山口が今後の台風の目になる?〜ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FC(3/30)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

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□温泉地が近い盆地の県庁所在地ダービー

山梨県山口県、どちらも“山”が付く県ですが、どちらかというと対照的なイメージがあります。例えば郷土料理、山梨県は小麦を使ったほうとうであるのに対して山口県は蕎麦粉を使った瓦そば。タンパク源としては、山梨県は陸上哺乳類の馬刺しや鳥モツなのに対して、山口県は海の幸=ふぐ刺し。そもそも山に囲まれた海無し県の山梨県と、日本海も瀬戸内海もどんとござれの山口県

とはいえ共通点もありまして、県庁所在地が盆地ですね。下関でも萩でもなく、西の京都こと山口市山口県の県庁所在地。甲府甲府盆地そのもの。さらに言えば、甲府駅から二駅8分で石和温泉であり、山口駅から一駅5分で湯田温泉、県庁所在地ほど近くに有名温泉地があるところも共通している。ゆえにこの対決は「温泉地が近い盆地の県庁所在地」ダービーなのです。

 

□風雲急?

さて、新幹線とかいじを乗り継いで?乗り込んできた山口ですが、目下のところ2勝2敗2分で9位。悪くないですね。というか志垣監督、去年のシーズン途中にバトンを引き継いでから、ずっと悪くない。志垣さんだけに、かつては大木武に率いられ「たけし軍団」とも自称していたヴァンフォーレの“元たけし城”を落とすのは得意なのかもしれない、と思いきや、志垣太郎は「元気が出るテレビ」であって、「たけし城」は谷隼人でしたね。

迎え撃つホームの甲府は3勝2分1敗の4位。何度かJ1も経験していて、なんならACLとかにも出てしまったので勘違いしがちですが、冷静に予算規模を勘案すれば、しっかりやってる方かと思われます。その辺は篠田さん、FC東京時代も清水時代も安定の中位力を発揮してます。期待値が高い割には低迷しているチームを中位にまでは引き上げるというミッションはお手のものですし、うまくいけばアビスパをJ1復帰に導いて以来の昇格力をポケットの奥から引っ張りだしてくるかもしれません。

 

□大げさに言えばストーミングvsポジショナル

というわけでピッチに目を移します。まず山口ですが、基本的な考え方はストーミングですかね。高い位置で圧力をかける、あるいは、パスコースを切って奪う。そこを突破されたらリトリートして、ロングカウンターではややこしいことなどせずに、2トップに頑張らせる感じ。高い位置での守備組織がしっかりと整備されているので、甲府の最新ラインのミスを何度か誘発していました。

それに対して甲府はポジショナルです。低い位置で横につないで相手のバランスを崩して、そこからパス

3〜4本をコン!コーン‼と繋いでアタッキングサードまでボールを運ぶ。そこの運び方はよく整理されていました。キーになるのは三平。もうね、職人芸としか言いようのないポジショニング。攻撃では中盤セントラルでなぜかフリーを作れていて攻撃の起点となる。守備では高い位置でも低い位置でも抜群のパスコース消し。意地でも飛び込まず、相手のパスコースを消し去る。素晴らしいです。

前半は両チームともスコアレス。甲府は飛び道具のアダイウトンが躍動していましたね。FC東京時代の戦術ほどはスペースを与えられないので最終的には詰まってしまうのですが、単騎突破でペナルティエリアまではボールを運んでくれるし、シュートも撃つので、一人で相手の腰を引かせられます。一方の山口は広範囲に動き回る梅木と、アタッキングサード中央の相手が最も嫌がる場所でカラダを張り続ける若月という、動静2トップが魅惑的でした。

 

□山口が甲府を封殺

前半の戦いを見る限り、「甲府の方が完成度が高いのかな?」と思われたのですが、この試合、キックオフ前にエンドの交換があった。つまり、それなりに風が吹いていた。で、後半は山口に有利な風向きになった。風向きが変われば牙剥きも変わる。がぜん剥き出しの牙となった山口は、CBの平瀬がセットプレーの流れから、まるでFWのようなテクニカルシュートを放り込み、先制に成功します。

追いかける展開となった甲府は、ラッソ&鳥海に続き、秘密兵器の内藤を投入します。しかし、前線4枚のうち、すでにウタカと宮崎は退き、アダイウトンは下げづらい。しかも内藤とラッソの同時起用なので2トップということになる。となると消去法で三平が下がるわけですが、三平が下がるとどうなるか。潤滑油が失われたことで、甲府の攻撃から連動性の欠片もなくなってしまうということです。

機能性を失った甲府を尻目に山口は完璧なカウンターを発動。前がかりになった甲府を裏返して、余裕綽々に山本駿亮がダメ押しゴールを決めました。山口ってのは、この前に見た岡山と似ていて、90分のうちの85分は死んだふりをするってことができる。しかし、チャンスとみるや多くの選手がボックス・トゥ・ボックスで動いて、シュートシーンでは相手ゴール前に大挙して押しかけている。そりゃ強い。それから守備においてもアダイウトンの対応が明確だった。突進は止められなくても、右に持ち替えてのシュートだけは絶対に打たせないって守り方ができていた。やっぱり、そりゃ強い。

というわけで、今後の台風の目になる可能性を感じさせた山口が甲府を封殺するという一戦になりました。