大分にもヴェルディにもゆかりのある選手って、案外、少ないですね。この試合のメンバーでは大分のベンチにいた鈴木淳だけだった模様。林容平と林陵平がややこしいですけど。
■前半
トルシエ以降、3バックが急激にマイナー化したなか、当時、広島の監督に就任したミシャ・ペトロビッチの3バック革命は衝撃的でしたね。攻撃と守備とで基本陣形を変えることで、それまでの3バック解釈を一変させました。で、その画期性にも影響されつつ、Jリーグでは、着実に3バックを採用するチームが増えております。増えておりますが、当初と違ってミシャ流変則システムまでが採用されることは、ほとんどなくなったと思われます。
で、ヴェルディも今シーズンから343で臨んでいるわけですが、ミシャ流か非ミシャ流かでいうと後者。なぜなら監督がスペイン人のロティーナさんだから、ミシャ流3バックは携帯電話ばりにガラパゴス的発達を遂げた日本に特異な様式。ロティーナさん的には知っちゃこっちゃないって感じでしょうね。なので、オーソドックスな、決まりごとをしっかり落とし込んで、流れの中でも、そこまで極端にスタートポジションからの逸脱は発生しない。
対する大分も、今シーズンから343です。ただ、こちらはヴェルディとは違って、ミシャ流的要素が少なからず見られる。具体的には、ビルドアップに際して、姫野が最終ラインに落ちてきてゲームメイクするってシーンが非常に多いのです。それによって左右のCBが半ばSB化したり、あるいはバランスを整える人員が1人多めに確保されるというので、流れに身を任せて流動的に動き回ることが許される。ボランチのはずの小手川とかは、ほとんどサイドにいたし。
惜しむらくは、両WBの攻撃参加が抑制的であったこと。守備に重心を置いていたというか、そうそう槙野や森脇みたいなことはできないというか、ともあれ、「高い位置取りで相手を押し込む!」って感じではなかった。ゆえに、前半のうちはヴェルディの圧倒的な攻勢状態にあったと思います。ミラーゲームで一方が引いたら、そりゃ、もう一方は前に出ますよね。井上潮音と高木善朗のコンビネーションとかで、ズカズカとトリニータ陣内に侵入しておりました。
■後半
まぁ、前半をスコアレスで折り返せれば、大分的にはオッケーだったんだと思いますが、如何せん、堪えきれなかった。前半の終了間際にアラン・ピニェイロやらドウグラス・ヴィエイラやらにワーワーやられて先制を許します。ちなみにアラン・ピニェイロもドウグラス・ヴィエイラも去年からいる選手ですが、2人同時にピッチに立つことは少なかったような。その2人を使いこなしているのだから、ロティーナさんの手腕も侮れません。
そして、さらに侮れないのが、ドウグラス・ヴィエイラのブラジル人力。相手ゴール前で自爆的にこけたときに、さもタックルを受けたかのようにうずくまったりするのです。みんなシカトしているのに。こういうところはブラジル人選手らしい。おそらく、日本人が団体旅行とかでレストランに行ったときに、「じゃあ、一緒で」っつって、全員が同じメニューを頼んでしまうようなことなのでしょう。ついつい、無意識的にそうなってしまう、みたいな。
ともあれ、視点を大分に移すと、ハーフタイムがあけるなり、途端にペースアップ。縦への意識が非常に強くなって、しかも、ポンポンと相手ペナルティーエリアに侵入していく。ハリル系のアタッキングですね。そして、ガンガンとシュートを撃っていく。負けているんだし、シュートを撃たないことには始まらない。だから撃つ。これができそうで、なかなかできないこと。そういうことが、ちゃんとできている。挙げ句の果てにはCBの福森がWBの松本を追い越したりもする。イケイケです。
このあたりは、片野坂さんの修正力なのか、そもそもゲームプランだったのか。修正力とするならば、「できるなら最初からやれよ」状態ですが、たぶん、後半勝負というゲームプランだったのでしょう。後半は、前半とは逆に大分がヴェルディを攻め立てる展開となりました。とはいえ、スコアは最後まで動かせず。大分が徐々にトーンダウンしていった印象もありますけど、あるいはヴェルディがボランチを攻撃的な井上からベテランの橋本にスイッチしたことの効果かもしれません。だとしたら、「橋本英郎、ここにあり!」ですね。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・姫野宥弥
□推薦理由
「この選手、誰かに似てないか?」と思いながら眺めていたのですが、そのズングリムックリな体型といい、遠目で確認できませんでしたが、おそらく童顔なのだろうというところといい、全体のフォルムが大前元紀にかぶっていたりしません? 事前の知識だと、中盤で走り回るダイナモ系のボランチ、要するに守備専ボランチだと認識していたのですが、決してそんなことないですね。本文で述べたように、ビルドアップとかしていましたし。
攻撃においては、1列下がってビルドアップを行い、味方がボールを失うや、猟犬のように前線まで走っていき、ボールハントを怠らない。大分が現行の343を採用するのであれば、この選手がキーマンであり続けるものと思われます。こういうタイプのボランチとしては、鈴木啓太とか佐藤勇人などキャプテンシー強い系の先人が思い出されますが、絶え間なく周囲に指示を出したりもできていましたし、もっともっと自分を磨き上げて一時代を築いて欲しいところです。