■アトレチコ・マドリー 0 vs 0 レアル・マドリー[CL準々決勝 04月16日]
試合の構図は明快でした。それはつまり「互いに縦への高速さ加減がハンパない」ってところ。いやぁ、縦一本のパスの精度が高いですね、さすがに。何気ない一本のパスが、とりあえずマンジュキッチやら、ベンゼマやらに向かって出されるんですけど、それが足下に繋がる。あるいは、サイドのスペースに出されたボールをクリロナやらグリーズマンやらがドリブルであっという間に相手ペナルティエリアまで運んでいってしまう。まさにしばき合い
それでも前半も30分を過ぎたあたりから、特にレアルに関しては、遅攻とまでは言いませんけど、波状攻撃的というか、それなりに手数をかけたビルドアップが増えていき、モドリッチとかマルセロとかがバイタルでアタッキングにスパイスを加えるようになる。で、後半に入ると、もっと低い位置からビルドアップするようになって、クロースのサイドチェンジやらミドルシュートやらのロングキックが綺麗な放物線を描きはじめだしました。
それでも、なかなかアトレチコの堅固な要塞は攻略できない。ってところでレアルは次なる一手を仕掛けます。その一手とは名付けてマンジュキッチをイライラさせよう作戦。カズに引退勧告した、どこぞのあの方ならば、そのような作戦は「正々堂々としていないから喝!」ってなりそうですけど、それくらいのことをしないと世界では戦えない。野球よりも何十倍も競技人口の多い球技における最高峰の戦いの勝敗への執念を十分に堪能することができました。
この試合を見ていて最も印象に残ったのは、アトレチコ守備陣のタフさ。タフというのは、まず単純にガテン系的な意味でフィジカルが強いという意味でもありますが、それ以上に、ペナルティエリア内における自信満々っぷりというか、落ち着きというか、メンタル面での威風堂々感が素晴らしい。Jリーグなどを見ていると、ペナルティエリア内に侵入されると、もはやその時点で絶体絶命であるかのような雰囲気に包まれる。最終ラインのディフェンダーは、いかにも「決死の覚悟で、防波堤になります!」って感じでレスキュー隊っぽく守備をする。
でも、アトレチコの守備陣は、そうではないのですよ。クリロナさんとかにペナに侵入されても、「ここからが我々の仕事でっせ」ってな平常心で淡々と潰しにかかるのですよ。「救世主、現る!」ではなく、「仕事人がいつも通りの仕事をこなしています」くらいのもの。要するに1対1に対する慣れなんだと思うんですね。欧州では「まずは1対1で勝つこと」が基本になる一方、Jリーグの場合「いかに数的有利を作るか(1対1の場面を作らせないか)」が重視される。どちらが優れているとか劣っているとかではなく、基本的な発想という部分に彼我の相違があるなと再認識させられました。