雑用係軍団の中盤とスーパー雑用係の渡邊凌磨〜FC東京vsサガン鳥栖(9/23)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□一方通行的関係

FC東京と鳥栖の因縁を探してみると、特に竹原バブル路線の頃にFC東京関係者が鳥栖に移籍するって事例が見られましたね。代表的なのは権田でしょうか。彼の場合は海外移籍絡みでいろいろややこしいので、FC東京とサガン鳥栖という2クラブ間の因縁という印象でもないですけど。権田以外だとフィッカデンティでしょうか。こちらも、FC東京を謎の退任となったあとに鳥栖の監督となったわけですので、因縁もクソもない。

最近は鳥栖の選手がFC東京に引っ張られるって事例が思い浮かびます。例えば小泉とかですかね。あと、ワンクッション置いているとはいえ、直近になって元鳥栖の原川がFC東京に加入なんてこともありました。尤も、FC東京から鳥栖へ請われて移籍という逆パターンはイメージがあまり湧かないので(ケイマンとかはいるけど)、双方向性のある関係というより、一方通行的な関係なような気もします。

 

□どちらも不調

リーグ戦ここ5試合におけるFC東京の成績を振り返ると、1勝1分3敗の11位。ジリジリと順位を下げている。アルベルさんを解任したのは、まあ、理解の範囲内。とはいえ、後任がクラモフスキーさんというのは、いかにもその場しのぎというか、「現監督より良い監督に目星がついたから解任」という計画性を感じさせない。厳しい言い方になりますが、清水や山形の成績を踏まえると、これくらいの数字がクラモフスキーさんの通常値というよな気がします。

鳥栖については、実はここ5試合の成績だけ拾い上げれば、FC東京よりも苦戦している。0勝3分2敗で順位も12位まで下げてしまっております。尤も、だからといって川井さんにノーを突きつけるサポーターは少数派ではないでしょうか。経営破綻寸前からの復興過程にあることを思えば健闘の範囲内でしょうし、他の監督を連れてきて、川井さんより良くなるか悪くなるかを確率論的に判断すれば、川井さんより良い監督って、なかなか見つからなさそうですよね。

 

鳥栖が先手

さて、FC東京はどんなサッカーをやってるか。少なくとも前半の戦い方に関して言えば、「3トップよろしく!走れ〜〜!!」っていうハセケンよろしくなサッカーだったかと思われます。クラモフスキーってポジショナルじゃないんですかね。だからといってポゼッションでもないし、疑似カウンターでもない。ストーミングの気配も前半はなかったし、442とか堅守速攻の日本的なスタイルでもない。後半に再確認が必要です。

一方の鳥栖ですけど、サイドから少ない手数でリズミカルに攻めるってパターンです。左はWGの岩崎を爆走させる。相手のクリアミスとかから左を一気にってのが多かった。逆の右サイドはSBの原田がゲームメイクしながら攻略していく感じ。それにしても岩崎と原田がすっごいフリーになっていた。この両者をフリーにするのが上手かったともいえますし、FC東京の守り方的にサイドに蓋をすることが最優先にされていないようにも見えました。

スコアは前半から動きます。まずは左サイドからのアーリークロスに忍者のごとく飛び込んだ長沼がアクロバティックボレーを決めて鳥栖が先制。VARが入りましたが、いや、長すぎるやろ。さらに鳥栖は攻撃の手を緩めない。序盤からターゲットマンとして奮闘していたケイマンがPKを獲得して、自ら決める。ケイマン的には恩返しゴールなのですが、当の本人にFC東京を古巣と感じる意識が残っているかどうかは不明。ともあれ2ー0と鳥栖がリードしてハーフタイムを迎えました。

 

□FC東京が逆転

今ひとつ何がやりたいのかが伝わらなかった前半と打って変わって、後半の東京は何がやりたいのかが伝わってきた。基本的には3トップ+渡邊凌磨と駆け上がる長友(あるいは逆サイドのカシーフ)とで5レーンを作る。まあ、この5レーンは5レーンってわざわざ強調するほどのポジショナルではないですけどね。ともあれ、カタチが作れるようになるとリズムも良くなる。そうするとカシーフのクロスをアダイウトンがドンピシャで決められたりする。

ここからはFC東京のリズムの良さが加速。ポジショナルの生命線ともいえる早期回収が散見するようになると、その早期回収のカタチから大外のカシーフが再び折り返す。最後は渡邊凌磨が決めきって同点。この時間帯から判断するに、クラモフスキーさんのFC東京は、原則的にストーミング型で、素直な並びでの5レーンを作るって感じなんでしょうか。そして、そのキーマンが渡邊凌磨。もはや早期回収マシーン、しかもファーストディフェンダー兼任。ストーミングをこの選手が一手に担っているといって過言でない。

渡邊凌磨に限らずFC東京は渡邊凌磨・松木・原口による中盤の雑用係感がハンパなかったですね。最終ラインがフィードして最前線がアタッキング。それ以外の全ての雑用を中盤3人がボックストゥボックスで処理している感じ。そして、決勝点もスーパー雑用係の渡邊凌磨から。裏抜けからのシュートを決まりませんでしたが、途中出場の俵積田が詰めて、これが決勝点に。さすが俵積田、俵積田だけに何かと詰めるのがうまいらしい。

……ってなことでFC東京がホーム味スタに眠らない街を響かせました。

倉貫采配、スーパー大的中〜YS横浜vsいわてグルージャ盛岡(9/18)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

奥州合戦ダービー

昭和の時代には時々見かけたコミュニケーションですけど、「福島出身ですか?なら、山口とか鹿児島のこと嫌いですか?」みたいな会話がありました。戊辰戦争以来、会津薩長は時代を越えて仲が悪いとされていた。同じようなパターンで、秀吉の時代の因縁で伊達家の子孫や関係者と浅野家の子孫や関係者も不仲とされてきて、オフィシャルに仲直りしたのは21世紀に入ってから、みたいなこともあります。

さて、そこでグルージャですよ。盛岡にせよ“いわて”にせよ、北東北太平洋側、まさに陸奥(みちのく)なわけですが、みちのくといえば平泉、平泉といえば奥州藤原氏、そして奥州藤原氏奥州合戦源頼朝に滅ぼされています。で、その源頼朝の本拠地が鎌倉で、鎌倉は神奈川県、神奈川県の県庁所在地が横浜ですね。つまり、岩手県民からすれば、横浜は郷土の偉人を滅ぼした憎き(にっくき)頼朝のお膝元。今なお「許せねぇ」って感情的なシコリが、、、さすがにないですよね?

 

□絶不調対決

ここのところのYS横浜は、調子が悪いです。5試合で1勝1分3敗。ある程度安全圏にいたはずの順位も17位にまで下降。お尻に火が付いたところで星川さんから倉貫さんへ監督交代に踏み切りました。これがプラスに出るか、マイナスに出るか。倉貫さん、現役時代、特に甲府時代は好きな選手でしたが、琉球の監督としての実績を考えると、果たして星川さんより残留の可能性を高められるのか。YS横浜としても、難しい決断を下したかと思われます。

不調さではグルージャも負けてません。負けてないどころか上回っている。ここ5試合で0勝1分4敗です。それでも順位は14位なので、これまでの貯金が効いているとも言えますが、なかなか厳しい局面にあります。監督は松原良香さん。知識系解説者出身は、わりと指導者として苦戦しがちなんですが、松原さんは相模原でも苦戦しました。もっとも、望月時代の相模原は、優秀な指導者であればあるほど苦戦するメカニズムにあったので、このときの成績は度外視すべきかもしれません。

 

□盛岡が先手

さて倉貫新監督率いるYS横浜ですが、システムは前政権を継承して352というか5122というか。右のISHということになっているのであろう萱沼がサイドに張り出していることが多かったので343っぽく見えることも多かった。ただ、星川さんの頃みたいに組織的に疑似カウンターをしかけていくといったオートマチズムは感じられず。どちらかというとハードワークを重視しているような印象。だったら5122なんて難しいシステムにする必要はないような。

対するグルージャはオーソドックスな4231。左サイドではオタボーが中に絞って出来たスペースを新保が爆走するパターンが多かった。逆に右サイドはなんと言っても西大伍。上手いですね。真ん中か右サイドかの違いこそあれ、遠藤保仁とほぼ同じプレーをしているように思えてくる。また、「なんかベンチで誰かがコーチみたいな振る舞ってるな。29番って誰だ?」って思ったら水野晃樹でした。

序盤から審判のマネジメントが今ひとつだったのか、あるいはハードワークのチーム同士という組み合わせゆえか、選手が痛んで試合が止まりがちだったのですが、YS横浜の大嶋の治療中のコーナーキックから和田が決めて盛岡が先制。和田的にはボロ雑巾のように捨てられた相模原への恨みをYS横浜相手に晴らした感じでしょうか。盛岡リードでハーフタイムを迎えます。

 

□ティネッリとピーターゼン

個人的には「後半に入ると、さらに盛岡がイニシアチブを握りそう」とか思ってたんですけど、逆にYS横浜が同点に追いつきます。道本?富士田?とにかくピンクスパイクの選手が右で頑張って折り返すと、佐藤が押し込みました。ちなみにサイドが変わって近くなったので、「大嶋が西の当番をしてるんだなあ」とか眺めていたんですけど、両者とも早めの時間帯でお役御免となりました。

そして、交代選手たちが試合を動かしまくる。まずは盛岡。途中出場の宮市がYS横浜のハードなマークに負けずにポストワークを成功させると、これまた途中出場の南が左サイドを爆走。最後は甲斐が決めて、再びリードを奪います。それに対してYS横浜の倉貫監督が送り込んだのはティネッリ、ピーターゼンの両FWと藤原。ティネッリとかピーターゼンって、途中出場で活躍するイメージがまるでなかったのですが、もう一人の途中出場である藤原がコーナーキックの競り合いに勝って、松村の同点ゴールをお膳立てします。

さらに、ワタクシの予想を裏切ってティネッリとピーターゼンが大活躍。スタンドからはオフサイドにしか見えない入れ替わりからティネッリが爆走して折り返す。決めたのは相棒のピーターゼン。倉貫采配、お見事です。さらに試合終了間際には道本が足を攣ったことでスクランブル投入された菊谷がファーストプレーで追加点。倉貫采配、めちゃくちゃ見事です。

偶然か必然かはさておき、倉貫監督のピンズド采配で、YS横浜が残留を占うと極めて大きな意味を持ちそうな勝ち点3を獲得しました。

生地にまつわるエトセトラ〜SC相模原vsFC岐阜(9/16)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□銀河系崩れダービー

SC相模原とFC岐阜、共通点というか、ダービー要素は一番ベーシックなところにあって、そりゃもう〝緑ダービー〟に決まっているわけですが、他にもいろいろありますよね、どちらも内陸部に位置して海がない、とか。神奈川県には海があれど、相模原市には海なんてありませんから。ちなみに岐阜県は美濃(都会)と飛騨(田舎)で出来ていて、岐阜市は美濃(都会)。神奈川県は武蔵(都会)と相模(田舎)で出来ていて、相模原市は相模(田舎)。なので、ある意味では、テレコっちゃテレコ。

でも、そんなことよりワタクシ的に両チームに共通するイメージは〝銀河系崩れ〟ということでしょうか。相模原はJ2に上がっていた年くらいまでなんで少し昔のことかもしれませんが、岐阜はまだ現在進行形でしょうかね、J1でレギュラーだったり、代表にも選ばれた経験があったりというベテランを集める癖(へき)があります、あるいは、ありました、藤本淳吾とか柏木陽介とか。なので、この一戦は銀河系崩れダービーということで良いでしょう。

 

□鹿児島被害者の会?

さて、最近の相模原ですが、ここ5試合で3勝2敗。ようやく勝てることも増えてきて、あるいは、勝つというイベントが発生するようになって、順位は19位。最下位脱出です。良いですね、「19」って響き、青春ですやん。前身のスポナビ時代を含めると15年以上ブログをやっている身としては、「19」といえばプリプリの「19 GROWING UP」であり、ハマショーの「19のままさ」です。前者はキラキラ女子の青春、後者は冴えない男の青春、いやあ、青春ですやん。

他方、岐阜の近況は5試合で3勝1分1敗。順位は7位。ジリジリと昇格圏に近づいてきましたが、どうですかね、もう一段、ギアを上げられるか。上位を見ると、地力よりも調子の良さで頑張っていると見受けられるチームも多いのでどうにかなりそうですけど、富山とか鹿児島とか、地力上位のチームもいますからね、順位を逆転させるのは簡単ではないかもしれません。ちなみに鹿児島は前々節で岐阜を大破し、前節では相模原を蹴散らしている。そういう意味では鹿児島被害者の会ダービーでもあるのかな。

 

□どちらもチャンスメイクは左サイド

というわけでオンザピッチ。352の相模原は、3枚で回してWBに逃がしていく外回しなビルドアップ。両WBに預けるまではスムーズ。問題はその先。中盤のガチャガチャで上手くショートカウンターに持って行ければ良いのですが、そこに再現性はあまりない。中盤でこぼれたところから岩上のロングキックで局面打開ってのが多かったですかね。あとは無理やり蹴って瀬沼のポストワークに期待するか。

対する岐阜は中盤を作るスタイルですが、あくまで庄司は相手マークを引きつける囮であって、さほど回数的にはボールに触らないというところが特徴でしょうか。それからビルドアップ時には生地が疑似ボランチ化して、本来ボランチの北が左に流れる。なので左サイドは宇賀神と村田にプラスで北がいるようなカタチになります。北が右に流れることは多くなかったので、左で崩すというのが基本パターンなのかもしれません。

スコアは岐阜のミスから相模原がそのまま左サイドを攻略して、コーナーキックを得ると、岩上のキックが水口の頭にドンピシャで届いて相模原が先行。それからしばらく劣勢となった岐阜も前半ロスタイムに意地を見せる。例によって北と村田で左サイドを崩すと、折り返しに生地が合わせて同点に追いつきます。1ー1でハーフタイムを迎えます。

 

□岐阜の2段階トランスフォーム

後半に入ってまずは岐阜がペースを握ります。しかし、相手のミス絡みで転がり込んだ決定機を藤岡が決めきれないなど、スコアを動かせない。そうしているうちに相模原は岩上と瀬沼というベテランをお役御免として安藤と西山をピッチに送り込む。岩上を下げることで構成力が落ちるかとも思ったのですが、西山がしっかりプレーメーカー役を担い、しばらく相模原の時間となりました。

とはいえPKを安藤がストップされ、さらに岐阜が田中順也と田口を投入して、これに伴いシステムが4231に近いカタチになると、相模原のペースも一段落。岐阜的には、そういう指示だったのかどうかはわかりませんが、生地がより生地なった。SBの選手ではなく、中盤セントラルの選手としての動きがさらに増えた。それはすなわち、本来右SBが埋めなければならないスペースをお留守にするということ。そこのケアに田口が奮闘していましたが、明確な穴として突かれ続けます。

そこで岐阜はもう一段階トランスフォーム。ンドカと村田から柏木と山内にスイッチ、システムもたぶん442に戻った。で、北が右SHにスライド。変則左サイドコンビが解消されたことで、今度は生地が非生地化する。要するにオーソドックスな右SBのスタイルにプレーを変えた。こういうところの器用さが重用される理由なんでしょうね。とにもかくにも、スコアは動きません。1ー1のままタイムアップ。内容的にもドローで妥当だったのではないでしょうか。

オールドスクールかつクオリティ不足〜奈良クラブvsFC今治(9/9)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□万葉ダービー

奈良クラブって、5音ですよね。となると、ついつい川柳の一つでも捻りたくなる。「奈良クラブ 町田ゼルビア サガン鳥栖」みたいな575。昔の中学生の中二病心をくすぐった短歌に源実朝のがあって、575にはその下の句を無性にくっつけたくなる。すなわち「奈良クラブ 町田ゼルビア サガン鳥栖 割れて砕けて 裂けて散るかも」ってしたくなるのですが、そうすると、単に奈良クラブ町田ゼルビアサガン鳥栖に喧嘩を売ってるだけになってしまうので自粛です。

突然、短歌を詠じだしたのは、そりゃ奈良だからですよ。奈良と言えば全体的に「まほろば」ですからね。今ひとつ「まほろば」の意味がわからないですけど、とりあえず『万葉集』ですよね。で、今ひとつ意味がわからない『万葉集』の言葉といえば「にきたつ」。これは今治というより道後温泉愛媛FCっぽいですけど、まあ、そこは同じ伊予国。仲良くしてもらいましょう。というわけで、この一戦は万葉ダービーです。

 

□5位ではダメなんですか?

奈良クラブのここ5試合の戦績を振り返りますと、調子が良い。3勝1分1敗で順位も5位まで上げてきた。J3参入初年度でこの位置は、大健闘と賞賛してよいでしょう。もちろん、さらに上位を伺いにいくかとは思いますけど、ライセンスが不透明ですし、これくらいの順位で宜しいのではないかという悪魔の囁きが忍び寄る可能性もあります。なんせ、ここは奈良。「5位、どう?」って響きには慣れているじゃないですか、「五位堂」駅的に……ええ、ええダジャレですよ、はい、はい。。。

アウェイの今治は、ここ5試合で1勝2分2敗。順位としては8位ですね。こちらも決して悪くはないですけど、決して悪くないなかで監督を交代したわりには、少なくとも順位だけみれば上向いていない。いろいろと革新的な試みを実行することで、同じ県内の先輩である愛媛FCを置き去りにしようとしている今治ですが、監督人事には堪え性がないんですよね。そういうところが将来的に現場の足を引っ張らなきゃ良いですけど。

 

さてオンザピッチ。奈良は、一応、スターティングポジション的には4123だったんですかね。よくあるパターンですけど、守備時にはインサイドハーフの片方がセカンドトップ的に、もう一方はボランチ的に構える442となります。具体的には桑島がFW的にプレスをかけて、中島賢星ボランチ化する。ちなみに左SBの加藤徹也で背番号11。背番号11のSBって、ちょっとかっこよい。村井慎二みたい。

スポナビアプリのフォーメーション図を見ると、対する今治の左SBは9番の近藤高虎、互いの左SBが9番と11番って、めっちゃかっこよい、って思ったら実際には左SBではなく左SHでした(後半途中からSBにスライドしましたけど)。ちなみに今治の外国籍勢は、マルクス ヴィニシウスやらラルフ セウントイェンスやらヴィニシウス アラウージョやら、名前がかっこよい。

前半の試合内容としては、わりと似た者同士のサッカーでしたね。時々サイドチェンジを織り交ぜながら、サイドを起点にショートパスをつないでクロスを入れていく、オールドスクールなスタイル。それぞれ何度か決定機を作りましたが、何か特別なファンタジーを感じさせるという雰囲気ではない。基本に忠実、焼酎でいうといいちこウイスキーならサントリー角みたいな攻防でした。あえて取り上げるから奈良は中島賢星のゲームメイク、今治は三門のポジショニングとボール奪取能力が目立ちましたかね。

 

□最後の精度

スコアは後半に入って、すぐに動きます。先発した方の今治ヴィニシウスが、ロビングのパスを受けると、巧みにマーカー入れ替わって突破。そのままシュートしそうなところを、どフリーの千葉にプレゼントパス。千葉が確実に決めて今治が先制します。それにしても先発ヴィニシウスの強さと上手さと落ち着きが際立ったゴールで、先日町田に加入したアデミウソンを少し彷彿とさせるものがありました。

ここからしばらく奈良には難しい時間帯となります。中盤3枚のうちの一人、あるいは右SBの生駒が2CBに加わる3枚回しからボランチにボールを刺して、そこからゲームメイクしようとする丁寧なビルドアップが今治のハイプレスの餌食となり、せっかく打開しても、サイドからのクロスにもたついてチャンスをフイにしてしまう、という繰り返しが続きました。奈良クラブではダイレクトクロスが禁止されてるんですかね?ってくらいクロスでモタついていた。

逆に起死回生の同点弾はアーリークロスから生まれたもの。中島賢星がフィジカルの強さを全面に押し出して頭で折り返すと、浅川が決めきりました。ここからは奈良クラブが攻めまくる。ただ、中島賢星と金子が限界を迎えてピッチを後にしたことと、全体としてラストパスの精度を著しく欠いたことで、再び今治のゴールをこじ開けるには至りません。両チームともゴールを奪うクオリティが不足するという、いかにもJ3らしい展開のままタイムアップ。試合はドロー決着と、あいなりましたとさ。

 

熱帯夜のドロー決着〜AC長野パルセイロvs愛媛FC(9/2)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□お子様ランチダービー

ワタクシ、酸味がやや苦手でして。苦手といっても、サーブされたものを残すほど苦手ってわけではなく、自炊するにあたって果物類を買ったことがない、自分から進んで食べることはない、くらいの苦手。で、それは三つ子の頃からのことで、お子様ランチに付いてくるジュースがあまり好きではなかったわけですが、お子様ランチに付いてくる、つまりは子どもが好むジュースの代表格といえばオレンジジュースとリンゴジュースの2強ですね。

勘のよい人は、もはや気づいているかと思われますが、そうなんですよ。リンゴといえば長野なのです。青森という説もありますけど、長野といえばリンゴと蕎麦と山賊焼きと野沢菜とおやきと、それから、えーと、えーと……。ともあれ長野はリンゴ。それに対して、この日、長野に乗り込んできた愛媛FCの本拠地愛媛、それはミカンの国。宇治ではお茶が蛇口から出てくるように、愛媛ではポンジュースが蛇口から出てくる。ゆえにこの一戦は、仁義なきお子様ランチダービーなのです。

 

□方や監督交代、方や首位

ここ5試合の長野の成績を振り返ると2勝3敗です。……あれ、そこまでヒドくないぞ。とはいえ、かつて首位争いしていた順位は気がつけば15位にまで後退。残留争いも視野に入れなければならなくなってきた。ということでリヒャルトを解任して、その数日前に今治を解任されたばかりの高木理己さんが招かれました。前任者は、普段の言動からしてピッチ内はともかく、その周囲で集中できない環境を作ってしまっていた末の解任だったかもしれませんね。

一方の愛媛は2勝3分の首位。なんとなく、J3史上最大に地味な首位快走という印象ですけど、なんせ、そこは信頼と実績の石丸さんですからね、特に驚かないです。時々、「愛媛の県民性としてヨソ者を受け入れない!それが良くない!」と文句を言ってるサポーターの意見をネットで見かけたりしますが、そこは選手としての晩年を愛媛で過ごした石丸さん。なにかと快調です。

 

□ハイラインハイプレスvs堅守速攻カウンター

さてピッチに目を移すと、監督が交代した長野ですが、システムは引き続き3バックを継承。中盤は加藤弘堅のアンカーではなく、加藤弘堅と原田がダブルボランチで並ぶ形。おそらくリヒャルトの頃はいわゆるポジショナルの5レーンで、低く位置で繋いだ疑似カウンターだったかと推察しますが、高木政権下では、思いっきりストーミング。しかも、ちょっとやそっとのストーミングではなく、相手GKにまで突っ込んでいくストーミング。ちなみに長野のYS勢は粛清されることなく元気にたくさんスタメンを張ってました。

対する愛媛は戦略的にか、あるいは長野のストーミングを受けてしまったということか、前半は原則的にはリトリートして2ラインで対応するクラシカルな堅守速攻スタイル。けっこう一方的に攻めこまれましたけど、小川と大城を中心に最後の最後で跳ね返すような水際ディフェンスでしのぐ。水際ディフェンスがなかなか安定していました。ちなみに大城もYS勢です。

試合は前半からスコアが動きました。まずは一方的に攻めこまれていた愛媛がまさにワンチャンスを生かして松田力が先制ゴールを決めました。長野のハイラインハイプレスを見ていれば、まあ、そういう落とし穴はありますよね。そこから長野は少しリズムを失いますが、近藤が相手GKに単騎で玉砕プレスをかけたあたりからリズムを取り戻す。この玉砕プレスこそ困ったときに長野が戻るべき場所なのでしょう。そして左サイドを杉井がカウンターで爆走して、最後は佐藤が押し込み同点に追いつき、ハーフタイムを迎えました。

 

□最後まで見応えはあったよ

後半開始とともに愛媛の石丸監督はアジリティに秀でた小兵の佐々木を下げて、大型CFタイプのベンダンカンを投入し、明確なメッセージを送ります。つまり、「蹴っていけ」ということだったかと思われます。で、このベンダンカン、いろいろ動きが怪しいのですが、なんやかんやでロングボールをマイボールにしてしまうんですよね。こうなると、長野守備陣はそうそうハイラインというわけにはいかない。愛媛的には深みを作ることに成功します。

愛媛のシフトチェンジに加えて、もう一つ要因が。大して風が吹いているわけでもないのに、なぜかエンドを交換してキックオフしたのですが、どうやらペナルティエリア内の芝のコンディションに大きな差があった模様。前半は愛媛、後半は長野が自陣ゴール前でのボールコントロールに苦労していました。なので、後半は前半の長野みたく、愛媛が相手GKにプレスをかけまくり。前半の長野は芝のコンディション的に鬼プレスしてただけで、別に基本形がストーミングというわけでもないのかも。ともあれ、前半と後半とでは、同じ構図で攻めてる側と守ってる側が正反対になったような感じ。

ただし、前半と同じ構図ということは、つまり愛媛も前半の長野同様決めきれないということ。これも芝のコンディションの影響かしら。そうやって時計の針は進んでいくと、そこは熱帯夜の消耗戦、両チームとも〝敢えてペースを落とす〟みたいな高等な試合運びなどできません。結果、蒸し暑い中、終始ハイテンションなまま試合は進み、足を攣る選手も出てくる。そんなこんなで後半にスコアが動くことはなく、1ー1のドロー決着となりました。

 

いわきの“かまし”と体幹〜ロアッソ熊本vsいわき(8/27)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□炭鉱ダービー

夏休みも兼ねて熊本に来ております。今回は立ち寄らなかったですが、以前に熊本を訪ねたときには三井三池炭鉱の万田抗が世界遺産になった直後で、持ち前のミーハーを炸裂させて観光に赴きました。その時は語呂が勝手に脳内にはまってしまい、「万田抗、わんだほー」と脳内無限ループしていましたけど、ガイダンス施設の展示で、炭鉱夫の社会秩序、友子制度でしたっけ?やくざの組織の親分子分みたいな関係、あれを学んだときに、それまで今ひとつピンときてなかった「二十世紀末まではやくざが警察ともう一つの社会維持機能だった」という言説が肌感覚的に理解できたものです。

で、炭鉱といえば磐城なのであって、なんせ映画『フラガール』の舞台。蒼井優、可愛かったなー。ちっきしょー、もう少し自分が天才的芸人センスに恵まれていて赤色メガネが似合ったら、今頃、蒼井優とあーんなことや、こーんなことを……。というわけで炭鉱ダービーです。

 

□6ポインター

直近の熊本は5試合で2分3敗、順位も19位まで落としてしまっております。前々から言ってることですけど、大木さんは選手への評価基準が明確。いっさいぶらさない。だから、キャンプの時点で選手の序列がほぼほぼ決まってしまって、シーズンを通して変動することは稀。なので、ラッキーボーイが登場したり、意外な選手がレギュラー陣を突き上げたりってことが少ない。ゆえに負のスパイラルにハマると、そのままズルズルいきがちです。

対するいわきは5試合で1勝3分1敗、順位は20位です。去年までの躍進をリードした田村さんがライセンスの都合で一旦ひいて、ライセンス獲得とともにチーム状況もあって復帰。そこからは負けないチームになり、11試合で負けはわずかに一つ。ただし、引き分けが6つある。そんなこともあって、順位は依然として危険水域。ですが、おそらく田村さんは名将の資質を備えておりますし、イデオロギー闘争的な面もあるこの試合を制することができれば、一気にブレイクスルーする可能性もありますね。

 

□いわきの“かまし”と熊本の対応力

これまで熊本といえば、なんとなくのイメージで大木流パスサッカー、ショートパススタイルの印象を持っていたのですが、決してそんなことないですね。気づいてみれば躍進した去年もそうだった気もしますが、低い位置から繋ぎ倒してボールを前に進めるようなことはない。ボランチがコンダクトを振るうという感じでもない。典型的な疑似カウンターです。引き付けて裏抜けです、少なくともファーストアタックは。そこで裏をとれたらティキタカに移行する感じですね。

他方、いわき。こちらはストーミング。相手GKにまでプレスをガンガンとかけていく。序盤はそこの“かまし”に成功して熊本のリズムをトコトン狂わせると、なんとなくヌルッと先制点まで奪ってしまいました。

ただ、熊本は怯まなかった。落ち着きを取り戻すと粟飯原だったか松岡だったが完全に相手最終ラインの裏を取ってクリティカルなクロス。それがオウンゴールを誘うと、直後には疑似カウンターなファーストアタックからティキタカな二次攻撃へと見事に持ち込み、PA内で鮮やかに崩しきると、最後はキャプテン平川が逆転ゴールを突き刺しました。ストーミングでかましに成功したいわきも見事ですが、前半のうちにそれに対応して、あるいは慣れて、すぐさま自分たちのリズムに引き戻した熊本も、また見事だったと思います。熊本リードでハーフタイム。

 

□いわきの体幹勝ち

後半は、前半と同様、ヌルッといわきがペースを握り、コーナーキックのチャンス。「へー、熊本サポは相手コーナーキックのとき、『武者返し!』コールをするんだなー」なんて思っているうちに、そのコーナーを直接ヘッドで合わせた家泉の、この試合2点目でいわきが同点に追いつく。このあたりでロアッソ守備陣に少し疲れがドッときたのかもしれませんね、たぶん酒井匠だったかと思いますけど、そのままタッチラインを割らせてゴールキックにするシーンでの対応が緩慢となり、リカバリーを図るも、それがPK献上となり、山下に決められてしまいます。さらに、山下はセットプレーからフィジカルの優位性を見せつけるようなビューティフルゴールでダメ押しの4点目を奪いました。

この時間帯、熊本はいわきに圧倒されていました。理由は2つくらい思い浮かんで、1つ目は、この時間、後半の15分〜20分に熊本は計4枚の選手を交代させていた。その交代選手たちが、いわきの“かまし”に面食らっていた可能性がある。実際に、後半も30分を過ぎてからは圧倒的な熊本ペースで、「あとはゴールに向かってパスを出せばネットが揺れる」というチャンスを量産していましたし。交代選手がいわきの“かまし”に慣れたのだと思います。もう1つは、いわきのフィジカルって筋肉ではなく体幹ですよね、やっぱり体幹がしっかりしているスタミナが切れたあとでも、カラダのキレが維持されるんですよね。そこのカラダのキレのスタミナという部分でいわきに分があったのかもしれません。いずれにせよ、6ポインターはいわきに軍配。ロアッソとしてはお尻に火のつく結果となりました。

依田名将疑惑〜テゲバジャーロ宮崎vs福島ユナイテッド(8/26)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□JAダービー

観光も兼ねて宮崎に来ております。せっかくなんで道の駅的なところでマンゴープリンを買ってイートインしました。ついでに日向夏ジュースも飲んだのですが、その発売元が謎の「サンA」。いや、多いんですよ、サンAの自販機が、宮崎県内。ということで調べてみたら正式名称は「宮崎県農協果汁株式会社」というらしい。親方日の丸、天下のJAグループなんだそうだ。

JAグループの飲料メーカーとなれば対戦相手の福島だって黙っておりません。言わずと知れた「酪王カフェオレ」ですよ。福島が誇るソウルドリンク。まれに都内でも売ってます。その酪王さんは正式名称「酪王協同乳業株式会社」です。ウィキペディアによると「福島県農業協同組合の完全子会社である酪王乳業郡山市)とJA全農の完全子会社である東北協同乳業本宮市)の対等合併」で設立され、「 出資比率はJA全農が55%」だそうです。というわけでこの試合はJAダービーということになります。

 

□名将対決疑惑

直近5試合の成績を見ると宮崎は3勝2敗。勝ったり負けたりが極端ですし、弱きを助け強きをくじくみたいなところもありますが、シーズントータルの順位は12位。まずまず悪くない。「監督は誰だっけか?」と調べてみたら、松田浩さんなのか。そりゃ、おかしな成績にはならないはずだ。それにしても松田浩さん、長崎で監督復帰して以降、すっかり現場への情熱を再燃させてますね。小林伸二さんと松田浩さんをキープして、監督とGMなり育成担当なりのポストで4年周期くらいのローテーションをしておけば、そうそうチームは崩れなさそう。

対する福島は、ここ5試合で2勝3分。……負けてないじゃないか。あまり調子が良くなくて服部監督が解任されて、後任は内部昇格ってことなんで、持ち直しこそすれ、V字回復ってのは難しいのかなと思っていたのですが、依田さんは名将なのか?さすがは20年くらい前にワタクシがウイニングイレブンで起用していた選手だけのことはある。どういうスタイルのサッカーをするのかお手並み拝見です。

 

□クラシカルvsトレンド

さて、宮崎のシステムですが、監督が松田さんである以上、442です。これはもはや確定事項。とはいえ、CB間にボランチが落ちるのではなくGKがバス回しに参加するという部分は時代に応じてアップデートされている模様。ダブルボランチは10番と14番という前橋育英みたいな背番号の組み合わせでしたが、そのうち10番の下澤は、クラシカルな司令塔タイプですかね。なかなかプレーがエロかった。

一方の福島は夢の622システムを作り上げたらしい、ということではなさそうで、3バックに加えて両WBと前線の11番がDF登録なので、そういう表記になったらしい。11番雪江はもともとFWだったのがDFにコンバートされて、再び前線に戻された模様。スポナビ的には352表記でしたが、41番上畑が一列下がった3421でしたかね。とはいえ宮崎智彦がアンカー気味に構えるのは間違いない。宮崎智彦、さすがのサッカーIQと止める蹴るの技術でしたよ。

試合は前半の早い時間帯に動きます。中盤から放たれたナイスなショート3Dパスから流れるようにスイッチが入って、最後は柴田徹が決めて福島が先制しました。一つのグッドプレーがそのまま得点にまで結びつくのが好調なチームの証拠。福島リードのままハーフタイムを迎えました。

 

□福島の完勝

後半の開始とともに宮崎は石津に代えて山崎亮平を投入し、それに合わせてシステムを4231(攻撃時には4123っぽくも)へとトランスフォーム。左ウイングに入った山崎がタイミングよく相手の裏を突き続けて攻撃の起点となります。このあたりはJ1でも渡り合ってきた百戦錬磨のアタッカーだけありますが、他の選手も、よく山崎の動き出しを見ていたというか、共通認識ができていましたね。特にボランチの14番江口と山崎との相性は良かったように思います。ちなみに山崎、異議でイエローカードを頂戴したのですが、ユニリーバスタジアムは、イエローの時にアナウンスが入る。ロスタイムの時間もアナウンスされる。なぜなら電光掲示板かないから。こういうのもJ3観戦の楽しみの一つだったりします。

受ける福島は、元セレッソのさすらい澤上と元甲府の森を同時投入して応戦します。ちなみに澤上の背番号が9番で森の背番号は10番。9番と10番が一緒に入ってくるって、なんだかロマン。そんなロマンチック福島は、とにかく守備が固かった。3バックですから、相手が山崎亮平でなくともWB裏は取られる。でも、ここからが福島の守備の本領発揮。一旦跳ね返すと、とにかく二次攻撃を許さない。下澤とか江口が拾ったところで確実に潰す。そこが素晴らしかった。そして、やるべきことを緩めずやり続けたチームにはご褒美が与えられるもの。後半ロスタイムにワンチャンを生かしたカウンターから途中出場の長野がダメ押しゴールを決めた。福島としてはこの上なく理想的なクロージング。逆に宮崎としては打ちのめされるような敗戦になったかと思います。

結果オーライ?〜横浜FCvsセレッソ大阪(8/20)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

都道府県より市が強いダービー

大阪にせよ横浜にせよ、県庁所在都市が都道府県より強いですね。そうするとどうしても二重行政的な要素が出てくる。わかりやすいのが大学です。セレッソのホーム長居は、長居駅より鶴ヶ丘駅の方が近いという初見殺しトラップがあるのですが、長居駅の二駅隣の杉本町駅大阪市大があって、さらに南に行った堺に大阪府大があった。噂によると統合されて大阪公立大学になったらしい。

横浜もちょっと似ていて、一応、ニッパツ三ツ沢球技場から気合を入れれば歩けなくもないところに横浜国立大学があって、横浜市的には最果ての、ほとんど横須賀みたいなところに横浜市立大学がある。とはいえ、大阪の場合は府と市の重複ですが、こちらは国と市の重複なので、少し事情が違うか。ちなみに「神奈川県立大学ってあるのか?」と入力していたら〝神奈川県立保健福祉大学〟って予測変換された。ともあれ、市が強いと二重行政っぽくなるダービーです。

 

□7位と17位だが、セレッソのが不調?

最近の横浜FCは、ここ5試合で1勝2分2敗。順位としては17位。四方田さんに実権が戻されてから持ち直したかのように見えましたが、結局、実権は戻されてないのですかね。とにかく金も出すけど口も出すオーナーがチームを良くしたことなどないのに、ビジネスの成功者たるワンマンオーナーたちにはその法則が永遠に理解できないらしい。そのうち「やっぱりピッチにカズが必要だーが!」って言い出しかねないぞ。

一方のセレッソはここ5試合で1勝1分3敗。順位としては7位。実はここのところのセレッソ天皇杯やら見世物興行やらに忙しくって、リーグ戦の5試合前は6月末まで遡らなければならない。で、2カ月弱かけて5試合やってきての成績が1勝1分3敗。地味に絶不調ですやん。出ている選手のラインナップを眺めていても、少し小粒な印象も否めないというか、日本代表も射程に入る選手が毎熊くらいなのかな?喜田や舩木とかにも期待したいですが。

 

横浜FCの弱者化

さてセレッソのスタメンなのですが、言わずと知れた難読選手が〝上門知樹〟。〝上門〟を「うえじょう」ってなかなか読めません。でもね、もっと大変なのは〝知樹〟なんですよ。そりゃ「ともき」じゃないですか。平知盛は「たいらのとももり」なのであって。それを「さとき」と読めって、そんな殺生な。なんてことはおいといて、香川のボランチが良いですね。てっきり自分で持ち上がる系のボランチになっているかと思いきや、スルスルとフリーになって、リズム良くワンタッチかツータッチで左右に展開していく。もはや浦和の岩尾ですよ。そうか、香川も遂に岩尾の域に達しつつあるのか。

ボランチといえば横浜FCの井上潮音も、すっかり逞しさを増しましたね。一発で逆サイドに展開する視野の広さはこれまでも認められていましたけど、貫禄がついたというか、威風堂々とプレーしてるように見えます。惜しむらくは、前半はチーム全体としてセーフティファーストで、裏抜けを狙う3トップめがけて3バックが雑に蹴りまくるって攻撃ばかりだったので、あまりボールがボランチを経由しなかったこと。

横浜FCがすっかり〝弱者のサッカー〟に縮こまったこともあって、前半はほぼほぼセレッソがボールを握り続ける。最終ラインの進藤あたりも「いけるやろ!」って感じでどんどんラインを上げていきましたもんね。山下あたりに走られると面倒なのですが、件の進藤もそうですし、毎熊とか、スピード面でも山下に付いていけてたセレッソ守備陣。まあ、前半はセレッソのワンサイドだったかな。スコアレスでしたけど。

 

□まずは危なげなく

前半はポジショナルでもなんでもない縦ポンサッカーだった横浜FCですが、後半は繋ぐようになりました。ミシャのもとで修行したのでミシャ式3421かと思いきや、5レーン3421なんですね、四方田さん。特に近藤を右WBとして投入して以後は右の大外をとれるようになって、攻撃にもリズムが生まれてきました。442の守備を横の広さで攻略していくのが5レーン。その狙いは、あらあらながらも表現できていたようにも思われる。

ただですね、ある程度、横浜FCがボールを繋ぐようになると、セレッソ的には前半と違って流れをぶった切られるってことも少なくなったもいうことであって、要するにセレッソのリズムと横浜FCのリズムが共鳴するようになった。横浜FCのリズムが良くなればなるほど、セレッソのリズムも良くなるという、サッカーでは時々見られる現象が発生してしまいます。そういう意味ではレオセアラの決勝ゴールも必然だったのかもしれません。

試合はそのままセレッソが総体的には危なげなく逃げ切ったのですが、小菊采配には若干の疑問がなくもない。というのは、試合途中で鈴木徳真を入れて3ボランチにしたんですけど、あれの意図は?その後にマテイヨニッチを入れて2ボランチ3バックとしてのは、まあ、相手とミラーにしたのだから理解しやすい。……だったら最初から3421すりゃ良かったのに。僅か10分程度だけ433にした意味がわからん。それに試合最終盤のコーナーキックで、上がるのを自重しようとしたヨニッチに上がらせた意味もわからん。守り切りたいのか、追加点を取りに行くのか、なんか、腹が括り切れてない印象が残りました。勝ったから結果オーライなんでしょうけど。

寺沼ハンパないって〜水戸ホーリーホックvsブラウブリッツ秋田(8/19)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□フェリーで北海道に行こうダービー

今も昔も、その時々の人気者が活躍する舞台、それが始球式ですね。女性が始球式の場合、なかなかワンバウンドせずにキャッチャーまで届かせるのが難しいので、上手くいくと〝ノーバン始球式〟としてスポーツ新聞、特に東京スポーツなどのゲスいスポーツ新聞の紙面を賑わせます。

……わかっちゃいるけど、念のためパンツを履いてるかどうかチェックしてしまう。

……いや、あのですね、「ガールズ&パンツァー」も〝ァー〟はカモフラージュだと思うのですよね。。。

ともあれ「ガールズ&パンツァー」はホーリーホックともコラボってます。なぜなら舞台が大洗だから。そして大洗といえば北海道に行く〝さんふらわあ(=商船三井)〟が出入港する港町ですね。そういう部分では秋田も負けていない。秋田は北海道〜新潟〜舞鶴だったか敦賀だったかを結ぶ新日本海フェリーの寄港地。ゆえにこの一戦はフェリーで北海道に行こうダービーなのです。

 

□調子は水戸のが良い?

ここのところの水戸は5試合で1勝4分。無敗といえば無敗だし、勝ち切れないといえば勝ち切れない。勝ち点は1試合1.4。42試合なら58.8。降格はしない勝ち点率です。現状の順位は15位ですし、水戸の予算規模を鑑みるに、まずまず悪くない数字ですね。水戸は各監督のポテンシャルの最大値を発揮させられる伝統がありますし、濱崎名将化計画進行中といったところでしょうか。

対する秋田はここ5試合で1勝2分2敗。勝ち点は5。1試合平均1.0。この5試合だけなら降格しかねない勝ち点取得率ですが、なんせそこは信頼と実績の吉田謙監督ですからね、それくらいのバイオリズム低下で一喜一憂することはない。超秋田一体、やるべきことをやる、それをどこまでもやりきる、その先に感動がある。苦しいときもうれしいときも、希望を持って、秋田一体。秋田のために走り、戦っていくのでしょう。

 

 

□水戸がリードする

さて、この日の水戸は寺沼と安藤の2トップ。ちなみに寺沼星文、〝せぶん〟でなく〝しもん〟って読むのですね。完全に勘違いしてたよ。そんな水戸のスタイルは序盤に武田が永長を追い越していったように、SH+誰か(2トップの一角orWボランチの一人orSB)の2人で相手ペナ角を攻略していくレトロクラシックな442サッカー。硬いプリンというか、フワトロでないオムライスというか、パラパラでないチャーハンというか。

一方の秋田は相変わらずキック&ラッシュがえげつないないですね。この点はJ3を制したときからわかっていたことですが、この試合で改めて感じたのは攻撃時におけるライン。その上げっぷりがはっちゃけてる。何が何でも即時奪回するぞ、と言わんばかり。その際にはWボランチの両方が2トップ下のバイタル中央に突っ込んでいくものだから、ボランチ裏と最終ラインの間に少しスペースが出来ますね。ひょっとしたら3322とか3421とかシャドーなりISHが最前線の下に選手が2枚いるチームには弱かったりするかも?

さて、試合は一進一退といった趨勢でしたが、攻撃の面白みでは水戸だったかな。特に両SH。右の永長はサイドに思いっきり張って、めっちゃ大胆。反対サイドの小原はインに絞りつつ堅実にボールを回していく。そんな中で少し周囲と噛み合ってなかったようにも見えた安藤が前半終了間際にボテボテのシュートを打って、それが決まりました。水戸のリードでハーフタイムを迎えます。

 

□水戸がリードを守れず

後半に入っても秋田はブレない。やることは同じ。〝スピードを落とすくらいならそのまま特攻して玉砕する〟という哲学でラッシュを仕掛けます。それに対して水戸は、いわゆる〝試合巧者〟なゲームコントロールでコツコツと時計の針を進めていきます。そうか、今年の水戸は、あるいは濱崎ホーリーホックは、こういうサッカーなのね。レトロクラシックでゲームコントロール。往年のアントラーズ風味。

秋田はいつものように後半10分くらいにカードを切る。2枚替えってことが多い印象ですが、この試合では3枚替えで攻撃に圧力を加えます。特に右のSHは畑が先発で、途中から中村ですからFW兼用の選手を配置する。となると対面する水戸左SBとしては小兵の成瀬より、CB兼用の選手が良い。ということでタビナスが投入されました。これこれで理に適っているのですが、とはいえ、良いことがあれば悪いこともあるもので、攻撃時のキープ力が低下してしまって高い位置で時間を作れなくなります。果たせるかな、後半終了間際に梶谷のゴールを許し、同点となってしまいます。水戸としては悔しいドロー決着となりました。

試合を通じて感じたのは寺沼がエグいということ。守備時のストーン役としても、攻撃でのターゲットとしてもフィジカルがハンパない。ジャンプの滞空時間がとにかく長い。マーカーより先に飛んで、マーカーより後に着地する。ドリブルにも推進力と迫力がありますし……果たして彼は来年も水戸に所属しているのだろうか?なんてことを思った1戦でした。

最後は先輩監督の貫禄〜名古屋グランパスvs鹿島アントラーズ(8/13)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

LIXILダービー

何年か前になりますけど、LIXILでお家騒動がありましたね。そもそもなぜトステムとイナックスが合併して、かつ、トステムに主導権が残ったのかがわからないのですが、ともあれトステム創業者一族の高学歴ボンボン御曹司がガバナンスをめったこたにしたってのが根本原因。外資が株主に名を連ねる状況で、そんなやり方は通じませんよ、っていう日本における資本主義発達史上の一コマ。

結局、物言う株主が第三極として機能したようですが、第三極が第三極として機能できた背景には第四極の動きがありました。それがイナックス創業者一族。イナックス創業者一族が反トステム創業者一族の旗幟を明確にしたことで、対抗勢力に軸ができました。要するに大御所を大御所が倒したという構図です。そんなイナックスの本拠地が愛知県常滑市で、グランパスのお膝元ですね。一方、周知のように、トステムはずいぶんと長い間、アントラーズのユニフォームスポンサーを続けてきました。ゆえにこの一戦はLIXILダービーなのです。

 

□好調同士

ここのところの名古屋は、直近5試合で2勝2分1敗。順位は暫定で3位。この試合に勝っても負けても3位。安定してますね。こういうところがハセケン。スーパーでもスペシャルでもないですけど、戦力値なりの成績は出します。ある意味で、ピクシー以降の名古屋の監督に最も足りていなかった資質、それが戦力値をそのまま順位にするスキルです。そういう意味ではハセケンメイクスレボリューション、生地の少ない衣装で扇風機に吹かれるのです。

対する鹿島も、ここ5試合に限れば負けてません。2勝3分の無敗、勝ち点9。ようやく岩政体制が軌道に乗ってきたといったところでしょうか。知り合いの知り合いが岩政監督時代の上武大サッカー部らしいのですが、意外にも岩政さん、戦術家ではなくモチベーターらしいですよ。てっきり、人の心がわからないガリ勉クンかと思っていたのですが、言われてみたら、チームが勝てない時期も戦術への不満はあったっぽい一方で、不協和音でチーム崩壊、みたいな話はなかったような気もする。

 

□戦前のイメージ通りの展開

さて、この試合で名古屋は新加入の森島を先発に抜擢してきました。マテウスがいなくて、和泉もケガ?なのかな、ってなかで、この判断になったのでしょう。ついでに同じく新加入の久保はベンチスタート。同じ新加入でもJ1で何年もやってきた選手とJ2一年生からの個人昇格では当然扱いに差は出る。また3バック+両WBの5人のうち4人がCB対応可能選手というのもハセケン味がする。

一方の鹿島は安西が右のSBに入ってましたね。鹿島に行ってからはずっと左でしたけど、そもそもは右SB。左の「あんざい」は「あんざい」でも安在であるべきであって、安西は右なのですよ。けっこう苦労してましたけどね、神出鬼没な森下の対応に。審判と「いやいやいや」ってコミュニケーションをとる機会も増えて。あと中盤の4人も特徴的。佐野とピドゥカはもちろんとして、仲間と樋口もCH対応可能タイプなんで、少し古い表現で〝ハーフ〟が4枚って雰囲気でした。

試合は序盤からイニシアチブは鹿島にあったかも。岩政メイクスレボリューションはそれなりに進行しているらしく、鹿島が鹿島っぽかった。ペースのメリハリと阿吽のワンタッチパス交換でボールをキュッと前に進めていくようなところが、ふんわり黄金期の風様相を醸し出していた。けども、それも含めてグランパスペースだったのかも。ユンカーの抜け出しから野上が決めて、グランパスのリードで折り返しました。

 

□藤井藤井稲垣米本

後半に入ると鹿島は須貝を右SBとして投入。それに伴い安西が左に。いや、だから左は安在であって、安西は右なんだ、とか思っていたら、さらに岩政監督、知念を投入してきました。先発した垣田がどちらかというと左右に動くのに対し、知念は前後に動きますね。そうすると鈴木優磨とプレーエリアが重なって、結果的に鈴木優磨はゴールから離れていく。鈴木優磨との相性でいうと、知念よりも垣田の方が良いかもしれません。さらに荒木や松村が投入され、最終的にはCB佐野のファイヤーで鹿島が攻めたてる。

しかし名古屋は怯みません。これまであまりそういう強い印象はなかったですけど、内田宅哉の守備ってハードで粘り強いんですね。最後まで足を動かして搦め取る、みたいな。それから、これまでもよく知ってましたが永井謙佑のチェイシングがえげつない。交代直前までまるで衰えない。そして、当たり前のことを言いますが、永井は足が速い!超速い‼

とはいえなんだかんだで鹿島も見所は作ります。特に終盤に投入された鹿島藤井の縦突破はキレキレでした。鹿島藤井の縦突破があまりにもキレキレなので名古屋藤井はたまらずイエロー。その前にも鹿島藤井に股抜きされた稲垣が抱きかかえてイエロー。しかし、稲垣の仇は米本が打つ。今度は米本が鹿島藤井からイエロー獲得。なんて攻防を繰り返しているうちにタイムアップ。長谷川監督が岩政監督に貫禄の違いを見せつける結果となりましたとさ。