サッカーブログなのにナベツネさん発言の周辺を、もう少しウロウロしてみる

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世間ではセリーグの開幕時期やら開催方法をめぐっての議論がようやく一段落が付きました。本来、弊ブログはJリーグブログなので、あまり「よその庭」に足を踏み入れるのも気が引けるのですが、少し考えたところもあるので、素人根性丸出しで、意見を述べたいと思います。

最初に論点をまとめておきましょう。簡単に言うとセリーグは、当初、「3月中に開幕、ナイターも回避しない」という方針を示したわけですが、問題点は概ね4つくらいでしょうか。

時期が早すぎないか?

節電の中、ナイターはどうなの?

なんで、選手やパリーグと一致団結できないの?

そもそもセリーグの球団(の親会社)って傲慢すぎないか?

このあたりの論点をシッカリ区別して、自分の持つ違和感がどこにあるかをクリアにしておく必要があると思います。本エントリーはを肴にを論じて、にも一言添えるって感じになります。については野球ブログの皆様にお任せってことで。

さて、今回(も?)、混迷に拍車をかけたのは「「開幕を延期するとか、プロ野球をしばらくやめるとか俗説があったが、戦争に負けた後、3カ月で選手や監督から試合をやりたいという声があがって、プロ野球を始めた歴史がある」というナベツネさんの放言ですね。彼という人格に対するアレルギーを振り払って耳を傾ければ、ナベツネさんの意見も、なんとなく筋が通っているように思えなくもない。しかし、私見では、ナベツネさんの認識には、大きく2つの誤りがあるように考えます。

まず1つめは「戦争に負けた後」という部分に関して。

もちろんワタクシも体験したわけでも見聞したわけでもないのですが、敗戦直後の日本って、比喩的に言えば、日本全国焼け野原だったと思うのですよ。当然、都市部と山間部とでは被害の程度に差はあったと思いますが、おそらく当時の日本人の自意識的には、「日本国民全員が被災者」だったと想像されます。つまり、戦後復興におけるプロ野球復活というのは、「被災者である選手たちが同じ立場にある国民全体に勇気を与える」という行為だった。

それに対し今回は、「非被災者である選手が被災者に対し何をすべきか?」というシチュエーションなわけです(もちろん、一部には被災した関係者もおられると思いますが)。「同じ被災者同士の関係」か「非被災者と被災者の関係」か、ここが決定的に違う。戦後復興と今回の震災とを、そのまま同列に扱うことには慎重さが求められるではないでしょうか。

次に、「3カ月」という部分について。

いやですね、「だったら6月11日に開幕するべきってことにならないか?」っていう素朴な疑問が湧くのはワタクシだけでしょうか?

例えば、阪神大震災のときは、特に延期せず開幕しました。しかし、阪神大震災が起きたのは1月17日ですから、2ヶ月以上が経過していました。それに対し今回は、3月11日と3月25日の関係。つまり、震災発生から2週間で開幕させようとしていたわけです。2ヶ月と2週間、この差は大きいと思います。

だったら、どれくらいの自粛期間が必要なのか?って話になるのですが、ここで、ふと思ったのは仏教式の法事の仕組みですね。ご存じの通り、仏教では、ある人が旅立つと、7日おきに法事が行われ、それが7回くりかえされると、七七日、すなわち四十九日となって、一段落となります。

教義上の理由は、霊魂が仏様になって天国に到着するまでの期間ってことだったと記憶しておりますが、実はこれは、「人間が悲しみを乗り越え、前向きに日常生活を送れるようになるまで、49日くらいかかりますよ」ってことなんじゃないかって感じるんですよね。

うむ、さすがは悠久の歴史を刻みながら形成されてきた仏教。奥が深いです。感覚的にもストンと納得できませんか?だから、プロスポーツのような、広い意味で「公的性質」を帯びる興行の開催については、7週間(2ヶ月弱)ってのが、一つの目安になるのかな、なんて。

そう考えると、Jリーグの再開が4月23日、6週間ですね。概ね妥当かと。一方、プロ野球は4月12日で32日間ですか。まぁ、「喪が明けた」と称して許される限界のラインですかね。葬式仏教が浸透した時代と現代とでは時間の感じ方も変わってきていますから、ギリギリ「誤差の範囲内」でしょう。

何にせよ、「不幸があってから2週間で日常生活に戻りましょう」という主張は、少し人間心理を無視しすぎかな、ってのが率直な感想です。

最後に、ナベツネさん発言と直接の関係はありませんが、節電云々についても一言。

サッカーとセリーグとでは、特にこの部分への対応が対照的でしたね。だから、ややもすれば「良識派のJリーグと横暴なセリーグ」という構図で語られることもなくはないと思います。ただ、ワタクシ的には、節電云々については、少しプロ野球に対して同情的です。

なぜ、Jリーグは、あんなにも迅速に節電に対する協力的な姿勢を示すことができたのか?それは、

Jリーグには東京・東北電力管内にドーム型スタジアムがない。

基本的に試合は週末に行われる。

という2要素によるんだと思います。

については説明不要でしょうから、について簡単に補足を。野球の場合、シーズン中は月曜日が移動日で、火曜日から日曜日にかけて3連戦が2セット。概ね一週間で6試合ですね。平日:土日の比率は2:1。要するに野球の試合は圧倒的に平日に行われる。平日に試合を行う以上、デーゲームかナイターかというのは死活問題ですね。平日の昼間に試合をしたら、閑古鳥の鳴き方は尋常でないでしょう。平日デーゲームに満員の観客が詰めかけるようになったら、確実に日本の経済は沈没します。ありえない現象ですね。

一方、Jリーグは、もちろん水曜日に試合がある週もなくはないですが、ACLに出場して、なおかつナビスコ天皇杯とも上位に進出したとしても、せいぜい、平日:土日の比率は1:2くらいのものでしょう。そして、土日メインで試合を開催する以上、デーゲームかナイターかってのは、それほど大きな問題にならない(別の論点として夏場の暑さについては議論もあるでしょうが)。

つまり、プロ野球とJリーグでは、ナイター自粛によって発生する痛みの量が決定的に異なるわけです。ビジネスモデルの問題として。だから、その相違を捨象して、一概に「良識派のJリーグと横暴なプロ野球」とのレッテルを貼り付けることは適切でないでしょう。

今回の騒動で少し株を下げましたが、セリーグのファンは「親・子・孫の3代にわたって、そのチームのファン」ってパターンも少なくないでしょうから、実際の人気はそれほど落ちないかもしれません。とはいえ、少なくとも「世間をお騒がせした」ことは間違いないわけですから、この汚名は、選手が再開後に熱いプレーを繰り広げ、球団が今後、積極的に慈善活動を主導するなどして、ぜひ返上していただきたいですね。