■広島 0 vs 2 ブニョドコル[ACL 02月28日]
広島のホームですし、去年の国内チャンピオン。森保体制2年目で、ペドロビッチ時代も含めると5年以上に渡って継続性を積み重ねてきたチームですから、ACLだからと言って特別なことはしてきません。もはや貫禄さえ感じる風格でペースを握ります。
広島の素晴らしさは、GKやCBを含めた全選手が、責任逃れ的なワンタッチパスに走ることなく、キッチリと足下にボールを収めるところ。そして、すっかり安定感を増した高萩のシャレオツレーですね。余裕綽々で相手を舐めくさったような軽やかなパスを連発していました。
ただ、この試合に関してはエース佐藤寿人が、少し「テヘッ」って感じのプレーが多かったですかね。シュートを自らのもう一方の足に当てたり、ボールをワンタッチで落とした先が無人だったり。そうとはいえ、それくらいで広島がチームとしてリズムを崩すこともなく。
なんか、ベテランパーソナリティのAMラジオ放送を聞いているような気分になりますね、広島の、特に前半の試合運びを見ていると。脱力系でもやることやりまっせ、みたいな。共鳴しているのか空回りしているのかわからないけど、リスナーは安心して聞いてられます、的な。
もっとも相手のブニョドコルとて国内の強豪に変わりなく、それくらいでは怯みませんし、焦って無駄に攻撃的過ぎたりもしません。両チームとも、じっくりゆっくり様子見をするという時間が続きます。そして、そのままハーフタイムを迎えるのかな、と思いきやブニョドコルが先制してしまいました。
自陣からフリーキックをゴール前のピシェルに放り込み、こぼれ球をブラジッチが残してサイドに。右SBのガフロフが大きなクロスを入れて、再びピシェルが高さを見せつけヘディングゴールを突き刺します。中央アジアのクラブが高さを前面に押し出すと、海域アジアのクラブとしては、なかなか分が悪い。
先制された広島は、当然のことながらハーフタイムがあけると、前半以上の攻勢を仕掛けます。もはや「過剰だろっ!」ってくらいのポゼッション。加速度を増して一方的なイニシアティブを握っていきます。山岸と石川がサイドをスピーディーに攻略したかと思えば、真ん中では相変わらず余裕のパス回し。
ただ、ブニョドコルの真ん中の守備が固いのですよ、これが。しかも、ときどきカウンターを仕掛けるのですよ。そうすると両WBが長い距離をちゃんと走って、そして戻るのですよ。「勤勉」とか「実直」という印象はそれほど感じなかったのですけど、なんというか、やっぱりかつては社会主義の総本山(の内的地域)だっただけあって、労働者的な単純作業はお手の物らしい。
そして広島のAMラジオ的なのらりくらり戦法は、プロレタ的なキッチリ感の軍門に下ってしまいました。ポゼッション指向のチームが、どうにもこうにも得点を奪えないまま時間が経過すると、お約束的にカウンターの餌食となってしまうわけです。
試合終了まで数分って段階に至り、中盤でボールを奪ったムサエフが独走。そのまま決定的な2点目を突き刺しました。こういうもんですね。攻めまくっても決まらないときは決まらない。どんなけ経験豊富でも、時にサッカーにおける‘魔のパターン’に引きずり込まれる。日本人としては残念な結果ながら、「これぞサッカー」というのを味わえたので、満足っちゃ満足でしたかね。
■広州 3 vs 0 浦和[ACL 02月27日]
広州って、けっこう暑いらしいですね、アナウンサーさん情報によると沖縄よりも緯度が低くて、高温多湿。そういう気候条件もありますし、ACL的には緒戦ですから、最初の15分くらいは互いに様子を窺うように、あまり人数をかけすぎない無難なカウンターの応酬でした。
ただ、「人数をかけない」というのは広州の基本形態っぽかったのに対し、浦和は分厚く攻めたいチーム。徐々に浦和はバランス厳守を弛めて、流動的に攻めようとし始めます。で、そうすると広州の強烈な3人が繰り出すカウンターの恰好の餌食となるわけで。カウンターから槙野やらGK加藤やらがムリキにチンチンにされて、ドフリーのバリオスがごっつぁんで決めた広州の先制点。うん、槙野の滑り込みが不用意すぎましたかね。押されっぱなしじゃなかった分、警戒感が少し低下していたのかもしれません。
先制した広州は、それまで以上に重心低く、人海戦術的に守ります。浦和の側からすれば、あまり後ろ髪をひかれることなく攻撃に人数を掛けられるようになったわけですが、シーズントップということもあってか如何せんボールに足が付かない。で、この構図は後半なると、いっそう顕著に。どんどんと〈人数を掛けた浦和の遅攻を、広州が人海戦術で受けきって前線のタレントに任せた鋭いカウンターを繰り出す〉という色合いが濃くなっていきます。
そして、再びムリキです。またしても、レッズDF陣はチンチンにされます。低めの位置で鈴木啓太がサイドチェンジのパスをカットされると、そのまま流れるような速攻。しっかりとポストを受けて、もう一回貰い直したムリキがいとも簡単に追加点を挙げました。
2点差に広がると、〈人数を掛けた浦和の遅攻を、広州が人海戦術で受けきって前線のタレントに任せた鋭いカウンターを繰り出す〉という傾向に、ますます拍車がかかります。レッズも一生懸命に攻めるのですが、そこは、日本のサッカーチーム。どうしても〈ペースにメリハリをつけて、攻撃のテンポを上げたり下げたりする〉ってことが出来ないんですね。攻撃に一本調子感が否めない。簡単に言うと、ボールを蹴るのは精密でも試合を進める駆け引きが上手じゃない。
それでは、リッピの指導下、政治やら国民生活やらに先駆けて一足先にヨーロッパスタンダードに近づいたと思しき広州の守備は崩せない。広州の守備のバランスは、かなり整備されていましたね。特に前半はポジショニングが絶妙で美しいブロックを形成していましたし。
ともあれ試合運びの拙い‘The Jクラブ’みたいな浦和に対して広州は、中国人の国民性か、前線の南米トリオの影響か、それともリッピがそれを植え付けたのか、とにかく試合運びにソツがなかった。後半ロスタイムにダメ押しの3点目を挙げます。鈴木啓太のオウンゴールだったようですが、完璧に崩されていましたからね。やられました。いろんな意味で完敗だったと言えるでしょう。