■レアルマドリード vs アトレチコマドリード[チャンピオンズリーグ決勝 05月29日]
シーズン序盤は大苦戦していたレアルマドリード。大苦戦していたというか、不協和音がハンパなかったといった方が適切でしょうか。そんな、毎度毎度、数年ごとに発生するレアルとしては恒例的現象が発生したわけですが、そういう状況下、急遽、指揮官として里帰りしたのがジダン現監督。見事に立て直しましたね。シーズン終盤は多少なりとも一段落した感はありましたが、就任直後は特に凄かった。名選手は時として名監督にもなりうるようです。
苦戦する古巣にシーズン途中に帰還し、そのレジェンドとしての圧倒的なカリスマによってチームを立て直したという意味では、ワタクシ的には、ジダンとジュビロの名波監督がかぶります。名波監督は、指揮官として就任するにあたって、「駒野とか伊野波とか代表クラスの選手や、小林みたいにプライドの高い選手には、扱い方にコツがある。そこを間違えてはいけない」といった趣旨の発言をしていましたが、ジダン監督も、BBCのプライドを上手にコントロールしている模様。
その基準点となるのは「クリスティアーノロナウドが守備をしているのかどうか」ってところ。ジダン就任直後には「あのクリロナが守備に走っている」みたいな声を聞いたものです。前線の選手が守備をしているというのは、「個の欲求に任せたプレーに走るのではなく、チームファーストに徹していること」を見極める上で、1つの指標になります。なので、この試合ではクリロナに注目。ベンゼマやベイルは、なんだかんだでチームプレーヤーですからね、注目すべきは、時にエゴイストになりかねないクリロナ。
で、そもそも画面越しの確認では限界があることを承知の上で感想を申し述べるならば、「プレスバックやフォアチェックはほとんどしない。でも、ボールが自分の近くにあるときにパスカットを狙うということはする。それからダッシュで自陣に戻るようなことはないけれども、ジョグ程度のスピードで動いてスペースを埋める程度のことはする」といった印象です。少なくとも、オフザボールのときはずっと徒歩で放浪している、どこぞのリオネル君ほどは、部活の先生にも叱られないでしょう。
絶妙ですよね。完全に守備免除の放任にしてしまうと、チームが空中分解してしまいかねない。システム的にも、後ろの選手の不満的にも。一方で、ガチガチに管理して、守備に多大なエネルギーを消費するよう要求するのもナンセンス。そんなことをすればクリロナは「監督を取るか、オレを取るか」とペレスさんに噛みつき、ペレスさんはクリロナを取るでしょうし、そもそも攻撃に移ったときにパワーが出ないようでは、本末転倒も甚だしい。「パワーを使いすぎなくても良いから、大人なら誰でも守れるくらいの最低限のルールだけは破るな!」ってのは、正しいマネジメントだと思います。
そんなジダンが率いるレアルは、前半早々にセットプレーからセルヒオラモスが決めて先制します。後半に入ってからもグリーズマンのPKを凌ぐなどして、のらりくらりと「どっちがアトレチコ?」みたいに時計の針を進めていきましたが、終盤になってフアンフランのクロスにカラスコが合わせた同点弾を許してしまします。アトレチコ的には、文字通りの“乾坤一擲”だったわけですが、試合はそのまま延長戦も決着がつかないままPK戦にもつれ込み、レアルが接戦を制しました。