■外国籍ストライカーと和製エース
2015年のJ2で好成績を収めたクラブとして、まず挙げるべきは自動昇格を果たした大宮と磐田でしょう。どちらも元J1組ですね。しかも、エレベータークラブというより、長期間にわたってJ1で存在感を示してきたクラブです。ジュビロはいうまでもなく一時代を築いた伝説のクラブ。大宮も、資金力的にJ1に定着していることが当たり前でした。
そんな、復活を遂げた両チームですが、好成績を収めた要因として共通しているのが外国籍CFが活躍した点。大宮にはムルジャ、磐田にジェイという優秀なストライカーがゴールをたくさん決めました。それに加えて大宮には家長、磐田には小林という和製の司令塔が君臨していたところも共通しています。特に家長の存在感は圧倒的だった。
逆に、期待を裏切ることとなった名門チームとして千葉とセレッソが挙げられますが、この両チームが苦戦した要因は、大宮と磐田の裏返しといえそうです。千葉は森本がそれなりな時期もありましたが、結局最後まで絶対的なCFがあらわれなかった。セレッソについてはフォルランという、契約の見通しのついていない選手をCFの軸にしてしまいました。
また、和製の司令塔という意味でも、千葉については町田や井出、谷澤に水野と和製司令塔候補はいたのですが、いずれも帯に短し襷に長し状態。セレッソについても関口や楠神に期待がかかったものの、やはり家長や小林ほどの貢献はできませんでした。攻撃において軸となる選手が、外国籍助っ人と日本人の両方にいないと苦しいというのが、J2のリアリティなのかもしれません。
■監督力の明暗
さて、自動昇格2チーム以外に結果を残したクラブとしては、福岡があります。見事に3位から昇格というプレーオフ史上初の快挙を達成してみせました。ここにもウェリントンと城後という外国籍CF+和製司令塔という組み合わせがあったわけですが、より強調したのは、他にも愛媛、長崎、北九州といったクラブが躍進したように、西日本のクラブが上位に進出したこと。
もちろん、西日本ばかりってのは単なる偶然なんだと思います。それよりも上述のクラブに共通しているのは、監督が実力派だったところでしょう。福岡の井原さんは早くも名将の誉れを獲得しつつありますし、愛媛の木山さん、長崎の高木さん、北九州の柱谷さんなどは、いずれもJ2などで確かなキャリアを重ねてきた高偏差値監督。
やっぱり、下位リーグというのは監督力がモノをいうんだと思うのです。というのも昇格降格のあるリーグ制度で、かつ上は無限大になりうるトップリーグでない中間リーグというのは、構造的に「どんぐりの背比べ」になる。財務的にも戦力的にも、そこまで極端な差は出ない。少なくとも理念的には。となると、そこで差を生み出すのは監督力ということになるんだろうなぁ、と。
そういう意味では、降格したのが大分と栃木というのも象徴的ですよね、この両クラブの最大の過ちは、監督人事、より厳密に言えば「後任監督人事」に判断を誤ったところ。最後まで誰も用意できなかった大分はいうに及ばず、栃木も、たぶん「さらに後任」を探し出せなかった(あるいは必要な金銭的裏付けを準備できなかった)んだと思うんですよね。勝負は水物ですから、経験ある監督でも上手くいかないこともある。そのときに「次の一手」を準備できているかどうかが、重要なんだと思います。
そこには資金も必要ですし、それ以上にスカウティング能力、言うならばフロントの力量が必要不可欠。沈み掛けた泥船に乗ることになってでも良いからJリーグチームの指揮をとりたいというS級ライセンス保持者なんて、いくらでもいる(と思う)。かつて自チームに所属していたOBはもちろんのこと、縁もゆかりがなくとも条件的に監督就任が計算できる人材を、どれくらいフロントが把握しているのか、そういう人材にアクセスするオフィシャル、あるいは内々の回路を適切に確保しているのかって部分で、降格したチームのフロントには不足があったんだと思います(そういう意味では甲府も危ないです)。