大雨の中での観戦でございました。
■前半
のっけから長崎が、その完成度の高さを見せつけるように横浜FCゴール前へと攻め込みました。長崎の完成度というのは、単純化すれば尽きない運動量で“金魚のナニガシ”状態となって襲いかかるハードプレスと、手数をかけずに、それでいて粗雑ではない洗練されたカウンターということになろうかと思います。高木監督が率いて、去年のJ2シーンを賑わせてくた長崎ですが、今年も引き続き、そのクオリティを発揮しているようです。
そして、その序盤の一気呵成の時間帯に、そのまま長崎が先制。右WBの金久保が思い切って撃ったミドルが突き刺さります。雨でスリッピーでしたし、試合開始直後で相手守備陣も集中している時間帯、定石といえば定石のプレー判断ではありますが、それをブレずに出来るのが長崎の良さですね。また、金久保については、それ以前からサイドアタックの起点として機能していましたから、必然の殊勲ともいえるかもしれません。
一方の横浜FCには次のようなシーンがありました。それは前半の25分頃。メインスタンド前で中央からサイドへの短い横パスが出されたのですが、受け手は「えっ!?オレ!?」みたいな感じで反応できなかったのです。しかも、その直後にペナルティエリアへと侵入されたピンチでは、相手のファールをセルフジャッジして、守備陣の足が軒並み止まってバタバタしまうってシーンがあったりもした。なんというか、宜しくないですよね。
で、さらに加えて、コーナーキックを与えた場面ではポジション争いで注意されたドウグラスが激昂して、審判に何やら暴言を吐いたらしくイエローカードを頂戴してしまった。つまりですね、チームの雰囲気というか循環が悪いのですね。ものごとが上手くいっていない集団に特有の負のスパイラル。山口監督があまり「ポジティブかつ緊張感溢れる」って方向にチームをマネジメントできていないのかもしれません。
■後半
後半に入ると横浜FCは二点目を献上します。自陣ゴール前でドウグラスのイージーなキックが長崎の佐藤にプへのレゼントパスになって、そのまま決められたゴールですから、「奪われた」というより、まさに「献上した」という失点でした。そのタイミングも、また、良くない。同点に追いつくべく山口監督が少しトリッキーな選手交代のカードを切った直後ですからね。こういう、一瞬ゲームが途切れて、しかもイロイロ確認しなければならない、という最も集中力を求められるシーンでのボーンヘッド。
こういうところの集中力の差って、そのままチーム状態の差を象徴しているんだと思います。うまくいってるチームは、こういうときに自然と集中できるものですから。で、なぜ、こういう集中散漫な悪循環が発生するかというと、それは、基礎練習の反復をどれくらいサボらず繰り返しているかって部分の影響だと思うのですね。山口監督は、ひょっとしたら、戦術練習ばかりやっていて、基礎練習を疎かにしているのではあるまいか。
そう感じさせるシーンがこの試合には幾つかあったのですよ。この日は、したたかに雨が降っていたのですが、横浜FCのテクニシャンたちは、実に頻繁にツルッツルとピッチに足を滑らせていた。そういう光景が両チームに均等にあったのなら芝のコンディションのせいにできる。しかしですね、長崎の選手たちは全然、滑ってなかったのですよ。アウェイのチームが滑らないのに、ホームチームの選手が滑る。これは、もう、走り込みの量の差としか思えない。
それでも横浜FCはパクソンホのヘディングシュートで一点差まで追い上げる。とはいえ、これとて、クロスにしても、シュートにしても、個人技によってもたらされたものであって、チームとして生み出したものではない。2ー1と、点差こそ最小限差でしたけれども、相手の隙を見逃さずしっかりゴールを決めた長崎と、個人技頼みの横浜FCとでは、“チームとしての体裁をなしているか”という根本的な部分で、非常に大きな差があったと思います。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・前田悠佑
□推薦理由
この試合、6番を付けた長崎のボランチが玄人チックなポジショニングを見せていて、釘付けになってしまいました。長崎は343ですから、局面によっては非常にアンバランスになってしまう。それを巧みに調整したのが、この前田悠佑。三ツ沢ですからスタンドからでも顔がよく見える。伊原剛志みたいなナイスミドル。ワタクシ的には初見に近かったのですが、新人さんではなく、ホンダロックでキャリアを積んだ経験豊富なプレーヤーらしい。
下部リーグからの叩き上げとしては日本では徳重とか古橋がいますが、ブラジルワールドカップに引きつければイングランドのランバートでしょうか。30歳を過ぎてからブレイク。WCでも代表入りし、リバプールへの栄転も決まったんでしたっけ? 前田悠佑本人である必要はないですけど、こういう経歴の選手が代表に入るようになれば、「日本のサッカー界も成熟したなあ!」って感じになるんじゃないかなぁなんて思うのですよ。ぜひ頑張っていただきましょう。