■なでしこ 2 vs 1 オランダ女子[女子WCround16 06月24日]
なでしこが良い時間帯に先制します。大野と宮間のコンビネーションで左サイドを攻略すると、宮間のクロスに大儀見がヘディング。シュートは無情にもバー直撃となりましたが、相手のクリアが小さくなったところに有吉が走り込んできて、ミドルを突き刺しました。
それにしても、グループリーグから決勝トーナメントまでの1週間のインターバルが相当プラスになったんですかね、この試合のなでしこは本当に躍動していた。特に前半の45分間は驚異的であり、感動的とさえ言って良いほどの躍動感を見せていた。鮫島が大野とワンツーしながらエリア内にまで走り込んでいき、シュートまで持って行ったシーンなんて、ファンタスティックとしか表現のしようがなかったですよね。
男子のワールドカップでもそうですが、上位に進出するチームというのは大会を通じて成長していくもの。そのためには「初戦にベストの組み合わせが完成している」という精神衛生上の保険を捨てて、「決勝戦までに今大会的ベストメンバーが定まれば良いや」というスタンスで望む必要がありますが、ただでさえ強烈な重圧にさらされる代表監督に、そういう、ともすれば「まだ迷走してるの?」ってな揶揄やらネット上の罵詈雑言の対象になりかねない用兵を求めるというのも酷なもの。それでも、それができてしまうんですから、佐々木監督には頭を垂れるよりほかないですね。
予選リーグでは鮫島=SH・宇津木=SB。どちらもコンバート(あるいは再コンバート)的な実験的起用を試み、この試合では、各々の本職である鮫島=SB・宇津木=ボランチで使う。まるでブラジルワールドカップのドイツ代表におけるラームの起用法を見ているようでした。「常に試行錯誤をしながらも、結局、落ち着くべきところに落ち着く」、これがグッドチームの条件なのかもしれません。
とはいえ、後半はオランダにペースを握られてしまいました。筋肉量やら骨量やら体幹やら、そういう部分じゃ我々モンゴロイドは白人さんにかないません。女子離れしたダイナミックなサイドチェンジとか、球質の良いロングパスとかを織り交ぜた迫力十分な推進力の前に、さすがのディフェンディングチャンピオンとしてもタジタジ状態。
それでも、これはグループリーグからそうだったんですけど、今回のなでしこは、「低い位置でボールを保持しながらゲームをコントロールする」というやりかたを恐れずに遂行できる。「サッカーでは、リードされた側が攻勢になり、勝っているチームの方が追い込まれる」という古今東西に普遍の法則を前提とした上で、その法則から目を逸らさず、逃げない。「だったら守ってみせましょう」っていう貫禄が素晴らしかったと思います。試合は互いに1点ずつ奪い21での決着となりましたが、なでしこの逞しさを感じさせる一戦だったと思います。