当社比0.8倍の‘鹿島らしさ’にエリカ様の面影を感じつつ、アジアのレベルについて負け惜しむ【ナビスコ決勝】&【ヨルダンvsオーストラリア】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■鹿島 2 vs 1 清水[ナビスコカップ決勝 11月03日]

固い展開の中、ドゥトラの突破に呼応して攻め上がった柴崎がPA内で倒されてPK獲得。それを柴崎本人が小憎たらしい程の落ち着きで、しっかりと決めて鹿島が先制します。ジャニ顔で落ち着きがハンパない、なんだか内田篤人とカブりますね。

しかし、そんなことでは試合は決まりません。なんせ、この試合を捌いたのは良くも悪くもJリーグのレフェリーを象徴する「究極の日本人審判」こと家本さん。日本人が共通して保持するメンタリティが影響してかどうかはわかりませんが、ともあれ清水にもPKが与えられ、大前が決めて同点。

その後は、再び試合が硬直し、延長戦に突入しますが、こういう緊張した試合に発生する一瞬のエアポケットをえぐるというのは鹿島のお家芸なわけで。増田のサイドチェンジからの展開で柴崎が抜け出し、この試合2点目のゴールを決め込みます。あのトラップは素晴らしかった、狙ったのだとしたら。

で、そのまま鹿島は鹿島らしく、しっかり相手をいなして、時間を殺していきます。リードしてからの試合運びは、鹿島のDNAに刻み込まれていますからね。ただ、‘鹿島らしく’ってほどは憎たらしい感じではなかったようにも思います。

リーグを連覇をしている頃の鹿島は、もっと「上から目線で守りきる」という雰囲気があったのですが、そういう‘余裕綽々感’というのは、かつての鹿島からすれば、当社比0.8倍くらいしか伝わってきませんでしたね。そういう意味では、「鹿島も、まだまだ‘新陳代謝が完了しつつある’って段階でもないのかな」という物足りなさを少し感じましたけど、ま、それだけ未来への展望は明るい、ということで。

さて、試合を振り返りますと、前半は、例によって中盤の潰し合いとなったこの試合。清水としては、中盤の真ん中は、そもそも人数が少ないですし、‘一気に最前線のサイドに振ってから!’ってスタイルですから、あまり影響はなかったのですが、鹿島には厳しい展開となりました、少なくとも前半は。

鹿島といえば流れるようなカウンターを武器にしてきたチームで、そのためには小笠原とか、そういった選手が中盤の底から精度の高いフィードを発動させる必要があるわけですが、その起点を悉く潰されてしまっていて、なかなか上手くいきません。

ただ、後半にドゥトラを投入すると、少し状況は改善しました。彼がトップ下でありながら右へ左へと奔放に動き回ることによって、両サイドの遠藤と柴崎が、適宜、センターに絞る。そうすると小笠原と遠藤or柴崎という2枚が近い位置でプレーできて、しかもマークがズレていますし、攻撃の起点として機能し始めます。

で、そういうドゥトラの役割を見ていて、なんとく沢尻ナントカ姫が思い浮かぶのです。彼女が奔放の言動を繰り出すと、周囲の大人も、それに連動して動き始めます。具体的には「視聴率の気配を感じ取ったワイドショーが動き出す」→「お金の匂いを嗅ぎ取った映画とかドラマとかのプロモーターが動き出す」→「最終的にハイパーメディアなんちゃらが動き出す」→「やがて台風は去っていく」という、流動的な連動性が見事なまでに発揮されるのですが、ドゥトラ投入後の鹿島にも同じことが言えそうだな、と。

つまり、硬直したメディア業界に、沢尻姫という異分子が奔放に動き回ることにより、そこに‘逸脱’が発生する。そして、その逸脱に取り囲むように、新たな秩序が出来ていく。新たな秩序を作り出すためには硬直を崩す‘逸脱’が必要であるわけで、その‘逸脱’の役割を、この試合では奔放なドリブルを武器とするドゥトラが担っていたように思います。

ただし、逸脱が発生すれば、それに伴い新たな秩序が出来るわけですから、その新たな秩序ができると、‘逸脱’は居場所を失います。沢尻台風が期間限定で間欠泉的に発生し暫くすれば終熄するように、ドゥトラも時間の経過とともに新たな秩序のなかに埋没していきました。この辺りはサッカーの妙というか、「サッカーは社会を映す鏡である」的な現象が観察できて、興味深かったです。

■ヨルダン 2 vs 1 オーストラリア[2014WCブラジル アジア地区最終予選 09月12日]

まずフォーメーション図に訂正が。スピラノビッチのポジションで先発していたのはオグネノフスキーです。負傷退場したのもカーニーではなくオグネノフスキーということになります。

さて内容ですが、前半からイニシアティブを握り続けていたヨルダンが、PKで先制点を奪います。ベテランGKシュウォーツァーもコースを読んでいましたけど、それ以上にコースを狙い澄ました18番ハサンの落ち着き勝ちだったでしょうか。で、先制点となるPKを獲得したのは9番のオダイだったのですが、追加点の推進力となったのはオダイ。カウンターのチャンスでボールを貰うと、ドリブルで突進、そのままPA内へ。相手に対応されかけましたが、粘ってセンタリング。詰めた7番ディーブが押し込みます。

しかし、オーストラリアも引き下がりません。バイタルでCFのアレックスがクサビをポストワークし、裏に抜けたトンプソンにボールが渡ると、そのまま決めるという、オーストラリアにしては珍しく綺麗なかたちのゴールでした。ただし、オーストラリアの追い上げも、ここまで。ヨルダンがホームの期待に応えました。

この試合、序盤から、「ヨルダンがポゼッションして、オーストラリアがカウンターを狙う」という構図が続きました。ただ、とはいえヨルダンも、それほどキビキビとしていたわけではない。ヨルダンホームと言うことで中東の暑さも影響したんでしょうが、全体としてダランと試合が進みます。もちろん、見ていたワタクシに、日本戦ほどの緊張感がなかっただけかもしれませんけど。

とはいえ、それを差し引いても、やはり両チームとも、お世辞にも運動量豊富とは言えなかったですし、小気味よさはなかった。で、一つには、芝の影響もあるのかもしれません。かなり荒れていましたから、どうしてもパススピードが遅くなって、うまく繋がらないってことがあったのかも。

ただ、繰り返しになりますが、主導権を握っていたのはヨルダン。そして、よりアグレッシブでコレクティブなサッカーを展開していたのもヨルダンです。

相手ボールの奪い所は、かなり高い位置で意思統一されていた。で、連動してボールを奪うと一気に攻め立てる。いわゆる一つの‘ショートカウンター’ってやつです、いま流行の。スペインとかオランダとかイタリアとか、そういう突き抜けた部分のある国はともあれ、基本的に「‘よく組織されたチーム’=‘ショートカウンターを発動できるチーム’」となってますよね、近年は。

だから、ヨルダンの組織力は、それなりに評価されて良いものと思います。ただ、如何せん、パスが繋がらない。もちろん、そこにはオーストラリア守備陣がPA内で人海戦術的にしっかりと守り続けたという要素もあるんでしょうが、それにしても繋がらない。

あるいは、先に述べたように、荒れた芝生の影響が強いのではないかな、と。そう思いたい。そう思うと言うよりも、そう思いたいのですよ。一応、ワールドカップのアジア最終予選。にもかかわらず、両チームとも、この程度しかパスワークが繋がらないとなると、さすがに、‘所詮はアジア’ってことになってしまう。それは同じアジア人として、余りにも悔しい。だから、「ヨーロッパと違って高温多湿のアジアでは芝生が育てづらいんだ!」ってことにしたいのですね。