‘止める蹴る’の重要性を再認識しつつしつつ、プリンスリーグの重要性に思いを馳せる【八千代vs立正大淞南】&【立正大淞南vs旭川実業】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■八千代 1 vs 7 立正大淞南[高校選手権2回戦 01月02日]

高校サッカーって良いですよね。スーパープレーのオンパレードですから。10番の左SBの高橋君が中に戻し、それを受けたセントラルミッドフィルダーの浦田君がミドルシュートを八千代のゴールに突き刺して、立正大淞南が先制します。

さらに立正大淞南は畳み掛けます。八千代DFがゴール前でもたもたしている隙を見逃さずボールをかっさらった14番のFW田路君が、難しい角度からのシュートを見事なコントロールでねじ込みました。これは、なかなか難易度の高いプレーだったと思います。

淞南は止まりません。解説の都並さん曰く「トリッキーなセットプレーが基本形」らしいコーナーキックで、「逆に裏をかくことになる」というノーマルなキックを繰り出し、6番の徳丸君が問答無用のヘディングで合わせて、ダメ押しに近い3点目が前半のうちに決まってしまいました。

最早こうなると所謂1つのワンサイドゲーム。4点目は11番の坂口君がドッカンと決めたゴールでしたが、1点目と概ね同じ形でしたね。サイドから中にショートパスを入れて、足下に収めてから、シュートを撃つ、そんなゴールでした。

ただ、そこは激戦区千葉を勝ち抜いた八千代高校。そのまま引き下がりません。後半の13分に4番のCF附木君がグランダーのシュートを流し込みました。サイズの大きさから妙にアナさんに注目されていたものの、期待された程はボールを収められなかった選手ですが、意地を見せました。

とはいえ、そんな反撃モードも、すぐにかき消されてしまいます。中盤で立正大淞南の浦田君がボールをインターセプトすると、そのままドリブルで駆け上がり、前がかりになってスッカスカとなっていた八千代守備陣を切り裂くと、最後は坂口君が勢いに乗ったままグランダーのシュートを突き刺して5点目。

坂口君の勢いは止まりません。例によって左サイドを駆け上がった高橋君が中にパス。たぶん浦田君だったと思いますが真ん中の選手がワンタッチでリターン。このパスは田路君に届き、さらにドリブル。完璧に崩しきってから折り返すと、坂口君が楽々とハットトリックを達成しました。

完全に勢いを得た立正大淞南はトリックプレーのコーナーキックから7点目を挙げます。PA内で颯爽とヒールパスを繰り出すところなど、‘伝説の野洲’を彷彿とさせるようなゴールでもありました。高校サッカーとは、時に残酷。一度メンタルが崩れると、容易に大差が付いてしまいます。

そんなわけで、立正大淞南の攻撃力が際立った一戦となりましたが、このチームのシンボルは10番の左サイドバック高橋君でしょうか。スピードがあるのと、折り返しのパスが丁寧で正確なところが、このチームの良さを代表しています。

まず、スピードですが、高橋君に限らず、立正大淞南ドリブラー揃いで、オフザボールではなく、ドリブルしているときのスピードが非常に速いんですね。その速さは、‘スピード’というよりは‘クイックネス’に近い。‘アジリティ’とも少し語感が違って、擬音語にするなら‘キビキビ’が最も近いでしょうか。

そして、折り返しのパスが丁寧と書きましたが、そうなんですよ、‘折り返しのパス’なんですよ。‘クロス’とか‘センタリング’では決してない。サイドに相手守備陣を引きつけて、バランスを崩させた上で、真ん中に戻す。そこから中央突破を図っていく。そんなアタッキングを繰り返していました。

一方の八千代ですが、‘堅守の八千代’とアナさんは紹介していましたが、正直、あまり堅守感は感じられませんでした。というのも、最終ラインが非常に不安定だったんですね。あるいは空中戦には強いのかもしれませんが、立正大淞南の前にはタジタジでした。

原因は2つあって、1つには、先制点を奪われて動揺したでしょうか、キーパーの飛び出しと最終ラインのプレーが全く噛み合っていませんでした。キーパーのコーチングの問題なのか何なのか、ともかく、まずはコミュニケーシ不足。

そして、もう1つには、相手アタッカーのフォアチェックに八千代守備陣の足下が全く対応できていなかったということです。大きく蹴り出す前にチプレスを受けたときに、それをいなしたり、交わしたりすることが出来なかった。単純な‘止める蹴る’の部分で八千代守備陣は立正大淞南攻撃陣に完敗を喫したといってよいでしょう。

立正大淞南 1(PK3) vs 1(PK0) 旭川実業[高校選手権3回戦 01月03日]

拮抗した展開が続いた緊張感溢れるグッドゲームでしたが、攻めあぐねていた立正大淞南が後半の20分前に先制点を挙げました。田路君が低い位置からワンタッチで局面を打開するスルーパスを出し、走り込んだ坂口君がスキルフルに決めたシュート。2トップによるレベルの高い競演でしたね。

序盤から堅守の一方で攻撃力に不安がありまくりだった旭川実業ですから、「さすがに厳しくなったかなぁ」と思われて、実際に、そういう雰囲気が漂っていたのですが、そこで決めるのがエースです。旭川実業のストライカー山本君がパワフルな個人技で同点に追いつきます。

その後は立正大淞南が一気呵成に攻め立てますが、旭川実業質実剛健に守りきり、試合の行方はPK戦へ。「PKになったら旭川実業の方が有利かもね」という雰囲気もありましたが、案外、PK戦というのは地力の差が出るもの。立正大淞南が4回戦へと駒を進めました。

2回戦では71と圧倒的な攻撃力を見せつけた立正大淞南ですが、この試合については、終盤に動きはしたものの、全体律としては渋い展開となりました。その要因は自律的なものではなく、他律的なもの。難しい表現をしましたが、要するに、旭川実業立正大淞南にしっかりと対応してきたということです。

立正大淞南は全体的にワンタッチのパスが非常に上手いので、中盤ではシンプルにグラウンダーの縦パスでボールを前に進め、バイタルエリアに入ると、近年の流行である‘繋ぎ倒す’を発動させ手数を攻める、そういうチームです。

2回戦の八千代の守備陣は、そこに対応ができず、アップアップとなってズタズタにされた。しかし、旭川実業は、そうはならなかった。守備陣も攻撃陣も非常に落ち着いていて、相手がハイテンションなチームであっても、平然と自分たちのプレーを続ける。その辺はなかなか見事でした。特に守備陣は、スピーディーに突っかかってくる相手攻撃陣に対する身体の入れ方が尋常でなく上手かった。

それから、ボールを奪われたり、意図した精度のプレーができなくても焦らない。無駄にダッシュしない。まずは相手とボールの位置を確認し、各自が落ち着いてポジショニングを微調整する。だから、ほとんどバランスが崩れないんですね。

失点した後も粘り強く同点に追いついたように、旭川実業には‘浮き足立つ’という概念がないらしい。それもこれも1分17敗という、結果だけ見れば歴史的惨敗に終わったプレミアリーグでの経験が生きたのでしょう。いくら立正大淞南が‘伝説の野洲’みたいなサッカーを展開したとこころで、複数の選手がJリーグ昇格を内定させているヴェルディユースとかと比べれば、そりゃ、「ま、大したことはないねーな」ってことになりますよね。立正大淞南の素晴らしいパスワークを前にしても、どこ吹く風。こういうチーム、好きです、えぇえぇ。