地味に強い勝ち方〜清水エスパルスvsレノファ山口FC(8/12)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ツナ缶ダービー

ワタクシ、世代的にギリギリ「大洋ホエールズ」を知ってる世代でございます。とはいえ、その頃のユニフォームは紺色で帽子には白字で「W」ってありました。聞くところによると、その少し前まではオレンジに緑という、令和的感性でいくと絶望的な色彩感覚のユニフォームで、袖には「○」に平仮名の「は」というマルハロゴが入っていたとか。

そんかマルハ、いまや北洋漁業の雄たる日魯と合併してマルハニチロですけど、こちらは南洋漁業の雄でした。いや、北洋にも行ってたかも、排他的経済水域とかが設定される前は。とはいえ基本はアフリカ沖に蟹工船的な工船を仕立ててツナ缶を作る会社で、その本拠が山口県下関市ですね。ちなみにツナ缶の代名詞といえば「シーチキン」なのですが、その「シーチキン」、実ははごろもフーズ登録商標。そして、そのはごろもフーズが本拠を置くのが静岡県清水市なわけです。ゆえに、この一戦はツナ缶ダービーということになります。

 

□ブーストが終了した両チーム

鈴与財閥が全面バックアップする清水はJ2でも巨大戦力を誇ります。鈴与財閥が全面バックアップするがゆえに低迷している可能性もなくはないですけど、ともあれ予算は潤沢。そんな清水は秋葉さんへの監督交代ブーストは一段落したものの、高水準な勝ち点取得率を維持し、ここ5試合でも3勝2分。そこに中田一三氏が〝プレイヤーデベロップメントコーチ〟として加わってた。プレイヤーデベロップメントコーチって……。プレイヤーデベロップメント=コーチなんだから、なんだかチゲ=鍋でチゲ鍋みたいな役職ですね。

対する山口はここ5試合で1勝2分2敗。エスナイデルへの監督交代ブーストは完全に確変終了ですね。もともとネタキャラ扱いされてたエスナイデルだっただけに、レノファでJリーグに監督復帰するとなったときは、一部でまあまあのお祭り騒ぎになっていましたが、いまや、祭りの後っぽい雰囲気。とはいえ世の中はお盆、夏祭りはここから、なんなら秋祭りだってある。再び祭りが起きるかもしれません。

 

□スコアは動かず

さて、ホームの清水はここのところコロリがCFでしたが、この試合ではサンタナが先発に復帰。ただ、少し衰えた説。衰えたというか、調子を崩しているというか、バイオリズムが宜しくないタイミングというか。一昨年とかは、迫力溢れるパワーで、ありとあらゆるポストワークをマイボールにしていましたが、その頃に比べると精度も迫力も0.8×サンタナになってました。ちなみにチーム全体の全体の攻め方としては、「右で作って左で仕留める」というパターンが多かったですかね。ただ、プレースタイル的には山原が右SBで左SBがと原なら、もっとスムーズに「右で作って左で仕留める」を完遂できたかも。

対する山口はシルビオと梅木をツートップとする3322というか5122だったと思いますが、流れの中では2列目に左から五十嵐・池上・梅木が並ぶ5131みたいになることも多かった。ちなみにWBは右に矢島で左が田中稔也。SHとかISHタイプを両ワイドに置く意欲的な配置。そして3バックは左からキムボムヨン・ヘナン・前。髪型に注目するとアフロ・スキンヘッド・チョンマゲ。こちらもなかなか意欲的な組み合わせです。

とにもかくにも前半はスコアレス。清水の決定力が不足しているのか、山口の守備が粘り強いのか。はたまた、その両方か。前半終了間際に山口のファールにイエローが出されて荒れかけたとき、FKを蹴ろうとした乾にエスナイデル監督がちょっかいを出して乾が苦笑い、みたいなシーンが印象的でございました。

 

□スコアはなかなか動かず

後半になるとサンタナカルリーニョスジュニオの距離感が良くなったので、2人をツートップとした442にしたのかな?と思いきや、サンタナ・乾・カルリーニョスジュニオを3トップとする343というか3421というか、みたいな形にエスパルスは変更した模様。おかげで前半以上にサンタナはやりやすそうになった。でもね、ゴールが決まらないのですよ。そもそもチャンスは前半からたくさんあったのですがゴールが決まらないのですよ。

攻めても攻めてもシュートだけ決まらないものだから、ホナウドも突進するってものですよ。で、レノファGKの関と交錯して、関は演技かリアルかは分かりませんが激昂。必然的に裏にいる清水サポーターは一斉の大ブーイングを繰り返す。。

まあ、サッカーを見てたら往々にして出会いますよね、こういう試合。で、パターンとしては相手にワンチャンスを決められて負けてしまうのが王道。でも、そうはならなかった。乾が縦パスで途中出場のオセフンを激走させて、最後はカルリーニョスジュニオが押し込みました。清水サポ的にはフラストレーションの溜まる試合だったかもしれませんが、こういう転換で勝ちきるのは、それなりに完成度の高いチームの証拠。いよいよ町田の背中が見えて……来ないんだな、これが。町田が止まらないんだもん。

 

大槻組長、ここにあり〜ザスパクサツ群馬vs栃木SC(8/6)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

泣く子も黙る北関東ダービー

昔、ネットの掲示板か何かで「〝南関東〟なんて括り(あるいは概念)はない!」とドヤってる意見を目にしたことがありますが、「ある」というのは簡単でも「ない」というのは難しい。「そんなの聞いたことない」なんてことを人生経験の少ない若者が自信満々に述べる場所、それがネットの掲示板。確かに〝北関東〟に比べて〝南関東〟という言葉が使われる機会は少ない気もしますけど、使われる機会の少ないことが直ちに概念の不存在を意味するわけではない。船橋・大井・川崎・浦和の各競馬場に謝れ、と。

ともあれ〝南関東〟と違って使われる機会の多い〝北関東〟。その北関東の雄を決する戦い、それが北関東ダービーです。特に群馬と栃木は〝両毛〟と呼ばれる地域。鎌倉幕府ができて南北移動が盛んになるまでは、専ら東山道のお隣同士として同一動線上にあった地域です。東海道の終点であった茨城とは少し毛色が違うのですね。

 

□ここ5試合で2勝3分同士

例年に比べて残留争いからは遠い場所にいる群馬は、ここ5試合で2勝3分、順位は9位です。だいたい、これくらいが組長の手腕の現時点におけるリアリティでしょうか。18位くらいが定位置のチームにベーシックなことを徹底的に植えつけることで9位くらいに引き上げる。とはいえ長倉が移籍したことの影響はおいおい顕著になっていくかもしれませんね。杉本も良い選手ですが、少しタイプが違う印象もありますし。

対する栃木も、実はここ5試合で2勝3分なんですよ。知らないうちに地味に成績を上げているらしい。時崎政権も1シーズンと半分が経過してようやく軌道に乗ってきたというところでしょうか。まだまだ順位的には17位ですが、イスマイラも加わりましたしね。さらに報道によるとレアンドロペレイラも加わるみたいじゃないですか。前半は0ー0で抑えて、残り20分くらいのところで高萩・イスマイラ・レアンドロペレイラを3枚同時投入とかしたら、けっこうチートなのではあるまいか。

 

□栃木のストーミング

そんなわけで長倉を失った群馬ですが、この試合では実質的に川本理誉のワントップで平松がセカンドトップというかフリーマン的にボールを受けるべく動き回る。ちなみに平松宗とマッチアップしていたのは栃木の平松航だったりしました。なんてことはおいといて、序盤から栃木のハイプレスに飲み込まれた群馬は、とにかく平松に受けてもらうしかないという状況になって、それゆえ平松が受けたところを狙われるという悪循環に陥りました。

逆に栃木はリズムを掴んでいた。その要因は、インで作ってアウトに振って、そこからはアーリー気味であってもなんでも、とにかくワンタッチでクロスを入れていくという割り切り。攻撃をクロスかシュートで、しかも最少手数で終わらせるというレッドブル系列なスタイルですね。守備はもちろんストーミング。徹底的に群馬のポジトラを潰しにかかります。押し込まれた群馬がどうにか奪い返して平松を探す瞬間に奪い返してしまう。ベップ時代のバルサとかバイエルンみたいでしたよ、言い過ぎですけど。

そんなわけで栃木の圧力が群馬をタジタジにさせた前半だったのですが、問題はそれが後半も続くかどうか。90分間保つかどうか。そして群馬が栃木が落ちるまで凌げるか、仮に栃木が落ちたとして、そこでもう一段階ギアを上げられるかどうか、ってな状態でハーフタイムを迎えました。

 

□後半の栃木はストーミングに失敗

案の定といいますか、栃木は前半の勢いが後半には続きません。というか、後半最初のセットプレーから群馬が平松のゴールで先制したことで出鼻をくじかれます。それから、よくわかりませんが、群馬が外回しを増やしたことでプレスがかかりづらくなったというのもあるのかもしれません。もっとも、それ以上に目に付いたのは杉本のパッションですけどね。杉本、相変わらず情熱的ですねえ。審判にも突っかかっていきますし、取られた取り返しに走る感じとか、ヴェルディ時代からなんら衰えがない。

杉本のテンションに対抗すべく栃木は大島に替えて小堀を投入します。これで前線3枚が山田・根本・小堀になって、背番号でいうと36・37・38の連番です。となると群馬としても内田と北川を投入せざるをえない。これに伴いシステムは352へと変わる。北川と杉本が両WB。2人ともFWなりWGなりを本職とする選手なので、ワイドの選手には守備の技術ではなく、一にも二にも強度を求めるという大槻監督のメッセージでしょうか。

こうなっては栃木としても秘密兵器のイスマイラを送り込むということになるわけですが、実はこの日は群馬にもジョーカーがいた。負傷から復帰してきたキャプテン畑尾ですね。そうか、こんな隠し球を用意していたのか。そして、明確なメッセージは選手の迷いを除去します。ロスタイムになってからのコーナーフラッグ付近での時間稼ぎ、なかなか堂に入ってましたよ。というわけで、順位通り、着実に監督のイズムが浸透しているチームが勝つという試合になりました。

問答無用の実力差〜ヴァンフォーレ甲府vsヴィッセル神戸(8/2)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□VKダービー

ヴァンフォーレ甲府には名将と過ごした日々があります。1人目の名将は大木武で、もう1人の名将が城福浩です。どちらも鮮烈な記憶として残っておりますが、ここでは城福浩との日々を強調したい。なんせVFKがJFKと過ごした日々ですからね。ヴァンフォーレ甲府って自らを「VFK」ってイニシャル化するんですよね。

とはいえ「ヴァンフォーレ」と「甲府」なのだから「VK」で十分なわけですよ。にもかかわらず、なぜ「ヴァン」と「フォーレ」と「甲府」に細分化するのか?おそらく「VK」だと、他のクラブと重複するからではないか。そして、重複するもう一つのクラブが他でもないヴィッセル神戸ですね。「ヴィッセル」と「神戸」で「VK」。ってことはヴィッセルも「ヴィッ」と「セル」と「神戸」で「VSK」を名乗るべきではないのか?

 

天皇杯の王者そろい踏み

この試合は天皇杯だったわけですが、甲府は言わずと知れた現タイトルホルダー。王者として今大会に臨んでいるわけです。当然ながら、ここ1年以上、天皇杯では負け知らず。この後にACLも控えていますしね。「甲府から世界へ」。いや、甲府から世界に行くのって大変そう。なんせ、近くに空港がない。1番ストレスフリーで着けそうな松本空港は国内線のみ。たぶん、成田に出るんですよねえ。その時点で一苦労。

天皇杯王者といえば、もちろん神戸も負けていません。2019年の王者が神戸です。確か、スーパーカップ埼スタで生観戦したんだよな。おそらくあれがコロナ前最後の生観戦。PKにまでもつれ込んで、そのPK戦で10人近くが外し続けるという珍しい光景を目の当たりにした。ちなみに2020年の天皇杯は、コロナ厳戒モードにつき、Jリーグからの参加が4チームだけだったのですが、喉元過ぎればなんとやらで、奇麗にそんなことは忘れておりましたよ。

 

□前半はやや甲府

すっかり4ー3ー3が堂に入ってきた神戸ですが、この日は斉藤未月・山口蛍・川崎修平の3センターハーフ。アンカーが斉藤未月で、ISHは川崎がやや前、山口蛍がやや後ろという役割分担なので山口蛍と斉藤未月のダブルボランチにも見えた。また、攻撃でビルドアップするときは右SBの酒井高徳が高く上がって、左SBの初瀬がステイする関係性になります。

要するにスリーバックっぽくなるわけですが、その分、初瀬を加えた3DFの脇にはスペースができる。ということで甲府はそこのスペースを上手に使っていきます。甲府最終ラインから一発で裏返すフィードが繰り出され、前線4枚がそこに走り込んでいきます。尤も、甲府がわざと相手を引きこんで裏返しているかというと、多分そうではなくって、ストーミングな神戸との噛み合わせが良かったものと思われます。

そんなわけなんで、ポゼッション率はともかく全体のペースは、どちらかというと甲府にあった。甲府の選手の方が自分たちのリズムでプレーできていたと思われます。その流れから、先制点も甲府。ものの見事にドンピシャなオウンゴールが決まったように見えましたが宮崎のゴールとアナウンスされました。FKのキッカーが宮崎だった?それとも神戸の大柄なCBの前に入り込んだことにより、メインスタンドからは完全に宮崎が隠れるかたちになっていたのかしら?ともあれメリハリのあるプレスで神戸にリズムを作らせなかった甲府のリードで折り返します。

 

□後半は完全に神戸

後半の頭から神戸の吉田監督は魂の3枚替えを敢行します。いや、そんな勝負手を打ったのではなく、単にローテーションでの交代だったかもしれない。ともあれ大迫と武藤が入ると、神戸はまるで別のチームになりますね。前半からフルスロットルで走りまくっていた甲府が落ちたという要素もありますけど、もう、圧倒的に神戸のペース。そして縦横無尽に起点となりまくっていた大迫が開いてクロス。オウンゴールを誘発します。最後はオウンゴールでしたけど、必然の同点ゴールでしたね。

その後も神戸がリズムに乗り続ける。それでも甲府は宮崎の突破や、中盤での強度でどうにか対抗していましたが、その中盤でのしばきあいも神戸が完全に制するようになる。武藤の勝ち越しゴールは、まさにそういうかたちから。武藤のゴールは佐々木のシュートのこぼれ球でしたね。佐々木も大迫の投入で息を吹き返していて、真ん中に構えた大迫が開いたり引いたりして空いたCFのスペースで上手に振る舞ってました。似非9番タイプなんですかね、佐々木?

甲府としてはミラクルを起こさないと試合の趨勢は変わらないということで山本英臣を投入。武藤に四苦八苦していたマンシャ、尻上がりに高い位置に上がるようになった初瀬への対応が苦しくなった右サイドをフォローする目的だったと思いますが、それでも神戸は手を緩めない。大迫とパトリッキがダメ押しの3点目と4点目を決めます。この2点に象徴されるように、最終的に選手の個人能力の合計値の差がゴールの数の差としてあらわれた試合だったと思います。

 

どこの強豪?〜アスルクラロ沼津vsFC琉球(7/30)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ビールの国の物語

去年は愛鷹に来なかったんですよね。いや、沼津には来たのですよ。そうしたら、駅前にアスルクラロのレプリカを着てるけど普段スタジアムにはあまりいなさそうな人がたくさんいらっしゃった。世に言う「ラブライブ!の乱」です。声優さんご来場ということでスタジアムが非サッカー関係者にジャックされた日。「これはいかん…」とスタジアムへのシャトルバスに乗ることなく東京に戻ったのでした。

というわけで2年ぶりの愛鷹、ベアードビールを飲むのも2年ぶりかな。三島あたりで瓶を買って飲んだかも。ともあれ沼津は地ビールの聖地的な一面がある。とはいえ、地ビール、ご当地ビールといえば元祖は沖縄なわけで。泣く子も黙るオリオンさん。個人的にはフルーティさより苦味を求めるのでオリオンさんよりベアードさんのが好みだったりしますが、オリオンさんも大好きです。

 

□宮崎最強説?

さて、最近5試合の沼津は3勝1分け1敗で、試合開始前の段階では暫定5位、勝てば4位という順位。タンスにゴンゴン、ゴン中山は名将なのでしょうか。もともと明るいパリピとしてセルフプロデュースしている反面、誠実でクレバーなお人柄についても、感じている人は感じていたことなので、指導者としての適性のあることは十分に予想できたのですが、それにしても期待以上の結果をここまでのところは残しております。

アウェイから乗り込んできた琉球はここ5試合で2勝1分け2敗ですね。順位は15位。喜名さんになって多少のブーストはありましたが、そこそこのところで落ち着きつつあります。ちなみに、ここ5試合で沼津にも琉球にも勝ったチームがあって、それが宮崎。「なんや、テゲバジャーロ、強いんか?」と思って順位表を確認してみたら琉球のすぐ上の14位。リーグ戦とは、えてしてこういうものですね。なんにせよ、沼津と琉球に順位ほどの実力差がないであろうことは間違いないかと思われます。

 

 

□一進一退

ゴン中山率いる沼津ですけど、右SBの安達(「あだち」ではなく「あんたつ」、安在達弥)がアラバロールするんですね。アラバロールどころが、そのままハーフスペースをスルスル走ってCFみたいになってしまう。というよりも3CH(持井・鈴木・菅井)と安達の4人のうち2人がダブルボランチになって2人がシャドーになる、みたいなことになってるんですね。

対する琉球は至極オーソドックス。カウンターからのサイドアタックが基本形で、特に左SHの白井がキレキレだったのと、右SB高安がスペースを駆け上がてクロスを入れるシーンが目立ちました。とりあえずサイド、そしてサイドからはさっさとアーリークロス。そのまま攻撃はシュートで終わらす。ゆえに積極的にミドルシュートを打っていく、そんなスタイルです。惜しむらくは最小手数でアタッキングを完結させるには、やや技術面のクオリティが不足していたことでしょうか。

ともあれ、試合は序盤に動きます。持井がボールを持って鈴木に預けると、鈴木は再び持井を使って、そこでPKを獲得。持井が自ら蹴り込んでアスルクラロが先制しました。そこからは、まあ、一進一退ですかね。中盤で奪ってからのショートカウンターとか、相手FKをひっくり返したロングカウンターとか、琉球の方が僅かに狙いを表現できていたようにも思われましたが、スコア自体は動いてませんし。一進一退ということでよろしかったかと思います。

 

□そして完勝へ

ハーフタイム明けのタイミングで琉球は切り札の阿部拓馬を投入します。なんといっても存在感がありますよね。阿部が最前線で野田が下の位置に引いたでしょうか。それに対して沼津は和田育を投入。この選手はなかなか途中出場が上手いですね。違和感なくゲームに入っていき、フォアチェックやらリトリート時のポジショニングやらを勤勉にこなしておりました。

つまりゴン中山監督は高安を抑えにかかったと思われるのですが、その高安にアクシデント。思いっきりミドルシュートを打ったところ、思いっきり蹴りすぎたらしく負傷交代(たぶん大事には至らないパターン)。こうやって右サイドがリズムを失ったことで琉球は失速、徐々にアスルクラロがペースを取り戻しはじめます。

中山監督が沼津に仕込んだのは、おそらくネガトラの部分ではないでしょうか。森夢真とか、あまり守備のイメージのないアタッカー陣もネガトラの切り替えが素早かった。そこは徹底していた。これはなかなか仕込めるものではありません。それからもう一つ素晴らしかったのが、攻め込まれたゴール前ではしっかりカラダをはるところですね。GK武者が当たりまくっていたこともありますが、ずっと攻められっぱなしのなか、しっかり凌ぎきったのは特筆に値します。そして、我慢し続けたご褒美が後半35分を過ぎてから与えられました。途中出場の佐藤と徳永が続けざまに殊勲の追加点を挙げると、締めくくりにはキャプテン菅井のゴール。序盤に先制して、相手の反撃を凌いで、終了間際に突き放す。強豪の勝ち方でアスルクラロ琉球を下しました。

勝負は細部に宿る〜湘南ベルマーレvsアビスパ福岡(7/16)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□一癖ある男たちが住む地域

アビスパ福岡の応援歌の中に「博多の男なーらー♪」ってヤツ、ありますよね。〝博多の男〟って、どういう概念なんですか?なんとなく厳つそうなイメージがありますけど、実態はどうなんでしょうか。以前、当時のレベスタを訪ねたとき、シャトルバスでヤンチャそうな若者がたまたま隣にいて肩がぶつかってしまった真面目そうな若者に因縁をつけてたのは見ましたけどらこういうイメージ?いわゆる〝九州男児〟とは異なるイメージなのでしょうか??

ベルマーレベルマーレで、〝湘南ボーイ〟ですよね。〝湘南ボーイ〟の響きは〝九州男児〟とは対極的。あんまりケンカとかはしなさそうですけど、よくよく考えると、湘南乃風的方向性の人たちはケンカとかしそうか。ああいう、逗子とか鎌倉とかの爆音な海の家にたむろってそうな人たちも〝湘南ボーイ〟なんですかね?なんか、いまだに加山雄三のイメージですけど。

ともあれ〝博多の男〟と〝湘南ボーイ〟のダービーです。

 

□明暗

アウェイに乗り込んできた福岡ですが、天皇杯を含むここ5試合の成績が4勝1敗。10試合だと6勝4敗。順位としては12位。悪くないですね。水戸の監督を務めて以降、長谷部さん、すっかり安定の名将です。アビスパには「5年ごとのジンクス」っていうのがあるそうですが、このままいくと2025年にJ1昇格するのは難しいかもしれません(J2にいないとJ1昇格はできない)。とはいえ、そろそろサポーターさんからは「長谷部さんには限界がある!」って批判が湧き上がってきそうでもある。

ホームに迎え撃つ湘南の成績は5試合で1勝1分け3敗。10試合だと2勝2分け6敗ですが、その2勝はともに天皇杯。肝心のリーグ戦に限るとお世辞にも良いとは言えない。山口さんもなかなか評価が難しい。ついでに言えば前任の浮島さんも評価が難しかった。「良くないぞ」と思う反面、「予算規模的にはこんなんか」とも思う。とはいえ、降格となると、「予算的に致し方あるまい」とは言ってられません。山口監督にとって正念場なのは間違いないでしょう。

 

□何度目の全盛期か

最近の福岡は前と井手口がWボランチを組んでるんですかね。良いですね、ボールを刈りとれるタイプが2枚並ぶと。つなぎができないわけでもないですし。ここが安定しているからか、そういうことではないのか、アビスパは両SHが金森と佐藤凌我でともにFW対応もできるタイプ。ゆえに、攻撃時は割り切った424っぽく攻める。高さにスランプはないことを立証し続けるウエリントンが競り合って、こぼれ球を拾ったら、残り3枚のアタッカーはそのままシュートを模索するような感じ。

対する湘南は、おそらくパスを回しながら相手の視線と異なる角度に、できれば一人飛ばしたパスを出したい感じみたいですね。序盤はそこの精度に四苦八苦しておりました。しかも、足下にはそれなりに定評があるはずの大野あたりができてなかったので、「これは、そもそも非現実的なクオリティを前提としないと機能しないサッカーか?」とも思ったのですが、そうでもなさそう。いまの順位とは思えない程度には、それなりにちゃんとできていた。

特に山本脩斗が、そのあたりのプレー、上手かったですね。というか山本脩斗、戦術理解度といい視野の広さといい落ち着きといい読みといい、めっちゃ存在感を示しまくりじゃないですが。不惑に手が届こうとしている年齢で、サッカー人生何回目かの全盛期を迎えつつあるのではないかとさえ思えてくる。とにもかくにも前半は0ー0で折り返しました。

 

城後寿の価値

さて、後半。5人交代制となってからのパターンとしては両チームとも選手交代が遅めだったのですが、それもそのはず、たぶん湘南はやりたい攻撃がそれなりにできてたんですよね。ただ、一つ問題があって、福岡は福岡で、やりたい守り方ができてたっぽかった。ゆえに湘南も福岡も、バランスを崩さないことが優先されて、おいそれとはカードが切れなかったと推察されます。

そして、時間が経過すればするほど、福岡の守備の波長が湘南の攻撃の波長に合っていった。得点が動かない以上、「やりたい攻撃ができてる湘南とやりたい守備ができてる福岡」という構図な続くほど、実質的には福岡が優位になっていく。

そんなわけで、湘南は大橋と山田を下げて、平岡と鈴木という売り出し中の若手を投入しました。そして、それが勝負を分けたのかもしれません。セットプレーからドウグラス・グローリが決勝点を奪いとったわけですが、両チームの違いは湘南が途中交代カードとして若手を切って、福岡は若手の鶴野に加えて大ベテラン城後寿を出してきた。個人的には、球技の途中出場というのは特殊能力が求められますので、ベテランとか飛び道具とかをベンチに置いておくべきだと考えてます。そういう意味で湘南のベンチには「スタメンで出るより途中から出た方が個性が発揮される」というタイプが、特に攻撃のカードにいなかった印象です。逆に福岡の城後なんて、最終盤は3CBの右をやっていた。こういうところ、勝負は細部に宿るということを改めて教えてくれる一戦となりました。

 

今年のヴェルディは後半が良いらしい〜東京ヴェルディvs徳島ヴォルティス(7/15)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□東九フェリー

世の中からバスが失われつつありますね。理由はもちろん乗車率の低迷が最大なんでしょうけど、同時にドライバー不足も深刻。そんな中で脚光を取り戻しつつあるのがフェリーなんですが、ワタクシ、フェリー好きです。きっかけは仙台―名古屋航路が快適過ぎたから。そして、今回のマッチアップである東京と徳島を結ぶ東九フェリーも好きです。

なんといっても、食堂がない代わりにオール自販機な飲食コーナーがめっちゃ充実している。フェリーは豪華旅行ではないのですよ、チープなカップラーメンをすすってこそのフェリー、発泡酒や最近は見かけなくなった第3のビールを飲んでこそのフェリーです。ちなみにこの航路、太平洋を突き進むので、伊豆半島を超えると波が高くなります。ゆえに、それまでに寝てしまうのがベストです。

 

□戦後文化的な諸相

さて、ヴェルディですが、天皇杯で久々の東京ダービーが実現しましたね。少しFC東京サポーターのルール違反が顕在化したりして。Jリーグ草創期には、「プロ野球(=戦後文化)のカウンターカルチャー」としてサッカーが社会的に位置づけられていて、その中でヴェルディ=読売は、〝巨人大鵬玉子焼き〟の戦後プロ野球文化的性格を一身に引き受けたヒール、既得権益ブルジョワでした。しかし、いまやFC東京が既得権益側になったはず。今さらFC東京側にムキになる必要がどこにあったのか?

対する徳島は今シーズンのスタートダッシュ大失敗からV字回復を遂げた、はずなのですが、それも一段落しつつある印象です。それこそプロ野球的な戦後文化ともいえる「スポーツ新聞的ベタ」で表現すると〝ドロー沼〟ってやつですね。その中で水戸という何とも絶妙な伏兵に一刺しされているところが危うい。下位チームが勝手に自滅しているので直ちに降格の危険性とかはないでしょうが、せっかくの柿谷―森海渡のコンビを無駄遣いしないよう期待したいですね。

 

□クラシカルなジャパニーズサッカーと欧風トレンデイ

この日のヴェルディはたぶん442。4231とか4411と言われればそうかも。攻撃の形は相手ブロックの外を回しながら様子を見極めつつ、少しずつ隙間が広がったところで裏を突いていくような感じですかね。キーマンは染野。染野はビルドアップの際にボランチの高さまで下がってくる。要するにフリーマンなんですよね。ゆえに442か4231か4411かわからない。ただ、引いた染野のミドルパスは相当クオリティが高い。

一方、徳島は最終ラインで相手をおびき寄せつつ、そこから一気にツートップに当てていく。ポジショナルの常道ですね。日本ナイズしているところは、一人飛ばしのパスとかが、いわゆるロングキックではなく、球足の長いグランダーなところでしょうか。このやり方だと、中盤で引っかけられるリスクが高い分、3MFがどれだけ相手の中盤を引きつけて、ボールを受けることなくパスコースを作れるかにかかってくるのですが、そのあたりはなかなか巧みでした。

総じてクラシカルなジャパニーズサッカーのヴェルディは「ずっと俺のターン」志向的で、奪われるくらいならいったん下げて攻め直す。確率を求めてバックパスも辞さないところがあります。逆に欧風トレンデイな徳島は、バレーボール的な考え方で「まずは自分たちのターンをシュートでやりきる。攻め直すくらいなら、シュートかクロスをさっさと蹴って次のターンに備える」という感じ。好対照な両チームでしたが、前半のチャンスの数は同じくらいだったかと思います。

 

□判定があればヴェルディの勝ちだと思いますが…

勝ち点3を目指す城福監督は後半頭からジョーカーの甲田を投入。ちゃんと守備はします。奪えませんが。そして攻撃では常に縦パスを狙う姿勢が素晴らしい。そして、甲田の位置でタメができるようになったことでヴェルディのラインは前半に比べてぐっと高くなった。ストーミングに近いくらいのハイプレスで徳島を押し込み続けます。

勝負とみたのか城福監督はさらに北島を投入してシステムを433に変更し、ハイプレスの圧をもう一段階あげる。一方的に押し込む。しかし徳島も浮き足立ちません。ブレずに淡々と相手を裏返すポジショナル的速攻(最短手数でシュートまで)を精密機械のように繰り返す。このあたりの再現性はまあまあ見事でした。

とはいえ旗色は圧倒的にヴェルディ。やっぱり城福監督って凄いですね。何が凄いって、後半も深い時間帯になってもプレス強度が落ちない。落ちないどころか尻上がりに高まっているようにさえ見える。徳島も渡がピッチに送り込まれると少し持ち直しましたが、その前に投入された100年に1度の逸材がなかなかハイフライフロー2連発とかツイスト&シャウトなどをくらわすことができない。

後半も前半と変わらず決定機は両チーム同じくらいありましたが、両GKも存在感を示しつつエリア内での粘り強い守備が破綻せず、スコアレスドロー決着となりました。城福さん的には悔しさと仕方なさが半々くらいでしょうか。ラバインさん的には、勝ち点1を死守できた満足感があるかもしれませんね。そういう一戦でございました。

意識高い系の3142より、みんな大好き442〜ジェフユナイテッド千葉vsツエーゲン金沢(7/9)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□持ちやすいダービー

ワタクシ、フェリーが好きなのですが、そのきっかけとなったのは仙台から名古屋へ向かう航路に乗ったから。それで体感したのが、犬吠埼の波が高いということ。ちょうどビュッフェ形式の夕食を食べていたんで、揺れの影響をモロに受けました。千葉県が所在する房総半島は太平洋に突き出ていて尖っている。

しかし、突き出ていて尖っているという面では金沢も負けません。泣く子も黙る能登半島がありますからね。とはいえ日本海側のフェリーってさほど揺れない。江戸時代とかの廻船も日本海側がメインですし、海流が素直ということなんでしょうか。そういう差こそあれ、千葉も金沢も突き出ていて尖っている。往年のバカリズムのネタ、「都道府県の持ちかた」でいくと、迷う余地もなくそのまま掴めば良いもの同士のダービーがジェフvsツエーゲンです。

 

□ボトムサードを抜け出せ!

さて、ここのところの千葉ですが、直近5試合の成績は1勝2分2敗で15位。良くないですね。しかも天皇杯を含めて大宮に2連敗してしまってます。良くないです、全く良くないです。前日に讃岐の米山監督を見て、「あの頃の桐蔭」と一括りにしちゃいけないと痛感しましたが、〝意識が高いこと〟が目的化し、意識の高い自分に自己沈溺の結果、最もベタなサッカーにすがりつくってことにならなければ良いのですが。(←予言になってしまった)

アウェイの金沢は、柳下さんの長期政権。成績的には頭打ち感も漂いますが、そもそも強化費が頭打ちしていて右肩上がりじゃないのだから、成績も右肩上がりになるはずがない。ツエーゲンサポーターの中には「柳下さんは限界だ。そろそろ決断を」みたいは気持ちの人もいるかもしれませんけど、なくして初めてわかる柳下さんの貴重さ。安易に監督交代をすると、それがそのまま地獄の始まりになるかもしれません。予算規模を考えると残留できれば御の字なので、堅実に歩を進めていただきたいところです。

 

□ともにクオリティ不足

さて、オンザピッチ。千葉のシステムは、これまで攻守で少し変えたりしながら442と記されたりもしましたが、この日は攻守に完全なる3142。高橋・鈴木・佐々木ー小林ー末吉・田口・見木・日高ー呉屋・新明を維持して、「守備時は日高が落ちて4バック」とかはしない。なんなら末吉の方が落ちる。ちなみに2トップは色白王子の呉屋と、相方が新明。この新明がティーンエイジャーらしく真っ黒に日焼けしてる。もはや松嶋と中島。オセロ2トップでございました。

他方、金沢は、やっぱりしっかりとトレーニングされてましたよ。ボールの奪いどころとかブロックの作り方なんかでバラバラな印象はなかったですし、カウンターの際のボールの運び方もルールがあることが、なんとなく伝わってくる。敢えて一つ問題点を述べると、基本に忠実な高校生サッカーなんで、高校生のメンタリティがないと遂行できない。でもプロの選手はどうしてもちょいちょい生意気なプレーを入れ込んでしまう。そのあたりの折り合いが課題でしょうかね。

とまあ、どちらかというと「組織的にはできてる」って論調で述べてきましたが、実際には双方ともに前半戦はビルドアップに四苦八苦していて、その要因は相手の守備というより、たんなるクオリティ不足のようにも見えた。互いに何回かチャンスを作ってましたが、それも相手の対応が緩慢だったり、あるいは攻撃のためにポジションがずれてスペースができてたり、そういう隙ができた結果という印象です。

 

□魂の6枚替え

後半に入ると、どういうわけか、途端にジェフ3バックが地に足つかない感じになりました。PA内でのボール処理が危うかったり、スペース管理がまるでできなかったり。特に鈴木大輔が後半最初の15分、なかなか怪しかった。マッチアップしてたのが星稜の先輩である豊田陽平だったから遠慮したんしょうか?尤もジェフ守備陣を困らせたのは豊田というより相方の大石でしたかね。ジェフ守備陣は、まるで大石を掴まえられてなかったです。とはいえ大石を含めた金沢のアタッカー陣は、ラストパスなりシュートなりに持ち込めないんですよね。だったら率は低くともダイレクトでシュートを打てばよかったのにってシーンが続出しました。

なんて中で状況を打開すべく両監督とも魂の選手交代です。金沢の柳下監督が魂の2枚替えを敢行すると、それと同じタイミングでジェフの小林監督はなんとスーパー魂の4枚替えときたもんだ。さらに、それに付随してシステムを超シンプルなボックス442にトランスフォーム。そして、それが的中。ブワニカのポストワークやSHとSBによるサイドの崩しで攻撃があっという間に活性化。決勝点はスペースを爆走した途中出場の米倉によるダイレクトクロスに、やはり途中出場のブワニカがバイシクルでポストに直撃させ、そのこぼれ球を拾った見木が決めたもの。

そんなわけで、前目5枚で唯一ピッチに残した見木が決めた虎の子の1点を守ったジェフが、貴重な勝ち点3を積み上げました。

ちなみに米倉が投入されてから、右サイドの相棒である高橋の情緒が覿面に安定したように見えました。システムがシンプルになった影響もあるのでしょうけど、たぶん、あれですな、高橋は米倉のこと好きだな、あれは。

 

米山監督にごめんなさい〜YS横浜vsカマタマーレ讃岐(7/8)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□流星うどん

讃岐というのは香川県旧国名ですね。あえて「讃岐」を名乗るのは、そちらの方が通りが良いからでしょうか。で、日常で耳にする「讃岐」と言えば、なんと言っても讃岐うどんです。とはいえ麺類対決ならば横浜だって負けていません。そう、横浜市を中心とする神奈川県民のソウル麺類といえば、言わずと知れた(?)、サンマー麺ですね。

ちなみに香川から連想される著名人といえば、梨園の世界では「照之」ですが、少なくともサッカー界では「真司」ということになります。一方で横浜といえば、、、芸能の世界では「流星」ですけど、サッカー界では該当者なしですかね。同じ神奈川県でも、川崎なら「颯太」や「修平」、平塚なら「次郎」がおります。さすがになかなか相模原さんはお見かけしませんが、町田ならば「浩樹」ということになるでしょうか。

 

□米山監督への先入観

さてアウェイから乗り込んできた讃岐ですが、ここ数年の例に洩れず、頂点よりも底に近い順位におります。そういう意味では例年通りですので米山監督の責任ではなさそうですが、常々書き連ねているように、ワタクシは「あの頃の桐蔭」に対して、たいそう懐疑的です。なんというか、あの頃の桐蔭の指導者は、その後のキャリアの至るところでトラブルを起こし、結句、パワハラ教員という最終職歴になった人ですし、そういう人物に心酔したのが、米山監督を筆頭とする、あの頃の桐蔭な面々なわけで。端から見れば教祖と信者の関係にしか思われないのですよ。

それに対してYS横浜の星川さんイメージがクリーン。「教祖」と「信頼すべき指導者」を分ける紙一重がどこにあるかはわかりませんが、ともあれ、教祖ではなく信頼すべき指導者である星川さんに率いられたYS横浜はここ5戦で2勝1敗2分。YS横浜の予算規模からすれば、「名将が名将している」と評価して問題ないように思われます。相模原が風前の灯火な現在、神奈川からJ3の火が消えずに済むかどうかは、星川さんの双肩にかかっているといって過言ではない。頑張ってもらいたいところです。

 

□岩岸の躍動

さてオンザピッチ。YS横浜は左サイドに中里ではなく古賀を起用。この前に試合を見たときは左WB中里も悪くないなと思ったのですが、古賀の方が序列は高いのでしょうか。さらに、この日は5131ではなく5122で、2トップの一角としてフィジカル系おもしろ外国人ことアローヨが抜擢されていました。必然的にプレスバックは福田の役割となるので、そのあたりが良かったのかどうか。

他方の讃岐は、古賀が起用されたYS横浜左サイド、讃岐目線では右サイドを中心に攻略にかかる。イメージ的には右WG下川がアジリティで相手の組織をかき乱し、できたスペースに右SBの川崎が走り込んだり、あるいはその結果相手最終ラインが前方ばかり気を取られたところにアタッカー陣が裏抜けにかかるような流れが多かったですかね。YS横浜はそれに対応すべく、あるいは当初からの形だったのか、古賀は特に攻撃時はボランチの位置に絞って、替わりに道本が幅をとるような攻撃が増えました。古賀が追い越す動きを自重したというか、追い越さない役割に徹することで守備の穴を埋めにかかったように見えました。

そんな試合は序盤からしっかり動きます。まずはキックオフからほぼほぼファーストアタックでYS横浜が電光石火の先制点を奪います。とはいえ讃岐は一歩もひかない。右サイドの崩しから相手ライン裏を完全に攻略した岩岸が同点ゴールを奪うと、勝ち越しゴールでも岩岸が躍動。高い位置でのボールハントからテクニカルに抜け出すとクロスを送る。それを赤星が決めて、讃岐リードで前半を折り返しました。

 

□意識高くないからこその確かなる手腕

YS横浜の星川監督はアローヨを諦め、後半開始から萱沼を投入し、福田を頂点に左から道本・佐藤・萱沼と並べる5131へとシフトチェンジ。強気な選手交代は米山監督も負けてません。前半リードしたキーマンと目された岩岸と下川を下げる。

そんな米山監督の積極采配に気後れしたわけではないでしょうが、後半は風下になったYS横浜はモロに逆風の影響を感じさせてしまう。YS横浜は引きつけてからのロングパスが武器ですので、確かに風下だと難しいのですが、逆に前半の讃岐はさほどそこの影響を感じさせなかっただけに、YS横浜の苦闘が強調されます。

というか、前半風下になりながら2点を奪った讃岐って、冷静に考えて凄いですよね。良かったんですよ、讃岐、前半から。YS横浜に攻められながらも、相手が人数をかけた結果できたスペースを的確に突いたカウンターを連発してましたし、サイドからクロスを入れて弾かれた後のセカンドボール回収も素晴らしかった。

いやあ、「あの頃の桐蔭」なんてレッテルを貼り付けて色眼鏡で見ていた自分を叱りつけたい。米山監督には「ごめんなさい」と謝らざるをえない。そもそも米山監督のサッカーって、森岡さんとか戸田さんとか小林慶行さんみたいに〝意識高い系〟じゃないんですよね。ポジショナルでもストーミングでもない。敢えていえば強かった頃の鹿島とか、今シーズンの町田のようなスタイルです。オーソドックスだからこそ、指導者の人間力が試されるスタイルで、それなりに形ができつつあることを正当に評価したいと思います。

というわけで、試合は2ー1で逃げ切った讃岐が勝利を収めました。

視線の先にはJFL?〜SC相模原vsヴァンラーレ八戸(7/1)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□夢の超特急

ワタクシが『小学○年生』とかを読んでいる頃、「東北新幹線、ついに開通!」みたいな記事を目にした幼き記憶があります。その時の東北新幹線の始発駅は、確か、大宮駅だったと思います。終着は盛岡。その後、東北新幹線は山形に行ったり、秋田に行ったりするようになったのですが、盛岡がゴールという時代が長かった。そんな東北新幹線、ようやく盛岡より北に延びて、その際の終着点が八戸だったわけです。

そして新幹線が地域社会に与える影響の「理想と現実」が明確になりつつある中、それでも「高速鉄道が明るい未来を連れてくる」という高度成長期幻想は捨てられず、結局は昭和モデルの固執としか思えないリニアモーターカー事業もなんやかんやで進捗させようとしている。その夢の超特急の停車駅になるのが橋本、SC相模原のお膝元ですね。ゆえに、この対戦は「高速鉄道は明るい未来を約束する(地域の交通インフラは壊滅する)ダービー」なのです。

 

□ホワイトカラーvsブルーカラー

まあ、リニアモーターカーが出来たところで相模原市橋本地区への影響は良くも悪くも限定的だと思われますが、その頃には相模原からJクラブがなくなっている可能性はあります。絶不調です、SC相模原JFLへの転落危機です。かつての森岡隆三といい、現在の千葉の小林慶行といい、そしてSC相模原戸田和幸といい、〝あの頃の桐蔭〟な面々は軒並み「理論と理想は立派ではあるが……」になってますね。

アウェイの八戸は、Wikipediaを調べたところ2011年に東北2部で優勝してからというもの、ずっと無冠なんですね。2位とか3位通過でJFLやらJ3に昇格してきたのか。そんな八戸は今シーズン、安定して「勝ったり負けたり」。大崩れがないなと調べてみたら、そうか、監督はノブリンなのか。そりゃ大崩れしないはずだ。おそらく〝最新鋭〟を自認しているであろう戦術(=能書き)重視のホワイトカラー戸田監督に対して、大地に足を踏みしめて額に汗をかくチームを作るブルーカラーなノブリンがどうマッチアップするのか、なかなか興味深いところです。

 

□順位通り

さて、オンザピッチ。序盤は相模原もエース藤沼を中心にカウンターでチャンスを作ってました。八戸はアンカーシステムなんで、ある程度スペースを見つけられますしね。あらゆる意味で藤沼頼りではありましたが、そこにボールが届けば攻撃になっていた。問題は、そこにボールが届かないこと。ポシショナルの要諦は低い位置で相手をおびき寄せて、急所に向けてロングボールを出すってところにあるのですが、そのロングボールを出せないとなると、なかなか厳しい。

一方の八戸はさほど極端なストーミングではなかったですね。2FWと2ISHに加えてWBの片方が相手のビルドアップに制限をかけて、アンカー+4枚が残って陣地を守るような感じ。攻撃は方針が徹底的にシンプル。とにかく最少手数でシュートを撃つ、その大原則が清々しいほど貫かれている。ナーゲルスマンがライプツィヒを率いていた頃のレッドブル系のサッカーですね。

前半はスコアが動くことなく終了。とはいえ見るからに八戸が優位。その理由はイーブンボールの回収率の差ですかね。プロ経験の豊富な八戸の選手の方が、苦しい体勢でボールをどうにかプラスに処理するって部分で一日の長があったように思います。あと競り合った状態でのヘディングのクオリティが相模原の選手は低かったかな。そんな前半でした。

 

□立花兄弟ばりのド根性ゴール

後半に入ると相模原もいくぶん持ち直します。ハイプレスを仕掛けるようになりました。それに伴ってかどうかはわかりませんが、攻撃時には全く5レーンじゃなくなりもしました。というか、勝手にポジショナルだと思い込んでいただけで、そもそも相模原はポジショナルでも5レーンでもなかったのかもしれない。

とはいえ、ハイプレスが機能したのは最初の10分程度だけ。間もなく八戸も対応できるようになり、あらゆる局面で数的優位を作れるようになる。ちなみに、八戸ってロングスローのふりして近くの選手に投げるという、まるでショートコーナーみたいなロングスローが好きですね。なんてことはさておき、相模原は、なぜゆえ、あんなにいっつも数的不利になっちゃうんですかね??

さすがの戸田監督も、「こりゃ、あきまへん」と思ったのでしょうか、選手の3枚替えを敢行するとともに、佐相を右WBに配置する5バックに布陣を変えてきました。ミラー状態にしてしまえば、数的不利は発生しづらくなりますからね。最も安直かつ、それでいて最も確実な方法です。とはいえ、結局そこは付け焼き刃。さんざん崩された右からのクロスに、ついにゴールを割られてしまいます。決めたのは八戸の稲積。ゴール同時に頭部を負傷するという立花兄弟みたいなド根性ゴールでした。もともと覇気を表現しない相模原は、これでさらに一層の意気消沈。そのまま八戸が1ー0で勝利。点差こそ1点差でしたが、まあ、八戸の完勝でしたね。

 

貫禄のスコアレスドロー〜YS横浜vsFC大阪(6/24)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□湊町と港町

ワタクシ(初老)が子どもの頃は、日本で2番目に人口が多いのは大阪府だったんですよね。それが学生時代のどこかで神奈川県が人口ナンバー2になった。そういう意味では熾烈なナンバー2争いですね。大阪はなんといっても天下の台所。江戸時代には蔵屋敷が軒を連ねたスーパー経済都市だったわけですが、一方、その頃の現横浜は鄙びた漁師町。

明治維新の際に東海道から敢えて外すために開港されて以降、近代的港町として発展してきたのが横浜。そんな歴史的背景は「横浜にまさるあらめや」でお馴染みの横浜市歌で謳われております。あの歌詞の内容って、徳川家康が江戸を開発したエピソードに似てますよね。同時に「われは海の子」の世界観にも似てる。主に「苫屋(とまや)」というワードが、ですけど。

 

□どちらも好調

そんな苫屋日本代表ことYS横浜は、ここのところ上昇曲線。直近でYS横浜の試合を見たのは4月8日の鹿児島戦で、その際の記事に「勝ててないですけど、そこまで心配にならない感じです。」と書いたのですが、恥をかくことにならずに良かった。「ほれみたことか!やーい、やーい!おっほほーい‼」くらいのご満悦です。ただ、心配な点もあって、それは星川監督の体脂肪やコレステロール値も上昇曲線を描いていそうなところ。INACを率いているころはスラッとしていて、高木琢也風のイケメンだったのに……

アウェイのFC大阪も好調です。特に6月に入ってから3連勝。昔、校長先生とかが長い話のなかで言っていた「月が変わって、ツキも変わる」ってやつでしょうか。ちなみに率いているのは志垣良監督なのですが、Wikipediaで調べたところ、宮原・金古・千代反田とかと同期の東福岡最強世代なんですね。現役次第はJリーグではなくイギリスの下部リーグで奮闘していたとか。先進的かつ厳しい環境で揉まれる中でサッカーに関する見識を深めたということでしょうか。

 

□ポジショナルvs〝剥がす力〟

さてオンザピッチ。YS横浜は、またシステムを微調整しましたかね。WGを最終ラインに含めると、5131みたいなところが感じ。中盤から前は富士田がアンカーでその前に左から道本・田原・佐藤と並んで、最前線が福田。で、両WGが中里と柳ときたもんだ。サイドを起点に、そこからクサビを入れていくとか、そういった狙いでしょうか。

対するFC大阪は、舘野俊佑がいるんですね。ヴェルディ育ちの守備的プレーヤー。世代的には竹内涼真とかとボールを蹴ってるんじゃなかろうか。この日は左SBとして柳と丁々発止してました。そんな舘野率いるFC大阪は、前線のフリーランが組織的というか、妙にハイボールに強いというのが第一印象だったのですが、ある意味ポジショナル的要素があって低い位置で我慢強く相手のバランスを崩していって、行けるってなったら一気にゴール前にストーミングするスタイル。前線のフリーランがムダ走りにならないのも、このあたりの習熟度によりそうです。

そして、そんなFC大阪の〝剥がす力〟が発揮され出したのは前半も30分を過ぎてから。それまでは、どちらかというとYS横浜の方がイニシアチブを握っていたのですが、前半30分くらいになると、FC大阪がYS横浜の隙を見計らって揺さぶりまくるという展開に。40分には、あとは謎のカメルーン人ことジャン マリー ドングーが押し込むだけというスーパー決定機を迎えましたが決めきれず。スコアレスのまま前半は終わりました。

 

□見応えある応酬

後半になってYS横浜は2列目の並びを換えましたかね。佐藤を真ん中に置いて、見ようによっては福田と佐藤が縦関係気味の2トップになっているようにも見えました。その微調整が奏功したのか、単にサイドが近くなって見やすくなったってだけなのか、とにかく後半は道本のキレキレっぷりをずっと見せつけられてました。凄いですね、道本。いつもあれくらいできているのであれば個人昇格も十分ありえそう。フィジカル面に不安がありそうですが。

試合としては、後半も引き締まった応酬でしたよ。トータルで評価するなら、パスワークについてはYS横浜の方に分がありました。後半のポゼッションは圧倒的にYS横浜だったのではないでしょうか。それに対してFC大阪は、とにかくフリーの選手を作るのがうまい。攻撃に移ったときには、必ずフリーの選手ができている。なので、相手陣地でプレーする時間は短くとも、一方的にボコられているという感じではなかったですね。

とはいえ、結果はスコアレスドロー。それぞれ守備陣も頑張ってました。YS横浜でいうとGKの児玉。彼は攻守に安定感がありますね。ポジショナルですからボール回しにも参加しますが、そこでヘンなミスをしないですし、セービングでも飛び出しを含めて判断ミスがない。反対にFC大阪は、GKなりDFなりが奮闘したというか、とにかくゴール前の秩序が鉄の結束を誇っていた。YS横浜がクロスを入れても入れても、いとも簡単に弾かれてしまう。真ん中にクサビを差しても、組織が乱れない。スコアレスドローでしたが、ともに貫禄を示したスコアレスドローだったと思います。