■好成績を収めたクラブ
2015シーズンを振り返ったとき、さしあたり「今年は良い成績だったね」と評価できるのは、広島、ガンバ、浦和というチャンピオンシップ進出クラブと、最後までチャンピオンシップ進出の可能性を残した鹿島&FC東京、さらには来年以降の飛躍に一定の期待を抱かせた横浜あたりでしょうか。いずれも、たぶん2016シーズンも上位を争う可能性が高そう。
これらのクラブの共通点を探っていくと、FC東京以外はオリジナル10だというところですね。Jリーグ発足当時を振り返ると、「地域密着」という標語は、あくまでいまだ理念であり、オリジナル10に選定される際には、財務面の安定性が重視された。つまり、FC東京も含めて、2015シーズンに結果を残したのは、事実上の親会社に相当する企業があるクラブだということです。
ただ、広島と鹿島については、そこまで親会社におんぶにだっこではない。財務規模も、それなり。にもかかわらず強豪の地位を維持できているのは、ひとえに両クラブの継続性にあります。鹿島は、一貫してジーコのDNAを導きの糸としてクラブを作ってきましたし、ここ10年の広島の一貫した強化方針は、その効率性も含めて、さんざん絶賛されてきたところです。
ただ、継続性があるといっても、実はクラブそのものに継続性を大切にする体質があるとは、まだ安心できないのではないかとも思います。両クラブの継続性は、要するに織田秀和と鈴木満という、極めて優秀な強化担当者が長期間にわたって辣腕を振るってきたことによる。この二人の傑物が、いずれクラブを去ってからも、同じようにできるかどうか、一抹の不安がなくもない。ともあれ、「親会社の存在による財務的安定感」と「強化の継続的一貫性」が、J1で上位を争うための最低条件であることが、改めて明確になったシーズンでした。
■不調だったクラブ
一方で、残念な結果に終わったクラブについては、判断基準はいろいろありますけど、わかりやすいのは降格した清水、山形、松本の3クラブですね。このうち、後二者は、「まぁ、仕方ないかな」ってところ。山形も松本も日本有数の名将があの手この手でチームを下支えしていて、「お!これは残留もあるな」って何度も思わせてくれましたが、最後は力尽きました。
他にも10位以下になったクラブを眺めてみると、新潟、仙台、甲府、鳥栖などの名前が並ぶ。山形や松本と同じように、いわゆるプロビンチャですね(最近はあんまりプロビンチャって言葉を使わなくなりました?)。湘南こそ頑張りましたが、エレベータークラブという階層がすっかり形成されましたね。J2という下部リーグが誕生した当時には、まだ流動的でしたけど。
そのなかで特異な例が清水ですね。ここは、一応、「市民クラブ」ではあるんですけど、オリジナル10ですし、鈴与という大口スポンサーがおりますから、いわゆるプロビンチャとはいささか趣が異なる。そんな名門クラブがついに降格。当時の長谷川健太監督が退任したあたりから、あまり良い噂を聞きませんでしたけど、どうも親会社(あるいはフロント)と現場の関係性がツーカーじゃなかったみたいですね。
セレッソやジェフなんかが代表的ですが、親会社の出向社長がしゃしゃり出るとロクなことは起きない。もし、クラブ運営に直接的な影響力を発揮したいのであれば、親会社に辞表を提出して、クラブ以外に帰る場所をなくしてからじゃないとダメみたいです。もし、出向のまま社長を務めたいのであれば、「君臨すれども統治せず」ってのが名社長の条件なのかな、なんてことを感じた2015シーズンでございました。