■鹿島 2 vs 1 川崎[天皇杯決勝 01月01日]
石井さんになってから、アントラーズって、時折“えげつない”くらいに連動する組織的なフォアチェックを披露しますよね。しかもビッグマッチに限って。でも、この試合では、どちらかというと、えげつなくないバージョンのプレスでした。序盤から、川崎がしっかりボールを支配できていました。チャンピオンシップの準決勝では、文字通りフォアチェック地獄に引きずり込まれていたのですが、ちゃんと修正してきていました(鹿島側の事情によるもので他律的な現象かもしれませんが)。
チャンピオンシップ準決勝との違いは、1つには鹿島にプレスの旗手たる金崎がいなかったこと、もう1つには川崎のWボランチが大島と憲剛という組み合わせであったことでしょうか。いやぁ、“えげつない”ですよね、大島と憲剛の組み合わせって。「ちゃんとパスサッカーやってれば個で守らざるをえない局面なんて出てこないはず」という風間イズムだからこそ為せる業。この2枚看板がいれば、多少のプレスくらいなら、余裕のよっちゃんで剥がせてしまう。
“えげつない”といえば、西がくらわしたハイキックですかね。きれいに登里だったか車屋だったかの後頭部に入りました。そしてきれいに審判の死角になっていた(と信じたい)。主審はともかく、「ラインズは見ておけよ!」と思わなくもないですが、ともあれ、ホントきれいにクリーンヒットしましたねぇ。もちろん、わざとではないでしょうし、狙ってアレが出来るのであれば、違う意味で尊敬しますけど、それにしてもプロアスリートって運動神経がえげつないんだなぁ、と。
もう一つ“えげつない”のは鹿島の「鹿島力」。とりあえず相手に攻め込まれながらもノラリクラリとやりすごしながら気がつけばリズムを掌握していて、前半終了間際っていう、「サッカーにおいて最も気をつけなければならない時間帯」に、「サッカーにおいて最も気をつけなければならない得点パターン」たるセットプレーで、ヌルヌルっと先制点を奪ってしまうのだから。「鹿島は、いつ何時たりとも鹿島である」ってところを見せつけまくり。
後半に入って“えげつない”と感じさせたのは川崎の三好。ハーフタイム明けからピッチに送り込まれると、システムチェンジも相まって、後半序盤は川崎のペースとなり、その中心には三好がいた。小林の同点ゴールをアシストしたのも三好。もし、来シーズン以降も、このレベルの“えげつない”を安定的に発揮できるようであれば、川崎サポ的には「フロンターレの未来」でしょうし、サッカーファンから見れば「いつまでJリーグで見られるのだろか」ってなもんでしょう(ただし、現状、1試合の中でも波がある模様)。
そして、延長戦にもつれ込んだ死闘の勝敗を分けた“えげつない”、それは再び登場の「鹿島力」ってことになるのでしょうけど、それ以上に、ここまでくると、もう、「川崎の2位力」としか表現しようがないような気もする。風間さんの勝負弱さとか、憲剛の持ってなさとか、そういう次元ではなく、川崎フロンターレというクラブの遺伝子に刻印されている2位の歴史が生み出す、目に見えないオカルト的な“神の手”が勝敗を分けたのではなかろうか。。。