【御蔵出し】ヤングなでしこをフルネームで呼称する習慣の周辺をウロウロと…

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引っ越しかなんかの時に、それまで書き止めていたコラムめいたエントリーの下書きを保存したUSBメモリーを紛失したのですが、それが先日、発見されました。それを【御蔵出し】シリーズとして不定期連載していきたいと思います。そんなわけで本シリーズは、エントリーが書かれた当時の頃に記憶を戻してお読みくださいませ。

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2012年の夏、オリンピックの興奮も覚めやらぬなか、U20女子サッカーのワールドカップが日本で開催されました。田中陽子猶本光といったニューヒロインも誕生し、それなりに盛り上がって、まあまあ、宜しい感じの大会になったのではないでしょうか。

それにしても、この大会中は「田中陽子」というフレーズが連呼されましたよね。もちろん、それに相応しい活躍をしましたし、アイドル性もありますから、それはそれで結構。で、田中陽子を「田中」と呼ばずに「田中陽子」とフルネームで呼ぶのも、「田中美南」の存在を踏まえれば、何ら不自然ではない。

ただ、例えば猶本のことも「猶本」と言わずに「猶本光」とアナウンスすることが、テレビ中継では多かった。そして、それは猶本に限らず、他のヤングなでしこへも似たようなもの。なんで、フジのアナウンサーは、ヤングなでしこのことをフルネームで呼びがちだったんですかね?

なでしこフル代表の方はどうか。基本的には「過剰アナウンス大好き青嶋さん」を除けば、名字だけを呼び捨てる傾向にあるような。他の競技、例えば女子バレーなんかも、フルネームで連呼されるのは、語呂が良すぎる「きむらさおり」くらいじゃないですかね。

我々の世代的には、「名字呼び捨て女子」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは小泉今日子さんですね。それまでは「キョンキョン」と呼ばれていた彼女は、ある段階から自分のことを「コイズミ」と呼称するようになった。勿論それは三菱だったかどこかのCM上の戦略って要素が小さくないとは思いますが、やはり、それで彼女に対するイメージは確実に変わった。アイドルアイドルした感じから、「自立した大人の女性」みたいな雰囲気を醸し出すようになったのですね。妙にセックシーなCMとかカレンダーとかも目立ってましたし。

スポーツ選手に対する敬称と言えば、甲子園なんかも思い浮かびます。最近はあまりTV観戦する機会もなくなりましたが、子どもの頃には、それなりにかじりついたものです。小学生時代の覚束ない記憶ですが、当時は高校球児に対し、ほぼ必ず「君」をくっつけていたと思います。

それが、いつの頃からか、あまり「君」をつけなくなった、名字の呼び捨てで呼称するようになってきた。

現在では、どうですかね?

たぶん、「君」付けで呼ばれることは、ほとんどないんじゃないでしょうか?

翻ってサッカー。サッカーについても、男子の場合、ユース年代から普通に、名字で呼び捨てられているように思います。高校サッカーだと、テレビ局の都合というか、番組作り上の方針で「君」付けになることも、なくはないんでしょうけど、世代別代表の国際大会なんかでは、まあ、基本、呼び捨てですよね。

つまり、同じ年代の、同じ位置付けを持ったチームでも、「普通に名字を呼び捨てられる」男子と「どちらかといえばフルネームで呼ばれがちな女子」という男女差が多少なりとも存在しているように感じます。

では、何故そのような相違が発生するのか。いろいろ考えられるんでしょうけど、一つには、「教室での習慣」という要素があるのかな、と。

少なくともワタクシが子どもだった時代、ワタクシが育った地域では、小学校なんかで、男子同士はお互いを呼び捨てorニックネームで呼び合っていたのに対し、女子は互いを、「ちゃん」or「さん」付けか、ニックネームで呼び合っていたような記憶があります。ワタクシの個人的な経験を一般化できるかどうかは、甚だ怪しいところですが、或いは、その辺のことも含めて、女子より男子の方が呼び捨てにしやすい風潮があるのかもしれません。

先に「コイズミ」になってからキョンキョンに「自立した大人の女性」感が出た、と言いましたが、甲子園の「君」付けも含めて、「君」とか「さん」とか「ちゃん」ってのは、スポーツの場合、どうしても「まだ自立した人格ではない」というニュアンスが含意されるんですね。一言で言えば「子ども扱い」ということになる。

フル代表の選手を名字呼び捨てで呼称しているのに、世代別だからといって敬称を付けるのは、半人前扱いしていることになり、逆に失礼、ってことですね。ただ、かといって、どうも10代とかハタチ前後の女性に対し、名字を呼び捨てるのは、教室社会の論理的に違和感がある。そういう中での、落とし所が、「フルネームで呼び捨てる」ってところだったのかな、なんて思うわけです。

女子の場合、年代別代表の世界大会を生中継するなんて、サッカーに限らず、他のスポーツを含めても、ほとんど初めてのことでしょうから、そのあたりは、かなり手探りだったのかな、と。でも、これも過渡期的な現象で、おそらく、そのうちに、「わざわざフルネームで呼ぶか」ってシチュエーションは減っていくでしょう。「きむらさおり」くらい語呂が良すぎる名前が現れない限り(「こばやしやよい」なんかは、ベテランになった今でも、なんとなくフルネームで呼びたくなります)。