牛に牽かれて善光寺。ついでにアルウィンと南長野へと連戦観戦て参りました。
■前半
松本のワントップに入っていたのは、オビナ。湘南とか松本の外国籍選手はイメージ的に、「いろいろ荒削りで出来ないことも多いが、アリかナシかで言うならば、ぎりアリ」ってレベルの選手が多いような印象なのですが、オビナは、「まあまあ、アリ」って感じでしょうかね。
このクラスの予算規模のクラブに加入するわけですから、母国でも今ひとつって位置付けなんだとは思いますが、オビナに関しては、とりあえず、ゴツい。上半身が筋骨隆々で後ろ姿はさしずめボビー・オロゴン。テレビでのボビー同様、「ドタバタ頑張ってます」って働きを見せていて、それなりに起点となっていましたが、そこからチャンスになっても、松本は全体としてクロスなどラストパスの精度が宜しくなく、「仕方ないからミドルシュートを撃っています」って雰囲気が漂っていた。
対する神戸の起点はエースの森岡。ネルシーニョ体制になってからボランチで使われていますよね。森岡のボランチ起用には功罪相半ばするところがあって、まず、“功”の面に関しては、森岡って、テクニシャンですから、多分、ボールに多く触りたい選手ですよね。で、ボランチですから、ボールにはたくさん触ることができる。なので、それなりにリズムよくプレーできていたと思いますし、チームのビルドアップにもストレスが少ない。
一方、“罪”の面について述べますと、比較的フリーになれることから、ボールを悠然と持ってしまって、油断した隙にボールをかっさらわれてしまうってシーンがとても目立ってました。それはまるで若い頃の梶山陽平を見ているよう。そんな感じでしたから、森岡がボールを持つと期待を抱かせる反面、ずっこけることも多い、ってな前半の戦いでした。
■後半
試合は後半に動きます。立役者は松本の前田直輝。いやぁ、キレキレでしたね、前田直輝。先に述べたように、松本の弱点は、ラストパス。言い方を変えれば、“精度”であり、“アイデア”。もっと突き詰めれば、“テクニック”であり、“センス”となる。J1においては“雑草軍団”とカテゴライズされる集団を、反町さんが“気合いと根性では負けない”ってところまで押し上げてきた。でも、ど根性はあっても“天賦”という部分では失礼ながら、J1では劣る。そして、そこを補えるとしたから、前田直輝なわけですよ。松本とは真逆の、“テクニック”と“センス”はあるけれども、“気合いと根性”は微妙なヴェルディユース育ちの。まさに“凸”と“凹”の関係。さすがは反町さん、前田の凸を削らずに、凹を埋めてきましたね。
そして、リードを奪ってからは、松本の“気合いと根性では負けない”が炸裂する。例えば田中隼磨。この選手は無尽蔵のスタミナで、時間が経過すればするほど存在感を発揮する、そういう選手なんですけど、その田中隼磨が、80分にもならない時間帯にもかかわらず、両膝に手をついていた。もちろん彼個人のコンディションって要素もなくはないのでしょうが、重要なのはそこではなく、「あの田中隼磨が90分もたないくらいの運動量サッカーを松本山雅はやっている」ということ。
そこくらいのトレーニングを普段からやっている、と。その成果は試合の終盤になっても、“頭のスタミナ”が衰えなかったところに顕著です。駄目押しとなる阿部のゴールをお膳立てしたオビナのパスなどが代表的ですが、松本の選手は終盤になって、カラダが動かなくなっても、決して判断が雑になっていなかった。そういう判断力のスタミナって、実はフィジカルのスタミナよりも鍛えるのが大変なんだと思うのですよ。それが出来てしまう松本山雅。適切に鍛えられているチームです。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・岩上祐三
□推薦理由
この選手も良い選手ですね。まず最大の武器はロングスロー。そしてプレースキック。松本の得点パターンの1つにセットプレーというのがありますが、その要となるのが、この選手です。この選手のコーナーキックには、ショートコーナーをはじめ、実に様々なのバリエーションがある。きっと、これは反町監督のスカウティングの為せる業でしょう。それから、95分以上尽きないスタミナ。後半ロスタイムにカウンターでスプリントできる体力は、ちょっと感動的ですらありました。これも、反町さんの教えでしょう。
・・・と述べてくると、なんだか、岩上ではなく反町さんを絶賛しているようですよね。実際に、そうなんですけど。でも、反町さんを日本代表には推薦したくはないのです。もちろん再び反町さんが、ブルーのユニフォームを率いるところはみてみたいのですが、今しばらくはハリルホジッチさんのスパルタレッスンを見ていたいのです。ゆえに反町さんではなく、岩上を推薦しておきます。