ネルシーニョの監督力に感嘆ししつつ、高校サッカーの醍醐味に思いを馳せる【天皇杯決勝】&【実践学園vs東海第五】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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柏レイソル 1 vs 0 ガンバ大阪[天皇杯決勝 01月01日]

いやぁ渡部かぁぁぁ。コーナーキックから直接、頭で合わせたレイソルの先制点。伏兵というか、ラッキーボーイというか。ガンバもそれまでにコーナーからゴールネットを揺らしたんですが、それはオフサイド。明暗が分かれました。

この試合、両チームとも準決勝とは何人か選手を入れ替えてきました。というかケガやら何やらで入れ替えざるをえなかったわけですが。まず、カードトラブルあけから両チームともエースが復帰してきた。レアンドロレアンドロですね。誤植ではないですよ。ガンバの9番と柏の10番。2人ともレアンドロです。

それから、ボランチにも変更がありました。ガンバは今野の相棒が武井から明神に。柏は、茨田が大谷とWボランチに入りました。で、準決勝で先発した武井と栗澤がベンチでスタンバる、と。尤も、同じ‘先発復帰してきたボランチ’といっても、明神と茨田とではあまりキャラが被りません。むしろキャラ被りは両チームのCBですね。

ともに準決勝で中澤と近藤というレギュラーセンターバックを負傷退場で失った両チーム。代わってガンバは丹羽、レイソルは渡部を起用してきました。この2人ってキャラが被りますよね。同じようにJ2で大活躍を見せて、今期はJ1の相対的ビッグクラブに加入。しかし、そうそう簡単にレギュラーになれるほどJ1の強豪チームは甘くなく、両選手ともシーズン中は余り出番を得られませんでした。先制点は、そんな2人のマッチアップを渡部が完璧に制して挙げたゴールですから、なんともドラマチックでございました。

そんな渡部を抜擢したのはネルシーニョなわけですが、この試合はネルシーニョの凄さが際立った一戦だったといって良いかもしれませんね。。〈持ちたいガンバと持たせたいレイソル〉という非常に噛み合わせの良い組み合わせでしたから、前半はガンバがポゼッションします。ただ、レイソルとしても、「いくらなんでも持たせすぎだ!」ってことで、ネルシーニョは前半のうちから水野を下げて、田中を投入、バランスを整えます。

ネルシーニョといえば北嶋との相剋を持ち出すまでもなく、いろいろと‘灰汁’の強い監督ですが、そういう‘灰汁’に対する批判なんて結果という形で黙らせるのが名将の条件。そういえば、見た目も‘灰汁’の強さも、どことなくネルシーニョモウリーニョって似ているような。

ともあれ、ネルシーニョが名将としての実績を積み上げた大きな要因の一つは、ゲーム途中の修正力。特にJ2で優勝した2010シーズンは『エルゴラッソ』などでも、度々特筆されていました。そのロジカルな‘神通力’は2013年度元旦でも全く衰えなかった模様。

もうね、後半も30分を過ぎているというのに、まったく守備のバランスが崩れず、むしろ時間の経過とともにガンバの側がパスの出し所を探し出せなくなるなんていうのは、異常でしょう、異常。試合が終盤に進むにつれ、松波新米監督と百戦錬磨のネルシーニョという監督力の差が歴然としてしまった天皇杯の決勝でした。

実践学園 2 vs 1 東海第五[高校サッカー開幕戦 12月30日]

先制したのは実践学園。東海第五のDFがPA内でうっかりハンドを犯し、そのPKをキッチリ決めたもの。こういうところでJリーグ基準のファールを取ってしまうのが、岡部拓人クオリティ。だったら、前半にもPKを取るべき場面があっただろうと。

気落ちする東海第五を尻目に、実践はササッと追加点を挙げます。激しいフォアチェックから8番の原君がボールを奪うと、そのもも独走して、フィニッシュまで持ち込み、しかも決めきりました。これは選手のクオリティが、そのまま出た得点。

東海第五も、そのまま終わったりしません。後半も残り5分を切ったところで、追撃弾をとにもかくにもねじ込みます。キーパーからのパントキックが、DF陣の隙間をすり抜けたエース小林君に届いて、J内定者の意地を見せるスビューティフルシュートをねじ込みました。ただし追撃もここまで。東海第五は2年連続して開幕国立戦で東京都代表に敗れてしまいます。

実践は非常にカラーのハッキリしたチーム作りをしていますね。したたかに守って、ロングキックからのクラシカルなカウンターで活路を見いだす、と。ただ、〈押し込まれて仕方なく〉というより、〈それがうちの戦略ですから〉といった余裕さえ感じさせる雰囲気。

先制点を決めたのは10番の鴻田君なのですが、この選手は10番ながらCB。CBながら10番なのはキャプテンだからだそうですが、CBの選手がPKを蹴るところに、後ろ寄りにクオリティの高い選手が揃ったチーム編成を感じさせます。

なので、実践にとって最優先タスクは〈ヘンなかたちでボールを失わないこと〉これにつきる。サイドであろうとゴールから遠かろうと、とにかくシュートで終わる。自分たちのサッカーを貫いていました。そして、逆に自らのサッカーを表現できなかったのが東海第五。

岡山入団が内定しているストライカー小林君を擁する東海第五としては、〈いかに周囲がお膳立てするか〉が重要になってくる。だから、サイドのドリブルで相手守備陣を引きつけたり、バイタルエリアでショートパス交換をこねくり回したり、回数は多くないまでも、丁寧に攻撃を作ります。

しかし、そこは高校生。メンタルが十分にタフとは言えません。相手に先制されると、動揺の収まらないまま追加点を奪われ、そこからは攻め急いでロングキックを前線に放り込み続けてしまいます。そうなると実践の思う壺。実践はサイドバックも180cm前後ある大きなチーム。故に守備的戦術を、おそらく主体的に選んでいるわけでしょうから、相手がロングボールを蹴ってくれると、自分たちのペースでサッカーを進められることとなります。東海第五としては、点を取らなければならないからこそ、逆にゆっくりじっくり揺さぶって攻めるべきでした。まあ、このように焦燥感が前面に押し出されるところも、高校サッカーの醍醐味といえば醍醐味ですが。