥栖は攻撃の手を緩めない。序盤からターゲットマンとして奮闘していたケイマンがPKを獲得して、自ら決める。ケイマン的には恩返しゴールなのですが、当の本人にFC東京を古巣と感じる意識が残っているかどうかは不明。ともあれ2ー0と鳥栖がリードしてハーフタイムを迎えました。

 

□FC東京が逆転

今ひとつ何がやりたいのかが伝わらなかった前半と打って変わって、後半の東京は何がやりたいのかが伝わってきた。基本的には3トップ+渡邊凌磨と駆け上がる長友(あるいは逆サイドのカシーフ)とで5レーンを作る。まあ、この5レーンは5レーンってわざわざ強調するほどのポジショナルではないですけどね。ともあれ、カタチが作れるようになるとリズムも良くなる。そうするとカシーフのクロスをアダイウトンがドンピシャで決められたりする。

ここからはFC東京のリズムの良さが加速。ポジショナルの生命線ともいえる早期回収が散見するようになると、その早期回収のカタチから大外のカシーフが再び折り返す。最後は渡邊凌磨が決めきって同点。この時間帯から判断するに、クラモフスキーさんのFC東京は、原則的にストーミング型で、素直な並びでの5レーンを作るって感じなんでしょうか。そして、そのキーマンが渡邊凌磨。もはや早期回収マシーン、しかもファーストディフェンダー兼任。ストーミングをこの選手が一手に担っているといって過言でない。

渡邊凌磨に限らずFC東京は渡邊凌磨・松木・原口による中盤の雑用係感がハンパなかったですね。最終ラインがフィードして最前線がアタッキング。それ以外の全ての雑用を中盤3人がボックストゥボックスで処理している感じ。そして、決勝点もスーパー雑用係の渡邊凌磨から。裏抜けからのシュートを決まりませんでしたが、途中出場の俵積田が詰めて、これが決勝点に。さすが俵積田、俵積田だけに何かと詰めるのがうまいらしい。

……ってなことでFC東京がホーム味スタに眠らない街を響かせました。

倉貫采配、スーパー大的中〜YS横浜vsいわてグルージャ盛岡(9/18)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

奥州合戦ダービー

昭和の時代には時々見かけたコミュニケーションですけど、「福島出身ですか?なら、山口とか鹿児島のこと嫌いですか?」みたいな会話がありました。戊辰戦争以来、会津薩長は時代を越えて仲が悪いとされていた。同じようなパターンで、秀吉の時代の因縁で伊達家の子孫や関係者と浅野家の子孫や関係者も不仲とされてきて、オフィシャルに仲直りしたのは21世紀に入ってから、みたいなこともあります。

さて、そこでグルージャですよ。盛岡にせよ“いわて”にせよ、北東北太平洋側、まさに陸奥(みちのく)なわけですが、みちのくといえば平泉、平泉といえば奥州藤原氏、そして奥州藤原氏奥州合戦源頼朝に滅ぼされています。で、その源頼朝の本拠地が鎌倉で、鎌倉は神奈川県、神奈川県の県庁所在地が横浜ですね。つまり、岩手県民からすれば、横浜は郷土の偉人を滅ぼした憎き(にっくき)頼朝のお膝元。今なお「許せねぇ」って感情的なシコリが、、、さすがにないですよね?

 

□絶不調対決

ここのところのYS横浜は、調子が悪いです。5試合で1勝1分3敗。ある程度安全圏にいたはずの順位も17位にまで下降。お尻に火が付いたところで星川さんから倉貫さんへ監督交代に踏み切りました。これがプラスに出るか、マイナスに出るか。倉貫さん、現役時代、特に甲府時代は好きな選手でしたが、琉球の監督としての実績を考えると、果たして星川さんより残留の可能性を高められるのか。YS横浜としても、難しい決断を下したかと思われます。

不調さではグルージャも負けてません。負けてないどころか上回っている。ここ5試合で0勝1分4敗です。それでも順位は14位なので、これまでの貯金が効いているとも言えますが、なかなか厳しい局面にあります。監督は松原良香さん。知識系解説者出身は、わりと指導者として苦戦しがちなんですが、松原さんは相模原でも苦戦しました。もっとも、望月時代の相模原は、優秀な指導者であればあるほど苦戦するメカニズムにあったので、このときの成績は度外視すべきかもしれません。

 

□盛岡が先手

さて倉貫新監督率いるYS横浜ですが、システムは前政権を継承して352というか5122というか。右のISHということになっているのであろう萱沼がサイドに張り出していることが多かったので343っぽく見えることも多かった。ただ、星川さんの頃みたいに組織的に疑似カウンターをしかけていくといったオートマチズムは感じられず。どちらかというとハードワークを重視しているような印象。だったら5122なんて難しいシステムにする必要はないような。

対するグルージャはオーソドックスな4231。左サイドではオタボーが中に絞って出来たスペースを新保が爆走するパターンが多かった。逆に右サイドはなんと言っても西大伍。上手いですね。真ん中か右サイドかの違いこそあれ、遠藤保仁とほぼ同じプレーをしているように思えてくる。また、「なんかベンチで誰かがコーチみたいな振る舞ってるな。29番って誰だ?」って思ったら水野晃樹でした。

序盤から審判のマネジメントが今ひとつだったのか、あるいはハードワークのチーム同士という組み合わせゆえか、選手が痛んで試合が止まりがちだったのですが、YS横浜の大嶋の治療中のコーナーキックから和田が決めて盛岡が先制。和田的にはボロ雑巾のように捨てられた相模原への恨みをYS横浜相手に晴らした感じでしょうか。盛岡リードでハーフタイムを迎えます。

 

□ティネッリとピーターゼン

個人的には「後半に入ると、さらに盛岡がイニシアチブを握りそう」とか思ってたんですけど、逆にYS横浜が同点に追いつきます。道本?富士田?とにかくピンクスパイクの選手が右で頑張って折り返すと、佐藤が押し込みました。ちなみにサイドが変わって近くなったので、「大嶋が西の当番をしてるんだなあ」とか眺めていたんですけど、両者とも早めの時間帯でお役御免となりました。

そして、交代選手たちが試合を動かしまくる。まずは盛岡。途中出場の宮市がYS横浜のハードなマークに負けずにポストワークを成功させると、これまた途中出場の南が左サイドを爆走。最後は甲斐が決めて、再びリードを奪います。それに対してYS横浜の倉貫監督が送り込んだのはティネッリ、ピーターゼンの両FWと藤原。ティネッリとかピーターゼンって、途中出場で活躍するイメージがまるでなかったのですが、もう一人の途中出場である藤原がコーナーキックの競り合いに勝って、松村の同点ゴールをお膳立てします。

さらに、ワタクシの予想を裏切ってティネッリとピーターゼンが大活躍。スタンドからはオフサイドにしか見えない入れ替わりからティネッリが爆走して折り返す。決めたのは相棒のピーターゼン。倉貫采配、お見事です。さらに試合終了間際には道本が足を攣ったことでスクランブル投入された菊谷がファーストプレーで追加点。倉貫采配、めちゃくちゃ見事です。

偶然か必然かはさておき、倉貫監督のピンズド采配で、YS横浜が残留を占うと極めて大きな意味を持ちそうな勝ち点3を獲得しました。

生地にまつわるエトセトラ〜SC相模原vsFC岐阜(9/16)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□銀河系崩れダービー

SC相模原とFC岐阜、共通点というか、ダービー要素は一番ベーシックなところにあって、そりゃもう〝緑ダービー〟に決まっているわけですが、他にもいろいろありますよね、どちらも内陸部に位置して海がない、とか。神奈川県には海があれど、相模原市には海なんてありませんから。ちなみに岐阜県は美濃(都会)と飛騨(田舎)で出来ていて、岐阜市は美濃(都会)。神奈川県は武蔵(都会)と相模(田舎)で出来ていて、相模原市は相模(田舎)。なので、ある意味では、テレコっちゃテレコ。

でも、そんなことよりワタクシ的に両チームに共通するイメージは〝銀河系崩れ〟ということでしょうか。相模原はJ2に上がっていた年くらいまでなんで少し昔のことかもしれませんが、岐阜はまだ現在進行形でしょうかね、J1でレギュラーだったり、代表にも選ばれた経験があったりというベテランを集める癖(へき)があります、あるいは、ありました、藤本淳吾とか柏木陽介とか。なので、この一戦は銀河系崩れダービーということで良いでしょう。

 

□鹿児島被害者の会?

さて、最近の相模原ですが、ここ5試合で3勝2敗。ようやく勝てることも増えてきて、あるいは、勝つというイベントが発生するようになって、順位は19位。最下位脱出です。良いですね、「19」って響き、青春ですやん。前身のスポナビ時代を含めると15年以上ブログをやっている身としては、「19」といえばプリプリの「19 GROWING UP」であり、ハマショーの「19のままさ」です。前者はキラキラ女子の青春、後者は冴えない男の青春、いやあ、青春ですやん。

他方、岐阜の近況は5試合で3勝1分1敗。順位は7位。ジリジリと昇格圏に近づいてきましたが、どうですかね、もう一段、ギアを上げられるか。上位を見ると、地力よりも調子の良さで頑張っていると見受けられるチームも多いのでどうにかなりそうですけど、富山とか鹿児島とか、地力上位のチームもいますからね、順位を逆転させるのは簡単ではないかもしれません。ちなみに鹿児島は前々節で岐阜を大破し、前節では相模原を蹴散らしている。そういう意味では鹿児島被害者の会ダービーでもあるのかな。

 

□どちらもチャンスメイクは左サイド

というわけでオンザピッチ。352の相模原は、3枚で回してWBに逃がしていく外回しなビルドアップ。両WBに預けるまではスムーズ。問題はその先。中盤のガチャガチャで上手くショートカウンターに持って行ければ良いのですが、そこに再現性はあまりない。中盤でこぼれたところから岩上のロングキックで局面打開ってのが多かったですかね。あとは無理やり蹴って瀬沼のポストワークに期待するか。

対する岐阜は中盤を作るスタイルですが、あくまで庄司は相手マークを引きつける囮であって、さほど回数的にはボールに触らないというところが特徴でしょうか。それからビルドアップ時には生地が疑似ボランチ化して、本来ボランチの北が左に流れる。なので左サイドは宇賀神と村田にプラスで北がいるようなカタチになります。北が右に流れることは多くなかったので、左で崩すというのが基本パターンなのかもしれません。

スコアは岐阜のミスから相模原がそのまま左サイドを攻略して、コーナーキックを得ると、岩上のキックが水口の頭にドンピシャで届いて相模原が先行。それからしばらく劣勢となった岐阜も前半ロスタイムに意地を見せる。例によって北と村田で左サイドを崩すと、折り返しに生地が合わせて同点に追いつきます。1ー1でハーフタイムを迎えます。

 

□岐阜の2段階トランスフォーム

後半に入ってまずは岐阜がペースを握ります。しかし、相手のミス絡みで転がり込んだ決定機を藤岡が決めきれないなど、スコアを動かせない。そうしているうちに相模原は岩上と瀬沼というベテランをお役御免として安藤と西山をピッチに送り込む。岩上を下げることで構成力が落ちるかとも思ったのですが、西山がしっかりプレーメーカー役を担い、しばらく相模原の時間となりました。

とはいえPKを安藤がストップされ、さらに岐阜が田中順也と田口を投入して、これに伴いシステムが4231に近いカタチになると、相模原のペースも一段落。岐阜的には、そういう指示だったのかどうかはわかりませんが、生地がより生地なった。SBの選手ではなく、中盤セントラルの選手としての動きがさらに増えた。それはすなわち、本来右SBが埋めなければならないスペースをお留守にするということ。そこのケアに田口が奮闘していましたが、明確な穴として突かれ続けます。

そこで岐阜はもう一段階トランスフォーム。ンドカと村田から柏木と山内にスイッチ、システムもたぶん442に戻った。で、北が右SHにスライド。変則左サイドコンビが解消されたことで、今度は生地が非生地化する。要するにオーソドックスな右SBのスタイルにプレーを変えた。こういうところの器用さが重用される理由なんでしょうね。とにもかくにも、スコアは動きません。1ー1のままタイムアップ。内容的にもドローで妥当だったのではないでしょうか。

オールドスクールかつクオリティ不足〜奈良クラブvsFC今治(9/9)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□万葉ダービー

奈良クラブって、5音ですよね。となると、ついつい川柳の一つでも捻りたくなる。「奈良クラブ 町田ゼルビア サガン鳥栖」みたいな575。昔の中学生の中二病心をくすぐった短歌に源実朝のがあって、575にはその下の句を無性にくっつけたくなる。すなわち「奈良クラブ 町田ゼルビア サガン鳥栖 割れて砕けて 裂けて散るかも」ってしたくなるのですが、そうすると、単に奈良クラブ町田ゼルビアサガン鳥栖に喧嘩を売ってるだけになってしまうので自粛です。

突然、短歌を詠じだしたのは、そりゃ奈良だからですよ。奈良と言えば全体的に「まほろば」ですからね。今ひとつ「まほろば」の意味がわからないですけど、とりあえず『万葉集』ですよね。で、今ひとつ意味がわからない『万葉集』の言葉といえば「にきたつ」。これは今治というより道後温泉愛媛FCっぽいですけど、まあ、そこは同じ伊予国。仲良くしてもらいましょう。というわけで、この一戦は万葉ダービーです。

 

□5位ではダメなんですか?

奈良クラブのここ5試合の戦績を振り返りますと、調子が良い。3勝1分1敗で順位も5位まで上げてきた。J3参入初年度でこの位置は、大健闘と賞賛してよいでしょう。もちろん、さらに上位を伺いにいくかとは思いますけど、ライセンスが不透明ですし、これくらいの順位で宜しいのではないかという悪魔の囁きが忍び寄る可能性もあります。なんせ、ここは奈良。「5位、どう?」って響きには慣れているじゃないですか、「五位堂」駅的に……ええ、ええダジャレですよ、はい、はい。。。

アウェイの今治は、ここ5試合で1勝2分2敗。順位としては8位ですね。こちらも決して悪くはないですけど、決して悪くないなかで監督を交代したわりには、少なくとも順位だけみれば上向いていない。いろいろと革新的な試みを実行することで、同じ県内の先輩である愛媛FCを置き去りにしようとしている今治ですが、監督人事には堪え性がないんですよね。そういうところが将来的に現場の足を引っ張らなきゃ良いですけど。

 

さてオンザピッチ。奈良は、一応、スターティングポジション的には4123だったんですかね。よくあるパターンですけど、守備時にはインサイドハーフの片方がセカンドトップ的に、もう一方はボランチ的に構える442となります。具体的には桑島がFW的にプレスをかけて、中島賢星ボランチ化する。ちなみに左SBの加藤徹也で背番号11。背番号11のSBって、ちょっとかっこよい。村井慎二みたい。

スポナビアプリのフォーメーション図を見ると、対する今治の左SBは9番の近藤高虎、互いの左SBが9番と11番って、めっちゃかっこよい、って思ったら実際には左SBではなく左SHでした(後半途中からSBにスライドしましたけど)。ちなみに今治の外国籍勢は、マルクス ヴィニシウスやらラルフ セウントイェンスやらヴィニシウス アラウージョやら、名前がかっこよい。

前半の試合内容としては、わりと似た者同士のサッカーでしたね。時々サイドチェンジを織り交ぜながら、サイドを起点にショートパスをつないでクロスを入れていく、オールドスクールなスタイル。それぞれ何度か決定機を作りましたが、何か特別なファンタジーを感じさせるという雰囲気ではない。基本に忠実、焼酎でいうといいちこウイスキーならサントリー角みたいな攻防でした。あえて取り上げるから奈良は中島賢星のゲームメイク、今治は三門のポジショニングとボール奪取能力が目立ちましたかね。

 

□最後の精度

スコアは後半に入って、すぐに動きます。先発した方の今治ヴィニシウスが、ロビングのパスを受けると、巧みにマーカー入れ替わって突破。そのままシュートしそうなところを、どフリーの千葉にプレゼントパス。千葉が確実に決めて今治が先制します。それにしても先発ヴィニシウスの強さと上手さと落ち着きが際立ったゴールで、先日町田に加入したアデミウソンを少し彷彿とさせるものがありました。

ここからしばらく奈良には難しい時間帯となります。中盤3枚のうちの一人、あるいは右SBの生駒が2CBに加わる3枚回しからボランチにボールを刺して、そこからゲームメイクしようとする丁寧なビルドアップが今治のハイプレスの餌食となり、せっかく打開しても、サイドからのクロスにもたついてチャンスをフイにしてしまう、という繰り返しが続きました。奈良クラブではダイレクトクロスが禁止されてるんですかね?ってくらいクロスでモタついていた。

逆に起死回生の同点弾はアーリークロスから生まれたもの。中島賢星がフィジカルの強さを全面に押し出して頭で折り返すと、浅川が決めきりました。ここからは奈良クラブが攻めまくる。ただ、中島賢星と金子が限界を迎えてピッチを後にしたことと、全体としてラストパスの精度を著しく欠いたことで、再び今治のゴールをこじ開けるには至りません。両チームともゴールを奪うクオリティが不足するという、いかにもJ3らしい展開のままタイムアップ。試合はドロー決着と、あいなりましたとさ。