■広島 1 vs 2 浦和[J1リーグ第1節 03月02日]
試合開始ののっけから、森脇・槙野・柏木という浦和の元広島トライアングルが躍動しましたね。そこに宇賀神が効果的に絡んで、いけいけモード。なんだか、友達の家に行って、その友達を差し置いてTVゲームを占領し、ポテトチップスをボリボリしているみたいな感じでしたね、キックオフ直後の浦和って。
つーわけで〈攻める浦和と受ける広島〉という構図になった開幕戦。広島は高萩不在で、なかなかリズムを変えられず、ペースを引き戻せません。浦和が森崎和幸と青山をしっかりと潰しにかかっていて、その分、両WBが攻撃に起点となっていたのですが、縦パスの精度が不足していて、しかも横パスを流す余裕もなかった。
そうは言っても、普段からスロースターターの広島。なんだかんだで、いつも通りの〈相手に‘持たせる’〉モードに移行します。厳密には、移行しかけます。間が悪いことに、移行しかけた前半終了間際に先制点を奪われてしまうのです。
カウンターに抜け出した原口がドリブルでPA内に侵入。マークする塩谷に1vs1を仕掛けると思いきや、少しボールコントロールを失ったこともあり、フォローアップする柏木へのヒールパスに転換。フリーとなった柏木が確実にゴールに流し込みました。
後半に入って、広島はポゼッションを高めて反撃を高めたのですが、そのテンションが上がりきる前に出鼻を挫かれてしまいます。2点目は、いろんな意味で広島にとって勿体なかった。水本がオーバーラップして、そこで潰されながらもファールを取って貰えないままボールを奪われ、そこを止めたら逆に自分たちにファール。抗議をしようとしたところを浦和がクイックリスタートを仕掛けて、原口がフリーでシュート。それを西川が、ほぼほぼトンネルと表現しても過言でないようなミスで失点。うん・・・いけません。
むろん広島とて反撃をしないではない。森崎浩司が問答無用のフリーキックをねじ込んで一点差に追い上げます。ゴール右上隅っこに針の穴を付くようなコントロールショット。全盛期の中村俊輔を彷彿とさせます。流れの中からのゴールだと、なお良かったでしょうが、これで広島が勢いづいたことは間違いありません。
ただ、どうも広島は決め手に欠く。と言うか、佐藤寿人が、どうにもこうにも波に乗れない。寿人が波に乗れない広島は、最後のラー油が不足した餃子みたいなもんですから、如何せんパンチ不足。逆に浦和は、マルシオ・阪野とボールをキープできる選手を投入して、逃げ切りを図ります。「飲み疲れたから無理にカラオケに行かないで、ファミレスで始発を待とうぜ」みたいなミシャ采配が効をして、見事に1点のリードを守りきることに成功しました。
■柏 0 vs 1 広島[ゼロックススーパーカップ 02月23日]
決勝点となった佐藤寿人の先制点は凄かったですね。青山のクロスを水本がすらせて、それをダイレクトボレーで合わせたミドルシュート。身体の使い方といい、ミートの正確さといい、アッパレでございます。流れの中であそこまで上がっていた水本も素敵ですが。
試合展開をおさらいすると、キックオフ直後は、柏のハイプレスが目立ちました。レイソルは去年まで〈じっくりと相手の隙を窺いながら、のらりくらりと試合を進める〉というスタイルでしたから、少し意外でしたね。一方の広島は、受けて立つ感じ。ゆっくり少しずつペースの掌握を図っていました。
しばらくするとレイソルは、ちばぎんカップの時と同様に、両WBが高いアーリークロスをシンプルに放り込むようになります。特に工夫のない攻撃ですから、広島としては余裕で対応。綽々感満載に試合を進めつつ、一撃必殺の佐藤寿人。まぁ、チャンピオンチームらしい試合巧者ぶりでしたね。
後半になると、前半に比べるとオープンな応酬となり、ミドルシュートが増えます。佐藤寿人のシュートやら、セットプレーにおけるレアンドロや増嶋のシュートやらで、菅野と西川の競演が目立つ場面が続いて、両チームが選手交代を繰り返す時間帯へと移行します。
選手交代に関して特筆すべき点があったのは柏。茨田に代えて栗澤を投入すると途端に流れを引き戻します。ただ、どうも攻めきれない。では4バックにするのかというと、そこは熟成を優先すべき段階ですから、ネルシーニョは3バックのままタイムアップまでじっと我慢をしました。ネルシーニョとしては「ボランチの軸となるよう茨田の成長を促す」と「3バックの熟成」に力点を置いていたのでしょう。あくまでプレシーズンマッチだいう位置づけだったのかもしれません。
広島と柏、同じ3バックながら、非常に対照的でした。広島は3バックとはいえ、お馴染みの415で攻めます。そのオートマチズムは、もはや熟練の域。広島の素晴らしさは、GKへのバックパスを躊躇わない遅攻への絶対的な自信と、基本陣形のまま攻める時と流動的にポジションを乱しながら攻める時の、絶妙な使い分け・バランスですね。
一方の柏は、後ろ2列の34の並びは、ほぼ固定。前線の3人は特別に縦関係を作ることなく、事実上の3トップのように攻める。攻撃が一本調子で、両WBの攻め上がるタメを作らない(作れない?)ので、ほぼ523のようなサッカーとなっていました。この試合で両チームの明暗を分けたのは「遅攻の熟成度」に尽きると思います。