あまり、同じチームの試合を短いスパンで見るということがないワタクシ。そういうなかで、相模原の試合については4月にして、早くも今シーズン2戦目ということになります。なかなかこういうことはありません。逆に言えば、同じチームを定点観測するというレア経験ができるわけで、ほんの二週間で、どのようにチーム作りが進んでいるのか、選手起用の最適解に少しでも近づいているのか、といったところに興味津々だったりします。
対するカターレ富山。元々はJ2にいて、安間監督のイメージも強い、キャリア豊富なクラブですが、すっかりJ3の中に埋没しつつあって、その再建が昨シーズンから浮気監督に託されております。昨シーズンは必ずしも本人が望んだマックスの成績ではなかったかもしれませんが、今年も続投です。クラブも監督も互いに一途にならねばなりません。隣の芝生が青く見えてはならぬのです。浮気監督だけに。読み方は「うき」ですけどね。。。
■前半
スポナビ時代のエントリーでも何度か触れていますが、ワタクシ、多摩地域の大学で東京独り暮らしデビューを果たしております。ゆえに、多摩ニュータウンというのは、ノスタルジー溢れる第2の故郷的なところがあります。その多摩ニュータウンは、全国のプロトタイプ的に高齢化が問題となっていた地域でもありますが、今回、原当麻経由でギオンスに向かう途中に立ち寄ってみたところ、一周回って、それなりに活気を取り戻しつつある模様。
多摩センターでいろいろ懐かしスポットを回ってから、ランチを食べる。訪ねた先は、やはり懐かしきのCCカレーでございます。京王グループが誇るコスパ抜群のカレースタンド。新宿駅通路沿いの店が有名ですかね。ワタクシは10年近く聖蹟桜ヶ丘というところにすんでおりまして、その頃、アルバイトに行く前の、お急ぎで時間がないときに、聖蹟のCCカレーで厚切りロースカツカレーを食べていたものです。いわば青春のカツカレーをたべて、スタジアムへと向かいます。
さて、試合。前に観戦した鳥取戦では攻撃に特徴のある選手を並べて、例えば谷澤をボランチで起用するなど、“最攻撃的”ともいえる布陣で臨んでいたのですが、西ヶ谷監督もそういうチキンレースからは撤退したらしく、相模原は相対的にバランスを重視したスタメンとなっておりました。具体的には、“最攻撃的”の象徴ともいえるボランチ谷澤は撤回して、セカンドトップ谷澤になっていましたし、辻尾をSBで使うことも、いったん止めた模様。
最初は辻尾をSHで使うのかな、と予想したのですが、3421にフォーメーションを改めたらしい。守備の時は541ではなく532っぽく見えなくもなかったのですが、それは谷澤がサボっていたからでしょう。対照的にキッチリと守備ではと541を作っていたのが富山。富山のスタメンで注目されたのはシャドーで出場していた椎名と、ボランチの一角に入っていた差波でしょうか。なんだかキャラがかぶる2人。調べてみたら、ともに青森山田で柴崎とプレーしていた選手なんですね。なるほど、なるほど。
■後半
前半をスコアレスで折り返した後半戦。先制点は相模原が奪います。右サイドを菊岡・辻尾・丹羽の3人が絡んで攻め込むと、菊岡が正確なクロス。ジョン=ガブリエルがその高さを十二分に生かしたヘディングシュートを放り込みました。となると、先制された富山前半も後半もすかさずギアを上げるのかと思いきや、浮気監督はまあまあ慎重なようで、しばらくは前半と同じような戦いを続けます。しっかりプレスをかけて、バランスは崩さずに、というサッカー。
それでも、勝ち点を取らないことには仕方ないので、後半も30分を過ぎたあたりから、サイドが1列ずつ上がるような感じ、WBがFWみたいに、左右のCBがSBみたいな位置取りをして圧力を高めます。が、そこに立ちはだかったのが、相模原GKの田中、と、谷澤。もうね、谷澤劇場ですよ。谷澤の専売特許ともいえる尻キープや、ありとあらゆるマリーシアを駆使した時間稼ぎで富山の猛攻をすかして、タイアップまで時計の針を進めました。さすがです。
この試合を見ていて印象に残ったのはサムエル=アウベス。ボランチの選手です。よく、ブラジル出身のボランチを“王国のボランチ”と言いますが、その意味がよくわかるというか。特段にスペシャルな活躍をしていたわけではないのですが、なんというか、プレーやら動きが、いちいち“板についている”のですね。何かに似ているなと思っていたら、わかりました。日本的スモールベースボールにおける“2番セカンド”なんですよ。いちいち全てが板についてないとできないポジションという意味で。
もう一つ興味深かったのは、富山左サイドにおける前島VS辻尾。辻尾と言えば佐川急便の御曹司であることは、一部では有名なエピソード。それに対して前島です。前島業界最大の有名人は、皆さん御存知の前島密。そして前島密と言えば日本の郵便制度の生みの親。つまり前島VS辻尾というのは、いわば、佐川急便と日本郵政の代理戦争ともいえるわけで、どちらが江戸の飛脚の正統的後継者であるかを掛けた、絶対に負けられない戦いが、そこにありました。