疲れた遠藤の使途をシミュレーションしつつ、俊輔と澤の相違に思いを馳せる【G大阪vs鹿島】&【柏vs横浜FM】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

                                  にほんブログ村 サッカーブログへ
にほんブログ村

ガンバ大阪 1 vs 0 鹿島[天皇杯準決勝 12月29日]

いやぁ、あの遠藤のゴールは狙ったんだろうか?狙ったんでしょうね、遠藤ですし。ショートコーナーからのリターンを内に巻いたコントロールショットが鹿島ゴールのサイドネットを揺らしました。飛び込んだ選手が触れば触ったでよい、みたいなボールでしたけど。

そのまま、勝負強さが自慢の鹿島に対し、J1リーグ随一の勝負弱さを誇った2012年度版松波ガンバが、どうにかこうにか凌ぎきるという、おおかたの予想を裏切る試合展開(結果ではなく展開ですよ、念のため)でガンバが元旦へのチケットをもぎとりました。

大雑把に言って前半はガンバのペースで、後半は鹿島がペースを奪い返すという一戦となりましたが、前半の鹿島も、それなりに興味深かったです。まず解説の山本さんが繰り返していたように、大迫の懐が、知らないうちに随分と深くなったなぁと。

それから、ジュニーニョドゥトラの関係性も流動的で魅惑感がなくもなく。ジュニーニョがエメルソンばりのイメチェンを果たしていましたね。ドゥトラドゥトラ、京都時代のイメージのまんまでしたけど。ともあれ、前線3人の速攻に加えて、小笠原と柴崎という「虎視眈々とチャンスを窺います」コンビが、ボランチから遅攻を司るという2段構え。悪くなかったと思います。

対するガンバは、前半、相手の右サイドを崩しまくっていました。西の裏のスペースですね。ここを主に藤春ですが、他にも二川や遠藤が何度も何度もフリーランニングで攻略しかけました。そこを使うために繰り出された勝負のロングパスに精度の難があったのは玉に瑕として。

さて、そんな鹿島の右サイドですが、後半になると攻守が大逆転。圧倒的に西の攻撃力が際立ちました。関係ないですけど、西って、どことなく顔が永里(大儀見)に似てません? 〈涼しげで般若系だがソース顔〉みたいなところが。

ともあれ、後半は鹿島の右サイドが押し返す。というよりもガンバの左サイドが息切れ。というのも、前半から非常に遠藤が張り切っていたのですが、これが良くない。たぶん全体が適切にオーガナイズされていれば、遠藤は飄々とプレーするわけですよ。それが、あれだけがむしゃらな姿を見せているわけですから、それは機能不全を気合いと運動量で補っているってわけで、そりゃ息切れもするってもんです。

個人的には、後半、運動量が落ちて一方的に押し込まれるようになって以降は、遠藤を限りなくアンカーに近いボランチに落とした方が良かったのではないかと感じました。攻め込まれたガンバは精度もへったくれもないクリアを繰り返していましたので、抜群のキープ力とクリアという名の高精度ロングキックを誇る遠藤をクリア要員としてPA内でスタンバらせておくというのもアリだったかな、と。

■柏 0 vs 1 横浜FM[天皇杯準決勝 12月29日]

先制点はレイソル。ジョルジワグネルのクロスを澤が折り返したのかシュートだったのか、ともかく澤のヘディングがマリノスゴールに吸い込まれそうになって、それを中澤がやはりヘディングでクリア。そのクリアが飛んだ先にいた工藤が、またまたヘディングでシュートを突き刺します。

で、そのまま10のまま、着実に時計の針を進ませたレイソルが決勝進出を果たしました。準決勝は2試合とも‘ウーノ・ゼロ’になりましたね。渋いスコアですが、緊張感溢れる雰囲気が、いかにもトーナメント戦らしくて嫌いではないです。

試合の進め方というか、攻撃の形作りは対照的な両チームでした。柏はブラジル人指揮官が率いるチームらしく、メリハリが利いている。それほど攻め急がず、工藤へのクサビ入ったときだけ、それを合図にジョルジワグネルなど両サイドが駆け上がる、そういう感じ。

一方のマリノスの攻撃のスイッチは中村俊輔。真ん中で構える工藤がレイソルのスイッチだったのに対し、俊輔はフリーマン気味に浮遊しますから、主にサイドで起点となります。だから、いったん中央で密集した状態を作るレイソルと違って、マリノスは間延びした状態から一気にラストプレーまで持って行こうとする。

どっちが良いというわけではないですが、対照的ではあります。そのような対照性を象徴するのが両チームのトップ下、澤と俊輔ですね。タイトルに「俊輔と澤」と書きましたが、穂希ではないですよ、昌克ですよ。レイソルvsマリノスなんですから。

ともにトップ下で、ともにフリーマン気味、ついでにいえばともに海外帰りですが、ともあれ、共通点の多い両者ながら、与えられた役割はまるで正反対。自分がリズム良くプレーするためのポジショニングを許されている俊輔は、基本的にバランスを崩す側のプレーヤーです。崩れたバランスは中町や兵藤が汗をかいて調整する、と。中町や兵藤が汗かき役というのも贅沢な話ですが、他が小野とか狩野とかですし、まぁ、必然的にそうなりますよね。

一方の澤は、周囲の選手が崩したバランスを整えるためのフリーマン。「好きなことをやって良い」でばなく、「不均衡な箇所にはどこにでも行け!」という役割ですね。そうやって澤が全体のバランスを担保しますから、レイソルの前線が攻撃モードに入ったときは、常に数的優位、最低でも同数が確保されている。俊輔が‘芸術家型トップ下’だとすれば、澤は‘職人型トップ下’と言えるでしょう。

で、試合結果は、両者の出来をそのまま反映するものとなりました。俊輔システムでありながら、俊輔が輝かなかった。それじゃ、負けますよね。もちろん物理的にプレーが悪かったとは思いませんが、俊輔の意図と周囲のフィーリングが最後まで噛み合いませんでした。芸術家ならではの‘孤独’なのかもしれませんが、決定な仕事をすることでのみ存在が正当化されるポジションを与えられているわけですので、「敗因は俊輔!」と言われても、当人的には受け入れるしか仕方ないのかなと思います。