□スパリゾートダービー
さて、先週の西京極でのFC大阪戦に続いて、今週は遠路はるばる鹿児島です。ちょっぴり遅めの夏休みに怖いものなど何もない(休み明けは怖いものだらけ)。さてさて、鹿児島といわき、共通要素を探しましょう。鹿児島といえばユナイテッド、いわきのダービー相手は福島ユナイテッド……なんか、つまり、“ユナイテッドダービー”になりそうでならない。いわば“ユナイテッド”がねじれの関係にあるような関係性ですね。
というか、“いわき”と聞いたら昭和育ち的には“常磐ハワイアンセンター”しか出てこないわけです。平成になって以降は、何やらナウなヤングにバカうけな横文字施設にリブランディングして、しかも大成功しましたけど。となると、鹿児島も負けてられない。泣く子も黙る指宿の“砂蒸し風呂”ですよ。指宿の温泉自体は万葉集の時代からあるみたいですけど、砂楽さんとかが今のレジャースタイルで砂蒸し風呂を営業するようになったのって、いつ頃なんですかね?昭和にはあったのかしら?ともあれ“スパダービー”です。
□中位vs降格圏
さて、仙台からスカイマークで乗り込んできた?いわきは、ここ5試合で3勝2敗。順位は8位。3連勝からの2連敗ですから、必ずしも絶好調真っ只中というわけではなさそうですが、地域リーグ時代から昨年末までアンダーアーマーの指揮下で一貫性のあるチーム作りをしてきただけあって、しっかりと健闘してます。とはいえ、奇跡的にアンダーアーマーという世界的企業が絡んでくれたから上手くいっただけなんで、他のクラブが真似ようとしても、なかなか再現性のあるケースとは言えないですよね。
迎え撃つホームの鹿児島ユナイテッドFCはここ5試合で0勝0分5敗。つまり5連敗。必然的に順位は降格圏、19位です。まさに崖っぷち。ライセンスのスタジアム条項が危ういので、とにかくJ2にしがみつくことでしかJ2ライセンスを維持できない可能性も出てきて、それゆえ去年の大嶽監督、今年の大島監督と、悪くない結果の監督を早め早めに更迭してきましたが、早め早めに動けば必ず良くなるかというと、そういうわけではないというお話ですね。
□わりと差が明確
というわけでピッチに目を移します。まず、いわきFCですが、守備で構えるときは下田と山口のWボランチになります?攻撃に移ると山口が上がり、西川が絞ることで逆三角形になりますけど。まあ、そういう詳細はともあれ、相変わらず洗練されています。ロングボールを空いた選手や空いたスペースに刺していくハイテンションスタイルですが、空いた選手とスペースを作るのが上手いというか、方程式化されている印象です。
一方の鹿児島は4231ってことにされているようですが、有田と鈴木が縦関係なのは間違いないものの、守備時は4411、攻撃に移ると両SHがWG化して4213っぽくなる。とはいえ基本的なサッカー観は伝統的な442サッカー、ポジショナルではない堅守速攻。というか、もはや424サッカーですかね。気合で相手の攻撃を跳ね返して、それを前線4枚に向けて大きく蹴り出す。繋がれば攻撃になるんですけど、たいていは“飛んで火に入る夏の虫”状態に陥ります。
前半の攻防については、序盤は多少ながら鹿児島が押してました。ゴールラインテクノロジーがあれば得点が認められたかもしれないようなシーンもありましたし。しかし、そんな淡い期待もいわきFC西川のファインショットで打ち砕かれる。鹿児島はバイタルで2列目と3列目に間にスペースを作ってしまいました。さらに傷んだ有田が藤本に前半の内に交代するというスクランブルな場面で、集中やらマークの確認を締め直せないまま、直後のFKから谷村にまんまと決められてしまいます。鹿児島にとっては厳しい前半の戦いとなりました。
□最後まで差が明確
後半になって鹿児島は裏抜けとサイドチェンジで少しずつゴールに迫ります。まあ、やってることは前半と同じなんですけど、それでも多少はゴールに近づいた。そんな希望を打ち砕くように、いわきがダメ押しゴール。山下のクロスに谷村が、それはそれは奇麗に頭で合わせましたよ。頭一つ抜け出ているとは、こういうことを言う。往年の城彰二のヘディングを見ているような美しさがありました。
逆に鹿児島は、いよいよ厳しい。とはいえ、何か工夫があるわけではない。相手が5バックで構えているところに4トップで仕掛けるものだから、構造的に数的不利。となれば、相手のワイドを1列前に引き出すとか、真ん中にクサビを入れて距離感を乱すとかしないといけないと思うんですが、鹿児島は前線のアタッカーによる個人戦術に全てを委ねるような形。「上手いことフリーランして、どうにかしろ!」以上の何かは伝わってこないんですよね。
対照的にいわきFCは鍛えられている。熊田が投入されて西川の位置に有馬が落ちるとかしても、ブワニカが投入されたりしても、しっかり守って、奪った瞬間に相手に隙があればそそくさ攻めるの質が維持される。一方の鹿児島も選手交代を繰り返しますが、今ひとつ全体の機能性は上がらない。星が左SBにスライドしてからの左サイドは、わずかにワクワク感を漂わせましたが、完成度の違いは残酷なまでに明確。藤本の意地の一発が出たのは良かったですが、鹿児島サポ的にはフラストレーションの溜まる一戦だったのではないかと思われます。