■日ノ本学園 0(4) vs 0(3) 常磐木学園[高校女子選手権 01月11日]
西の横綱と東の横綱がアクシデントなく、頂上決戦で雌雄を決するという、見応え十分な顔合わせとなりましたが、ポゼッションで優位に立ったのは常磐木学園。とはいえ、日ノ本がやられっぱなしかというとそうでもなく。そもそも手数をかけずに攻めたいチームらしい。というか、なんだか、この試合の前日に行われた男子の流経柏vs前橋育英の構図にとても似ているぞ。で、こういうパターンになると、手数をかけない側、つまり日ノ本の方が決定的なチャンスを作るもの。実際に常磐木のDFがシュートを掻き出すみたいなシーンもあったわけですが、時間の経過とともに常磐木が押し返し、前半もなかば以降は、ほぼ常磐木が試合を支配するという展開でした。
後半に入ると、やおら五分と五分という趨勢に。というよりも日ノ本の方が、むしろ押しているように見えなくもなく。その中心にいたのは日ノ本アンカーの吉田。実況的にはいわゆる人間劇場がクローズアップされていて、また、ルックス的にもフォトジェニックなので、ついつい非本質的な部分に目がいくんですけど、長い足を鞭のようにしならせてダイレクトで出すグラウンダーのミドルパスがデロッシだとかシャビアロンソみたいで素晴らしかったです。その吉田のビルドアップが尻上がりに精度を増す日ノ本に対し、常磐木は序盤からパスサッカーをやり続けたことで集中力とかメンタル的な部分のスタミナが落ちてしまったらしく、エースの白木にボールが届かなくなっていきます。
そんなわけで、試合は延長戦へ。延長戦は15分でなくって10分ハーフなんですね。試合は完全に拮抗して、固まってしまったので、そうは簡単に動きません。両チームとも集中を切らさず、勝敗の行方はPK戦に委ねられることに。決勝戦がPKというのは残酷ですね。ロベルトバッジオですよ、バッジオ。「PKを外せるのは、PKを蹴る勇気のある選手だけだ」ってヤツ。日ノ本学園が、2年連続の2冠を達成しました。見事な試合、感動しました。
女子の場合は男子と違って「高体連→トップリーグ」というルートがメインコースでしょうから、やはり注目の選手がおります。常磐木には白木星、日ノ本には八坂。それぞれ浦和Lと新潟Lへの入団が内定している選手で、ともの10番を背負う。プレースタイル的にも共通する部分があって、絶対的なエースということもあって、かなりフリーマン気味に動くのですね。白木はワントップの位置から前後に、八坂は右サイドから左右に、という動きの傾向の違いはありますけど、女子サッカーにおいては高校日本一決定戦というステージであっても、スターシステム系だったりする。競技人口の少なさが、スターシステムを可能にしている部分があるような気もします。
で、この試合はキーパー受難の決勝戦だったりもしたんですけど、キーパーについても競技人口的に発展途上であることを感じさせられました。受難の部分から述べますと、まず日ノ本の木付ですが、前半の早い時間帯に常磐木10番の白木と交錯して顔面にぶつかったらしく鼻出血のアクシデントに見舞われます。そのまま退場も危惧さたもののピッチに復帰。骨折とかしていたら乙女の危機ですけど、大丈夫でしょうか。対する常磐木の小野は受難というか、ミスが目立ちました。キャッチが不安定というか。なんでも高校1年からGKに転身したらしい。こういうコンバートが珍しくないのも、まだまだ女子サッカーの競技人口が少ない証拠。そういう現在地にあることを再認識させられる一戦でもありました。