□フェリー感漂うダービー
この試合に関して言えば“FCダービー”ということで全てが片付いてしまうわけですが、一方で“フェリー感”が濃厚に漂う組み合わせだったりします。松山から小倉へのフェリーがありますよね。経営は苦しいらしく、相当古い船を使っていて、個室が少ない。未だに雑魚寝がメインなので、おっさんの一人旅にはなかなかハードルが高い。もちろん個室もあるのですが、高いのよ。いわゆる“シングル個室”的なものがなくて、スイートか雑魚寝か、みたいな。さすがに一人でスイートは使わない。
ともあれ小倉港に着岸すると歩いて小倉駅まで行けます。途中にミクスタがあります。で、小倉駅で22時まで待っていたら、新門司港行きのシャトルバスがやってきます。コロナのマンボウ期間に、20時であらゆる飲食店が閉店する中、絶望的な気持ちで22時までバスを待ったのは素敵な思い出。ともあれ23時55分発のフェリーに乗れば、あらま不思議、あっという間に横須賀に到着、もはや横浜は目と鼻の先ですね。というわけで、“フェリー感漂う”ダービーです。
□名将石丸の意地か、若きウエル四方田の悩みか
さすがに2泊3日のフェリー乗り継ぎ旅ではなく、成田経由のJetstarで乗り込んできたと思われる、いや、普通に羽田便か?な愛媛ですが、ここ5試合の調子は微妙で、0勝4分1敗。順位は12位です。J3から昇格した初年ということを踏まえれば上々ではありますが、名将石丸がこんなところで満足するとは思えませんし、今後を占う意味でも勝負所ですかね。負けは少ないとはいえ、勝ってませんし。
迎え撃つ横浜FCは、ここ5試合で3勝1分1敗で、順位も3位。順調と言って良いでしょう。古巣の真駒内方面ではミシャがラストシーズンだと示唆されましたし、横浜FCによる昨シーズンのひどい仕打ちを鑑みれば、がぜん四方田さんの来年の去就に注目の集まるところではありますが、まずは今シーズンに集中。このまま昇格したら、マジで四方田さんは頭を悩ませそう。とにもかくにも横浜FCは好調です。
□揺りかごパフォーマンス発動
というわけでピッチに目を移します。まず愛媛で注目すべきは、なんといっても石浦大雅。ヴェルディ育ちのファンタジスタ。愛媛で揉まれて、フィジカル面はともかくメンタル的にはハードワーク気質になったってのが伝わってきた。きたのですが、あの萌え袖は何とかならないものか。男の萌え袖は柏木陽介だけで十分だよ。……あ、愛媛のサッカーは低い位置で相手のプレスを剥がして区間快速くらいのパス回しで攻めていく感じです。
一方の横浜FCは、井上潮音より小倉陽太なんですねえ。井上潮音と小倉陽太とで何が違うかと言うと、パスレンジが違うかもしれません。小倉陽太はロングフィードやら、球足の長いグランダーのパスが散見します。イケメンって部分では井上潮音と同じですが、パスレンジの長いCB兼用イケメンボランチとくれば、要するに谷口彰悟系ですね。高橋秀人系とも言えますが。フリーマン福森との相補関係を踏まえると、確かに井上潮音より小倉という考え方も理解できなくはない。
ともあれ前半の攻防。基本的には順位通りの攻撃回数で、愛媛は押さがちだったのですが、尾崎が強引にミドルショットを放ったあたりで流れが変わって、堂々とカウンターも発動。その勢いのまま窪田稜が先制ゴールを奪い取りました。そして、横浜FCサポーターの前で揺りかごパフォーマンス。揺りかごパフォを生で見たのは、実は初めてかもしれない。ってな前半戦でございました。
後半の開始とともに横浜FCは櫻川ソロモンを投入。これでカブリエウ、ユーリララ、カプリーニ、ンドカに加えてのソロモン。なんだか多国籍感というか、インターナショナル感が満載。インテル横浜。そんなインターナショナル軍団のうち、ユーリララとカプリーニは前半からご機嫌斜めでしたね。審判のジャッジに納得がいかなかったのか、相手の密着マークにイラついていたのか。
ともあれ総攻撃モードの横浜。スコアを動かしたのは山根永遠でした。フォーエバーでビューティフルなミドルシュートを突き刺しました。こうなると愛媛は厳しい。リードしてからは、パクゴヌが完全に最終ラインに構える5バックのリトリートモードになってましたからね。ここから再びアタッキングモードにギアチェンジするのは、相当に難しい。横浜FCはハーフコート状態で攻めたてまくります。
しかし、そんな横浜FCの前に立ちはだかったのが愛媛GKの徳重。まずは腰が砕けかけたチームを抜群の安定感で支えて持ち直させる。終盤のサンドバッグ状態においては、思わず見ている我々が変な声を出してしまうようなスーパーセーブを披露する。しかも2回も。楢崎正剛と川口能活を足したような大車輪。とはいえ、横浜FCも攻めあぐねモードにはならない。最後の最後まで総攻撃をしかけると、まさにラストプレー、ロスタイムだけで10回近くあったんじゃないかというCKから櫻川ソロモンが渾身のヘディングシュート。劇的なサヨナラゴールで横浜FCが勝ち点3をもぎ取りました。いやあ、凄い試合でしたね。