千葉vs大分の周辺をトリニータ目線でウロウロと…

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大雨にも関わらずスポナビ界隈でのスタンド観戦率がやたらと高かった一戦。ワタクシも末席を汚させていただきます。

ご存知の通り、この一戦、前半は大分が2点とって、後半は千葉が3点とり返すという試合になりました。トータルとしてはともかく、前半は大分の良さが際立ってたと思います。

点の取り方が良かったですよね。1点目は前田選手が才能の片鱗を、片鱗だけにもかかわらず、これでもかってばかりに見せつけたゴール。2点目は森島選手のゴールですが、その前に西選手だか土岐田選手だかに出した宮沢選手の、相手の頭上を越すスルーパスで勝負ありでした。

大分の前半のリードは前田選手と宮沢選手の才能によってもたらされたと言ってよいでしょう。

「今年の前田俊介は、今までと違うぞ」ってのは、いろんな方面から異口同音に聞こえてきていたので楽しみにしていましたが、確かに守備やムダ走りに対する意識の高さは垣間見られた気がします。

もちろん、いくら良い指導者に巡り会えたからといって、たかだか数ヶ月で急に守備の技術が向上するわけでも、突然、運動量が豊富になるわけでもないですが、意識の面は確実に変わったように見受けられました。

ただ、前俊が活躍できている背景には、前俊個人の意識改革の他に、より客観的な要素による後押しがありそうです。それは西選手との「組み合わせの妙」ってヤツですね。

インサイドハーフの西選手はメッシになぞらえて「ニッシ」と呼ばれたり呼ばれなかったりするように、ドリブルが得意な選手です。だから熊本時代以来、当然ながらサイドで起用されることも多かった。

で、前俊は右のウイング。ただし、これまた周知の通り、彼はパルプンテファンタジスタですから、アウトサイドでじっとしているわけがない。

つまり、外に流れたがるインサイドハーフと、内に入りたがるウイングという組み合わせなんですね。だから、前俊が勝手気ままに中に入っていっても、その分、西選手が外に流れればバランスは崩れない。この2人の間には合理的な互換性があるわけですね。

だったら最初から前俊をインサイドハーフで、西選手をウイングで使えば良いって話ですが、そこは「守備で頑張れる」って部分への信頼感の問題があるのでしょう。いくら改善の兆しが見られるとは言え、前俊のインサイドハーフ起用は、デンジャラス感がハンパじゃないですから。あと、敢えて逆に配置することで、流動性が増すって要素もあるかもしれません。

話かわって宮沢選手。

この選手はFC東京時代から、ずっと使う側からすれば使いづらい選手だったと思われます。

基本的には「低い位置からの正確なロングパス」という一芸で生きている選手ですので、ボランチに置くよりしかたない。しかし、低い位置に置くには守備力に不安がある。じゃあ2列目で起用すれば良いかというと、それで上手くいくなら、彼は今ごろ中村憲剛になっている。

だから、宮沢選手はその時々の指揮官に、「守備の安定を取るか、攻撃のダイナミズムを取るか」という二者択一を常に突きつけ続けてこざるをえなかったわけですね。

そういう宮沢選手に対して、田坂監督が示した解答が「ピルロシステム」。トリニータにおける宮沢選手の役割は、ACミランにおけるピルロと、同じものといって差し支えないでしょう、少なくとも理念的には。

守備は自分より0.5列くらい高い位置にいる労働者タイプのハーフに一任して、自身は基本的に最終ラインより0.5列くらい高い位置で攻撃に専念する。ただ、最終ラインの前に1人多い状態は作れるので、守備のブロックは整えやすくなる。つまり、「スペースを埋める」という役割はシッカリと果たす。また、「とりあえず宮沢に預ければ」という安心感をDF陣にもたらしているようにも見受けられました。

というように、前俊、宮沢という、「使いづらいがスペシャリティがある」選手を田坂監督が見事に使いこなして、前半はイニシアチブを握った大分ですが、後半がマズかったですね。

千葉がなりふり構わずにパワープレーを仕掛けてきたことで、DFラインがズルズル後退してしまいました。それはそれは見事なズルズル感でしたよ。

オーロイが怖いからラインを下げる。でもラインが下がれば、オーロイは、よりゴールに近い位置で高さを生かせるようになる。そんな悪循環に綺麗にハマってしまっていました。擬音で言えば「スポッ」ですね。

特に、これは結果論でしかありませんが、後半の比較的早い時間から森島選手がDFラインちょい前まで下がりっぱなしだったのは、却ってチームを苦しくしたのかもしれません。

ベンチの指示なのか、森島選手自身の判断なのか分かりませんが、このエントリーをアップする頃には分かっているかもしれませんが、ともあれ、森島選手が居なくなったことで、前線で1秒でも2秒でもタメを作って、僅かな時間ながら守備陣に息をつかせる暇を与えることができなくなってしまった。これは、トリニータの若いDFラインには、かなり堪えたのではないでしょうか。

そんなわけで、スペシャリティが輝くアタッキングと、劣勢の中ゲームコントロールが全く出来なくなるディフェンスという、絵に描いたように清く正しい「若気の至り」を実践したトリニータでしたが、「長い目」を持ち合わせているサポーターさんには、それなりに楽しめるだろうな、という魅力が沢山あったように感じました。トータルすれば「悪くはない」って感じだったのではないでしょうか。