というわけで富山目線です。
つい最近まで絶滅危惧種状態で、ヨーロッパ追従な人々の間では鼻で笑われていましたが、なんだか、今年になって3バックが増えましたね。京都がそうですが、この富山も3バックです。
京都の大木監督と富山の安間監督は、甲府時代に監督とコーチの間柄でしたから、その辺りのことが何か関係しているのでしょうか?
特に富山は3331という極めてユニークなフォーメーションを採用するというので、シーズン前から注目を集めていました。
一応、事前の情報によると、普通、サッカーではFW、MF、DFと横に3分割するのに対し、安間流3331では、右、中、左と縦に3分割するという考え方をするらしい。理屈の上では理解できても、そんな単純なことなら、なぜ今まで、同じアイディアが出てこなかったのか不思議な話なんで、果たして、そんな理屈通りにいくものかしらと興味津々だったりします。
単純に考えて、縦に3分割ということは、少なくともDFラインは、常套的なやり方に比べて1人少ないということになる。その辺は、どうしてくるのかな、と。
で、実際に見てみたら、表現は悪いかもしれませんが、動きの種類は、なんだか軍隊的。
いや、別に抑圧的だとか、根性論的だとか、そういうわけではありませんよ。軍隊の行進って、全ての兵隊さんが、等間隔を維持したまま、一糸乱れず同じペースで移動するわけじゃないですか。つまり、そんな感じ。そんな感じじゃ分からないですよね。要するに、1トップの苔口を除いた3×3が、みんな、同じ方向に、同じ距離だけ動くわけです。魚群のように動くといった方がイメージしやすいですかね。
ボールの位置に合わせて全体がまとまりとして動くから、どこまでいっつも、上下左右に隣接する選手との距離感が変わらない。だからバランスが崩れない。3×3のブロックが守備のときのみならず、攻撃に移った後も含めて、90分間、維持し続ける感じ。
バランスが崩れない分、誰かが1人で長い距離を走らなければならない、というシチュエーションも発生しない一方で、攻撃をしようとしたら、3×3=9人が同じ運動量を費やして押し上げなければならないし、カウンターをくらいそうになっても、やはり9人で戻る。そういう意味では、非常に非効率的な運動量消費を強いられるわけです。
そうなると、そうそう簡単に、攻撃モードには移行できない。確実にポゼッションできるという見通しが立たないと、なかなか全体は押し上げられないわけです。要するに、遅攻のときに限って苔口+3×3で攻めて、それ以外では、苔口or黒部に託すって感じですね。
ただ、そこの徹底具合が見事でした。裏にスペースがあれば、そこにロングボールを出して苔口選手走らせる。スペースがないときは黒部選手の頭に目掛けてロングボール。こう表現するとロングボールの連発に聞こえるかもしれませんし、実際に、そういう部分は否めないわけですが、そのロングボールに必ず意図、狙いがあるんですね。こういうチームは見ていて気持ちが良い。
また富山はセンターラインに経験のある実力者を揃えていることも、チームがグダグダにならない一因かもしれません。
先に述べたように、なんだかんだで苔口・黒部の両選手は、「これは、もしや」という期待感を持たせるプレーをするわけですよ。そして、3列目の真ん中には前回のJ1時代のセレッソでも一時期レギュラーを張った江添選手がいて、4列目の真ん中には、やはり前回のJ1時代の甲府でコンスタントな活躍を見せた池端選手が控える。
おそらく富山は今後も大崩はしないのではないか、なんて思います。
そんな富山でしたが、この日は災難続きでした。
前半の30分くらいに3列目の右に入っていた吉川選手が足を痛めます。吉川選手は、ムリをすればプレーを続行できそうでしたが、大事をとって谷川選手と交代します。しかし、その谷川選手が前半のうちにタンカで運ばれるという事態になります。
さらに後半には守備の要である池端選手まで足を引きずってプレーするに至ります。池端選手は、状況が状況だけに、立ち上がって数分間はピッチに残りましたが、誰がどうみても、プレーを続けられる状態にはなく、結局は交代。
富山は、ケガの対応で交代カードの全てを使い切らざるをえませんでした。しかも、守備的な選手を失ったにもかかわらず、富山はJ2クラブによくあることですが、控えのフィールドプレーヤーを4人しか帯同しとおらず、さらに、その全てがMForFW登録の選手。
必然的に、富山は、守備的な選手の穴埋めを攻撃的な選手に託さざるをえない。朝日選手あたりは、コロコロとポジションを代えていました。しかし、それでも富山は最後まで、大きな破綻を見せませんでした。
その理由も3331にあるのではないかと思います。すなわち、最初に述べたように、富山の3331は、軍隊的というか魚群的に動きます。
それは、どういうことかと言うと、3×3で空間を分担しているが、役割を分担しているわけではない、ということです。各選手たちは、ピッチの9分の1の範囲を常にあてがわれ、その範囲にボールがくれば、攻撃も守備も平等に果たさなければならない。
勿論、攻撃の機会が多い前線は攻撃的な選手が守備の機会が多い後ろは守備的な選手が充てられてはいるわけですが、あくまでそれは比重の違いでしかない。だから関原選手が3列目左に入ったところで、クリロナがアンカーをするほどのミスマッチは生まれないわけですね。
というわけで、富山の3331、十分に堪能できました。ポゼッションで優位に立てるチーム相手ならば、相当おもしろいことになるのではないでしょうか。