ザックジャパンがコートジボワール相手に初戦を落とした瞬間、多くの「サッカーに関心のある」日本人にとって、ブラジルワールドカップの記憶は風化を始めたわけですが、一応、ワタクシはWCの全試合を録画を中心に見ました。で、その各試合のレポは少しずつ【ワールドカップTV観戦記】としてアップしておりますが、それと並行して、【ワールドカップ各国分析】もアップしていこうかなと思います。1週間に1カ国とすると、コンプリートするのに8ヶ月、2015年の5月、完全に皆さま「とっくにそんなこと忘れたよ!」って時期になってますけれども・・・。
というわけで、今回はホスト国ブラジル。負けっぷりがハンパなかったですけど、一応、ベスト4に進出したので、それなりの結果を残した王国です。
□ホームについて
それにしても、王国のホーム開催と言うことで、選手たちには猛烈なプレッシャーがかかっていたようですね。ネイマールとかチアゴシウバは、大会を通じて、何回、涙を流したのだろうか。それくらい猛烈なプレッシャーがあったということなのでしょう。日本人の「オリンピックやワールドカップの時だけ、俄か“ニッポン頑張れ!”」もいかがなものかと思いますが、王国国民による俄かでない“ブラジル頑張れ!”は、本当に選手の足を引っ張るものらしい。
そうやって国民の“期待という名の手枷足枷”により翼をもぎ取られたカナリア軍団からは、必然的に“遊び心”が奪われていきました。ラボーナをしてこそのブラジル人フットボーラー。遊び心を喪失した状態のセレソンが“リアル生真面目”なドイツ人との生真面目コンテストに勝てるわけもなく。というか、選考からしてフェリポンさんから“遊び心”が封印されてしまっていましたね。例えばロナウジーニョを“23番目の選手”として選ぶとか、そういうことがあれば、また違った結末もあったかも。
□敗因について
ともあれ、ブラジルの敗因をピッチ内の要因から探ってみますと、個人的な印象としては、「サイドバックの不調」にあるのかな、と思います。ワタクシ的に“南米のサッカー”といえば“サイドバックの小気味よいオーバーラップ”なのですが、大会途中で右サイドバックがアウベスからマイコンに代わったりと、武器のはずのSBが武器になりきれなかった印象があります。また、ボランチについてもパウリーニョを筆頭に、今ひとつ波に乗りきれず。
SBとボランチが揃って不調となると、チームはどうなるか? SBとボランチというのは、簡単に言えば攻守の繋ぎ役なわけです。特に、SBが高い位置取りをする“南米のサッカー”においては。その繋ぎ役が機能不全に陥れば・・・そう、攻守分業サッカーになってしまうのです。で、攻守分業となれば、攻撃についてはアタッカーのタレントに依存せざるをえない。大会が開幕する前から、今大会のブラジル代表は“ネイマール依存”が叫ばれましたが、大会を通じて、その傾向に拍車がかかったのは、上のようなメカニズムがあるのではないでしょうか。
□印象に残った選手について
ブラジル代表の中で、最もワタクシの印象に残った選手は、ずばり、グスタボ。普段は国内サッカーばかり見ているので、コンフェデとかでチラッと見ただけで名前くらいしか知らなかった選手ですけど、これほどまでに、「ちょび髭がダサ格好いい選手」は、そうそういない。なんというか「エグザイルの新しいパフォーマーとして加入したばかりです!」みたいな感じ。フォルムとしては似合っているものの、なんというか堂に入っていない。オシャレに目覚めた直後の中2みたいなのですよ。
もう一人、印象に残ったのは、フッキ。確か札幌時代のフッキを、なぜか正田醤油スタジアムで見た記憶があるのですが、彼にはJリーグ代表みたいなところもありますよね。で、多少なりとも日本で「勤勉の美学」を身につけたのか、大会を通じて消える時間の少ない安定したプレーを見せてくれました。・・・けど、持ってなかったねぇ。ことごとくシュートが決まらない。ココってところで、リズムを崩されるようなジャッジを受ける。えぇえぇ、持ってなかった。そういう「なんだかな」感が今大会のブラジルを象徴しているといえなくもない。