■日本 4 vs 0 パレスチナ[アジアカップGL 01月12日]
やはり、アギーレJAPANは曲者です。キックオフ直後のワンプレーですけど、「いったん下げてロングキック」ではなく、ドリブルで突撃していきましたもんね。これが、「相手の意表を突くため」なのか、「格下相手にかますため」なのか、単に「風が強いからグランダーにしたいから」だけなのかは判断しかねますけれども、ともあれ、敢えて一般的でないやり方を選択することで、「一筋縄ではいきませんよ」ってのを表現していました。
実況を参考にしても、それはそれは風の強い試合だったらしい。必然的にグラウンダーのパスが目立つようになるんですけど、そこで目立っていたのは遠藤の縦パス力です。アンカーに長谷部がいることで、より上下に柔軟なポジショニングが可能になって、まさに水を得た魚状態。本人も気持ちよくサッカーが出来ていたのでしょう、地を這うイーグルショットで先制点までもたらしてくれました。判断力という意味では、この人の右に出る人はいません。
これで肩の力が抜けた日本代表は、さらに攻撃への圧力を高め、追加点ももぎとります。香川が思いっきりシュートを撃って、そのシュートをアシストにして岡崎がダイビングヘッド。よく反応しましたねぇ。香川的には「えっ!?そうなっちゃうの??」ってな苦笑いだったでしょうが、ともあれ2点目。そして、前半の42分には、コーナーキックからの流れで、香川がパレスチナ左SB18番のバタに倒され得たPKを本田が決めて3点目。快調な45分となりました。
後半に入っても、日本は攻撃の手を緩めません。早々に吉田がヘディングシュートでダメ押しの4点目を決めます。吉田って、わりと殊勲のゴールが多い印象なんで、こういう楽勝ゲームで趨勢に関与しない得点を取るのは少し新鮮でした。ともあれ、こうなってくると試合は壊れます。まずパレスチナの集中力が欠落する。そして、それに伴って日本の方も、どうにも緊張感がなくなってしまう。そうであっても5点目6点目を取らないといけないところですけど、まぁ、贅沢はよしておきましょう。
楽勝モードになったんで、アギーレ監督は、例によって合理的な選手交代を繰り返していきます。中でも早い時間帯に遠藤をお休みさせるというのは、「いつ何時たりとも全身全霊でスポーツマンシップにのっとって・・・」という学校教育の延長としてスポーツと接触するようになる日本人には、なかなかできない決断。個人的には好印象です。清武とか豊田などのオプションの確認も出来ましたし、それなりに収穫のある初戦だったと言って良いのではないでしょうか。
この試合、相手はパレスチナだったわけですけど、思いのほかに良いチームでしたね。さすがは予備予選を首位通過しただけのことはある。おそらく国民(そもそも「国民国家」の概念が適用できるのかどうか、不勉強でして存じ上げませんけど)の総人口はさほど多くないんでしょうけど、風の影響で逆に図らずもグッドチームってのが証明されました。というのもグランダーのパスばかりになる中での、パススピードが速い。しかも、それなりに繋がる。技術のあるチームですよね。
ただ、好チームだったはずのパレスチナですけど、後半に吉田が4点目を決めてからは、ガクッと集中力を落としてしまいました。プレーが途端にラフになって、一昔前のアジアカップを見ているような荒れかけた展開に。その結果として、CBのマハイナがイエローカード2枚で退場してしまったことは、少し残念でしたね。終盤には再び守備への集中力を取り戻したとはいえ、このあたりのメンタル力は、チームの成熟度をそのまま反映するものでしょうから、まだまだパレスチナにはサッカーの積み重ねが不足しているのかもしれません。