ゾウガメvsウミイグアナを堪能しつつ、広島の試合運びに思いを馳せる【広島vsアルアハリ】&【広島vs蔚山】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■広島 1 vs 2 アルアハリ[12月09日 CWC]

先制はアルアハリ。前半の早い時間帯で守護神西川を失い、浮き足立つ広島を横目に、颯爽と右サイドを攻略し、あっさりとハムディがシュートをゴールにパス。日テレ実況チームが強調する程のワールドクラス感はなかったかと思いますが、綺麗なゴールに違いはありません。

勿論、サンフレッチェとしても、そのまま黙っているはずはなく。前半の30分過ぎ。コーナーキックのこぼれ球に反応した佐藤寿人が、エースの風格を顕示しまくるような正確なシュートで、サクッと同点に追いつきます。Jリーグ得点王の面目躍如といったところでしょうか。

とはいえ、相手のアルアハリは、いわゆるイスラム文化圏の国。イスラム文化圏といえばハムラビ法典。すなわち「目には目を」ってなことで、アルアハリのレジェンド・アブトレイカが、広島のレジェンド佐藤寿人と同じような場所から同じようなシュートを決めて勝ち越しました。

サンフレッチェアルアハリ、非常に興味深いマッチアップとなりましたね。‘似た者同士’というか‘似て非なる者’というか。小雪がちらつく厳しい気象条件となって、乾燥帯の砂漠気候から来日したアルアハリの面々は、見るからに寒そうにしていました。見ている側としては、散らつき加減がハイビジョンに映えて幻想的で美しかったのですが。

気温が低いと、当然、カラダが暖まるのに時間がかかりますから、どうしてもケガが多くなる。試合開始早々の西川の故障は接触によるものですが、ガリの負傷は少なからず気候の影響がありそうです。そんな中でもスクランブル投入された増田はGKでありながら半袖。

一方、ガリに代わって登場したのは、ご存じアブトレイカ。彼が入ってからアルアハリは5バックになりましたよね。確か、‘攻撃的な5バック’というのはアルアハリだったかエジプト代表だったかの伝統的なスタイルだったかと。

守備時には523っぽくなるアルアハリと541っぽくなる広島。2列目の2人がシャドーになるかワイドに張るかという違いはありますが、世界的にもユニークな5バックシステムで共通している両チーム。守備時に5バックとなるってことは、攻撃に移る際に、なかなか素早く押し上げられないわけで、そのため、攻撃時にはじっくりとパスを回すという部分も似ていました。

ジャブ気味に狙い澄ました縦パスにストライカーを走らせることが多いという面でも似ている両チームでしたが、相違点は、広島が両WBにガンガン走りまくらせるのに対し、アルアハリは最前線の3人がのらりくらりパスを繋げることで、フォローアップをゆっくり促すという差でしょうか。いずれにせよ、ガラパゴス化したチーム同士の組み合わせというのは見ていて興味が尽きず、十分に堪能できました。

■広島 3 vs 2 蔚山[CWC5位6位決定戦 12月12日]

うぉい、水本よぉぉ。味方ゴールキーパー西川の逆を鮮やかに突いてゴールに丁寧なパスを突き刺してどうするんだ、と。まぁ、その前に塩谷が思いっきり競り負けていて、そっちにも問題がありそうですけど、基本は水本と西川のコミュニケーションミス。先制点を、まさに献上してしまいます。

というわけで、誤算だらけの先制点。とはいえ、追いついたゴールも広島的には嬉しい誤算っちゃ誤算でしょう。セットプレーから、最終的に山岸が詰めたものでしたからね。空中戦には苦戦が予想されましたし、近年は地味キャラになりつつある山岸のゴールでしたし。

広島にとって、‘狙い通り’の形となったのは、この試合トータル3得点目の勝ち越しゴール。佐藤寿人が‘さすが’としか言いようのない動き出しから状況を作り出し、そこに山岸がピンポイントクロスを送り、寿人がしっかり流し込んだもの。‘The広島’ともいえる形でしたね。

広島の3点目も、これまた‘The広島’。飯尾和樹ばりにブレイク‘しかけている’高萩が、ゴール前でテクニシャンぶりを見せつけ、魅惑のラストパス。パスの行き先は高性能ゴール量産マシーン佐藤寿人。きっちりかっちり決めます。いやぁ、ファンタスティック!

最後、蔚山も後半のロスタイムに意地の一撃で追い上げますが、いわゆるひとつの‘時すでに遅し’。広島が5位の座を確保しました。何よりも、「広島のストロングポイントがアジアの舞台でも通用しそうだ」という手応えを得たことが大きいのではないでしょうか。

序盤は、蔚山が前がかりになるという、少し意表を突かれるような流れ。蔚山17番のコソルギがボランチながらフリーマン気味に、どんどんゴール前に駆け上がりつつ、そこを13番のキムスンヨンがフォローするみたいな感じで、流動的なサッカーを展開していました。

それに対し広島は、415によるポゼッションモードではなく、523というか3421のままというか、ともあれ、「さしあたり攻撃は前線の3人の速攻に任せましょう!」という対応をしました。「まずはジャブ中心にやりすごしてしまおう」、みたいな。

ただ、蔚山が先制点を挙げたあたりから、イメージ通りの構図になりました。〈キムシンクウに向けたハイボールを中心にカウンター攻撃を組み立てる蔚山に対し、クサビの縦パスを強気に入れていこうとする広島〉、という図式ですね。

で、序盤は、佐藤寿人が孤立して淡泊になっていたし、相手左サイドが緩いのでガンガンと攻め上がれながらも、肝心の石川のクロスが、輪を掛けて淡泊だったり、どうも攻撃に厚みを感じられなかった広島ですが、時間の経過とともに攻勢を強めます。

蔚山の運動量が落ちるや、佐藤寿人は2ゴールを挙げましたし、石川のダイナミズムが広島のアタッキングを促して人数をかけた迫力ある攻撃をもたらしました。序盤は‘ジャブ要員’に徹していて淡泊に見えた2人の存在感が、尻上がりに増していきました。

こういうところにチャンピオンチームの試合運びというものを感じますし、それだけ〈広島に勝ち癖が付いている〉ということでしょうから、唯一の〈当年度の国内リーグチャンピオン〉という‘開催国枠’のアドバンテージというものも、同時に感じました。