今週末は女子美術大学行きのバスに揺られました。
■前半
富山のシステムって面白いですね。3バックがトルシエ時代の隆盛後に廃れながらも近年になって再び脚光を浴びているように、中盤ダイヤモンドの442も見直しが進んでいるのでしょうか。そう、富山のフォーメーションはキリンカップにおけるデンマークよろしくな中盤ダイヤモンドの442だったのですよ。そして、ダイヤの底に配置されていたのが、10番を背負っている衛藤。衛藤って、そういうプレースタイルの選手でしたっけ?
対する相模原は、何一つトリッキーさのない、4231。敢えていうなら、1トップが典型的なストライカーでない普光院であったことくらい。でもニセ9番は今やさほど珍しくないですからね。まあ、常套的。そして攻撃の形についても常套的。リスクを排除したカウンターで前半は様子を見ます。多少、残念なポイントがあったとするならば、ゼロトップということもあり、「これぞフォワード!」みたいなエゴイストがいなかったこと。人数をかけないカウンターで点を取るには迫力が不足していました。
話を富山に戻すと、中盤ダイヤモンドの442とはいえ、あくまでそれはスタートポジション。攻撃時、守備時で柔軟に配置を変えていきます。まず、守備においては433になります。なので、中盤は3枚。「その分フィルター機能が弱まるのかな?」と見ていたのですが、どちらかというと、「中盤が3枚だから」という理由ではなく、「攻撃にSB含めて多くの人数を割くから」という理由でスカスカになってました。セットしたときの守備はさほど破綻せず。
一方、攻撃に移ったときには、ほぼ343のような形になります。具体的にはアンカーの衛藤が最終ラインに落ちて、ダイヤモンドの両ワイドが絞ってWボランチのようになり、両SBが一列上がるようなイメージ。或いは左SBの国吉が3バックの一角に残るような感じ。このあたりは非常に柔軟性がありました。中盤ワイドの三上や脇本もケースバイケースのポジショニングをとってましたし、一応ダイヤモンドの頂点ということになっていたのであろう萱沼も神出鬼没。難解なシステムながら、それなりに機能しておりました。
■後半
前半の終了間際にセットプレーから北井が決めて、富山リードでハーフタイムを迎えます。前半から「ボールを支配する富山と、カウンターのチャンスを窺う相模原」という構図で試合は推移していたのですが、後半になっても、大勢はさほど変わりません。相模原が一気に反撃モードになるわけでも、富山が受けに回るわけでもない。
とはいえ、選手交代を繰り返すなかで、両指揮官の知恵比べは熱を帯びます。まず相模原は切り札の深井を左SHとして投入。それに伴い曽我部を右に回し、岩渕をボランチに落とします。対する富山をFW同士の交換で西川を入れたのですが、その際に左SH三上を右SBに回し、右SHの脇本を左へ、そして右SBだった北井を左SHへとスライドさせました。ってことは何かい?北井は曽我部のマンマーカーだったということかい?
残り時間も少なくなってきて相模原は攻撃への姿勢を強めます。でも、だからといって、ゴールへの距離が縮まっているようには感じられなかった。その要因は、もちろん相模原に打開力が不足していたという要素もあるのでしょうが、それ以上に富山の選手同士の距離感がとても良かったから。特にFWの苔口に替えて、中盤の窪田を入れることでシンプルな442に変更してからの距離感は絶妙でした。相模原としては、マイボールにしても、すぐに相手の網にかかってしまうような印象があったのではないでしょうか。
そうなんですよ、強いんですよ、カターレ富山。順位的には中の上くらいなのですが、実は2敗しかしていない。「なのに、なんでここの順位なんだ?」なんて思って確認してみたところ、なんと、消化試合が2試合も少ない。他にも1試合少ないチームがいくつかあるのでなんとも言えませんが、試合消化数が同じならば、かなり上位にいるはずなんですよね。今後、普通にJ2昇格争いに絡んでくるのではないでしょうか。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・北井佑季
□推薦理由
土地勘のある人ならばご存知の通り、相模原市と町田市は隣り合っております。電車的にも道路的にも、まさに“隣町”で、生活圏としても共有されている。志木市と練馬区のような関係と言いましょうか。そんな相模原市とは因縁浅からぬ町田市のクラブを飛躍の地としたのが、この選手ですね。松本に引き抜かれ、その後、富山へと活躍の場を移しております。そういう意味では、北井にとって、この試合は“1人ダービー”だったと言えなくもない。
そんな北井、富山ではSBなんですね。もともとはアタッカーだったのがSBにコンバートされた例としては今はガンバに栄転した米倉とか、今年になって本格的にブレイクスルーしかけている“IJ”こと伊東純也がおります。古くは三都主アレサンドロもそうですかね。守備の部分にある程度の見込みがつけばってな話ですが、この選手がそれらの系譜に連なる可能性も十分にある。是非とも、近年のくすぶりを払拭するくらいの再ブレイクを期待したいですね。