悪戦苦闘する監督たちの周辺をウロウロと…2012年シーズンのJリーグを振り返る・サッカー界を彩る人々

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■ミシャとポポ[FC東京vs新潟(07月28日)]

2012シーズンで新たに就任した監督の中でも、何かと話題となったのは浦和のミハイロ・ペトロビッチ。浦和再建のためにフロントが、すがりつくように辿り着いた「渡りに舟」。いやぁ、ホントに運が良かったですね、浦和のフロントは。そしてミシャといえば、忘れてはいけないのがランコ・ポポビッチ。ミシャが浦和という関東のビッグクラブに移ったのと同じタイミングで、FC東京という、やはり関東に所在し、潤沢な資金を保持するクラブと契約しました。

で、この2人は、皆さん御存知のとおり、師弟関係というか、兄弟弟子というか、そういう関係にありますよね。より攻撃的に行くべきと主張するポポと、守備の安定は絶対的にゆるがせに出来ないと考えるミシャが喧嘩別れしたという噂もありますし、とにかく因縁の2人なわけです。

この試合は7月28日の第19節。第19節の時点では、少し両雄の明暗が分かれてしまっておりました。ポポビッチのパスサッカーは、怪我人の続出と相手の研究が進んだこと、そして、そもそもの成熟度的に「階段の踊り場」という段階にさしかかっていることもあったんでしょうが、とにかく、この時期、FC東京はパスサッカーを志すチームが構造的にぶちあたらざるをえない壁に直面し、「パスは繋げど崩せない。シュートが打てない」って閉塞感に、「これでもか!」ってくらいに包まれていた。そして、サポーターのフラストレーションも相当に溜まっていました。

一方で、それを尻目に、同じ日にミシャレッズは、3位4位の上位対決を戦い、20で磐田を退けておりました。しかも8戦負け無しとかになり、チーム作りが順調であることを世間に示します。この「ポポトーキョーの閉塞感とミシャレッズの躍動感」というコントラストは、非常に鮮やかと言うか、一見、残酷にも感じられたのですが、一つ忘れてはいけないのは、FC東京が、昇格1年目だという厳然たる事実ですね。

昇格組と考えると、この時点で10位という順位は決して悪くない。というよりも、初年度に10位であるにもかかわらず、少しサポーターが不満を抱えていたと言う状況は、ポポさん的にはなかなか厳しい。「繋ぎ倒すサッカーで、しかも勝つなんて、J2だから可能であって、そんなんJ1で簡単にできるか!」ってな感じだったことでしょう。

というわけで、2013シーズンはポポさん的には勝負の年。これ以上、憎っき(?)ミシャに水を空けられるわけにはいきません。積極的な補強を敢行したミシャレッズに注目は集まっていますが、静かなシーズンオフを過ごしたポポ東京からも目が離せません。

■水彩画家・安間さん[東京Vvs富山(08月05日)]

安間さんと言えば、大木さんのバトンを受け取って甲府を率いた監督さんですよね。J1再昇格こそ果たせませんでしたが、比較的サポーターから支持されていた監督さんだった印象があります。

で、フロントの方針転換、「何が何でも守備的なサッカーをするんだ!三浦を監督に招聘するんだ!!」という強い政策のもとお払い箱にされた、要するに「クラブの事情」ってヤツに翻弄された気の毒な人、みたいなイメージがワタクシにはあります。

そんな安間さんですから、富山に移って、監督に昇格したときは随分と期待したもんです。で、当初は、その期待に違わず「3331」という斬新なシステムを採用し、活きの良いところを我々に示してくれたのですが、2011シーズン終盤あたりから、「戦力の割には上手く遣り繰りしながら、片鱗を見せてくれてるな」感がトーンダウンしてしまいましたよね。

ちなみに、この日のシステムは、たぶん、343。一列目は左から木本選手、ソ選手、大西選手。2列目は左右に朝日選手と西野選手で、セントラルが平出選手と木村選手。で、3バック、と。大西選手が右に張り出していた一方で木本選手は2トップ気味に位置取りしていたり、時間帯によって、平出選手と木村選手が縦の関係だったり、横の関係だったり、いろいろ複雑でしたが、少なくとも3331ではなかった。というよりも、3331は、とうの昔に断念されていたのですね。

で、そのこと自体は別に悪いことではないですし、更なるステップアップのために部分修正を繰り返すのは絶対に必要な作業。ただ、この日の富山を見ていると、安間さんは、少しチューンナップ過多になってしまったのかな、という印象を持ちました。水彩絵の具で絶妙な色合いを出そうとして、いろんな色を混ぜ合わせ過ぎて世にも汚いグレーになってしまった、みたいな。さて、2013シーズンの安間さんは、どのような混ぜ具合のチームを作ってくるのか。まずは期待をしましょう。

■石崎監督が不憫で不憫で…[FC東京vs札幌(10月27日)]

いつだったかに反町さんがベルマーレをJ1に昇格させたときにも感じたことですが、J2の名将って、割に合わないですよね。だって「奇跡の昇格→戦力的必然の降格」という結果を残したとしても、少なくないサポーターからは、あたかも「戦力的必然の昇格→失態の降格」のような評価を受けてしまう。うん、世知辛い

なんかロンドンの関塚さんみたいですよね。「快進撃→妥当な力負け」を「当然の予選通過→失態の3決敗退」かのごとく批判されたわけですから。ともあれ「J1で戦っていくだけの財政規模にない」クラブをJ1に導いてしまうと、まさに‘昇格のし損’となってしまうのがJ2の名将に付いて回る宿命。

石崎さんに関して言えば、もう一つ気の毒な点が。それは〈使えそうな若手〉を〈使える若手〉に磨き上げた技量を客観的に評価する基準がないこと。〈先立つものがない〉と、「どうにもこうにも、ニッチもサッチも・・・」ってのは分かりますが、もう少し札幌のフロントも、「若手有望株を高値で移籍させる」ノウハウなり、メソッドを確立できていても良いような。

と言いますのも、札幌って債務を考えると、長いスパン継続的にJ1で戦っていくというのは、非現実的ですよね。だから当面は、「債務を無くす」ことを第一目標に置かなければならない。

もし、札幌フロントに西やら藤田やらを5000万円くらいの移籍金付きで売却するだけの手練れがあるならば、現有の若手を上手に移籍させるだけでも、債務はかなり減る。そうなれば将来的に石崎さんも「あのとき石崎さんが若手を鍛えてくれて、債務を解消できたから現在がある」みたいな中興の祖になれていたと思うのですよ。・・・むむむ、つくづく石崎さんって気の毒だと思えてならない。