□大仏ダービー
あれはワタクシが小学5年生の夏。我々の地域の小学校では6年生の修学旅行で京都大阪に行くのですが、そのプレバージョンとして5年生の秋に奈良への日帰り遠足がありました。近鉄の貸切車両で。遠足が終わって、当時はフィルムの時代でしてから、写真の焼き増しを申し込む機会があって、そこに、カメラマンの方も同席してくれてたのですが、そのカメラマンさんが「大仏がデカくて、撮るのが難しかった」って言ったんですよね。それを聞いて小学5年生ながら「“大仏がデカい”ってだいぶバカっぽい言葉だよな、、、」と思ったのを覚えています。……小学5年生の時点で既に性格が悪い。
時は流れて大学1年生の夏、上京したてのワタクシは地元から遊びに来た友人と鎌倉へ行きました。ベタに鶴岡八幡宮を詣でてから鎌倉大仏に向かう。その時、思わず口を突いて出てきたのは「出オチやん!」という言葉。実際、出オチですからね、鎌倉大仏って。……ってなわけで、この試合は大仏ダービーです。
□16位vs14位
さて、近鉄特急と新幹線と横浜市営地下鉄を乗り継いで三ツ沢に乗り込んできた?奈良クラブですが、今シーズンはここまで1勝5分4敗の16位。フリアン監督の長期政権下、JFLを優勝し、初のJ3挑戦となった去年も5位と大健闘しましたが、その勢いにも少し翳りが見えてきたでしょうか。なんか、予想変換で“翳り”って出てくると使いたくなりますね。手では絶対に書けないですからね。ともあれ、奈良クラブはある意味で奈落love、ドン底に落ちてからが本領発揮ということでしょうから、しっかり巻き返してくれるのではあるまいか。
迎え撃つYS横浜は2勝3分5敗の14位。YS横浜というクラブのあり方を踏まえるならば、まずは順当な順位というか、よくやってる部類に入るかと思います。監督の倉貫さんは琉球で少しヘタこきましたが、ひょっとしたら、問題があったのはあの当時の琉球なのであって、倉貫さんであろうと誰であろうと、そもそも無理ゲー状態だったのかもしれません。
□口を動かすのが難しい言葉の並び
というわけでピッチに目を移します。まず奈良ですが、下川陽太がいるんですね。さすがのクオリティ、彼がいるからこそ左サイドがボールの落ち着かせ所になっていました。それから中島賢星がおります。ISHとして先発、若い頃と変わらずゴツいです。ただ目を奪われたのはISHの相棒である國武勇斗、弱冠18歳、独身(たぶん)。中島賢星に負けないくらいのフィジカルがありますので有望株ですね。ちなみに、監督のフリアン、後ろ姿がベップそっくりです。振り返ったご尊顔を拝見しても、まあまあベップにそっくり。きっとティキタカを仕込めるのではないでしょうか。
一方のYS横浜はオニエ・オゴチュクウが2トップの一角として先発。相変わらず日本語の言語感覚ではなかなか覚えづらい文字の並びだ。ちなみにベンチにはピーターゼン世穏と高橋クリスがいる。ピーターゼンは世穏がやや難、高橋クリスは読める。しかし、今年のYS横浜は、CBとして先発出場していたヴァンイヤーデン・ショーンってのがいる。だから口が覚えられないって。。。なお、YS横浜も弱冠18歳、独身(たぶん)な大竹優心が先発してました。
ともあれ前半の攻防ですが、YS横浜が優位でしたかね。低い位置でも、ハイプレスでも、ボールを奪ってから出す最初のパスのクオリティが高い。相手の隙間を瞬間的に見つけ出し、そこに出す。精度はもちろんJ3というステージにあるわけですが、前線の選手が阿吽の呼吸で走り出していますし、当然のことながら相手守備陣もJ3というステージにある選手たちですから、充分に脅威を与えられていました。
□知将フリアン、知恵を振り絞る
後半に入ると、少しずつ奈良もボールを握るようになる。奈良はロングボールも使いますが、どちらかというとグラウンダーの縦パスをリズミカルに繋いで全体押し上げながら雪崩れ込んでいくスタイル。ロングボール1本よりは多少時間がかかるので相手もそれなりにブロックができていることが多いのですが、そういう時はラグビーの横パスみたいな繋ぎでサイドを変えて揺さぶる感じ。ただし、この試合ではグラウンダーの縦パスが頻繁にカットされて、なかなかリズムが作れずにいました。
後半開始とともにベップなフリアン監督は左SBを替えて、重厚なタイプの吉村を投入します。前半は左CBに入った中里のゲームメイクに翻弄されていたので、そこを手当。加えて後半はYS横浜左WBの端野がなかなか覚束なかったこともあり、結果としてYS横浜は武器である左サイドの効力が半減。徐々にストレスフルになっていくと、思わぬエアポケットが。奈良GKマルク・ヴィトのキックによって、攻勢に出ていたたYS横浜の選手10人の全てがひっくり返され、抜け出した百田がGKとの一対一を制して奈良が先制しました。
すかさず倉貫監督はスクランブルモードでピーターゼンと橋本を投入。フリアン監督もCBを高さのある鈴木に替えて応戦。2トップvs2CBの見応えあるしばきあいが展開されましたが、最後はセットプレーからピーターゼンが決めきってYS横浜が同点に追いつきます。その後もYS横浜が押せ押せになりましたが、フリアン監督は敢えて都並を投入して守備陣を安定させる。それでチームも落ち着く。落ち着くと攻撃にも移れる。そこからは一進一退、カウンターから奈良が決定的なシーンを作るなどしましたが、そのまま1ー1のままタイムアップを迎えました。まあ、額面通りのドローだったのではないでしょうか。