ザックジャパンがコートジボワール相手に初戦を落とした瞬間、多くの「(自称)サッカーに関心のある」日本人にとって、ブラジルワールドカップの記憶は風化を始めたわけですが、一応、ワタクシはWCの全試合を録画を中心に見ました。で、その各試合のレポは少しずつ「ワールドカップTV観戦記」としてアップしておりますが、それと並行して、「ワールドカップ各国分析」もアップしていこうかなと思います。1週間に1カ国とすると、コンプリートするのに8ヶ月、2015年の5月、完全に皆さま「とっくにそんなこと忘れたよ!」って時期になってますけれども・・・。
というわけで、今回は衝撃の敗退をしたスペイン。
□転換期の失言
リアル無敵艦隊も、さすがに転換点にあることを突きつけられる大会となりましたね。2戦目以降はグループリーグ中に立て直す難しさに直面しただけで、今後の参考にはならないでしょうけど、初戦の負けっぷりが見事でした。オランダのハイプレスの前にまさに完敗。そうか、スペイン対策はわりと単純だったのだな、と。ひょっとしたら、関塚ジャパンがスペイン五輪代表を破った試合が、参考になったんじゃないだろうか。
そんなスペイン代表、なんだか、シャビアロンソの失言が波紋を呼んでましたよね。佇まいからして、なんとなく人格者風に見えるシャビアロンソですけど、舌禍の多いタイプなのでしょうか。でも、翻訳された日本語を読む限り、そこまでヒドいことを言ったようには思えなかったんですけどね。邪推をするならば、シャビアロンソがレアルの選手で、スペイン代表のサッカーがバルサベースだったことに、何らかの感情を逆撫でするようなことがあったのかも、みたいな。
□シャビ一代記としてのスペインサッカー
結局ですね、スペイン黄金期は、イコール、バルサ黄金期だったわけですね。そして、2010年前後のバルサ黄金期というのは、メッシという飛び道具もさることながら、やっぱり、そこはシャビ・イニエスタ・ブツケッツの中盤トリオなわけですよ。なかでも、アイコンはシャビ。そのシャビの衰えが(ワタクシ的には画面越しに衰えを見極めることはできませんでしたけど)、そのままスペインの失速に直結した。だとしたら、ここ10年のスペイン黄金期というのは、単なるシャビの一代記だったのではないかと勘ぐりたくなります。
視線をJリーグに移すと、「西野さんがガンバのパスサッカーを作り上げた」なんて言われたりしますけど、それって、つまり、西野さんではなく、遠藤の一代記なのではないかと思われる。というのも、一時的「ジェフ=運動量と連動性」みたいな評価を受けたわけですが、それって、最終的にはオシムの一代記でしかなかった。つまり、結局、サッカーチームのスタイルって、中核選手や単一監督の個性に規定されるものなのではないか、と感じるのです。あまりにも日本人は「その国のDNAに根付いた」みたいな言説をチヤホヤしすぎるように思われます。
□ジエゴコスタについて
ただ、デルボスケは、言っても名将です。どう考えても、ここ20年の中で世界で最も成果を残した監督の1人。なので、スペインサッカーが曲がり角にあることなんて、重々承知していたはず。だから、スムーズにさりげなく変化を加えようとしていて。4123ではなく4231を採用したのもそうでしょうけど、特にセスクを0トップにするのではなく、ジエゴコスタの融合にこだわり続けたところに、そういう、デルボスケの覚悟が見て取れる。結果として軟着陸には失敗しましたけど、結果論で評価しても生産性はない。
それにしてもジエゴコスタにとっては、“しんどい”大会になりました。大敗の主犯として非難に晒されたことに加えて、ブラジル国籍を選ばなかったことで、ホント、盛大なブーイングを投げつけられ続けました。ただ、レアルに移籍したときのフィーゴの時にも感じましたけど、こういう、外国でのブーイング、好きです。日本は「移籍した選手には杓子定規にブーイング(あるいは拍手)」って感じですけど、よその国では、「去り方」「因縁の種類と深さ」を斟酌した上でブーイングの音量が決まる。ピッチ内の選手だけでなく、我々サポーターも含めた「判断力」こそ、日本サッカー界の国民的課題だと思うのです。