□海点々ダービー
今治と熊本、、、熊本と言えば加藤清正よね。ってことを踏まえれば今治は藤堂高虎か。知名度でも残ってる部分の規模でも熊本城にはまるで及びませんが、藤堂高虎が造った(厳密には大工さんが造った)今治城も名城と評価されていますよね。なんでも屈指の海城なんだとか。現在は埋め立てられて海岸線から少し離れていますけど、前近代においては海に面したお城だったとか。今治といえば海。熊本も海ですね。ついつい水俣のイメージが前面に出ちゃいますけど。
今治の海にはサイクリンガーが多い。サイクリストではなくサイクリンガー。だってガチなんですもん、今治で自転車に乗ってる人。それもこれもしまなみ海道を自転車で渡るのは体力的に超苦行だから。そんなのサイクリストには無理、サイクリンガーじゃないと。海に点々とした島を結ぶ橋をいちいち下りたり上ったり、どんな罰ゲームだよと。ちなみに点々とした島を渡れば隣の県に着くという意味では熊本も少し似てますよね。天草を渡ると島原に着く。四郎もビックリ。
□倉石圭二の次なる一手
さて、九州新幹線を岡山で乗り換えて乗り込んできた?ロアッソですが、ここ5試合は2勝0分3敗の17位。毎年大卒ルーキーを起用してやりくりしている大木さん。近年はそこまでゴッソリ引き抜かれるということもないような気がしますが、毎年のように残留争いに巻き込まれる。とはいえ前節は首位の水戸を撃破するという殊勲、、、水戸に勝つと殊勲とされる、2025年はこれまでの歴史をひっくり返すシーズンとなっております。
迎え撃つ今治のここ5試合は2勝1分2敗で、順位は9位。倉石体制での快進撃も一段落ですかね。とはいえテゲバジャーロであれだけの実績を残した監督さんだけに第2エンジン、第3エンジンも用意していそう。5人のブラジル人の中から4人を選ぶという作業の中で多少のブレが出てしまうのかな?だとすればプロスポーツにおいて稀に発生する「戦力が充実すると、逆にチーム力が落ちる」現象なのかもしれません。
□今治が先手
というわけでピッチに目を移します。まずはロアッソですが、監督が大木さんである以上システムは3313というか5131です。そして監督が大木さんである限り、ピッチ上できれいな5131がセットされることはありません。ポジションを乱して数的優位を作るクラシカルなポゼッションスタイル。例えば両WGの2人ともがワイドに張り出していることはありません。片方ないし両方が絞ります。そのスペースにWBとCBが上がっていく。
一方の今治は352の印象が強いのですが、この試合ではおそらく3421に近かったのかな、特に序盤は。中盤を厚くするためというより、前線を3枚にして熊本3バックにタイマン勝負を挑ませるための措置だったでしょうか。スタイルとしてはポジショナル寄りですかね。典型的なポジショナルではないですが、「どうすれば相手を裏返せて、奪った瞬間に湧き上がるように走り出せるか」 から逆算しているような感じ。あとは相手ペナ内での各人の距離感、ポジショニングが秀逸だったように思います。
ともあれ前半の攻防ですが、たぶん今治は熊本みたいなバランスを勝手に崩してくれる相手が大好き。ただでさえスペースのできるアンカー脇が、WBとCBのオーバーラップでスッカスカ。そこを横山が突く。最後は山田が決めて先制点。さらに相手3バックとのタイマンに勝利したマルクス・ヴィニシウスを基点にカウンターを発動させ梅木が爆走。その折り返しを狙ったマルクス・ヴィニシウスは決められませんでしたが、こぼれ球をデニスの方のヴィニシウスが押し込んでリードを広げる。今治2点リードで前半を折り返しました。
□ポジショナルの時代
それにしても熊本、ほんっとグランダーの各駅停車パスしか出さないですね。グランダー縛りの指示でも出ているのでしょうか。「これだけ手数をかけてダラダラ攻めても状況なんて打開できないでしょ⁈」って思ってたんですよね。それでもそのグランダーの各駅停車パスの流れから古長谷がゴールを決めてしまうのだから、まあ、そこは大木さん。オールドファッションドの意地ですな。まあ、流れの中で上村のロングパスが一発だけあったんですけどね。やっぱり頭上を越えて裏を取るパスがないと厳しい。
その点、今治は真逆。手数が少なければ少ないほど良いという哲学による、縦方向へのパスに特化したカウンターが炸裂します。縦に縦にハーフスペースを突破していきクロス。最後は逆サイドWBの弓場が押し込んだ。縦に突破して、最後は横幅。モダンサッカーの真髄です。それでも熊本は下を向かず、半代のゴールで追いすがりますが、スコア以上の差があったように思われます。
というのもシャビ&イニエスタ時代のバルセロナを頂点とするティキタカって、どこかで相手を完全に上回るシーンを作らないと点が入らない。技術を研磨すればそれが達成されるという、戦後日本の生真面目さとまことに相性の良い哲学でそれを追求してきたわけですが、個やグループの技術やコンビネーションで相手を上回らなくても点が入って、相手に点を入れさせないやり方(=ポジショナル)がここまで普及してしまうと、もはやファーストチョイスがグランダーというサッカーは厳しい。そういうサッカーを攻略するためのポジショナルなのだから。……さて大木武の次なる一手に期待するとしましょうか。