先週末はDreamIslandでドラゴンぼく久保を見てきました。マッチレポは例によって別館4thDayMarketCentre。
東京モーターショー横河武蔵野FCvsツエーゲン金沢(12/10)の周辺をウロウロと…1/6
スカイツリー横河武蔵野FCvsツエーゲン金沢(12/10)の周辺をウロウロと…2/6
平林輝良寛横河武蔵野FCvsツエーゲン金沢(12/10)の周辺をウロウロと…3/6
久保竜彦横河武蔵野FCvsツエーゲン金沢(12/10)の周辺をウロウロと…4/6
ツエーゲン金沢のサッカー横河武蔵野FCvsツエーゲン金沢(12/10)の周辺をウロウロと…5/6
というわけで。。。
ストイコビッチ監督が就任した1stシーズンは、その流麗なパスサッカーで、「素人監督」に対する懐疑的な我々の評価を見事に覆してくれた名古屋ですが、最近ではワタクシ的に、闘莉王やケネディの加入などで、どちらかといえば「最後の最後はパワープレーで力ずく」というようなイメージを持っておりました。
ところが、この試合を見ていると、「スポーツニュースのダイジェスト(=得点シーン)ばかり見ていても何もわからないぞ」ということを改めて突きつけられました。
いやぁ、ケネディをポイントとして、玉田や藤本、小川などに更には両SBに中村・ダニルソンがタイミングを見計らって参加していくバイタルエリアでのコンビネーションには、なかなかの迫力がありました。実際に、名古屋の先制点は藤本と小川による、「イニエスタシャビ」をJリーグ仕様にリサイズしたようなゴール前のワンツーから生まれたもの。鮮やかでした。
名古屋のコンビネーションの素晴らしさは、1つには、ギアチェンジの巧みさ、緩急自在の戦術眼にあると思います。攻撃をテンポアップする縦パスが非常に正確。
そして、ギアが入ると、一気に多くの人数が相手ゴールに向かって雪崩れ込むのですが、そのとき、チーム全体にゴールへの道筋が共有されている。テレビ越しに見ているワタクシにまで、シュートまでの道のりが仄見えるんですから、ピッチにいる選手たちに至っては、完全に得点への逆算ができているに違いありません。
象徴的なのは、「もう一人」の使い方。ボランチならSBなり、アタッカーに加えて、もう一人がアタッキングに厚みを加えるべく攻撃参加すると、かなりの確率で、その攻撃参加を有効活用していました。
一方の横浜。
こちらはアタッキングサードの入り口までは比較的丁寧にボールを運んでいくのですが、そこからが「アーリークロス(=簡単な放り込み)」「ミドルシュート」「大黒を走らせる」というテンプレート通りの攻めを繰り返していた印象があります。
つまり、得点に直結しそうなパス交換、コンビネーションには、それほど磨きがかかっていないような印象があります。もちろん、まったくチーム作りが進んでいないという感じでもなくって、基本に忠実なアタッキングは出来ているのですが、その上での「息ピッタリやな」感が今一つ伝わってこないのはワタクシだけでしょうか?
それでも、中村俊輔が相手守備陣の虚を突くフリーキックで、一時は同点に追いついてしまうんですから、サッカーとはわからないものです。
ただし、名古屋は金崎を投入することでペースを握り返します。金崎ってやっぱりフィジカル強いですよね。そして何故だか金崎が入ると(藤本が抜けると?)玉田が途端に躍動し出す。玉田の縦横無尽のランニングには、常にゴールの芳香が薫っていました。その流れの必然としてパワープレーから決勝点を奪います。ここでのミソは「劣勢の中で力ずくに勝ちきった」ではなく、「得点の臭いがプンプンするなかで、『ほら、やっぱりね』みたいに得点をもぎ取った」というところにあると思います。
高校サッカー、しかも地区予選をテレビで見ると言うことは、これまで余りなかったのですが、これはこれで面白いものですね。以前から、うすうす感じていたのですが、プロほど潰す側のレベルが高くないこともあって、練習通りのプレーが見られます。
しかも、この試合は漫画チックな劇的な展開。久我山が先制して、早実が追いつく。延長前半に早実が勝ち越し、延長後半に久我山が同点、さらに延長後半ロスタイム、しかも目安の時間を過ぎた後にサヨナラゴールが決まるという、ワタクシが漫画家なら、こういう筋書きを作りますね。
さて、久我山と早実では、若干、基礎技術に差があったように思いました。このあたりが高校サッカーを観戦する醍醐味の1つでもあると思うのですが、明らかにパスの球質に相違がある。 久我山はグランダーの縦パスを中心にロングボールも高く蹴り上げるのではなく、丁寧にコントロールされたライナー性のボールを通そうする。また、ボールを受けたとき、相手のプレッシャーの来る前にイージーに蹴ってしまうのではなく、一度マイボールにして、その上で相手のプレッシャーを技術で交わしてから、次のプレーに移ろうとする。
一方の早実は、逆に雑なロングボールに逃げるということが多かった。自分たちの青写真通りに阿吽の呼吸のパスワークで相手を崩すという場面は皆無で、クラシカルな部活的サッカー、運任せのロングボール作戦ですね。ただ、それでも高い位置でパスカットするとそのままなだれ込むようにミドルシュートを打ち抜き、2点取ってしまうのですが、これはこれで完成度の高いサッカーと評価しなければならないのでしょう。
で、こういう久我山と早実の構図を見ていると、2006年の全国選手権決勝・野洲vs鹿実を思い出します。あの試合を見ていた当時のワタクシは、なんとなく「高校サッカーの夜明け」を感じたわけですが、なかなか、その後の歴史は、思ったような方向に時計の針を進めませんでした。
つまり、それまでの国見やら鹿実やらの努力と根性と運動量を前面に押し出したロングボールサッカーに対して、合理的なメンタリティと科学的な技術を駆使したパスサッカーが、高校サッカー界のスタンダードになっていくのだろう、なんて思っていたわけですね。
で、実際に、伝統校、別名「しごきに耐えることにプライオリティを置く監督に率いられた部活」ばかりがトーナメントの上位進出校を独占するというような状況は余りなくなったわけですが、一方で野洲とか静学とか、そういうサッカーをする学校が上位進出の多数派を形成するようになったかといえば、そうでもない。
冷静に考えれば、あの年の野洲は奇跡みたいなチームだった。楠神・乾の両雄が、なぜか両WBだったわけですが、なぜならばセンターには10番の平原がいて、ボランチには金本がいた。この2人は当時、乾・楠神よりもお茶の間の知名度がありました。で、他にもプロになった、青木、田中、荒堀、村田などがピッチなりベンチなりにいたわけで、そりゃ、セクシー云々以前に強いよね、って話。これらの選手が全員、鹿実に進学していたら、きっと彼らは鹿実流のサッカーを習得して全国制覇していたに違いないわけで。
やはり、あの年の野洲を基準にモノは考えられない。そうすると、個人的には残念ながら、この試合の早実みたいに「高校サッカーらしいサッカー」をしていたほうが、成功の方程式として無難なのかもしれません。