□うどんダービー
旧大宮市を含む埼玉県ってチェーン店王国なんですよね。しかもローカルチェーン。筆頭格はみんな大好き「日高屋」。埼玉県日高市発症のローカルチェーン。その日高屋とキャラがかぶりそうで、案外、客層はかぶらなさそうなのが、みんな大好き「ぎょうざの満州」。「餃子ばっかりやん!」と思うなかれ。埼玉県にはみんな大好き「るーぱん」というピザ・パスタのローカルチェーンもある。しかしながら、キングオブ埼玉県のローカルチェーンは、満場一致でみんな大好き「山田うどん」でしょう。
餃子、パスタ、うどん……共通点は「小麦粉」ですね。そう、実は稲作には向かない関東平野のど真ん中にある埼玉県は、しっかりとした小麦文化なんですよ。加須とかにも独特のローカルうどん文化がある。中でも代表的なのは「武蔵野うどん」。カマタマーレが看板を背負う香川県の讃岐うどんは「コシが強い」。それに対して武蔵野うどんは「コシがどうとかっていうよりも、とにかく硬い」という感じ。讃岐うどんと武蔵野うどんとではうどんに対する理念が違う。もはや、うどんのイデオロギー闘争です。
□オリオリオリオー
さて、サンライズ瀬戸ののびのびシートで乗り込んできた?カマタマーレですが、リーグ戦ここ5試合で0勝1分4敗。順位も降格圏の19位で残留争い真っ只中。昨シーズンの試合を見たときは、さほど理想に走りすぎることのない442のシンプルスタイルで、「現実的適応力がありそうだな」などとも思った米山監督ですが、崖っぷちですね。カマタマーレの場合、フロントを中心としたクラブ全体のカルチャーの部分が何時まで経っても未成熟だという印象も拭えませんが。
迎え撃つアルディージャはここ5試合で3勝1分1敗、依然として首位。ずっと首位。シーズン開幕当初から、さほど派手な勝ち方で勝ち点を積み重ねてきたわけでもないのですが、6月に入ってからはいずれも僅差の接戦。前節では2位のアスルクラロに敗れてしまいましたし、ほんの少しマンネリあるいは息切れが起きているのかな?という印象もあります。現在までの夏補強もオリオラ・サンデーくらいですし。とはいえサンデーがオリオリオリオー♪ヤリヤリヤリヤー♪してくれるのでしょう。
□思いのほかカマタマーレが良いサッカーしてる
というわけでピッチに目を移します。まず、カマタマーレですが、知らない選手がちらほら。例えば内田瑞己、あるいは深港。一瞬だけ「深津」と空目しましたけど、深港(ふかみなと)。ちなみに「港」も「津」もほとんど同じ意味。なので「深津」も「深港」も、語源的にはどちらも同じ。大型船舶が繋留できる良港だったのでしょう。なお、内田瑞己も深港も元町田の選手なんですね。たぶんどちらも野津田で実見したことはない。
一方のアルディージャは、今シーズンは徹底した疑似カウンター戦術で一貫している。相手に攻めさせて低い位置から極限まで削減したタッチ数で相手の急所を狙う。これってライプツィヒとかザルツブルクとかのレッドブルフォーマットなんですよね。アルディージャといえば、レッドブルの経営参画が大々的に報じられましたけど、実は水面下では競技面への意見封事は既に始まっているのかもしれませんね。数年後にはナーゲルスマンが来るのか?
ともあれ前半の攻防ですが、讃岐はなかなか良いサッカーをしております。高い位置でボールを取り戻すってところの秩序がありますし、攻撃ではドリブル&パスの地上戦でガンガンに相手守備陣を崩していく。守備面では粘り強く健勇を封じる。攻守に悪くないという印象を持ちました。悪いのは順位だけという可能性も。……そこが致命的かつ最大の問題ですけどね。アルディージャは健勇が消されていた分、攻撃では苦労していましたが、それでも35分くらいを過ぎてからのセットプレーではクオリティの高さをチラ見させておりました。スコアレスのままハーフタイム。
□決勝ゴールは完璧でした
後半は一転してアルディージャがイニシアチブを握ります。芝の状態が極端にあっちとこっちで違うとか、照明の具合で有利不利が出るとか、そういうことを疑ってしまうくらいに一転しました。アルディージャがリスクの取り方というか、リスクをとる度合いの塩梅を変えたってことかしら?押し込まれたカマタマーレは、基本的に辛抱強く対応していましたが、ときどき一対一で堪え性のないチャレンジをしてしまう場面も見受けられました。
とはいえ、カマタマーレもチャンスを作っていましたよ。特に何年かぶりに里帰り復帰した森川が良かったですね。前半はワイドの位置で安定的な推進力を見せつけてました。安定的な推進力というのは、この選手の持ち味と思われます。長野時代も含めて常にそういう印象を受けてきました。後半はシャドーの位置に入れ替わってチャンスメークとプレスバックで貢献。計算できる戦力です。
肝心のスコアはなかなか動きませんでした。両チームとも相手ゴール前には押しかけてましたが、ビルドアップのプロセスで相手を崩しきるという感じではなかったですし、PA内の攻防でも相手守備網を上回れないまま、なかなか決定的なシュートを打てません。そんな中で唯一、ビルドアップで相手を崩しきり、ゴール前で相手を上回ったのが、大宮の決勝点。高い位置でのキープからシルバがつないで下口がクロス。最後は健勇が決めました。このシーンは美しかった。決勝点として相応しい。
……その後は、けっこうワチャワチャして、アルディージャもカマタマーレも審判にいろいろ言いたいこともあるでしょうが、結果としてはそのままアルディージャが逃げ切ったとさ。