■ウルグアイ 2 vs 1 イングランド[WCグループD 06月20日]
ウルグアイもイングランドも初戦を落として、「後がない」という崖っぷちで臨んだ2戦目。ポッド分け的にはイングランドの方が格上という扱いなのでしょうが、キックオフから、まずペースを握ったのはウルグアイでした。ウルグアイ、初戦のコスタリカ戦では、負けたこと以上に、まったくリズムを生み出すことなく、「あれあれあれ」といった感じのまま敗れてしまったので、「けっこうショックを引きずっているのかなぁ」なんて思っていましたが、そんなことはなかった。
必然的に、先制点もウルグアイ。カバーニのクロスに、スアレスがバックステップを踏みながらのヘディングを強烈に突き刺したゴール。スアレスの嗅覚もさることながら、カバーニのラストパスも放送では賞賛されていましたね。ただ、ワタクシ的には、その一つ前の動き、すなわちロデイロの軽やかな突破が印象的でした。両チームの素軽さの相違が端的に象徴されていて。で、先制点を奪われてから、ようやくイングランドもジェラードが目立ち始めますが、そのままハーフタイムへ。
ハーフタイムが開けて後半。息が入ったことでウルグアイは態勢を立て直します。まずは「かまし」をかけます。セットプレーをたくみに絡めながらイングランドのゴールに迫りました。こういうメリハリを実行できるのが古豪の古豪たるゆえん。とはいえ、リードされているイングランドが、そのまま引き下がるわけにはいかず、徐々に必死な形相に変わっていき、力ずくでペースを握りにかかります。そして、実際にその圧力がウルグアイゴールを攻略する。
スターリッジが右サイドでシンプルにSBのジョンソンにはたくと、ジョンソンが熟練したクロスを折り返す。スルスルスルとウルグアイ守備陣の間をすり抜けていき、ルーニーに届く。これをルーニーがきっちり決めて、ようやくワールドカップ無得点の呪縛から解き放たれました。この得点を契機に、試合は一気に活性化。勢いに乗るイングランドも、勝ち越したいウルグアイも、それぞれが迫力を増して相手ゴールに詰め寄せていくようになります。
そんな白熱した攻防に決着をつけたのはスアレス。ムスレラのパントキックをカバーニのフリックして、オフサイドポジションにいたスアレスへ。ただ、カバーニがフリックしたのではなく、ジェラードに触れたということらしくオフサイドはなく、スアレスがスペシャルな決定力を見せつけました。イングランドはランバードを投入してパワープレーを仕掛けますが、どうしてもイングランドの選手はランバードよりジェラードを見てしまう。パワープレーも上手くいかず、事実上のGS敗退を迎えました。
それにしてもイングランドはモタモタしていましたねぇ。スタイルがないというか、なんというか。「ルーニーとジェラードを起点にして・・・」以上の画が見えてこなかったのはワタクシだけでしょうか? ただ、選手個人の基本的なパラメーターは高いですから、リアクションサッカーにはならない。そして、こういう相手って、ウルグアイからしてみれば、またとない大好物ですよね。モタモタとアクションサッカーを仕掛けてくる相手の足下を掬うところにウルグアイの真骨頂がある。
その昔、マラドーナが5人抜きシュートを決めたシーンに対して、二宮清順だったか誰かが、「この当時は、まだ5人で1人を潰すというよりも、1対1を繰り返すっていうサッカーですよね。特にイングランドですから、騎士道精神に則った一騎打ち的な要素の強い守備をしている」みたいな解説をしていたのですけど、その表現を借りるとするならば、「足軽軍団が集団戦術でクラシカルな騎士軍団を打ち負かした」といった様相の一戦だったかと思います。