主に外国人監督の周辺をウロウロと…2012年シーズンのJリーグを振り返る・サッカー界を彩る人々

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鳥栖前近代的ディフェンス[浦和vs鳥栖(07月07日)]

2012シーズンの鳥栖はJ1一年生のチャレンジャーとして、堅守速攻型のグッドチームを作り上げました。

戦力で劣るチームは、しっかり守って、数少ないカウンターのチャンスを確実に決めていく、いわばサッカーの常道なわけですが、近年はバルサ信仰が幅を利かせていることもあってか、「パスサッカーこそ唯一の“是”である」という盲目的ともいえる価値観が広まり、そこまで露骨に「弱者のサッカー」を展開するチームは少なくなったような気がします。

そういうなかで鳥栖は、最近のトレンドとは一線を画す、クラシカルな「弱者のサッカー」を忠実に遵守しており、なんだか妙に懐かしい気分になったわけです。

まず鳥栖の守備陣、特にCBは「ボールは、はっきりクリアする」で統一されていました。最終ラインからじっくり繋ぐというのが流行りの昨今としては、けっこう絶滅危惧種的なスタイルです。

そして、「前に飛び出してパスカットしたとき、そのまま攻め上がる」ってのが、守備の選手が攻撃参加する基本パターンであることも、クラシックな考え方ですよね。一昔前は、松田直樹など、こういう形での攻撃参加が多く見られましたが、最近は闘莉王にせよ、槇野にせよ、ボールを持たない状態で前線に顔を出すCBがときめいていますし。

そして、何よりも、守備は基本としてベタ退きの上で人海戦術ってところなど、ノスタルジーを禁じ得ません。そういう守り方ですから、追いかける展開で前がかりになると、カウンターの餌食になりたい放題なわけですが、これなども、近年では猫も杓子も口にしていて、それでいて実際の意味が今ひとつ分からない「コレクティブ」なる概念に対するアンチテーゼであると言って大過ないに違いありませんね。

■3バックのいろいろ[町田vs岡山(09月02日)]

トルシエが日本代表の監督をしているころ、サッカー界では3バックが流行しましたよね。で、その流行は間もなく収束しました。戦術上の欠陥が明確になったからです。戦術上の欠陥とは、「どうしてもWBの裏を使われてしまい、そこをケアしようとすれば、5バックになってしまう」という欠陥です。

近年では一周まわって再び3バックも見直されるようになりつつあるようですが、近年復権しつつある3バックには大きく2つの考え方があるように思います。

1つには「5バックになっちゅいけないから、ならないようにする」という考え方で、こういう考え方をしているチームというのは、どちらかといえば、攻撃に軸足を置きたいチームのような気がします。FC東京が2012年の夏には3バックを採用しましたが、彼らは、この考え方に近かったような印象があります。

3バックにおけるもう1つの考え方は「5バックになって何が悪いの?守るべき時に、しっかり守るってだけでしょ」という考え方ですね。

こちらは、5バックを積極的に捉え、守備を重視する考え方といえます。具体的にはペトロビッチの広島や浦和がこれに近いですし、広島に関して言えば、森保体制になって、さらにその色合いを濃くしたような印象もあります。

で、この試合の両チーム、すなわち町田と岡山は、ともに3バックだったのですが、ワタクシが見たところ、町田は「できれば5バックになりたくない」チームで、岡山は「5バックでしっかり守れるなら、それで良いじゃないか」というチームだったという印象が残りました。

■その後の‘オシムの薫陶’[千葉vs大分(11月23日)]

J1昇格を賭けた運命の一戦には、‘元ジェフ’って選手が多かったですよね。大分の村井選手や林丈統選手は、わかりやすい‘元ジェフ’ですし、‘現ジェフ’である佐藤勇人や坂本、山口智も、‘元ジェフ’なわけで。隊長は引退しましたけど。

で、もっといえば、大分の村井や林丈統は、‘元ジェフ’であると同時に‘元々ジェフ’だったりします。要はジェフには‘出戻り組’が多くて、その‘出戻り組’も、いまや再び出てしまっている(出されてしまっている)わけですね。

ジェフの出戻り組で、〈出戻り前と同じくらい、出戻り後も活躍した選手〉の割合って、かなり低いんじゃないでしょうか。前述した選手のうち多くがそうですし、他にも茶野選手なんかが、そのパターンでした。出戻り後も出戻り前と同程度の活躍を見せているのは佐藤勇人山口智くらいでしょうか。そして2人のうち特にわかりやすく大活躍しているのが山口智選手。

同じような立場にあった茶野選手とは、そこの部分が好対照なんですけど、「両者の差は何か?」と考えてみたところ、‘オシム’というキーワードが思い浮かびました。そう、あまり活躍できてない(できなかった)‘出戻り組’とは、多くが‘オシムチルドレン’なんですね。

オシムの薫陶を受けず、西野朗のレッスンを受けて帰ってきた山口智が大活躍する一方で、オシム時代に大活躍した選手が復帰してからは今ひとつ〉という事実は、オシム時代のジェフと近年のジェフとでは、全く異質なサッカーを展開していることを意味します。

これは日本代表にも同じことが言えるわけですが、残念ながらジェフは‘オシムの教え’をDNAにまで高めることができなかった。ここに、近年のジェフが低迷している理由を見るとともに、‘ジーコの教え’をDNAとして昇華させた鹿島の偉大さを改めて認識させられるところです。