□住めば都ダービー
千葉と磐田(というか浜松)、どちらも太平洋ベルトのど真ん中。太平洋ベルトを背負う屋台骨と評して過言でない。浜松(というかジュビロの親会社)といえば楽器&オートバイなわけです。ヤマハのポピュラーソングコンテスト、通称ポプコンがバブル前夜の日本を彩りました。さすがに世代ではないですけど。対する千葉(というか蘇我界隈)といえばいまやJFEを大中心とする統合を経た重化学工業地帯。バブル経済を成り立たせる輸出業の担い手でした。
とはいえ静岡県も千葉県も工業に特化しているわけではない。静岡といえば大正義お茶です。しかし農業では千葉も負けていない。千葉といえば大正義ピーナッツですからね。加えて第一次産業だと漁業でのライバル関係こそ著しい。我々の時代、中学社会の教科書では漁獲高といえば「焼津か銚子か」みたいな感じでしたよ。要するに静岡も千葉も豊かなんですよ。家賃も3大都市圏に比べりゃ安いだろうし。というわけでこの一戦は“住めば都”ダービーということになります。
□対照的な直近5試合
さて、遠州バスが誇るディズニーランド行き夜行バスで乗り込んできた?ジュビロですが、ルヴァンやら天皇杯やらを抜くと、リーグ戦ここ5試合で3勝2分0敗。順位は6位ですけど、めっちゃ絶好調。横浜FC時代の印象で懐疑的に見ていたのですが、ハッチンソンに対しては「正直すまんかった」とお詫びせねばなるまい。ってなるとジュビロに心配なのは「 ポカやりすぎた。……ポカやりすぎた」って状況になることですが、たぶん大丈夫でしょう。
迎え撃つジェフは少し調子を落としております。天皇杯を含めたここ5試合の成績ら0勝2分3敗。PK負けを公式結果に基づき引き分けにしたのですが、一般的な解釈で負けとするならば0勝1分4敗。どうにかこうにかの首位です。とはいえ、ちょうど19試合を終えたところ。つまりリーグも半分を終えて、その時点における成績が首位なのですから、ここまでの戦いは素直に賞賛しないといけないでしょう。このままズルズルいかないことを願うばかり。
□普通になったジェフ
というわけでピッチに目を移します。まずはジュビロですが、強いですね。めっちゃ早期回収。そしてクルークスを巧みにフリーにする。つまりは5レーンのポジショナルを教科書的に履行できている。あと、ミドルブロックを作るのも早い。ベップが率いているチームが好調なターンだとこういう感じになるという、どこを切り取っても数的優位って位置取りができている。やっぱすげえよ、ハッチンソン。ちなみに5レーンの作り方はSB片方がハーフスペースに入る王道のやつ。
一方のジェフはポジショナルというか5レーンをやめたんですね。去年までのジェフは古式ゆかしいMWみたいな感じで5レーンを作って攻めるって印象が強かったのですが、ごくごくオーソドックスな442。2ラインを作る。2トップが横並びで2枚追いをする。なるほど、一旦の完成形を作りやすいパターンでロケットダッシュを切ったわけですね。それを牽引してきた高橋は成長しましたね。風格があった。逆サイドまで行って田中と前の作戦会議に参加してたりしてたし。
ともあれ前半の攻防ですが、この日は千葉市のホームタウンデー。たぶんその影響もあったのでしょう、感動的なまでに満席。J2に落ちて2〜3年くらいはこういうこともありましたけど、令和になってからはほとんどお目にかけられなかった壮観。感動しました。でも感動に浸れなかった。だってジュビロが強いんだもん。圧倒にジュビロがジェフを押し込む。そして押し込んだ挙げ句に、ば、、、倍井がPKを獲得してジュビロリートで前半を終えました。
□ポジショナルを取り戻したとはいえ
小林監督は後半の頭から魂の2枚替えを敢行します。まずは呉屋を下げてカルリーニョスを投入します。この交代はドンピシャ。カルリーニョスが9.5番の役割を果たすことで中盤からのクサビが次々と刺されるようになって、一気にイニシアチブを握りかえしました。さらに右SHの杉山に代えて椿を左SHに入れて、左だった田中を本職の右にスライドさせる。これも、それなりに効果あり。何度か椿もジュビロのば、、、倍井みたいにペナ角を取れていました。
それとともに、主にカルリーニョスの動きに触発されたということでしょうか、急にポジショナルになりました。5レーンって感じではありませんでしたが、引き付けて裏返すってやり方が散見するように。後半はすっかりとジェフのペースです。尤もそれは単にジェフが良くなったというだけでなく、ジュビロの運動量が落ちたって要素もあったのかも。そこでハッチンソン監督は前線2枚(CFとトップ下)を同時交代。運動量をテコ入れします。
そんなわけで守勢に回ったジュビロですが、さほど危ないシーンはありませんでした。下げられたら下げられたなりにしのぐってやり方もちゃんと練習しているっぽい。組織性が乱れるということはなかった。ジュビロにこのての試合巧者ぶりを発揮されるとビビります。磐田ー鹿島時代のジュビロは、そういう試合巧者ぶりを逆に鹿島に発揮されてスッテンコロリンされていたというのに。はっきり言って、ジュビロの完勝です。現段階の実力差を見せつける勝ち方だったと言えるかと思います。