□イデオロギー闘争
SC相模原とFC大阪、これは一つのイデオロギー闘争です。おそらくFCは「Football Club」の略称で、SCは「Soccer Club」。蹴球と訳されるスポーツを“football”と称するのか、“soccer”と称するのか。一般的に通用している「サッカー」に唯々諾々と従うのか、ちょっと意識高そうに自己演出できる「フットボール」の耽美に酔いしれるのか。完全にイデオロギー闘争です。ちなみに子どもの頃に見た「キャプテン翼」だったか、ほかの漫画だったかもしれませんが、ナントカSSSが出てきて、幼心に「かっけえ」と思ったものです。SSS、、、「少年サッカースクール」??「Sexual&Sadistic Session」とかの略だったら、まあまあ興味津々ですけど。ちなみにACミランのACは「 Associazione」と「Calcio」で「サッカー協会」だそうです。なんだか偉そうだな。態度LL(90年代の十代に流行った言い回し)。
イデオロギー闘争とはいえSC軍の旗色は悪い。東京・横浜・今治・藤枝・いわき・愛媛・岐阜・琉球の援護を受ける大阪に対して、唯一栃木だけを友軍とする相模原。厳しい戦いが予想されます。
□大嶽直人の逆襲とシュタルフの苦闘
さて、“八王子で下車できる夜行バス”ことカジュアルツィンクル号で乗り込んできた?FC大阪ですが、今シーズンここまで8勝1分3敗で堂々の暫定2位。なんせ率いているのは、くノ一名将として名を馳せた大嶽直人ですからね。少し前に鹿児島を率いて昇格寸前まで導いておきながら、その好成績に調子に乗って勘違いをしたフロントによって解任されてしまった悲劇の名将ですが、より予算規模の小さなクラブを率いて鹿児島の上の順位にいるのは、なかなか痛快。
迎え撃つ相模原は今シーズンここまで3勝4分2敗の13位。おそらく長期的展望を許されていたであろう戸田監督を、少なくとも下り調子ではないにもかかわらず途中解任してまで招聘したシュタルフ。あんまり上手くいってませんね。個人的にシュタルフに対しては、手腕こそ評価すれど、試合中の立ち居振る舞いを唯一絶対の理由として決して良い印象を持っていませんので、「とりあえず頑張れよ」以外にかける言葉はございません。
□442と352の攻防
というわけでピッチに目を移します。まずはFC大阪ですが、徹底的に左SB館野の左足を生かしていこうという感じでしたね。例えていうなら横浜FCにおける福森の位置づけ。そして、実際に左足のキックの精度が、まあ高いこと、高いこと。そこへの安心感もあるからなのか、FC大阪はWボランチが強気。2人が同時にPA内へと飛び込んでいきますからね。近年のサッカーのトレンドである「クロスやシュートで終わればリスクは低められる」というサッカー観のチームですね。
一方のSC相模原、序盤は館野にきりきり舞いだったわけですが、そもそも442の相手に対する352ですから、サイドでシステムギャップが起きる。WBをSHに付ければ、相手SBはフリーにならざるをえない。それを承知で、それを踏まえ裏返していくというのがポジショナルスタイルですが、ここ2〜3年で「裏返すパスの精度を下げる」ってところでポジショナル対策もずいぶんと進みましたからね、なかなかうまくいかない。
そんなわけで前半の攻防で、最初にイニシアチブを握ったのはFC大阪。徹底したアーリークロス&ハイラインで相模原にペースを握らせない。しかし相模原も少しずつ対応していきます。具体的には「狙い澄ました裏返しロングビーム!」大作戦から、「シュートは打たせとけ、コースを消すだけ消して飛び込むな。そしてハイラインなんだから適当にクリアしとけばどうにかなるやろ!」大作戦へと作戦変更を遂げて、結果として試合の流れをイーブンに引き戻しました。ってなわけでスコアレスで折り返します。
□点差以上の完勝劇
後半の開始とともにシュタルフ監督は2トップの一角を高井から武藤にスイッチ。そして武藤が入ったことで相模原は攻撃に流動性を取り戻します。このあたりは武藤のサッカーIQ。それからプレースタイル。セカンドトップらしいセカンドトップな武藤ですから、サイドに流れたり、受けに引いたりってところはお手のもの。逆に前半の高井&加藤というW裏抜けな組み合わせは、FC大阪に完全に消されてしまっていました。
それでもスコアを動かしたのはFC大阪。館野がクロスかと思わせてグランダーの斜め前パスを前線に突き刺すと、受けた西村がドリブル開始。それが相模原守備陣のPKを呼び込みます。キッカーは西村が自ら務める……も、それは失敗。跳ね返りの押し込みもいったん失敗。しかし相模原守備陣が掻き出すには至らず、最終的に島田が蹴り込んで先制点を奪いました。島田は直後に魂の3枚替えで退いたのですが、交代前に大仕事をやってのけました。
追いかける展開となったシュタルフは中盤の徳永を下げてフィジカル外国人枠のフルタードを投入して3トップのファイヤーモード。となればFC大阪の大嶽監督も中盤の佐藤からCBの林田に代えて5バックとします。しかも、なぜかそれでFC大阪のボールの回りが良くなって、途中出場の望月が貴重な追加点を奪い取ります。相模原もフィジカル外国人枠ことフルタードが豪快ヘッドを決めて追いすがったものの、ウイニングメンタリティなFC大阪がまずは危なげなく試合をクローズさせましたとさ。