そりゃ、7月最終日曜日の13時キックオフですから、暑いっすよねぇ。
■前半
昇格初年度でありながらJ3で旋風を起こし、首位を快走しているレノファ山口。そのスタイルを端的にあらわすならば、関塚さんがフロンターレで実践していたサッカーということになるでしょうか。基本的には手数をかけないショートカウンターですね。
ただ、だからといって石崎サッカーほどガツガツと前線からハードプレスを仕掛けるわけでもない。また、ポゼッションにこだわるでも、放棄するでもなく、ミソは「攻めるべきときと、そうでないときのメリハリ」ということになりそう。
特筆すべきは、スルーパスの数が非常に多いということ。急所を突くことを最優先に考えているらしく、となれば、必然的に相手の背後にパスを出すのが最も効果的。中心に君臨するのは庄司ですけど、他のプレーヤー、必ずしもパサータイプではなさそうな選手であっても、パスのファーストチョイスは相手の背後だったと思います。
対する相模原ですが、センターラインに高原とトロと須藤という実績のある百戦錬磨を揃え、サイドには曽我部や森勇介といった一芸のある選手を置く。タレントを生かすという意味では、まことに適切な選手配置がなされています。
ただ、惜しむらくは、炎天下での一戦とあって、なかなかカラダがきつかった中、ついついプレーが雑になりがちだったこと。特に「走れないから止められない」ってシーンが多く、そういうときに雑然としたファールを犯し、前半だけで4枚ものイエローカードを出されてしまってました。レノファにはそういうイエローはなかったので、そういうところのディテールの差が順位の差になっているように思います。
■後半
試合は前半だけで山口が2点のリードを奪います。先制点はキックオフ直後のほぼファーストプレーから鳥養が決めたゴール。写真を撮っていたら、思いっきり見逃してしまいました。で、そこからは少しペースダウンするのですが、そうやってペースダウンした中でセットプレーが追加点を奪ってしまう。試合巧者です。
リードされた相模原としては後半頭から大森を投入するなどのテコ入れを施し、反撃のチャンスを窺います。特に躍動したのが曽我部と森勇介の右サイドのコンビ。曽我部のボールを失わないキレキレドリブルで山口守備陣を混乱に陥れたと思えば、中盤でボールを受けた森勇介が相手マーカーを嘲笑うかのような切り返しから裏街道をぶっこ抜く。惜しむらくは、曽我部が途中からバテてしまったことと、森勇介が負傷交代を余儀なくされたこと。
他方の山口は2点のリードがありますから無理をする必要はない。着実に時計の針を進めていけばよいわけなんで、セーフティーファーストに蹴っていくイメージ。時折、「ここぞ!」ってときには猛然と人数をかけたりもしていましたが、どちらかというと、アバウトなロングボールを出して、あとはアタッカー陣個々の頑張りに任せるような感じで、見方によっては淡白に見えなくもないサッカーとなります。
ただ、山口が首位を快走するには合理的な裏付けがあって、そういった淡白に見える時間帯においても、セットプレーからシッカリとダメ押しゴールを決めてしまうところ。ダラダラと試合をしているように見せて、実は虎視眈々とゴールを奪い、あれよあれよと勝ってしまう。これって、強いときのブラジル代表が見せる姿ですよね。こういう試合巧者っぷりを発揮できるチームは強い。ダークホース的に出し抜けて首位なのではなく、強者の面影を前面に押し出しているのが、今シーズンのレノファ山口です。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・岸田和人
□推薦理由
この試合で前半のうちに相手を突き放す2点目と、後半に勝負を決す3点目を決めたのは、ともにセットプレーからのこの選手のヘディングシュートでした。サイズの大きなCFです。「アタッカー」とか「ストライカー」とかではなく、「センターフォワード」という言葉が最も馴染む、そんなタイプのプレーヤーですね。
世界で戦うには体格に劣るのが日本人。なので、「デカくて動ける」選手は、その時点で貴重なわけですが、この選手については、その日本人らしさも、また、魅力の1つ。すなわち、守備でもファーストディフェンダーとしてプレスをかけ続ける勤勉さを見せる。また、大柄な選手のわりに足下もそれなりらしく、ときにはドリブルで単騎突破を仕掛けたり、あるいはスルーパスの出し手になったりと、プレーの選択肢も多い。J3に昇格したばかりのチームに所属わけですから、いろいろと足りない部分も多いのでしょうが、期待したい選手です。