■FC東京 2 vs 2 磐田[J1第10節 05月06日]
事実上の監督更迭をして初戦となったジュビロはシンプルな442で挑みました。442ってのは柔軟ですからね、それなりに機能して、リズム良くジュビロが試合を進めます。そして、リズムが良い分、サッカーの神様も先制点というご褒美をくれます。駒野のフリーキックから伊野波がヘッドでゴールインという単純なもので、FC東京的には‘しょぼん’な失い方でしたが、日本代表から日本代表へという形ですから、ジュビロの武器を遺憾なく発揮したゴールとも言えます。
そう、結局ジュビロの武器というのは、前田と駒野なわけで、「ならば、この2人を生かせるだけ生かそう!」というところで意思が統一されれば、そうそう大崩れはしない。この試合のジュビロを、そのへんが上手くいっていたようで、的確かつシンプルな判断で、無駄がなく小気味よいカウンターサッカーを展開していました。
追加点も、FC東京的には‘しょぼん’な失い方。全体的にはFC東京が押していながらも、一瞬のエアポケットを突かれるようなイメージ。ただし、そのエアポケットにおいては、完璧に崩されている。その瞬間に起きた一連のプレーでは完全に相手に上回れて奪われている。というわけで、駒野のクロスをパーフェクトな流れで収めた小林が、そのまま綺麗に決めました。
追いつかねばならないFC東京は次々と攻撃的なカードを切って総攻撃モード。それでも東京名物‘攻めあぐね’が顔を覗かせてきたのですが、せっかくFC東京がスペースを提供し放題に提供してくれても、ダメを押せなかったジュビロに、とうとうサッカーの神様は愛想を尽かしたらしい。FC東京が同点に追いつきます。
平山がPA内でチョ選手を背負いきった上で振り切ってボールを収め、一気にバランスが崩れたジュビロ人海戦術の空白地帯に折り返す。そこに石川が走り込んで、力一杯シュート。うまいこと決まって一点差に追い上げると、同点ゴールは後半ロスタイムの劇的ゴール。中盤で米本がボールをハントすると、フリーランニングを怠らない右サイドの東ヘ展開。東のクロスに平山が突っ込むもミートせず、ボールは左へ流れる。諦めず追いかけた石川が、それを拾って太田に託す。太田も懸命に残して石川にリターン。石川のクロスにまたまた平山が飛び込むも弾かれる。それでも、なんとか太田が残し、フリーで走り込んできた李にアシスト。最後は李が千両役者っぷりを見せつけてくれました。
FC東京は李と平山を投入してから良くなりましたね。やはり、この2人はボールを収められる。千真は千真で‘正確なシュート’という武器があるのですが、〈決めない千真はただのホニャララ〉みたいなところもありますから、仮に02or12のまま敗戦していたら、千真への風当たりは、そうとうキツくなったのではないかと想像されます。
■浦和 1 vs 3 全北現代[ACLグループリーグ 04月04日]
試合が動いたのは前半開始早々。例によってオーバーラップしていた槙野が、ドリブルでPAに進入しかけたところで、原口とスイッチ。スピードに乗った状態でボールを持って抜け出すと、原口は上手い。そしてシュートも綺麗でした。このあたりは昨シーズンにワントップの修行をした成果でしょうか。
というわけで、前半は浦和の試合。解説の福田さんが繰り返して述べていたように、ミシャのトリッキーなサッカーに対応しきれない全北の隙を突き続けてチャンスを量産。そして決定機逸も量産。先制点こそ決めましたが、それ以降の度重なる絶好機をあれだけ逃すと厳しい。
後半なると一気に全北のペース。同点ゴールは右サイドのフリーキックから。そのクリアが小さくなったところをイ・スンギに拾われ、矢のようなミドルシュートを突き刺されてしまいました。事故的な失点とはいえ、「まさかっ!」っていう雰囲気でもなく、「あ、やっぱしな」って印象の方が強かったですね。そして勝ち越しゴールも右サイドのフリーキックから。エニーニョが蹴ったセットプレーに直接イ・ドングッが頭で合わせて勝ち越しゴール。後半に入ってからは全体的に全北のペースでしたし、セットプレーでの高さでは終始レッズは押されていたので、これまた「まさかっ!」ではなく「あ、やっぱしな」ってゴール。
で、なぜ、「あ、やっぱしな」って感じたかというと、一つには、前半から、実はさほど浦和は良いサッカーをしていたように見えなかったというのがあります。数多く迎えた決定機も、能動的に崩したというより、全北のパスミスからショートカウンター気味にもたらされたように思われましたし。また、前半半ばの時間帯は、お互いにセットプレーからチャンスを作り出していたのですが、直接FKなどが目立ったレッズに対し、ハイボールによるセットプレーの制空権は完全に全北が掌握していましたので、セットプレーからの失点というのは十分に想定できるものでした。
さらに全北はハーフタイムに戦い方を修正してきていたことも無視できません。前半は縦の意識が強すぎて浦和にプレゼントパス大奮発状態になっていた全北ですが、後半はボールを丁寧に繋ぐことでピンチを減らし、浦和の前プレが緩んだことで最終ラインから狙い澄ましたパスを正確に出せるようになった。浦和は手も足も出ないって状況に追い込まれてしまいましたから、全北のHTでの修正力が浦和の対応力を凌駕した試合だったと性格づけられるように思います。
なお3失点目は「まさかっ!」。エニーニョの個人技ですけどね。アーリークロスを入れるのはちょうど良い位置から、狙い澄ましたロングシュート。「クロスのミスがそのまま…」ではなく確実に意図を込めたロングシュートでしたから、これは完全なる「まさかっ!」でしょう。