■広州恒大 1 vs 1 FCソウル[ACL決勝2nd 11月10日]
両チームとも縦に速い攻撃を指向しているだけあって、忙しい展開というか、右に左にクビの筋肉が疲れる展開となります。とはいえペースは広州の掌中にあったといってよいでしょう。ホームですし、戦力の絶対値にアドバンテージがありますからね。
広州の攻撃は淡泊に見えながらも、本質的には「ムキにならない」といったスタンス。前線のタレントが強烈で攻撃的な印象があるのですが、じつは手数をかけないカウンターが攻撃の基本形で、そのカウンター発動数もそれほど多くはない。攻められるときにだけ攻めて、その際にアタッカー陣が技術を見せつけながら、確実に決めていくってサッカーですね。
対するソウルは2ラインをしっかり整えて、2トップの破壊力に託すパターン。クラシカルな‘堅守速攻’ですね。非常にソリッドで、いかにもJリーグ経験者が率いているチームって感じ。そんな両チームの対決をJリーグに例えてみれば、〈クルピのセレッソvsベルデニックの大宮〉みたいな構図でしたでしょうか。
後半になっても特に構図は変わらなかったのですが、ということは広州にとってみれば、常にチャンスが転がっているという意味であって、実際に、後半の10分過ぎ、エウケソンがソウル守備陣のラインを巧みに打ち破って抜け出すと、ブラジル人らしくシュートの上手さを見せつけて先制点を挙げます。
しかし、ソウルもそのまま引き下がりはしません。アジウソンからの縦パスへのポストが浮いてルーズになったところ、それをエクスデロがどうにか収めて、入れ替わるように抜け出したダムヤノビッチにラストパス。GKと1対1となったダムヤノビッチが同点ゴールを決めました。ただ、それではアウェイゴール差をひっくり返せない。そのまま広州が下馬評通りの成功を収めました。
それにしても広州、強かった。解説の都並さんが仰っていたように、一昔前の中国と言えば、「やべぇ、勝てない」とか思うとすぐにカンフーサッカーになるなど、メンタル面で未熟な部分が目立っていました。しかも広州は‘天河体育中心体育場’なんて名前のスタジアムをホームにしている。
「‘てんが’スタジアム」ですからね、今から5年くらい前の「アメトーーク」の熱心な視聴者ならおわかりかと思いますが、響き的は、まさに「自らの欲望」であるとか「沸き上がる動物としての本能」に忠実な人々の集団としか思えない。にもかかわらず、広州の、特に中国人選手は、そのような自己中心的な様子をおくびにも出さない。このあたりはリッピのチームマネージメントの為せる業でしょう。世界的名称に率いられたチームがCWCでどこまでやれるか、楽しみですね。