■ガンバ大阪 2 vs 1 サンフレッチェ広島[CS決勝1st 12月02日]
去年のチャンピオンと、一昨年&その前のシーズンを連覇したチームの対決。実は「鹿島磐田時代」に互するくらいのライバル関係なのかもしれません。両チームともに、特徴は「試合巧者」というところ。ガンバは鹿島チックな試合巧者ですよね。のらりくらりと試合を進めながら、締めるべきところを締めるスタイル。一方の広島の良さは緩急自在なところ。遅攻と速攻の使い分けの妙といいますか、ゲームにおける“時の流れ”を司れるチームです。
というわけで、やや趣には相違がありながらも、試合巧者という部分では通底する成熟したチーム同士のマッチアップとなりましたから、「いったいどんな展開になるのかな」と思っていたのですが、序盤は、まずガンバが攻勢に出ました。「様子見vs様子見」のなかで、たまたまそういうことになったのか、あるいはホーム万博での試合ということで「先手必勝」的なテンションが込められていたのか。ともあれ序盤はガンバがポゼッション。時間の流れとともに広島も押し返していくという構図で前半は進みました。
両チームとも「さすが!」と思わせる場面ばかりだったんですが、そのなかでもワタクシが目を奪われたのは、広島の選手たちの成熟した意識。ガンバと比べても特に目立つのは、ボールを持ったときの広島の選手が、必ず意図のあるキックを繰り出すところ。無責任な鬼パスとか、苦し紛れに逃げのパスとかなんて絶対に出さない。責任を持って、自分がやるべきプレーをやりきる。「結局、ボールを持ったら1対1でしょ」という意識が、なんだかヨーロッパのリーグ戦を見ているみたい。
なんというか、キリスト教文化的な“個人主義”が浸透しているように思うんですね。例えば、必ずしも良いパス出しばかりできていたわけでもない佐々木が、それでも前線の選手に指示を出す。しかも、ボールがアウトになってない状態で、立ち止まってまで指示を出し、言うべきことを言う。それが、怒鳴ったり、怒り口調だったり、あるいは必要以上に卑屈でもない。淡々と、でも、毅然とした態度で自己主張を行う。そこには責任逃れも、相手より上位に立とう(喧嘩に勝とう)といった類いのエゴイズムは込められていない。ホント、欧米人みたい。
そういう広島のヨーロッパスタンダードな個人主義的成熟に対し、どちらかというとガンバは「勤勉にやるべきやって、我慢すべきは我慢しよう」というジャパニーズスタンダードな成熟。この試合では、その日本的成熟が均衡を破りました。広島の守備のミスにつけこんだ長沢のゴールは、“前線からチェイシングをサボらない”“試合に出れなくても腐らず努力した選手が報われた”という二要素において、ガンバ流日本的成熟が凝縮されたようなゴールだったのではないでしょうか。
試合は、「このままガンバが10で逃げ切るのかな」という雰囲気が漂いだした後半30分に、突如、乱気流。相手の隙を突いた浅野の突破から最後はドウグラスのヘディングで広島がきっちり決めきり同点に追いつくや、直後にはベテラン今野が勝ち越しゴールをもぎ取る。このあたりは一見するとバタバタしていて成熟からは程遠い攻防に見えなくもないものの、点を奪われたくらいでガクッとこないメンタルの安定感を両チームともの選手が持っていたことの証左でもある。で、そのままイケイケになるかと思いきや、今度は、両チームとも守備陣が奮闘する。大人のチーム同士の、熱い殴り合い。
最終的に明暗を分けたのは、その成熟度の、わずかな差。ガンバはオジェソクが清水との小競り合いする中で思わず手が出てしまった。これは不用意。ガンバはこの部分に成熟度の水漏れがありました。一方の広島は、残り時間が少なくなっても焦れることなく、自らのストロングポイントであるサイドアタックを徹底しつつ、数的優位を生かして同点に追いつき、さらに逆転して見せた。与えられた状況の中で、最後まで「ハートは熱く、頭は冷静に」適切なプレーをやりきった年間勝ち点1位チームが、アウェイゴールを3つも奪って先勝しました。