秋田はスタジアム問題でJ2ライセンスを断念したみたいですね。もとよりFC東京U23にも昇格資格はない。なのでJ2に上がれないダービーですね。
■前半
キックオフ前からアクシデント的なことが地味に発生していました。例えば、おそらく秋田監督の杉山さんであろう人がなぜかバックスタンド側からぐるりと歩いてベンチに向かっていったり(ピッチへの出口を間違えたのか?)、あるいは、なぜかFC東京U23のメンバー紹介のタイミングで大型ビジョンが映らなくなってしまったり(ブラウブリッツの選手紹介のときには写っていたのに)、ほのぼのとしたアクシデントがてんこ盛り。
ビジョンが映らないということは、FC東京関係の場合、派生的な問題も出てくる。それはユルネバの歌詞が映らなくなるという問題。でも、まあ、問題ありませんわね。だって、ユルネバを歌うサポさんは、いちいち歌詞、見ないっすもん。むしろ問題は、久保君のフィーバーも一段落したことで、肝心の現地観戦サポーター数が減ってしまったことかも。この試合は1500人くらい。いくらセカンドチームとはいえ、少し寂しい数字。
ともあれ、試合です。現在、絶好調のブラウブリッツ。システムは3421。もはや3421は日本の伝統文化なのではなかろうか。ひょっとしたら、オランダにおける433みたいな位置付けに昇華する可能性さえあるかも。そして、日本の伝統芸能たる3421にとって必要不可欠なのは、キーパーによるビルドアップ。その辺も含めて、秋田は、日本固有にガラパゴス化した3421の忠実な担い手だったりします。
要するに、日本の伝統芸能を創作したのは、ミハイロ・ペトロビッチなわけですが、秋田の場合、少し違うところがあって、それは、横幅の使い方がえげつないところ。それを象徴するのが、古田寛幸を右WBで使っているところ。だって、古田って、左利きのアタッカーですよ。右のウイングで使うならロッベン状態ですけど、WBって。。。完全に、中盤で切り返して、内巻きのサイドチェンジやる気満々ですやん。そらもう、愉快爽快よ。
■後半
とまあ、秋田中心に書いてきたんですけど、実際に試合のイニシアチブを握っていたのは、終始、FC東京U23でした。「ひょっとしたら前半の秋田がセーフティーファーストに試合を進めた結果、FC東京U23のペースに見えただけかな」とも思われたのですが、後半に入っても、特に構図は変わらず。FC東京U23の選手たちは、フィジカルも強く、若者らしいエネルギッシュさもある。中盤でのインテンシティが非常に強い。
攻撃についても、FC東京U23は小気味よい。ある種の部活サッカーですから、コンビネーションの完成度が高い。縦に速いパス交換は、さながら“立て板に水”。ワンツーの繰り返しから、あっという間に相手ゴール前まで、ぬるぬるぬると押しかけます。総じて、ポテンシャルの高い若者たちをしっかりと鍛えたチームなんで、フィジカルとか、パスワークとか、そういった、サッカーのベースとなる部分のクオリティが高いのです。
でも、秋田はやられないのです。中盤を制圧されてしまっても、サイドを攻略されてしまっても、最後の最後、ゴール前の中央を締めてしまえば得点は奪われない。そういうところの割り切りがとてもよくできていました。大人のチームなのですよ。ずっと押し込まれていながらも、決してバタつかない。苦し紛れにむやみやたらなカウンターを仕掛けたり、攻め急いだりしない。常に平常心を保ち、攻撃に移ったときには適切に緩急を司っていた。
そして、相手の隙を突くように一撃必殺のセットプレーから先制点を奪ってしまう。しかも、決めたのは遊馬。途中出場のストライカーですからね、采配ドンピシャってヤツです。まるで強いときの鹿島みたいだ。で、そのまま、試合はクローズしかけたのですが、ラストワンプレーでFC東京U23が同点に追いつきます。決めたのは、やはり途中出場のストライカーたる原大智でしたが、その前のコーナーキックで超長身のGK波多野が上がっていった圧が奏功したように思えなくもない。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・田中尚幸
□推薦理由
履歴を見てみる限り、随分と苦労人のようですね。いや、“随分と”は言い過ぎか。でも、JFLからステップアップしてきた選手。そういうキャリアを買われてかどうかキャプテンマークを巻いてチームを牽引していましたが、注目すべきはキャプテンシー以上にポジショニング。ボランチの選手なのですが、縦横無尽に動き回って、スペースを埋めたり、潤滑油的にボールを出し入れしていたり。元ガンバの橋本とか、そういったタイプのプレースタイルですかね。
それに加えて、もう一つ武器があって、それは、ロングスロー。ボランチなので、基本、セントラルなポジションなんですが、スローイングのときは、ガシガシと放りに行く。そういや、日本代表って、ロングスロワーいないですよね。頑張れ、藤田直之。ともあれ、秋田の先制ゴールの起点は、この人のロングスローでした。で、こぼれ球をシンプルな判断でキックして、そこからの流れで決まったもの。日本代表とまではいかないかもしれませんが、確かな存在感を示してくれました。