この試合、武蔵野は広島式3421で、ホンダロックは中盤ボックスの442。元祖のペトロビッチ現浦和監督が表明しているように、広島式3421は4バックを攻略するために考案されたシステムですので、武蔵野的にはガッチリとハメこめられる取り合わせ。
で、3421というのは、今の広島や浦和がそうであるように、基本的に縦に速い攻撃をダイナミックに仕掛けていくところに特徴があります。‘広島=パスサッカー’みたいなイメージもなくはないですが、遅攻はそれほど多くない。‘繋ぎ倒す’ってことは稀。一方、ホンダロックが採用する442は、‘真ん中で組み立ててサイドを崩す’のに適したシステムですから、いきおい、サイドアタックが多くなります。
そういう意味では対照的なアタッキングの目立つ両チームでしたが、それぞれに明確なキーマンがいたように思います。武蔵野のダイナミックな速攻を支えていたのはボランチ(広島でいうところの青山の位置)の7番。そしてホンダロックは左SHの15番の選手がサイドアタックに彩りを与えていました。
そんな構図で進んだ試合が動いたのは前半の35分。スタンドからでは、背番号を目視出来ませんでしたが、ともかくホンダロックのディフェンダーが、PA内でわかりやすいレイトタックルをお見舞いしてしまい、PKを献上してしまいます。
なので、その不用意なファールが、直接的な要因なんですけど、ただ、それまでの時間帯、武蔵野が「これぞ、3421の真価じゃい!!」と言わんばかりの猛攻でホンダロックを攻め立てていて、ようやくクリアした次のプレーでしたので、ホンダロックの守備陣は集中力的に厳しい状況に置かれていたことを考えると、まぁ、仕方ないっちゃ仕方ないかな。
ただ、そのようなピンチをホンダロックのGKが防ぎます。武蔵野は左利きの18番がちょこまかステップを踏んで蹴ったPKを見事な反応でシャットアウト。湘南に新加入したブラジル人GKを彷彿とさせる、‘ピョンピョン系’セービングで、ホンダロックは息を吹き返します。
ただ、後半に入ると、地力の差なのか、相性の差なのかはわかりませんが、ともあれこの試合で総体として発揮できていたパフォーマンスの差を隠しきれなくなり、武蔵野が先制点を挙げます。先にPKを失敗した18番の選手が、トリッキーなステップからアジリティ抜群の足の振りで正確なクロスを放り込むと、途中出場していた23番のCFが頭で綺麗に合わせて押し込みました。
この23番の選手、途中出場と言うことなので、レギュラーを取り切れていないと言うことだと思いますが、この試合に限ってみれば、なかなか活躍していましたね。大柄な選手らしくシッカリとターゲットになっていましたし、彼が左右に流れることによって、後半の武蔵野は横幅をフルに活用したカウンターを何度か発動できていました。
そして武蔵野はカウンターのチャンスこそ逸し続けましたが、終盤における時間の殺し方も含めて、ほとんど危なげなく試合を進めていたので、キッチリと試合全体をコントロールできていたように感じましたので、まぁ、武蔵野の完勝でしょうね。
一方のホンダロックは後半に入って、件のキーマン15番を右に回して、SHの位置を交換したのですが、結果として、これが裏目に出たのかなと思います。もともと左SHに入っていた選手が右に入ったことで、おそらく眼の慣れとか、そういう影響だとは思いますが、とにかく、カットイン系のプレーが目立つようになった。
そうなると、逆サイドの攻撃も含めて、全体的に内に内にへという動きが多くなる。しかも1点を追いかけなければならないという焦りがあるだけに、どうしても一発狙いが多くなり、前半に良い形を作れていたサイドアタックを放棄するような感じになってしまった。
それでも‘窮鼠、猫を噛む’ではないですが、残り15分くらいハーフコートゲーム状態の猛攻を見せます。ただ、得点の臭いがしたかというと、そうでもなく。正直なところ、この試合に関していえば、‘力負け’だったように思います。
□日本代表への推薦状
・推薦者
ホンダロックの標語
・推薦理由
いや、ホンダロックのゴール裏には「今そこにあるサッカーを愛せ」という横断幕が掲げられていたのですよ。もうね、この言葉をそのまま、代表の試合がある時にだけ渋谷に繰り出す‘サポーターらしき人’や、「日本のサッカーはレベルが低いからヨーロッパのリーグ戦しか見ないね」とか言っている‘サッカー通’に投げかけたい。
仮に、「日本のサッカーのレベルアップ」を共通の目標とするならば、もうね、「今そこにあるサッカーを愛せ」しかないわけですよ。‘千里の道も一歩から’なわけで、代表を強くしたいなら、JFLや、それ以下のカテゴリーも含めた国内リーグ戦の充実しかない。いやぁ、「今そこにあるサッカーを愛せ」、至言ですね。