■なでしこ 3 vs 3 アメリカ女子[練習試合 06月03日]
新生なでしこの船出はどうなるのか。全米が注目した一戦。もちろん全米が注目したのはなでしこの船出ではなく、五輪壮行試合としてのアメリカ代表ですけど。そんなUSAコールごとき、岩渕のドリブルシュートが切り裂いてやったのですよ。ファインゴールでした。そして、ますます大きくなるUSAコール。そんなUSAコールごとき、中島のダイレクトクロスに大儀見が合わせて吹き飛ばしてやったのですよ。これまたファインゴール。
でも、鳴り止まないUSAコール。それに応えないようだとスカーレットオハラが泣くぞとばかりに、ダンのビルドアップにピューが反応してクロス。それにモーガンがしっかりと合わせて、アメリカ女子代表は反撃の狼煙を上げます。そして、後半、大儀見が退場してから、セットプレーで再びモーガンにやられてしまいました。それにしても、アメリカ的にも、「おいおい、何、退場しちゃってんだよ。それじゃ、本番のシミュレーションにならんじゃないか」と思っていたに違いない。
ともあれ、1人少ない状況で同点に追いつかれてしまったなでしこ。このままズルズルいくのかと思いきや、辛抱強く同点のまま試合が終わるよう時計の針を進めます。しかし、残り5分を過ぎてから、魔の交錯。ミス絡みで勝ち越しゴールを献上してしまいます。残り時間的には、「もはやこれまで!」って雰囲気でしたが、最後の最後に、まさかの中央突破で横山が同点弾を蹴り込みました。アメリカ女子代表は、リードを奪ったことで1人多いというのにひいてしまった。これがサッカー。面白い試合でした。
この試合の注目ポイントは、黄金時代を築き上げた前任者に対して、どういう独自色を出し、そして結果を残していくかというところ。まずシステム的に面白かったのが、岩渕を1トップにして、大儀見を左サイドに置いたところ。1トップにはポストプレーではなくシュート技術を求め、ボールをキープしたり、ボールの出し手にも受け手にもなれる選手をサイドに置く。イメージ的には2年前のセレッソで、フォルランをサイドに、柿谷を1トップに配置するような感じでしょうか。
ここから見える高倉さんの戦術は、“縦に速く”ということでしょうか。ポストプレーヤーを置くということは、「トップに預ける→戻す→パスワークで崩す」というパターンを想定しているわけですから、いわゆるパスサッカーなわけです。逆にムービング系の選手をトップに置くということは、「攻撃のスイッチを入れてからは後ろに戻すことなく前へ前へと一気にシュートまで持って行け!」というサッカーを指向しているということになる。佐々木前監督がザック的サッカーだとすれば、高倉さんはハリル的サッカーなのかもしれません。
高倉さんのチーム作りで、もう一つ感心したのは、選手の入れ替えについて。抜擢されたのは千葉と佐々木くらいで、他は常連に近い面々。でも、明らかに雰囲気が変わった。良くも悪くも佐々木さんの時代は、現在INACに所属している気心しれた面々に依存している部分が大きかった。そこの依存からの脱却が上手くいかずに時代の終焉を迎えたわけですが、高倉さんの新チームでは、そこの「INACの気心しれた面々」を、一旦、ごっそり外した。でも、それ以外はさほど入れ替えていない。このあたりのアンバイも、「なかなか、やり手だな」との印象が残りました。