熱帯夜のドロー決着〜AC長野パルセイロvs愛媛FC(9/2)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□お子様ランチダービー

ワタクシ、酸味がやや苦手でして。苦手といっても、サーブされたものを残すほど苦手ってわけではなく、自炊するにあたって果物類を買ったことがない、自分から進んで食べることはない、くらいの苦手。で、それは三つ子の頃からのことで、お子様ランチに付いてくるジュースがあまり好きではなかったわけですが、お子様ランチに付いてくる、つまりは子どもが好むジュースの代表格といえばオレンジジュースとリンゴジュースの2強ですね。

勘のよい人は、もはや気づいているかと思われますが、そうなんですよ。リンゴといえば長野なのです。青森という説もありますけど、長野といえばリンゴと蕎麦と山賊焼きと野沢菜とおやきと、それから、えーと、えーと……。ともあれ長野はリンゴ。それに対して、この日、長野に乗り込んできた愛媛FCの本拠地愛媛、それはミカンの国。宇治ではお茶が蛇口から出てくるように、愛媛ではポンジュースが蛇口から出てくる。ゆえにこの一戦は、仁義なきお子様ランチダービーなのです。

 

□方や監督交代、方や首位

ここ5試合の長野の成績を振り返ると2勝3敗です。……あれ、そこまでヒドくないぞ。とはいえ、かつて首位争いしていた順位は気がつけば15位にまで後退。残留争いも視野に入れなければならなくなってきた。ということでリヒャルトを解任して、その数日前に今治を解任されたばかりの高木理己さんが招かれました。前任者は、普段の言動からしてピッチ内はともかく、その周囲で集中できない環境を作ってしまっていた末の解任だったかもしれませんね。

一方の愛媛は2勝3分の首位。なんとなく、J3史上最大に地味な首位快走という印象ですけど、なんせ、そこは信頼と実績の石丸さんですからね、特に驚かないです。時々、「愛媛の県民性としてヨソ者を受け入れない!それが良くない!」と文句を言ってるサポーターの意見をネットで見かけたりしますが、そこは選手としての晩年を愛媛で過ごした石丸さん。なにかと快調です。

 

□ハイラインハイプレスvs堅守速攻カウンター

さてピッチに目を移すと、監督が交代した長野ですが、システムは引き続き3バックを継承。中盤は加藤弘堅のアンカーではなく、加藤弘堅と原田がダブルボランチで並ぶ形。おそらくリヒャルトの頃はいわゆるポジショナルの5レーンで、低く位置で繋いだ疑似カウンターだったかと推察しますが、高木政権下では、思いっきりストーミング。しかも、ちょっとやそっとのストーミングではなく、相手GKにまで突っ込んでいくストーミング。ちなみに長野のYS勢は粛清されることなく元気にたくさんスタメンを張ってました。

対する愛媛は戦略的にか、あるいは長野のストーミングを受けてしまったということか、前半は原則的にはリトリートして2ラインで対応するクラシカルな堅守速攻スタイル。けっこう一方的に攻めこまれましたけど、小川と大城を中心に最後の最後で跳ね返すような水際ディフェンスでしのぐ。水際ディフェンスがなかなか安定していました。ちなみに大城もYS勢です。

試合は前半からスコアが動きました。まずは一方的に攻めこまれていた愛媛がまさにワンチャンスを生かして松田力が先制ゴールを決めました。長野のハイラインハイプレスを見ていれば、まあ、そういう落とし穴はありますよね。そこから長野は少しリズムを失いますが、近藤が相手GKに単騎で玉砕プレスをかけたあたりからリズムを取り戻す。この玉砕プレスこそ困ったときに長野が戻るべき場所なのでしょう。そして左サイドを杉井がカウンターで爆走して、最後は佐藤が押し込み同点に追いつき、ハーフタイムを迎えました。

 

□最後まで見応えはあったよ

後半開始とともに愛媛の石丸監督はアジリティに秀でた小兵の佐々木を下げて、大型CFタイプのベンダンカンを投入し、明確なメッセージを送ります。つまり、「蹴っていけ」ということだったかと思われます。で、このベンダンカン、いろいろ動きが怪しいのですが、なんやかんやでロングボールをマイボールにしてしまうんですよね。こうなると、長野守備陣はそうそうハイラインというわけにはいかない。愛媛的には深みを作ることに成功します。

愛媛のシフトチェンジに加えて、もう一つ要因が。大して風が吹いているわけでもないのに、なぜかエンドを交換してキックオフしたのですが、どうやらペナルティエリア内の芝のコンディションに大きな差があった模様。前半は愛媛、後半は長野が自陣ゴール前でのボールコントロールに苦労していました。なので、後半は前半の長野みたく、愛媛が相手GKにプレスをかけまくり。前半の長野は芝のコンディション的に鬼プレスしてただけで、別に基本形がストーミングというわけでもないのかも。ともあれ、前半と後半とでは、同じ構図で攻めてる側と守ってる側が正反対になったような感じ。

ただし、前半と同じ構図ということは、つまり愛媛も前半の長野同様決めきれないということ。これも芝のコンディションの影響かしら。そうやって時計の針は進んでいくと、そこは熱帯夜の消耗戦、両チームとも〝敢えてペースを落とす〟みたいな高等な試合運びなどできません。結果、蒸し暑い中、終始ハイテンションなまま試合は進み、足を攣る選手も出てくる。そんなこんなで後半にスコアが動くことはなく、1ー1のドロー決着となりました。

 

いわきの“かまし”と体幹〜ロアッソ熊本vsいわき(8/27)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□炭鉱ダービー

夏休みも兼ねて熊本に来ております。今回は立ち寄らなかったですが、以前に熊本を訪ねたときには三井三池炭鉱の万田抗が世界遺産になった直後で、持ち前のミーハーを炸裂させて観光に赴きました。その時は語呂が勝手に脳内にはまってしまい、「万田抗、わんだほー」と脳内無限ループしていましたけど、ガイダンス施設の展示で、炭鉱夫の社会秩序、友子制度でしたっけ?やくざの組織の親分子分みたいな関係、あれを学んだときに、それまで今ひとつピンときてなかった「二十世紀末まではやくざが警察ともう一つの社会維持機能だった」という言説が肌感覚的に理解できたものです。

で、炭鉱といえば磐城なのであって、なんせ映画『フラガール』の舞台。蒼井優、可愛かったなー。ちっきしょー、もう少し自分が天才的芸人センスに恵まれていて赤色メガネが似合ったら、今頃、蒼井優とあーんなことや、こーんなことを……。というわけで炭鉱ダービーです。

 

□6ポインター

直近の熊本は5試合で2分3敗、順位も19位まで落としてしまっております。前々から言ってることですけど、大木さんは選手への評価基準が明確。いっさいぶらさない。だから、キャンプの時点で選手の序列がほぼほぼ決まってしまって、シーズンを通して変動することは稀。なので、ラッキーボーイが登場したり、意外な選手がレギュラー陣を突き上げたりってことが少ない。ゆえに負のスパイラルにハマると、そのままズルズルいきがちです。

対するいわきは5試合で1勝3分1敗、順位は20位です。去年までの躍進をリードした田村さんがライセンスの都合で一旦ひいて、ライセンス獲得とともにチーム状況もあって復帰。そこからは負けないチームになり、11試合で負けはわずかに一つ。ただし、引き分けが6つある。そんなこともあって、順位は依然として危険水域。ですが、おそらく田村さんは名将の資質を備えておりますし、イデオロギー闘争的な面もあるこの試合を制することができれば、一気にブレイクスルーする可能性もありますね。

 

□いわきの“かまし”と熊本の対応力

これまで熊本といえば、なんとなくのイメージで大木流パスサッカー、ショートパススタイルの印象を持っていたのですが、決してそんなことないですね。気づいてみれば躍進した去年もそうだった気もしますが、低い位置から繋ぎ倒してボールを前に進めるようなことはない。ボランチがコンダクトを振るうという感じでもない。典型的な疑似カウンターです。引き付けて裏抜けです、少なくともファーストアタックは。そこで裏をとれたらティキタカに移行する感じですね。

他方、いわき。こちらはストーミング。相手GKにまでプレスをガンガンとかけていく。序盤はそこの“かまし”に成功して熊本のリズムをトコトン狂わせると、なんとなくヌルッと先制点まで奪ってしまいました。

ただ、熊本は怯まなかった。落ち着きを取り戻すと粟飯原だったか松岡だったが完全に相手最終ラインの裏を取ってクリティカルなクロス。それがオウンゴールを誘うと、直後には疑似カウンターなファーストアタックからティキタカな二次攻撃へと見事に持ち込み、PA内で鮮やかに崩しきると、最後はキャプテン平川が逆転ゴールを突き刺しました。ストーミングでかましに成功したいわきも見事ですが、前半のうちにそれに対応して、あるいは慣れて、すぐさま自分たちのリズムに引き戻した熊本も、また見事だったと思います。熊本リードでハーフタイム。

 

□いわきの体幹勝ち

後半は、前半と同様、ヌルッといわきがペースを握り、コーナーキックのチャンス。「へー、熊本サポは相手コーナーキックのとき、『武者返し!』コールをするんだなー」なんて思っているうちに、そのコーナーを直接ヘッドで合わせた家泉の、この試合2点目でいわきが同点に追いつく。このあたりでロアッソ守備陣に少し疲れがドッときたのかもしれませんね、たぶん酒井匠だったかと思いますけど、そのままタッチラインを割らせてゴールキックにするシーンでの対応が緩慢となり、リカバリーを図るも、それがPK献上となり、山下に決められてしまいます。さらに、山下はセットプレーからフィジカルの優位性を見せつけるようなビューティフルゴールでダメ押しの4点目を奪いました。

この時間帯、熊本はいわきに圧倒されていました。理由は2つくらい思い浮かんで、1つ目は、この時間、後半の15分〜20分に熊本は計4枚の選手を交代させていた。その交代選手たちが、いわきの“かまし”に面食らっていた可能性がある。実際に、後半も30分を過ぎてからは圧倒的な熊本ペースで、「あとはゴールに向かってパスを出せばネットが揺れる」というチャンスを量産していましたし。交代選手がいわきの“かまし”に慣れたのだと思います。もう1つは、いわきのフィジカルって筋肉ではなく体幹ですよね、やっぱり体幹がしっかりしているスタミナが切れたあとでも、カラダのキレが維持されるんですよね。そこのカラダのキレのスタミナという部分でいわきに分があったのかもしれません。いずれにせよ、6ポインターはいわきに軍配。ロアッソとしてはお尻に火のつく結果となりました。

依田名将疑惑〜テゲバジャーロ宮崎vs福島ユナイテッド(8/26)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□JAダービー

観光も兼ねて宮崎に来ております。せっかくなんで道の駅的なところでマンゴープリンを買ってイートインしました。ついでに日向夏ジュースも飲んだのですが、その発売元が謎の「サンA」。いや、多いんですよ、サンAの自販機が、宮崎県内。ということで調べてみたら正式名称は「宮崎県農協果汁株式会社」というらしい。親方日の丸、天下のJAグループなんだそうだ。

JAグループの飲料メーカーとなれば対戦相手の福島だって黙っておりません。言わずと知れた「酪王カフェオレ」ですよ。福島が誇るソウルドリンク。まれに都内でも売ってます。その酪王さんは正式名称「酪王協同乳業株式会社」です。ウィキペディアによると「福島県農業協同組合の完全子会社である酪王乳業郡山市)とJA全農の完全子会社である東北協同乳業本宮市)の対等合併」で設立され、「 出資比率はJA全農が55%」だそうです。というわけでこの試合はJAダービーということになります。

 

□名将対決疑惑

直近5試合の成績を見ると宮崎は3勝2敗。勝ったり負けたりが極端ですし、弱きを助け強きをくじくみたいなところもありますが、シーズントータルの順位は12位。まずまず悪くない。「監督は誰だっけか?」と調べてみたら、松田浩さんなのか。そりゃ、おかしな成績にはならないはずだ。それにしても松田浩さん、長崎で監督復帰して以降、すっかり現場への情熱を再燃させてますね。小林伸二さんと松田浩さんをキープして、監督とGMなり育成担当なりのポストで4年周期くらいのローテーションをしておけば、そうそうチームは崩れなさそう。

対する福島は、ここ5試合で2勝3分。……負けてないじゃないか。あまり調子が良くなくて服部監督が解任されて、後任は内部昇格ってことなんで、持ち直しこそすれ、V字回復ってのは難しいのかなと思っていたのですが、依田さんは名将なのか?さすがは20年くらい前にワタクシがウイニングイレブンで起用していた選手だけのことはある。どういうスタイルのサッカーをするのかお手並み拝見です。

 

□クラシカルvsトレンド

さて、宮崎のシステムですが、監督が松田さんである以上、442です。これはもはや確定事項。とはいえ、CB間にボランチが落ちるのではなくGKがバス回しに参加するという部分は時代に応じてアップデートされている模様。ダブルボランチは10番と14番という前橋育英みたいな背番号の組み合わせでしたが、そのうち10番の下澤は、クラシカルな司令塔タイプですかね。なかなかプレーがエロかった。

一方の福島は夢の622システムを作り上げたらしい、ということではなさそうで、3バックに加えて両WBと前線の11番がDF登録なので、そういう表記になったらしい。11番雪江はもともとFWだったのがDFにコンバートされて、再び前線に戻された模様。スポナビ的には352表記でしたが、41番上畑が一列下がった3421でしたかね。とはいえ宮崎智彦がアンカー気味に構えるのは間違いない。宮崎智彦、さすがのサッカーIQと止める蹴るの技術でしたよ。

試合は前半の早い時間帯に動きます。中盤から放たれたナイスなショート3Dパスから流れるようにスイッチが入って、最後は柴田徹が決めて福島が先制しました。一つのグッドプレーがそのまま得点にまで結びつくのが好調なチームの証拠。福島リードのままハーフタイムを迎えました。

 

□福島の完勝

後半の開始とともに宮崎は石津に代えて山崎亮平を投入し、それに合わせてシステムを4231(攻撃時には4123っぽくも)へとトランスフォーム。左ウイングに入った山崎がタイミングよく相手の裏を突き続けて攻撃の起点となります。このあたりはJ1でも渡り合ってきた百戦錬磨のアタッカーだけありますが、他の選手も、よく山崎の動き出しを見ていたというか、共通認識ができていましたね。特にボランチの14番江口と山崎との相性は良かったように思います。ちなみに山崎、異議でイエローカードを頂戴したのですが、ユニリーバスタジアムは、イエローの時にアナウンスが入る。ロスタイムの時間もアナウンスされる。なぜなら電光掲示板かないから。こういうのもJ3観戦の楽しみの一つだったりします。

受ける福島は、元セレッソのさすらい澤上と元甲府の森を同時投入して応戦します。ちなみに澤上の背番号が9番で森の背番号は10番。9番と10番が一緒に入ってくるって、なんだかロマン。そんなロマンチック福島は、とにかく守備が固かった。3バックですから、相手が山崎亮平でなくともWB裏は取られる。でも、ここからが福島の守備の本領発揮。一旦跳ね返すと、とにかく二次攻撃を許さない。下澤とか江口が拾ったところで確実に潰す。そこが素晴らしかった。そして、やるべきことを緩めずやり続けたチームにはご褒美が与えられるもの。後半ロスタイムにワンチャンを生かしたカウンターから途中出場の長野がダメ押しゴールを決めた。福島としてはこの上なく理想的なクロージング。逆に宮崎としては打ちのめされるような敗戦になったかと思います。

結果オーライ?〜横浜FCvsセレッソ大阪(8/20)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

都道府県より市が強いダービー

大阪にせよ横浜にせよ、県庁所在都市が都道府県より強いですね。そうするとどうしても二重行政的な要素が出てくる。わかりやすいのが大学です。セレッソのホーム長居は、長居駅より鶴ヶ丘駅の方が近いという初見殺しトラップがあるのですが、長居駅の二駅隣の杉本町駅大阪市大があって、さらに南に行った堺に大阪府大があった。噂によると統合されて大阪公立大学になったらしい。

横浜もちょっと似ていて、一応、ニッパツ三ツ沢球技場から気合を入れれば歩けなくもないところに横浜国立大学があって、横浜市的には最果ての、ほとんど横須賀みたいなところに横浜市立大学がある。とはいえ、大阪の場合は府と市の重複ですが、こちらは国と市の重複なので、少し事情が違うか。ちなみに「神奈川県立大学ってあるのか?」と入力していたら〝神奈川県立保健福祉大学〟って予測変換された。ともあれ、市が強いと二重行政っぽくなるダービーです。

 

□7位と17位だが、セレッソのが不調?

最近の横浜FCは、ここ5試合で1勝2分2敗。順位としては17位。四方田さんに実権が戻されてから持ち直したかのように見えましたが、結局、実権は戻されてないのですかね。とにかく金も出すけど口も出すオーナーがチームを良くしたことなどないのに、ビジネスの成功者たるワンマンオーナーたちにはその法則が永遠に理解できないらしい。そのうち「やっぱりピッチにカズが必要だーが!」って言い出しかねないぞ。

一方のセレッソはここ5試合で1勝1分3敗。順位としては7位。実はここのところのセレッソ天皇杯やら見世物興行やらに忙しくって、リーグ戦の5試合前は6月末まで遡らなければならない。で、2カ月弱かけて5試合やってきての成績が1勝1分3敗。地味に絶不調ですやん。出ている選手のラインナップを眺めていても、少し小粒な印象も否めないというか、日本代表も射程に入る選手が毎熊くらいなのかな?喜田や舩木とかにも期待したいですが。

 

横浜FCの弱者化

さてセレッソのスタメンなのですが、言わずと知れた難読選手が〝上門知樹〟。〝上門〟を「うえじょう」ってなかなか読めません。でもね、もっと大変なのは〝知樹〟なんですよ。そりゃ「ともき」じゃないですか。平知盛は「たいらのとももり」なのであって。それを「さとき」と読めって、そんな殺生な。なんてことはおいといて、香川のボランチが良いですね。てっきり自分で持ち上がる系のボランチになっているかと思いきや、スルスルとフリーになって、リズム良くワンタッチかツータッチで左右に展開していく。もはや浦和の岩尾ですよ。そうか、香川も遂に岩尾の域に達しつつあるのか。

ボランチといえば横浜FCの井上潮音も、すっかり逞しさを増しましたね。一発で逆サイドに展開する視野の広さはこれまでも認められていましたけど、貫禄がついたというか、威風堂々とプレーしてるように見えます。惜しむらくは、前半はチーム全体としてセーフティファーストで、裏抜けを狙う3トップめがけて3バックが雑に蹴りまくるって攻撃ばかりだったので、あまりボールがボランチを経由しなかったこと。

横浜FCがすっかり〝弱者のサッカー〟に縮こまったこともあって、前半はほぼほぼセレッソがボールを握り続ける。最終ラインの進藤あたりも「いけるやろ!」って感じでどんどんラインを上げていきましたもんね。山下あたりに走られると面倒なのですが、件の進藤もそうですし、毎熊とか、スピード面でも山下に付いていけてたセレッソ守備陣。まあ、前半はセレッソのワンサイドだったかな。スコアレスでしたけど。

 

□まずは危なげなく

前半はポジショナルでもなんでもない縦ポンサッカーだった横浜FCですが、後半は繋ぐようになりました。ミシャのもとで修行したのでミシャ式3421かと思いきや、5レーン3421なんですね、四方田さん。特に近藤を右WBとして投入して以後は右の大外をとれるようになって、攻撃にもリズムが生まれてきました。442の守備を横の広さで攻略していくのが5レーン。その狙いは、あらあらながらも表現できていたようにも思われる。

ただですね、ある程度、横浜FCがボールを繋ぐようになると、セレッソ的には前半と違って流れをぶった切られるってことも少なくなったもいうことであって、要するにセレッソのリズムと横浜FCのリズムが共鳴するようになった。横浜FCのリズムが良くなればなるほど、セレッソのリズムも良くなるという、サッカーでは時々見られる現象が発生してしまいます。そういう意味ではレオセアラの決勝ゴールも必然だったのかもしれません。

試合はそのままセレッソが総体的には危なげなく逃げ切ったのですが、小菊采配には若干の疑問がなくもない。というのは、試合途中で鈴木徳真を入れて3ボランチにしたんですけど、あれの意図は?その後にマテイヨニッチを入れて2ボランチ3バックとしてのは、まあ、相手とミラーにしたのだから理解しやすい。……だったら最初から3421すりゃ良かったのに。僅か10分程度だけ433にした意味がわからん。それに試合最終盤のコーナーキックで、上がるのを自重しようとしたヨニッチに上がらせた意味もわからん。守り切りたいのか、追加点を取りに行くのか、なんか、腹が括り切れてない印象が残りました。勝ったから結果オーライなんでしょうけど。

寺沼ハンパないって〜水戸ホーリーホックvsブラウブリッツ秋田(8/19)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□フェリーで北海道に行こうダービー

今も昔も、その時々の人気者が活躍する舞台、それが始球式ですね。女性が始球式の場合、なかなかワンバウンドせずにキャッチャーまで届かせるのが難しいので、上手くいくと〝ノーバン始球式〟としてスポーツ新聞、特に東京スポーツなどのゲスいスポーツ新聞の紙面を賑わせます。

……わかっちゃいるけど、念のためパンツを履いてるかどうかチェックしてしまう。

……いや、あのですね、「ガールズ&パンツァー」も〝ァー〟はカモフラージュだと思うのですよね。。。

ともあれ「ガールズ&パンツァー」はホーリーホックともコラボってます。なぜなら舞台が大洗だから。そして大洗といえば北海道に行く〝さんふらわあ(=商船三井)〟が出入港する港町ですね。そういう部分では秋田も負けていない。秋田は北海道〜新潟〜舞鶴だったか敦賀だったかを結ぶ新日本海フェリーの寄港地。ゆえにこの一戦はフェリーで北海道に行こうダービーなのです。

 

□調子は水戸のが良い?

ここのところの水戸は5試合で1勝4分。無敗といえば無敗だし、勝ち切れないといえば勝ち切れない。勝ち点は1試合1.4。42試合なら58.8。降格はしない勝ち点率です。現状の順位は15位ですし、水戸の予算規模を鑑みるに、まずまず悪くない数字ですね。水戸は各監督のポテンシャルの最大値を発揮させられる伝統がありますし、濱崎名将化計画進行中といったところでしょうか。

対する秋田はここ5試合で1勝2分2敗。勝ち点は5。1試合平均1.0。この5試合だけなら降格しかねない勝ち点取得率ですが、なんせそこは信頼と実績の吉田謙監督ですからね、それくらいのバイオリズム低下で一喜一憂することはない。超秋田一体、やるべきことをやる、それをどこまでもやりきる、その先に感動がある。苦しいときもうれしいときも、希望を持って、秋田一体。秋田のために走り、戦っていくのでしょう。

 

 

□水戸がリードする

さて、この日の水戸は寺沼と安藤の2トップ。ちなみに寺沼星文、〝せぶん〟でなく〝しもん〟って読むのですね。完全に勘違いしてたよ。そんな水戸のスタイルは序盤に武田が永長を追い越していったように、SH+誰か(2トップの一角orWボランチの一人orSB)の2人で相手ペナ角を攻略していくレトロクラシックな442サッカー。硬いプリンというか、フワトロでないオムライスというか、パラパラでないチャーハンというか。

一方の秋田は相変わらずキック&ラッシュがえげつないないですね。この点はJ3を制したときからわかっていたことですが、この試合で改めて感じたのは攻撃時におけるライン。その上げっぷりがはっちゃけてる。何が何でも即時奪回するぞ、と言わんばかり。その際にはWボランチの両方が2トップ下のバイタル中央に突っ込んでいくものだから、ボランチ裏と最終ラインの間に少しスペースが出来ますね。ひょっとしたら3322とか3421とかシャドーなりISHが最前線の下に選手が2枚いるチームには弱かったりするかも?

さて、試合は一進一退といった趨勢でしたが、攻撃の面白みでは水戸だったかな。特に両SH。右の永長はサイドに思いっきり張って、めっちゃ大胆。反対サイドの小原はインに絞りつつ堅実にボールを回していく。そんな中で少し周囲と噛み合ってなかったようにも見えた安藤が前半終了間際にボテボテのシュートを打って、それが決まりました。水戸のリードでハーフタイムを迎えます。

 

□水戸がリードを守れず

後半に入っても秋田はブレない。やることは同じ。〝スピードを落とすくらいならそのまま特攻して玉砕する〟という哲学でラッシュを仕掛けます。それに対して水戸は、いわゆる〝試合巧者〟なゲームコントロールでコツコツと時計の針を進めていきます。そうか、今年の水戸は、あるいは濱崎ホーリーホックは、こういうサッカーなのね。レトロクラシックでゲームコントロール。往年のアントラーズ風味。

秋田はいつものように後半10分くらいにカードを切る。2枚替えってことが多い印象ですが、この試合では3枚替えで攻撃に圧力を加えます。特に右のSHは畑が先発で、途中から中村ですからFW兼用の選手を配置する。となると対面する水戸左SBとしては小兵の成瀬より、CB兼用の選手が良い。ということでタビナスが投入されました。これこれで理に適っているのですが、とはいえ、良いことがあれば悪いこともあるもので、攻撃時のキープ力が低下してしまって高い位置で時間を作れなくなります。果たせるかな、後半終了間際に梶谷のゴールを許し、同点となってしまいます。水戸としては悔しいドロー決着となりました。

試合を通じて感じたのは寺沼がエグいということ。守備時のストーン役としても、攻撃でのターゲットとしてもフィジカルがハンパない。ジャンプの滞空時間がとにかく長い。マーカーより先に飛んで、マーカーより後に着地する。ドリブルにも推進力と迫力がありますし……果たして彼は来年も水戸に所属しているのだろうか?なんてことを思った1戦でした。

最後は先輩監督の貫禄〜名古屋グランパスvs鹿島アントラーズ(8/13)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

LIXILダービー

何年か前になりますけど、LIXILでお家騒動がありましたね。そもそもなぜトステムとイナックスが合併して、かつ、トステムに主導権が残ったのかがわからないのですが、ともあれトステム創業者一族の高学歴ボンボン御曹司がガバナンスをめったこたにしたってのが根本原因。外資が株主に名を連ねる状況で、そんなやり方は通じませんよ、っていう日本における資本主義発達史上の一コマ。

結局、物言う株主が第三極として機能したようですが、第三極が第三極として機能できた背景には第四極の動きがありました。それがイナックス創業者一族。イナックス創業者一族が反トステム創業者一族の旗幟を明確にしたことで、対抗勢力に軸ができました。要するに大御所を大御所が倒したという構図です。そんなイナックスの本拠地が愛知県常滑市で、グランパスのお膝元ですね。一方、周知のように、トステムはずいぶんと長い間、アントラーズのユニフォームスポンサーを続けてきました。ゆえにこの一戦はLIXILダービーなのです。

 

□好調同士

ここのところの名古屋は、直近5試合で2勝2分1敗。順位は暫定で3位。この試合に勝っても負けても3位。安定してますね。こういうところがハセケン。スーパーでもスペシャルでもないですけど、戦力値なりの成績は出します。ある意味で、ピクシー以降の名古屋の監督に最も足りていなかった資質、それが戦力値をそのまま順位にするスキルです。そういう意味ではハセケンメイクスレボリューション、生地の少ない衣装で扇風機に吹かれるのです。

対する鹿島も、ここ5試合に限れば負けてません。2勝3分の無敗、勝ち点9。ようやく岩政体制が軌道に乗ってきたといったところでしょうか。知り合いの知り合いが岩政監督時代の上武大サッカー部らしいのですが、意外にも岩政さん、戦術家ではなくモチベーターらしいですよ。てっきり、人の心がわからないガリ勉クンかと思っていたのですが、言われてみたら、チームが勝てない時期も戦術への不満はあったっぽい一方で、不協和音でチーム崩壊、みたいな話はなかったような気もする。

 

□戦前のイメージ通りの展開

さて、この試合で名古屋は新加入の森島を先発に抜擢してきました。マテウスがいなくて、和泉もケガ?なのかな、ってなかで、この判断になったのでしょう。ついでに同じく新加入の久保はベンチスタート。同じ新加入でもJ1で何年もやってきた選手とJ2一年生からの個人昇格では当然扱いに差は出る。また3バック+両WBの5人のうち4人がCB対応可能選手というのもハセケン味がする。

一方の鹿島は安西が右のSBに入ってましたね。鹿島に行ってからはずっと左でしたけど、そもそもは右SB。左の「あんざい」は「あんざい」でも安在であるべきであって、安西は右なのですよ。けっこう苦労してましたけどね、神出鬼没な森下の対応に。審判と「いやいやいや」ってコミュニケーションをとる機会も増えて。あと中盤の4人も特徴的。佐野とピドゥカはもちろんとして、仲間と樋口もCH対応可能タイプなんで、少し古い表現で〝ハーフ〟が4枚って雰囲気でした。

試合は序盤からイニシアチブは鹿島にあったかも。岩政メイクスレボリューションはそれなりに進行しているらしく、鹿島が鹿島っぽかった。ペースのメリハリと阿吽のワンタッチパス交換でボールをキュッと前に進めていくようなところが、ふんわり黄金期の風様相を醸し出していた。けども、それも含めてグランパスペースだったのかも。ユンカーの抜け出しから野上が決めて、グランパスのリードで折り返しました。

 

□藤井藤井稲垣米本

後半に入ると鹿島は須貝を右SBとして投入。それに伴い安西が左に。いや、だから左は安在であって、安西は右なんだ、とか思っていたら、さらに岩政監督、知念を投入してきました。先発した垣田がどちらかというと左右に動くのに対し、知念は前後に動きますね。そうすると鈴木優磨とプレーエリアが重なって、結果的に鈴木優磨はゴールから離れていく。鈴木優磨との相性でいうと、知念よりも垣田の方が良いかもしれません。さらに荒木や松村が投入され、最終的にはCB佐野のファイヤーで鹿島が攻めたてる。

しかし名古屋は怯みません。これまであまりそういう強い印象はなかったですけど、内田宅哉の守備ってハードで粘り強いんですね。最後まで足を動かして搦め取る、みたいな。それから、これまでもよく知ってましたが永井謙佑のチェイシングがえげつない。交代直前までまるで衰えない。そして、当たり前のことを言いますが、永井は足が速い!超速い‼

とはいえなんだかんだで鹿島も見所は作ります。特に終盤に投入された鹿島藤井の縦突破はキレキレでした。鹿島藤井の縦突破があまりにもキレキレなので名古屋藤井はたまらずイエロー。その前にも鹿島藤井に股抜きされた稲垣が抱きかかえてイエロー。しかし、稲垣の仇は米本が打つ。今度は米本が鹿島藤井からイエロー獲得。なんて攻防を繰り返しているうちにタイムアップ。長谷川監督が岩政監督に貫禄の違いを見せつける結果となりましたとさ。

 

地味に強い勝ち方〜清水エスパルスvsレノファ山口FC(8/12)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ツナ缶ダービー

ワタクシ、世代的にギリギリ「大洋ホエールズ」を知ってる世代でございます。とはいえ、その頃のユニフォームは紺色で帽子には白字で「W」ってありました。聞くところによると、その少し前まではオレンジに緑という、令和的感性でいくと絶望的な色彩感覚のユニフォームで、袖には「○」に平仮名の「は」というマルハロゴが入っていたとか。

そんかマルハ、いまや北洋漁業の雄たる日魯と合併してマルハニチロですけど、こちらは南洋漁業の雄でした。いや、北洋にも行ってたかも、排他的経済水域とかが設定される前は。とはいえ基本はアフリカ沖に蟹工船的な工船を仕立ててツナ缶を作る会社で、その本拠が山口県下関市ですね。ちなみにツナ缶の代名詞といえば「シーチキン」なのですが、その「シーチキン」、実ははごろもフーズ登録商標。そして、そのはごろもフーズが本拠を置くのが静岡県清水市なわけです。ゆえに、この一戦はツナ缶ダービーということになります。

 

□ブーストが終了した両チーム

鈴与財閥が全面バックアップする清水はJ2でも巨大戦力を誇ります。鈴与財閥が全面バックアップするがゆえに低迷している可能性もなくはないですけど、ともあれ予算は潤沢。そんな清水は秋葉さんへの監督交代ブーストは一段落したものの、高水準な勝ち点取得率を維持し、ここ5試合でも3勝2分。そこに中田一三氏が〝プレイヤーデベロップメントコーチ〟として加わってた。プレイヤーデベロップメントコーチって……。プレイヤーデベロップメント=コーチなんだから、なんだかチゲ=鍋でチゲ鍋みたいな役職ですね。

対する山口はここ5試合で1勝2分2敗。エスナイデルへの監督交代ブーストは完全に確変終了ですね。もともとネタキャラ扱いされてたエスナイデルだっただけに、レノファでJリーグに監督復帰するとなったときは、一部でまあまあのお祭り騒ぎになっていましたが、いまや、祭りの後っぽい雰囲気。とはいえ世の中はお盆、夏祭りはここから、なんなら秋祭りだってある。再び祭りが起きるかもしれません。

 

□スコアは動かず

さて、ホームの清水はここのところコロリがCFでしたが、この試合ではサンタナが先発に復帰。ただ、少し衰えた説。衰えたというか、調子を崩しているというか、バイオリズムが宜しくないタイミングというか。一昨年とかは、迫力溢れるパワーで、ありとあらゆるポストワークをマイボールにしていましたが、その頃に比べると精度も迫力も0.8×サンタナになってました。ちなみにチーム全体の全体の攻め方としては、「右で作って左で仕留める」というパターンが多かったですかね。ただ、プレースタイル的には山原が右SBで左SBがと原なら、もっとスムーズに「右で作って左で仕留める」を完遂できたかも。

対する山口はシルビオと梅木をツートップとする3322というか5122だったと思いますが、流れの中では2列目に左から五十嵐・池上・梅木が並ぶ5131みたいになることも多かった。ちなみにWBは右に矢島で左が田中稔也。SHとかISHタイプを両ワイドに置く意欲的な配置。そして3バックは左からキムボムヨン・ヘナン・前。髪型に注目するとアフロ・スキンヘッド・チョンマゲ。こちらもなかなか意欲的な組み合わせです。

とにもかくにも前半はスコアレス。清水の決定力が不足しているのか、山口の守備が粘り強いのか。はたまた、その両方か。前半終了間際に山口のファールにイエローが出されて荒れかけたとき、FKを蹴ろうとした乾にエスナイデル監督がちょっかいを出して乾が苦笑い、みたいなシーンが印象的でございました。

 

□スコアはなかなか動かず

後半になるとサンタナカルリーニョスジュニオの距離感が良くなったので、2人をツートップとした442にしたのかな?と思いきや、サンタナ・乾・カルリーニョスジュニオを3トップとする343というか3421というか、みたいな形にエスパルスは変更した模様。おかげで前半以上にサンタナはやりやすそうになった。でもね、ゴールが決まらないのですよ。そもそもチャンスは前半からたくさんあったのですがゴールが決まらないのですよ。

攻めても攻めてもシュートだけ決まらないものだから、ホナウドも突進するってものですよ。で、レノファGKの関と交錯して、関は演技かリアルかは分かりませんが激昂。必然的に裏にいる清水サポーターは一斉の大ブーイングを繰り返す。。

まあ、サッカーを見てたら往々にして出会いますよね、こういう試合。で、パターンとしては相手にワンチャンスを決められて負けてしまうのが王道。でも、そうはならなかった。乾が縦パスで途中出場のオセフンを激走させて、最後はカルリーニョスジュニオが押し込みました。清水サポ的にはフラストレーションの溜まる試合だったかもしれませんが、こういう転換で勝ちきるのは、それなりに完成度の高いチームの証拠。いよいよ町田の背中が見えて……来ないんだな、これが。町田が止まらないんだもん。

 

大槻組長、ここにあり〜ザスパクサツ群馬vs栃木SC(8/6)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

泣く子も黙る北関東ダービー

昔、ネットの掲示板か何かで「〝南関東〟なんて括り(あるいは概念)はない!」とドヤってる意見を目にしたことがありますが、「ある」というのは簡単でも「ない」というのは難しい。「そんなの聞いたことない」なんてことを人生経験の少ない若者が自信満々に述べる場所、それがネットの掲示板。確かに〝北関東〟に比べて〝南関東〟という言葉が使われる機会は少ない気もしますけど、使われる機会の少ないことが直ちに概念の不存在を意味するわけではない。船橋・大井・川崎・浦和の各競馬場に謝れ、と。

ともあれ〝南関東〟と違って使われる機会の多い〝北関東〟。その北関東の雄を決する戦い、それが北関東ダービーです。特に群馬と栃木は〝両毛〟と呼ばれる地域。鎌倉幕府ができて南北移動が盛んになるまでは、専ら東山道のお隣同士として同一動線上にあった地域です。東海道の終点であった茨城とは少し毛色が違うのですね。

 

□ここ5試合で2勝3分同士

例年に比べて残留争いからは遠い場所にいる群馬は、ここ5試合で2勝3分、順位は9位です。だいたい、これくらいが組長の手腕の現時点におけるリアリティでしょうか。18位くらいが定位置のチームにベーシックなことを徹底的に植えつけることで9位くらいに引き上げる。とはいえ長倉が移籍したことの影響はおいおい顕著になっていくかもしれませんね。杉本も良い選手ですが、少しタイプが違う印象もありますし。

対する栃木も、実はここ5試合で2勝3分なんですよ。知らないうちに地味に成績を上げているらしい。時崎政権も1シーズンと半分が経過してようやく軌道に乗ってきたというところでしょうか。まだまだ順位的には17位ですが、イスマイラも加わりましたしね。さらに報道によるとレアンドロペレイラも加わるみたいじゃないですか。前半は0ー0で抑えて、残り20分くらいのところで高萩・イスマイラ・レアンドロペレイラを3枚同時投入とかしたら、けっこうチートなのではあるまいか。

 

□栃木のストーミング

そんなわけで長倉を失った群馬ですが、この試合では実質的に川本理誉のワントップで平松がセカンドトップというかフリーマン的にボールを受けるべく動き回る。ちなみに平松宗とマッチアップしていたのは栃木の平松航だったりしました。なんてことはおいといて、序盤から栃木のハイプレスに飲み込まれた群馬は、とにかく平松に受けてもらうしかないという状況になって、それゆえ平松が受けたところを狙われるという悪循環に陥りました。

逆に栃木はリズムを掴んでいた。その要因は、インで作ってアウトに振って、そこからはアーリー気味であってもなんでも、とにかくワンタッチでクロスを入れていくという割り切り。攻撃をクロスかシュートで、しかも最少手数で終わらせるというレッドブル系列なスタイルですね。守備はもちろんストーミング。徹底的に群馬のポジトラを潰しにかかります。押し込まれた群馬がどうにか奪い返して平松を探す瞬間に奪い返してしまう。ベップ時代のバルサとかバイエルンみたいでしたよ、言い過ぎですけど。

そんなわけで栃木の圧力が群馬をタジタジにさせた前半だったのですが、問題はそれが後半も続くかどうか。90分間保つかどうか。そして群馬が栃木が落ちるまで凌げるか、仮に栃木が落ちたとして、そこでもう一段階ギアを上げられるかどうか、ってな状態でハーフタイムを迎えました。

 

□後半の栃木はストーミングに失敗

案の定といいますか、栃木は前半の勢いが後半には続きません。というか、後半最初のセットプレーから群馬が平松のゴールで先制したことで出鼻をくじかれます。それから、よくわかりませんが、群馬が外回しを増やしたことでプレスがかかりづらくなったというのもあるのかもしれません。もっとも、それ以上に目に付いたのは杉本のパッションですけどね。杉本、相変わらず情熱的ですねえ。審判にも突っかかっていきますし、取られた取り返しに走る感じとか、ヴェルディ時代からなんら衰えがない。

杉本のテンションに対抗すべく栃木は大島に替えて小堀を投入します。これで前線3枚が山田・根本・小堀になって、背番号でいうと36・37・38の連番です。となると群馬としても内田と北川を投入せざるをえない。これに伴いシステムは352へと変わる。北川と杉本が両WB。2人ともFWなりWGなりを本職とする選手なので、ワイドの選手には守備の技術ではなく、一にも二にも強度を求めるという大槻監督のメッセージでしょうか。

こうなっては栃木としても秘密兵器のイスマイラを送り込むということになるわけですが、実はこの日は群馬にもジョーカーがいた。負傷から復帰してきたキャプテン畑尾ですね。そうか、こんな隠し球を用意していたのか。そして、明確なメッセージは選手の迷いを除去します。ロスタイムになってからのコーナーフラッグ付近での時間稼ぎ、なかなか堂に入ってましたよ。というわけで、順位通り、着実に監督のイズムが浸透しているチームが勝つという試合になりました。

問答無用の実力差〜ヴァンフォーレ甲府vsヴィッセル神戸(8/2)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□VKダービー

ヴァンフォーレ甲府には名将と過ごした日々があります。1人目の名将は大木武で、もう1人の名将が城福浩です。どちらも鮮烈な記憶として残っておりますが、ここでは城福浩との日々を強調したい。なんせVFKがJFKと過ごした日々ですからね。ヴァンフォーレ甲府って自らを「VFK」ってイニシャル化するんですよね。

とはいえ「ヴァンフォーレ」と「甲府」なのだから「VK」で十分なわけですよ。にもかかわらず、なぜ「ヴァン」と「フォーレ」と「甲府」に細分化するのか?おそらく「VK」だと、他のクラブと重複するからではないか。そして、重複するもう一つのクラブが他でもないヴィッセル神戸ですね。「ヴィッセル」と「神戸」で「VK」。ってことはヴィッセルも「ヴィッ」と「セル」と「神戸」で「VSK」を名乗るべきではないのか?

 

天皇杯の王者そろい踏み

この試合は天皇杯だったわけですが、甲府は言わずと知れた現タイトルホルダー。王者として今大会に臨んでいるわけです。当然ながら、ここ1年以上、天皇杯では負け知らず。この後にACLも控えていますしね。「甲府から世界へ」。いや、甲府から世界に行くのって大変そう。なんせ、近くに空港がない。1番ストレスフリーで着けそうな松本空港は国内線のみ。たぶん、成田に出るんですよねえ。その時点で一苦労。

天皇杯王者といえば、もちろん神戸も負けていません。2019年の王者が神戸です。確か、スーパーカップ埼スタで生観戦したんだよな。おそらくあれがコロナ前最後の生観戦。PKにまでもつれ込んで、そのPK戦で10人近くが外し続けるという珍しい光景を目の当たりにした。ちなみに2020年の天皇杯は、コロナ厳戒モードにつき、Jリーグからの参加が4チームだけだったのですが、喉元過ぎればなんとやらで、奇麗にそんなことは忘れておりましたよ。

 

□前半はやや甲府

すっかり4ー3ー3が堂に入ってきた神戸ですが、この日は斉藤未月・山口蛍・川崎修平の3センターハーフ。アンカーが斉藤未月で、ISHは川崎がやや前、山口蛍がやや後ろという役割分担なので山口蛍と斉藤未月のダブルボランチにも見えた。また、攻撃でビルドアップするときは右SBの酒井高徳が高く上がって、左SBの初瀬がステイする関係性になります。

要するにスリーバックっぽくなるわけですが、その分、初瀬を加えた3DFの脇にはスペースができる。ということで甲府はそこのスペースを上手に使っていきます。甲府最終ラインから一発で裏返すフィードが繰り出され、前線4枚がそこに走り込んでいきます。尤も、甲府がわざと相手を引きこんで裏返しているかというと、多分そうではなくって、ストーミングな神戸との噛み合わせが良かったものと思われます。

そんなわけなんで、ポゼッション率はともかく全体のペースは、どちらかというと甲府にあった。甲府の選手の方が自分たちのリズムでプレーできていたと思われます。その流れから、先制点も甲府。ものの見事にドンピシャなオウンゴールが決まったように見えましたが宮崎のゴールとアナウンスされました。FKのキッカーが宮崎だった?それとも神戸の大柄なCBの前に入り込んだことにより、メインスタンドからは完全に宮崎が隠れるかたちになっていたのかしら?ともあれメリハリのあるプレスで神戸にリズムを作らせなかった甲府のリードで折り返します。

 

□後半は完全に神戸

後半の頭から神戸の吉田監督は魂の3枚替えを敢行します。いや、そんな勝負手を打ったのではなく、単にローテーションでの交代だったかもしれない。ともあれ大迫と武藤が入ると、神戸はまるで別のチームになりますね。前半からフルスロットルで走りまくっていた甲府が落ちたという要素もありますけど、もう、圧倒的に神戸のペース。そして縦横無尽に起点となりまくっていた大迫が開いてクロス。オウンゴールを誘発します。最後はオウンゴールでしたけど、必然の同点ゴールでしたね。

その後も神戸がリズムに乗り続ける。それでも甲府は宮崎の突破や、中盤での強度でどうにか対抗していましたが、その中盤でのしばきあいも神戸が完全に制するようになる。武藤の勝ち越しゴールは、まさにそういうかたちから。武藤のゴールは佐々木のシュートのこぼれ球でしたね。佐々木も大迫の投入で息を吹き返していて、真ん中に構えた大迫が開いたり引いたりして空いたCFのスペースで上手に振る舞ってました。似非9番タイプなんですかね、佐々木?

甲府としてはミラクルを起こさないと試合の趨勢は変わらないということで山本英臣を投入。武藤に四苦八苦していたマンシャ、尻上がりに高い位置に上がるようになった初瀬への対応が苦しくなった右サイドをフォローする目的だったと思いますが、それでも神戸は手を緩めない。大迫とパトリッキがダメ押しの3点目と4点目を決めます。この2点に象徴されるように、最終的に選手の個人能力の合計値の差がゴールの数の差としてあらわれた試合だったと思います。

 

どこの強豪?〜アスルクラロ沼津vsFC琉球(7/30)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ビールの国の物語

去年は愛鷹に来なかったんですよね。いや、沼津には来たのですよ。そうしたら、駅前にアスルクラロのレプリカを着てるけど普段スタジアムにはあまりいなさそうな人がたくさんいらっしゃった。世に言う「ラブライブ!の乱」です。声優さんご来場ということでスタジアムが非サッカー関係者にジャックされた日。「これはいかん…」とスタジアムへのシャトルバスに乗ることなく東京に戻ったのでした。

というわけで2年ぶりの愛鷹、ベアードビールを飲むのも2年ぶりかな。三島あたりで瓶を買って飲んだかも。ともあれ沼津は地ビールの聖地的な一面がある。とはいえ、地ビール、ご当地ビールといえば元祖は沖縄なわけで。泣く子も黙るオリオンさん。個人的にはフルーティさより苦味を求めるのでオリオンさんよりベアードさんのが好みだったりしますが、オリオンさんも大好きです。

 

□宮崎最強説?

さて、最近5試合の沼津は3勝1分け1敗で、試合開始前の段階では暫定5位、勝てば4位という順位。タンスにゴンゴン、ゴン中山は名将なのでしょうか。もともと明るいパリピとしてセルフプロデュースしている反面、誠実でクレバーなお人柄についても、感じている人は感じていたことなので、指導者としての適性のあることは十分に予想できたのですが、それにしても期待以上の結果をここまでのところは残しております。

アウェイから乗り込んできた琉球はここ5試合で2勝1分け2敗ですね。順位は15位。喜名さんになって多少のブーストはありましたが、そこそこのところで落ち着きつつあります。ちなみに、ここ5試合で沼津にも琉球にも勝ったチームがあって、それが宮崎。「なんや、テゲバジャーロ、強いんか?」と思って順位表を確認してみたら琉球のすぐ上の14位。リーグ戦とは、えてしてこういうものですね。なんにせよ、沼津と琉球に順位ほどの実力差がないであろうことは間違いないかと思われます。

 

 

□一進一退

ゴン中山率いる沼津ですけど、右SBの安達(「あだち」ではなく「あんたつ」、安在達弥)がアラバロールするんですね。アラバロールどころが、そのままハーフスペースをスルスル走ってCFみたいになってしまう。というよりも3CH(持井・鈴木・菅井)と安達の4人のうち2人がダブルボランチになって2人がシャドーになる、みたいなことになってるんですね。

対する琉球は至極オーソドックス。カウンターからのサイドアタックが基本形で、特に左SHの白井がキレキレだったのと、右SB高安がスペースを駆け上がてクロスを入れるシーンが目立ちました。とりあえずサイド、そしてサイドからはさっさとアーリークロス。そのまま攻撃はシュートで終わらす。ゆえに積極的にミドルシュートを打っていく、そんなスタイルです。惜しむらくは最小手数でアタッキングを完結させるには、やや技術面のクオリティが不足していたことでしょうか。

ともあれ、試合は序盤に動きます。持井がボールを持って鈴木に預けると、鈴木は再び持井を使って、そこでPKを獲得。持井が自ら蹴り込んでアスルクラロが先制しました。そこからは、まあ、一進一退ですかね。中盤で奪ってからのショートカウンターとか、相手FKをひっくり返したロングカウンターとか、琉球の方が僅かに狙いを表現できていたようにも思われましたが、スコア自体は動いてませんし。一進一退ということでよろしかったかと思います。

 

□そして完勝へ

ハーフタイム明けのタイミングで琉球は切り札の阿部拓馬を投入します。なんといっても存在感がありますよね。阿部が最前線で野田が下の位置に引いたでしょうか。それに対して沼津は和田育を投入。この選手はなかなか途中出場が上手いですね。違和感なくゲームに入っていき、フォアチェックやらリトリート時のポジショニングやらを勤勉にこなしておりました。

つまりゴン中山監督は高安を抑えにかかったと思われるのですが、その高安にアクシデント。思いっきりミドルシュートを打ったところ、思いっきり蹴りすぎたらしく負傷交代(たぶん大事には至らないパターン)。こうやって右サイドがリズムを失ったことで琉球は失速、徐々にアスルクラロがペースを取り戻しはじめます。

中山監督が沼津に仕込んだのは、おそらくネガトラの部分ではないでしょうか。森夢真とか、あまり守備のイメージのないアタッカー陣もネガトラの切り替えが素早かった。そこは徹底していた。これはなかなか仕込めるものではありません。それからもう一つ素晴らしかったのが、攻め込まれたゴール前ではしっかりカラダをはるところですね。GK武者が当たりまくっていたこともありますが、ずっと攻められっぱなしのなか、しっかり凌ぎきったのは特筆に値します。そして、我慢し続けたご褒美が後半35分を過ぎてから与えられました。途中出場の佐藤と徳永が続けざまに殊勲の追加点を挙げると、締めくくりにはキャプテン菅井のゴール。序盤に先制して、相手の反撃を凌いで、終了間際に突き放す。強豪の勝ち方でアスルクラロ琉球を下しました。