松本のクラブに負けちゃいられないと急成長してきたパルセイロですが、ここ数年、少し停滞期に入っているような感もなくはないですね。もっともっと早い段階で信州ダービーが実現するかと思いきや、なかなかそうもいかず。そんなパルセイロを率いているのは、元日本代表の浅野哲也。この人も、指導者として堅実なイメージがある反面、ものすごくわかりやすい成績を収めているわけではない。監督もクラブも、もう一皮剥けたいところ。
一方のアスルクラロは、ライセンスが間に合わないくらい、ノリノリで成長してきています。さすがは静岡の底力といいましょうか、周囲のオトナがサッカーを知っているのは大きい。おそらく首長も「有権者=野球好き」と思い込んでるってことはないでしょうし。そういう環境だと監督さんも実力を発揮しやすいのでしょう、吉田謙さんには、早くも名将説が飛び交っているとか、いないとか。幸運にもアスルクラロサポは他サポに比べて監督へのストレスを感じていないのではなかろうか。あくまで、他に比べて、ですが。
■前半
前日の土曜日は甲府でヴァンフォーレ戦、そのままこの日は南長野運動公園。ちょっとした小旅行ってヤツですな。宿泊したのは松本だったんで、無料朝食を食べていたら、レプリカ姿のカマタマーレサポーターをお見かけするというオマケ付き。ともあれ、試合は午後から。せっかくなんで観光もしていこうと、スタジアム最寄りの篠ノ井駅からローカル線に乗り換えて屋代駅まで。この辺りは「あんずの里」と通称されていて、おりしも「あんず祭り」的なことの真っ最中。
とはいえ、あんずの季節としては最終盤ということもあり、だいぶ散り散り。それでも綺麗は綺麗だったんですが、最大の誤算は「あんずビール」なる地ビールがあったらしいにもかかわらず、どこに行っても「完売御礼!」になっていたこと。ちくしょう。そして、バカみたいに寒かったこと。最低気温1℃ってなんだよ。最高気温でも10度って。。。もはや、人権侵害以外のなにものでもないのではあるまいか。篠ノ井駅前にユニクロがあったら、使い捨てでダウンジャケットを買ってるところだったよ。
スタジアムに到着して、スタメン発表を見る。沼津には「徳武正之」という選手と「熱川徳政」という選手がいる。・・・なんか、徳川将軍家の誰かっぽい名前じゃありません?「徳」がつけば、それだけで徳田新之助っぽいし、「正之」って老中的な人、いましたよね。また「徳政」が「徳川の政治」っぽいじゃないですか。なんてことを考えだすと「普光院誠」とか、ただのお公家さんに見えて来るし、もっといえば「藤原拓也」も平安貴族にしか見えなくなってくる。
他方、長野。先日のルヴァンカップでミシャ札幌が「1ー8ー1疑惑」のスタメンを並べて話題になりましたが、この日の長野も、スタメン表だけ見ていれば、5トップ状態。宇野沢・竹下・松村・佐藤・三上の5人がF W登録。実際には、F Wで出場したのは宇野沢と竹下だけで、松村は左SH、佐藤は右SH、三上は右SBでの出場だったわけですが。というか、三上、いまやサイドバックなのか。若い頃はコンサドーレ期待のストライカーだったのに。
■後半
前半はキックオフ早々ゴールで沼津が先行するも、長野が追いついてハーフタイムとなります。前半にあげた得点が同じなら、442のシステムも同じの、いわば似た者同士といえる両チーム。特に前半を見ていると、これはどこのチームでも同じなんですが、リスクを追わない、縦に早いサッカーというところも似ていた。というか、ハリルホジッチが代表に就任して以降、日本サッカー界が縦ポンサッカーに回帰しているような感がなくもない。
ただ、この試合を見ていればわかるのですが、決してJリーグ発足前の高校サッカー的縦ポンに回帰したわけではない。サッカー戦術盛衰史のなかでハイプレスが浸透して、そうやって新しく発生した状況への対応策として、自陣でボールを奪ったら、素早く縦に送ることが多くなった。往年の国見や駒大が見せていたサッカーは、いわばポゼッションやクサビへの野心を完全に放棄していたわけですが、近年の縦に速いサッカーは、そこの野心を捨てずに、状況が許せば、ボールをつなぐし、相手をパスワークで崩そうともする。
両チームとも、前半はそういった現代版の縦に速いサッカーをしていたのですが、後半になると、わりとコントラストを示すようになる。具体的には、相手のハイプレスをかいくぐったり、運動量が落ちてポゼッションできる状況になってからの姿に大きな差があった。長野はかなり強引に、なかば運任せで中央突破していたのに対し、沼津は各選手がどういう意図を持ってプレー選択しているかがスタジアムにまで伝わってきた。やりたいプレーが具現化されていたのですね。
なので、ときどき見ていて惚れ惚れするやうな展開からフィニッシュに至っていた。それが可能になったのは、まず、沼津の選手たちは、‘次の展開’についてのイメージが共有されていて、フリーランニングしたり、マークを剥がした選手に必ずボールが届いていたから。そして、そうやって、出そうとしたところにパスが出せたのは、風間イズムと言いましょうか、「ちゃんとボールを止めて、確実にマイボにする」というところが徹底されていたから。結果こそ2ー2の引き分けでしたが、吉田謙監督の巧みなチーム作りが十分に伝わってくる一戦でした。